リーダーシップとは?理論や種類、要素と高める方法

published公開日:2023.11.27
目次

経営者や管理職に不可欠なリーダーシップ。多くの理論があり、ビジネスの環境に合わせて選ぶことが大切です。
本コラムでは、リーダーシップの定義や種類、歴史をわかりやすく解説。リーダーシップをとるための要素やリーダーシップを高める方法もご紹介しますので、ぜひお役立てください。

リーダーシップとは

「リーダーシップ(leadership)」に関する理論は多岐にわたり、時代によってさまざまな定義が与えられてきました。
まずは、多くの理論に共通するリーダーシップという語の意味合いを押さえましょう。より明確なイメージをつかむため、
リーダーシップとマネジメントの違いも簡単に解説します。

リーダーシップの定義

リーダーシップとは、一言で言えば「設定した目標を達成するために、組織を導く力」のことです。
日本語では「統率力」「指導力」とも呼ばれます。また、ドラッカーは、「人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものである」と書いています。

時代やビジネス環境の変化により、求められるリーダーシップは変化します。はじめは生まれ持った資質によってリーダーシップが発揮されると考えられていました。しかし、研究が進むにつれ、現在は後天的に身につけて発揮できるスキルの1つと考えられています。

リーダーシップとマネジメントとの違い

リーダーシップとマネジメントは混同されやすい言葉ですが、その役割は異なります。

リーダーシップでは、目標達成に向けてメンバーに働きかけるスキル。具体的には、明確なビジョンや方向性を示し、チームを主に気持ちの面で引っ張ります。

対するマネジメントでは、チームが目標達成するための手段を見極め、その進捗を管理します。つまり、マネジメントは具体的な手段でもってチームをけん引するということです。

リーダーシップとマネジメントは、必要とされるタイミングも異なります。リーダーシップは新しいプロジェクトの発足や、進捗が停滞している際に大きな威力を発揮するものです。組織の方向性が定まった後や比較的順調に進んでいる場合は、適切なマネジメントで論理的分析や判断を行いながら、さまざまなリソースを管理していきます。

リーダーシップの種類

では、リーダーシップにはどのような理論があるのでしょうか。各理論ではリーダーシップをいくつかの型に分類し、特徴付けを行っています。理論の概要とともに、リーダーシップの種類を確認していきましょう。

SL理論(Situational Leadership Theory)

SL理論(Situational Leadership Theory)は、部下の成熟度に応じてリーダーシップの種類を使い分けることを示した理論です。部下の成熟度は、最も低い1から最も高い4まであります。

部下の
習熟度
リーダーシップの種類 特徴
1 教示型リーダーシップ 具体的な指示と指導を行い、細かく監督する
2 説得型リーダーシップ 論理的に情報を伝えて説明し、疑問に答える
3 参加型リーダーシップ メンバーが考えをまとめて意思決定や問題解決に取り組めるよう、協力する
4 委任型リーダーシップ メンバーに意思決定や問題解決など仕事の遂行を任せる

部下のスキルを育成したい時などに4種類のリーダーシップを使い分けると、無理のないステップアップにつなげやすくなります。また、高スキルの人材に仕事を任せる際は「教示型」よりも「委任型」のほうが、効率よく業務を進められるでしょう。

クルト・レヴィンのリーダーシップ類型

1939年、「社会心理学者の父」とよばれたクルト・レヴィンは、3種類のリーダーシップを提唱しました。分類における特徴は、リーダーとメンバーの関わり方にあります。

リーダーシップの種類 特徴
専制型リーダーシップ ●組織の行動や意思決定のすべてをリーダーが行う
●強いリーダーシップが発揮された際に短期間で高い成果を上げる
民主型リーダーシップ ●リーダーと組織メンバーがともに計画を立案し進捗管理を行う
●自主性が高くチームワークに優れている
放任型リーダーシップ ●メンバーに権限を与え、 各人がタスクやモチベーションを管理する
●メンバーが自分のスキルを発揮しやすい
●全体の行動指針がなく、目標達成が困難

3種類のリーダーシップは、プロジェクトの状況に応じて使い分けることが大切です。

例えば、全体の方針が明確でない状況で放任型をとると、チームは混乱してしまいます。そのため、プロジェクトの初期段階では明確なビジョンや業務の進め方を明示するために専制型または民主型をとると効果的です。

