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「各業界で活躍されているあの人は何がすごいのか?」をコンセプトに、各業界の有識者から“成長の秘訣”や“仕事論”を赤裸々に語っていただくHR×LEARNING スペシャルセミナー。

2026年2月20日開催のセミナーは、元トヨタ自動車のレクサスブランドマネジメント部長で、現A.T. Marketing Solution代表の高田敦史氏のご登壇です。トヨタの製造現場に根ざしたカイゼン文化や「あるべき姿」を見据えたカイゼン事例、リーダーに求められる資質などをお話しいただきました。

今回のレポートでは、トヨタの「カイゼン」に象徴される仕組みを中心に、変化を恐れず挑戦し続ける“チャレンジ集団創り”のヒントをお届けします。

トヨタ伝統の「カイゼン」文化と
「トヨタ用語」

トヨタのユニークな仕組みとしてまず紹介されたのは、同社の現場で日々用いられる6つの用語。「自働化」「現地現物」「視える化」「真因」「カイゼン」そして「横展(よこてん)」です。

「自働化」とは、問題発生時にまず自分自身が判断してライン(仕事)を止めることで問題の拡大を止めること。そのため、「動」ではなく「働」が使われます。

「現地現物」は、問題が発生したラインを止めた後、関係者が集まり、実際に現地で現物を確認して検証すること。机上で議論をするやり方では本質的な問題解決にならないため、必ず現地で現物を確認することを重視しています。

問題を把握できたら、それを可視化して組織で共有します。これが「視える化」であり、そこから「真因」を突き止めます。1つの問題でも、原因は何十個と出てくるでしょう。しかし、その全てに対応するのは非効率的。より重要かつ本質的な原因を突き止めるという「真因の発見」が問題解決には欠かせません。

問題を把握できたら、それを可視化して組織で共有します。これが「視える化」であり、そこから「真因」を突き止めます。1つの問題でも、原因は何十個と出てくるでしょう。

しかし、その全てに対応するのは非効率的。より重要かつ本質的な原因を突き止めるという「真因の発見」が問題解決には欠かせません。

真因がわかったら、いよいよ「カイゼン」です。カイゼンが成功したら、他の類似する現場に共有・展開する「横展」を行います。

ここで、高田氏は「カイゼン」における2つの方向性を解説しました。1つは、「発生型問題」に対する「Forecast」型のカイゼンであり、現在の状態の延長線上にある未来を考え、それに向かって品質・機能の向上に取り組むもの。もう1つは、「設定型問題」に対する「Backcast」型のカイゼンで、将来の「あるべき姿」を考え、現状とのギャップを埋めるために取り組むものです。

トヨタのカイゼンはForecast型に止まらず、Backcast型の問題解決にも活用されています。

Backcast型カイゼンで実現した
世界初ハイブリッド量販車「プリウス」

Backcastによるカイゼン事例として紹介されたのが、1997年発売の世界初ハイブリッド量販車「プリウス」です。開発チーム発足当初は、「当時の人気車種であったカローラよりも居住スペースを拡大し、燃費を1.5倍にする」というForecast型のカイゼンを想定していました。

ところが、1994年に技術担当副社長が交代したことでBackcast型のカイゼンへと大きく方向転換。新たな目標は
・燃費を2倍にする
・ハイブリッド車にする(そうでなければプロジェクト中止)
・1998年までに市場導入する
となりました。さらに翌年に新社長が就任すると、国連気候変動枠組条約締約国会議(京都会議)の開催を考慮し、市場導入時期が1997年へと前倒しされ、現場ではギリギリの戦いが続いたということです。

そして迎えた1997年12月、「21世紀に間に合いました」という印象的なフレーズとともに市場に現れたプリウス。Backcast型の発想で未来を見据えたトップ層の経営判断と、その高い目標に対し、カイゼン文化が浸透した現場がしっかり応えたことで、トヨタの技術イメージ・環境イメージを一気に向上させた事例となりました。

「レクサス」ブランドイメージ刷新に
向けた組織大改革

トヨタのカイゼンは、組織レベルの改革から始められることもあります。その例が、豊田章男社長(当時)が主導し、高田氏が部長として携わったトヨタ自動車におけるLEXUS INTERNATIONALの社内分社化です。

レクサスは、1989年に米国から導入され、高い支持を集めたブランド。ただ、2000年代前半には、ユーザーの高齢化や米国におけるブランドイメージの陳腐化、米国・中国での若年富裕層の台頭といった大きな問題に直面します。この局面を生き残るには、ブランド自体の若返りが必要でした。