メンバーが自分で動けるようになってきた場合は放任型へ、課題発生などで検討が必要になったら民主型へ移行するといったように、柔軟に対応するとよいでしょう。

ダニエル・ゴールマンのEQ型リーダーシップ

また、米国の心理学者ダニエル・ゴールマンは、「EQ(Emotional Intelligence Quotient)型リーダーシップ」を提唱しています。これには6種類のリーダーシップがあります。どれか1つが「理想」というものではなく、ゴールマンは、状況に応じてこれらのリーダーシップを意識的に使い分けることを推奨しています。

リーダーシップの種類 特徴
ビジョン型リーダーシップ ●ビジョンを共有し、目標に向かってチームを動かす
●達成のプロセスは押しつけない
●メンバー全員で試行錯誤しながら、目標達成に向かって進む
コーチ型リーダーシップ ●メンバー一人ひとりの特性を活かす
●メンバーそれぞれの希望を重視する
●メンバーを支援しながら、組織の目標達成につなげる
関係重視型リーダーシップ ●課題や目標達成よりもメンバーの気持ちを大切にする
●チームの調和を引き出す
民主型リーダーシップ ●メンバーからの意見を積極的に聞く
●メンバーの参加、コンセンサスを通してコミットメントを得る
ペースセッター型リーダーシップ ●手本として、リーダー自身がレベルの高いパフォーマンスを発揮する
●メンバーにも、リーダーと同じレベルを求める
強制型リーダーシップ ●メンバーに考える余地を与えない
●強制的に指示・命令しながらメンバーを動かす

ゴールマンの分類では、例えばチームビルディングの時期なら、関係重視型や民主型が効果的でしょう。より自主性やスキルの高いチームであれば、ビジョン型やペースセッター型をとることもできます。大きなトラブルが発生して迅速な対応が迫られる場合は、強制型もやむを得ないかもしれません。

現在の状況を分析し、どの種類が最も効果的か、メリット・デメリットを比較しながら選択しましょう。

ビジネスにおけるリーダーシップの必要性

組織の目標達成において、リーダーシップは欠かせません。その必要性をより明確に認識することで、リーダーシップの取り方や高め方に役立てられます。今回は、最も重要な2つの理由をご紹介します。

(1)メンバーが同じ方向を向いて団結するため

リーダーシップの最も重要な役割は、組織が目指すべき方向を明確なビジョンをもって示すことです。リーダーは、組織にとって望ましい結果を得るためのロードマップを示さなければなりません。

ビジョンを従業員やメンバーにしっかり伝え、理解してもらうには、リーダーのコミュニケーション力が必要です。具体的な業務の進め方はマネージャーが担いますが、リーダーが示すロードマップも現場の状況や業務の進め方を無視していいわけではありません。どのような業務が必要なのか、どのように進める必要があるのかをヒアリングしながら、描くビジョンや方向性の妥当性を検討しましょう。

プロジェクトや計画の進行中にトラブルや解決すべき課題が発生した場合は、改めてビジョンや方向性を示しつつ問題解決に導くことも、リーダーの役割です。

(2)激しい環境の変化に耐えられる組織にするため

「VUCAの時代」と呼ばれる現在、ビジネスを取り巻く環境は日々激しく変化し続けています。しかし、こうした先行きが不透明な状況でも、企業は業績を上げ、安定した経営を続けなければなりません。VUCAの時代で生き残るには、組織が同じ方向へ一丸となって進むことが重要です。

また、価値観や働き方の多様化により、従業員一人ひとりが企業に対して求めることも多岐にわたっています。人材の流動化や新しい働き方にどのように対応するか、リーダーは適切な指針を示さなければなりません。

激しい環境の変化に耐えられる組織づくりにおいて、リーダーシップは不可欠なのです。

リーダーシップ理論の歴史

リーダーシップ理論は、時代の変化や要請に合わせてさまざまに変化してきました。こうしたリーダーシップ理論の歴史を知ることで、「リーダーシップの答えは1つではない」と実感できるでしょう。ここでは、代表的な4つの理論を紹介します。

特性理論

特性理論は1940年代まで活用されていた、最も古典的なリーダーシップ理論です。「リーダーシップは先天的な能力や特性である」という立場をとっている点が最大の特徴。優秀なリーダーに共通する特性を見つけ出すべく研究が進められました。

しかし、研究が進むにつれて、個人の生まれ持った特性だけではリーダーの特徴を十分に説明できないことがわかり、別の道を探ることとなりました。

代表的な理論に、ストッグディルの特性論があります。

行動理論

1940年代~1960年代には、リーダーの行動に着目した行動理論が台頭します。リーダーシップを「先天的な能力ではなく、適切な行動によって発揮されるもの」と考える立場です。リーダーの行動がチームに対して与える影響を分析により、複数の理論が登場しました。