LEXUS INTERNATIONALでは、迅速な意思決定のために組織を簡素化。豊田社長が熱い思いを伝え、その実行はLEXUS INTERNATIONALのPresident、Vice President(ともに本社常務)と部長クラスが主体的かつ迅速に進めていきました。これは従来の大組織ではできなかったことです。

これにより、レクサスの特徴の1つといえるスピンドルグリルの採用や、スポーツモデルの導入、タグラインの変更、カフェレストランのオープンなど、世界中で新たに誕生しつつあった若年富裕層を取り込む、斬新で多様な施策を次々に展開。「なぜトヨタがこんなことを?」という周囲からの疑問や批判の声はあったものの、結果として、若年富裕層世代の開拓に成功。販売店の協力もあって既存のユーザー層が離れることもなく、レクサスの販売台数は2013年から2015年の2年間で1.3倍になりました。

挑戦する組織に必要なリーダーの
「4つのTION」

チャレンジする組織のリーダーには「4つのTION」が求められると高田氏は説明します。

1つ目は「Direction」という仕事の必要性・方向性をメンバーに明示し、「どのような組織にしたいのか」という想いと具体的な指示を伝えること。
2つ目は「Allocation」であり、組織が成果を出すために業務遂行に必要な人員/予算を自ら交渉し、確保することです。
3つ目は長期・短期の両面から見たメンバーの「Motivation」を維持・向上させること。中長期的には、自分事として仕事に取り組めるよう、本人がやりたいことと組織が求めていることを一致させられるように支援します。短期的には、日々の職場を明るくし、職位に関わらず何でも言える雰囲気づくりを行うことです。高田氏は職場を歩き回りながら一人ひとりに声かけを行うMBWA(Management by Walking Around)を実践したとのこと。
そして4つ目は「Solution」です。部下だけでは解決できない局面に達した際に、リーダー自らが現場に出て、取引先や社内の他部署の上司と交渉し、解決を図らなければなりません。その覚悟が、チャレンジする組織のリーダーには不可欠なのです。

組織改革と「あるべき姿」を描く
ノウハウが詰まった質疑応答

講演の終わりには、組織改革のポイントや、現場メンバー自身が「あるべき姿」を描くために必要なことなどの質問が多く寄せられました。高田氏は、新人や若手時代の研修期間から「あなたの部署のあるべき姿は何か」を問いかけることや、それを語れる職場環境づくりが大切であると回答しました。

セミナー後のアンケートでは、「自分たちが会社を変えるんだという意気込みで業務を遂行していきたいし、そういう社風にしていきたい」「ご講演を受けて、日々熱意を持って会社・社会を変えようと思った。特にForecastとBackcastという考え方は印象に残った」「本日の話を機会に、自身の業務で取り組んでいる仕事の“あるべき姿”を考え、日々の仕事がただの作業ではなく、価値を生み出す仕事につなげられるよう、チャレンジと学びを続けていこうと思った」といったご感想が寄せられました。高田氏のご講演から、上司と部下が一体となって目標に立ち向かう“チャレンジ集団創り”の大きなヒントが得られたことがうかがえます。

今後も、様々な業界から有識者の方をお招きし、皆さまのビジネスのヒントをお届けします。詳細は、HR×LEARNINGスペシャルセミナーの特設サイトにてご案内しておりますので、ぜひご覧ください。また、ご興味のあるテーマやご要望、どんな小さなお悩みでも、どんどんお寄せください。

生まれただけで丸儲け!!

私は自身が担当した仕事をどう楽しむか、楽しくするかを考えながら会社員生活を送ってきました。会社員にとって出世は1つの目標ではありますが、昇進・昇格には運、不運がありますし、人間関係にも大きく左右されます。
自分自身がコントロールできないことで悩むより、日々の仕事を楽しくやる方が大事だと思っていたからです。上司の立場になった時は、部下の皆さんが楽しく仕事ができる環境づくりが重要ですし、私自身もそのことをいつも考えてきました。

明石家さんまさんが「生きてるだけで丸儲け」と言われていますが、私は「この世に生まれたこと自体が丸儲け」だと思っています。宇宙の中で地球という惑星が誕生したのが奇跡。地球上に人類が誕生したのも奇跡。多くの人類が命をつないで自分自身が生まれたのも奇跡だからです。
奇跡の積み重ねでもらった人生ですから、色々とチャレンジしてみましょう。皆さまのご健闘をお祈りいたします。(高田氏)

(高田氏)

※全て開催当時の情報です