代表的な理論の一つに、日本の三隅二不二が1966年に提唱したPM理論があります。リーダーが取るべき行動を、目標達成機能(P:Performance)と集団維持機能(M:Maintenance)の2軸で捉える点が特徴です。PとMのどちらも強い状態を理想的なリーダーとしました。

PM理論は現在でも用いられるリーダーシップ理論です。ただ、すべての状況において有効な分析ツールというわけではない点にはご注意ください。

条件適合理論

条件適合理論は、1960年代〜1980年代に注目されたリーダーシップ理論です。リーダーが取るべき行動は、組織やメンバーが置かれた状況によって異なるという立場をとり、「どのような状況下でも有効な万能で普遍的なリーダー」の存在を否定しています。

先述の部下の成熟度によってリーダーシップを4つのスタイルに分類したSL理論も、条件適合理論のひとつです。

コンセプト理論

コンセプト理論は、条件適合理論を発展させたもので、現代の主流なリーダーシップ理論とされています。さまざまな環境や組織において、それに適したリーダーシップをとる点を重視していることが特徴です。

コンセプト理論における代表的なリーダーシップ論には、カリスマ型、変革型、EQ型、ファシリテーション型、サーヴァント型の5タイプがあります。このうち、EQ型リーダーシップについては、本コラムの前半でもご紹介しました。

理論 特徴
カリスマ型リーダーシップ ●部下にカリスマとして見られるようにする
●明確なビジョンを示し、公平な評価を重視する
●高い行動力と挑戦する姿勢を示す

変革型リーダーシップ ●激しい経営環境の中で組織を発展させることを重視する
●リーダーが変革を促進するためのビジョンと新たなアイデアを示す
●人間の集団心理に着目して行動・成長を促す
EQ型リーダーシップ ●メンバーの感情を把握した管理を行う
●リーダーの共感力とコミュニケーション能力を重視する
●メンバーとの信頼関係を構築し、目標達成に向けて協力する
ファシリテーション型リーダーシップ ●リソースと情報をメンバーに提供し、意見を引き出す
●メンバーからの意見を整理して意思決定を行う
●リーダーは中立なまとめ役となる
サーヴァント型リーダーシップ ●メンバーへの奉仕や支援を通じて、導く
●メンバーとの信頼関係を築き、主体的な協力を得られるようにする
●リーダーは「支援者」として自己を認識する

各理論には、それぞれに異なる提唱者や研究者がいます。リーダーがとるべき行動や考え方は、その理論でどのような人間関係や組織の在り方を重視しているかを比較すると、よりわかりやすいでしょう。

この他、2000年代からは、「オーセンティック・リーダーシップ」なども注目されています。リーダー自身の高い倫理観や道徳観を重視し、一貫した価値観に基づく道徳的な判断や公平な人間関係の構築などを求める立場です。

リーダーシップに必要な4つの構成要素

適切なリーダーシップをとるには、さまざまな知識やスキルが必要です。その中で、特に重要な要素が、ビジョニング、チームビルディング、コミュニケーション、意思決定です。

ビジョニング

1つめの要素は、ビジョニングです。

ビジョニングとは、「将来のある時点で、組織がどのようになっていることが望ましいか」を示すこと。短期的なものではなく、長期的な視点をもっていることが重要です。

そうしたビジョンをより具体的な目標や方向性に落とし込み、目標達成に何をすべきかを明確にしましょう。目標を定め、チームをけん引するには、経営トップ層がリーダーに対して何を期待しているのかも把握しておく必要があります。

チームビルディング

2つめの要素は、チームビルディングです。チームビルディングとは、チームの目標達成に向けて一丸となって働く強固なチームを作ること。ビジョンや方向性、目標を的確に伝え、適材適所の役割分担やメンバー同士の円滑なコミュニケーション促進などに取り組みましょう。

時にはメンバー同士が対立することもあるかもしれません。そのような場合は、リーダーがメンバーの相互理解をし、不満や不信感の解消を促すことが大切です。こうした混乱期を乗り越え、チームとして動きやすくしていくこと、その上で成果につなげていくことを目指しましょう。

コミュニケーション

ビジョンや方向性の浸透や、メンバーとの信頼関係の構築において、コミュニケーション抜きに進めることはできません。チーム発足やプロジェクト開始時期の重要な情報共有、相互理解を円滑に進めるためにも、リーダーには高いコミュニケーション能力が求められます。

さらに、業務を進める上で報連相への対応やメンバーの仕事に対するフィードバック、別部署との折衝や交渉など、さまざまな場面でリーダーは相手の話を傾聴し、自分の見解や決定を伝えなければなりません。

近年は対面や電話だけではなく、メールやチャット、オンライン会議システムなど、コミュニケーション手段自体も多様化しています。適切なタイミングで適切なコミュニケーションができるよう、「どのようなコミュニケーションが可能か」「どのような手段で行うか」という選択肢を常に頭に入れておきましょう。

意思決定

そして4つめの要素は、意思決定です。自身が抱える業務の遂行以外に、メンバーの業務に対する判断、組織やチームの運営、他部署との調整で必要な判断など、リーダーは日々、判断や決定の連続です。

適切な意思決定を行うには、信頼性の高い情報を収集し、それを的確に分析・評価しなければなりません。しかも、情報収集や分析に使える時間もあまり多くはないでしょう。日頃からチームに関する情報にアンテナを張り、過去のデータや他社の状況、社会の変化などのファクターを絡めながら考える必要があります。

同時に、業務の進捗状況やメンバーの様子、メンバーから上がってきた報連相の内容も見落とさないよう意識してください。

リーダーシップを高める方法

リーダーシップは、意識して取り組むことで後天的に身につけられる能力です。現場での判断が求められる昨今、経営層や管理職はもちろんのこと、一般社員にもリーダーシップは求められます。自社や自部署に必要なリーダーシップは何か、それを実現するにはどうすればよいかを探っていきましょう。

本コラムの最後に、リーダーシップを高める方法として、4つのポイントをお伝えします。

自分のチームに合うリーダーシップを探る

これまで見てきたように、リーダーシップにはさまざまな種類があります。この中で、どれか一つが正解というものではありません。どのような状況、メンバーの中でリーダーシップをとらなければならないかを、これまでの取り組みから分析してみましょう。

分析の主な手順は、
1.自社で活躍した人材が持っていたリーダーとしての能力や強みを洗い出す
2.洗い出した能力や強みが、自社にどのくらい貢献したか、どのような状況で貢献したかを評価する
3.現在の自社を取り巻く外部環境や今後の経営戦略を確認する
4.以上で整理した情報から、自分のチームに合うリーダーシップを設定する
の4ステップです。

メンバーの言葉を傾聴する・適切に話す

いずれのリーダーシップを選ぶにしても、リーダーにコミュニケーション力は欠かせません。

傾聴(傾聴力)は、メンバーの話を深く聞き、理解すること。リーダーが傾聴力を高めることで、コミュニケーションの基盤作りができます。傾聴する際は、目をあわせる(ただし、じっと見つめすぎない)、ボディランゲージを加えるといった方法も活用しましょう。

話し方では、話すスピードや声の出し方を工夫する、伝わりにくい部分を言語化するなどのスキルが必要です。また、信頼関係構築にあたり、リーダーが自分の情報を開示して安心感を与えることも必要になるでしょう。傾聴の後に話す場合は、相手への共感を示すことが大切です。

フィードバックでは、感情的にまくし立てるのではなく、どのような伝え方が効果的かを考え、適切な言葉選びを意識してください。

日頃から情報収集と意思決定を行う

リーダーシップを発揮する中で、情報収集と意思決定は避けて通れません。普段から小さなタスクや課題で分析・判断・意思決定の練習をしておくと、いざというときに力を発揮できます。

具体的には、目の前の大小さまざまなタスクに対して、複数の処理の仕方を考えてみましょう。情報収集であれば、どのような媒体・人物から情報を得るか、どのようなテーマで情報収集を行うかなどです。それらの選択肢から、期待する効果が最も高いものを選び実践してみてください。その結果と自分の期待を比較し、集めた情報や判断の適切さを振り返ると、より効果的です。

複数の選択肢を検討して意思決定することを習慣としてこなかった方には、少し疲れる練習かもしれません。しかし、こうした練習を繰り返すことで、より精度の高い適切な判断や意思決定を行えるようになります。

研修で振り返りとディスカッションを行う

リーダーシップを高める4つめの方法は、研修を利用することです。研修では、リーダーシップに必要な要素ごとに日常の行動を振り返ったり、自身のリーダーシップスタイルを検討したりできます。

もちろん、状況に応じた適切なリーダーシップを探ることも可能です。状況の分析や必要な行動スタイルについて他の参加者とディスカッションをすることで、新しい気づきを得られるでしょう。