マーケティングとは?意味や仕事の内容などを解説

published公開日:2025.08.26
マーケティングとは?意味や仕事の内容などを解説
目次

マーケティングとは、簡単にいえば、製品やサービスを売るのではなく、売る仕組みをつくることです。

マーケティングを勉強するための本や教科書は多数ありますが、初心者はどこから手をつけてよいかわからない、と感じている人も多いでしょう。

本コラムでは、マーケティングとは何か、意味や仕事の内容などについてわかりやすく解説します。

マーケティングとは何か?基本の意味と役割を解説

マーケティングとは、「売れる仕組みをつくるための一連の活動」を指します。単なる広告や販売促進にとどまらず、顧客のニーズを的確に捉え、製品やサービスを開発し、それを適切なタイミング・価格・方法で届けることがマーケティングの本質です。

ピーター・ドラッカーやフィリップ・コトラーといった経営学者も、マーケティングは企業の成長と顧客価値の創出に不可欠な役割を果たすものとして注目しています。さらに現代では、SNSやWeb広告などを活用したデジタルマーケティングが主流となり、消費者と双方向の関係性を築くことが求められています。

最初に、マーケティングの基本概念から最新の考え方について、わかりやすく解説します。

マーケティングとは何か(ドラッカーやコトラーの視点)

マーケティングは「売ること」だけではなく、「売れる仕組みをつくること」です。「売ること」つまり「販売」は英語で「Selling」ですが、アメリカの有名な経営学者ピーター・ドラッカーは、著書の中で、販売とマーケティングを明確に区別して、以下のように述べています。

引用

マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。

引用元:P.F.ドラッカー. [英和対訳] 決定版 ドラッカー名言集 . ダイヤモンド社. Kindle 版.

マーケティングを広く普及させたといわれている経営学者のフィリップ・コトラーは、マーケティングの考え方をさらに発展させ、以下のように定義しています。

引用

マーケティングとは、ターゲット市場のニーズを満たし、利益を上げるために、価値を探求し、創造し、提供するという科学であり芸術である。

マーケティングは、満たされていないニーズや欲求を見つけ出し、それらを明確にし、その市場の規模と利益の可能性を測定・定量化する。

引用元:Kotler Marketing Group, Inc. 3. What is Marketing?

つまり、単なる広告や販促にとどまらず、商品開発から顧客満足まで一貫して関わり、価値を生み出して自然と売れるような仕組みをつくるのが、マーケティングの基本的な考え方です。

現代におけるマーケティングの定義とは

ドラッカーやコトラーといった経営学者によって提唱されたマーケティングの考え方は、時代の変化とともにさらに発展させられ、現代におけるマーケティングでは「顧客とともに価値を創造すること」が重視されています。

1957年に創立された日本マーケティング協会では、2024年1月に以下のようにマーケティングの定義を改訂しました。

引用

(マーケティングとは)顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

引用元:日本マーケティング協会|日本マーケティング協会の概要

つまり、現代のマーケティングでは、企業側が一方的にマーケティング活動を行うだけでなく、顧客の声や行動データを活かし、ニーズに応じた最適な価値をともに創り出す姿勢が求められているのです。

特にデジタルマーケティング・Webマーケティングなどの普及により、企業と顧客が双方向でつながる時代では、顧客起点で企業価値を高める戦略的活動が重要となります。デジタルマーケティングやWebマーケティングとは何かについては、次のセクションでくわしく解説します。

デジタル・Webマーケティングとは

最近よく耳にするデジタルマーケティング、Webマーケティングとはどのようなものでしょうか。

マーケティングの種類 具体的な施策
デジタルマーケティング Webマーケティング施策に加え、
デジタル看板、SNS、オフライン連携など
Webマーケティング SEO、メールマーケティング、バナー広告など

Webマーケティングはデジタルマーケティングの一部です。前者は「ウェブ上限定」、後者は「デジタル技術全般を使ったマーケティング戦略」という違いがあります。

近年では、SNSや検索エンジン、動画配信サービスなど、ユーザーの行動データをもとに精緻なターゲティングや効果測定が可能となり、多くの企業で導入が進んでいます。従来のマスメディア中心の手法と異なり、個別ニーズに寄り添った双方向のコミュニケーションができる点が、デジタルマーケティングやWebマーケティングの最大の強みです。

マーケティングの仕事とは?マーケターに向いている人の特徴や役立つ資格

マーケティングの仕事には、市場調査からマーケティングの戦略立案、広告やキャンペーンの実施、社内外の調整など様々な業務が含まれます。

最近では、様々な業種や企業で、マーケティング業務を専門に行うマーケティング職やマーケターの求人が増えています。

ここでは、マーケティング職の主な仕事内容、マーケティング職やマーケターに向いている人の特徴や役立つ資格などを解説します。

マーケティング職の主な仕事内容

マーケティングの仕事は商品やサービスが効果的に売れる仕組みをつくることですが、具体的には以下のような業務内容が含まれます。

  • 市場調査
  • 商品やサービスの企画
  • 販売や広告戦略の立案
  • 広告運用やキャンペーンの実施

業種や企業によって、調査部門・商品企画部門・広報部門などは独立していますから、マーケティング職の人は、これらの部門と連携しながら業務を行っていく必要があります。顧客のニーズを理解し、マーケティングに反映させるためには、営業やセールス部門、あるいはカスタマーサービス部門などとの連携も不可欠です。

マーケティング職は、分析や企画に独自の視点を取り入れつつ、商品やサービスを売る仕組みをつくるために、多面的・複合的に業務をこなす必要があります。

マーケティングに向いている人の特徴

マーケティング職に向いている人にはどのような特徴があるでしょうか。

マーケターには、顧客のニーズや社会の変化を捉え、それを商品や戦略に落とし込むために、分析力やコミュニケーション能力など、様々な資質と能力が求められます。

マーケターに向いている人の特徴や求められる資質を具体的にみていきましょう。

情報収集力と分析力

マーケターにとって、情報収集力と分析力は欠かせないスキルです。なぜなら、顧客のニーズや市場の動向を正確に把握できなければ、有効な戦略を立てることができないからです。

例えば、SNSで話題のトレンドを読み取ったり、アンケート結果を分析して新しい商品のヒントを見つけたりする能力が求められます。

集めた情報を数字や傾向として整理し、具体的な施策につなげられる人が、マーケティングの現場で活躍しています。

コミュニケーション能力

マーケティングでは、コミュニケーション能力も重要な資質の1つです。マーケターは、社内外の関係者と連携しながら仕事を進める機会が多くあります。

例えば、広告担当や商品企画、営業部門との連携をとる際、相手の立場や目的を理解したうえで、自分の考えをわかりやすく伝える力が必要となるでしょう。また、消費者の意見や感情を汲み取るためにも、聞く力と伝える力の両方が必要です。

コミュニケーション能力は、優れたマーケターに欠かせない資質といえます。

企画し実行できる能力

マーケティングには、企画力だけでなく実行力も欠かせません。なぜなら、どれだけ優れたアイデアを出しても、具体的な行動に移さなければ成果には結びつかないからです。

マーケターは、ターゲットや目的を明確にし、予算やスケジュールを踏まえて施策を実行します。例えばキャンペーンの立案から運営、効果検証までを一貫して担うこともあります。

状況に応じて柔軟に対応しながら、結果を出すことができる人が求められます。

マーケティング職・マーケターに役立つ資格

マーケティングに関わる資格は多数ありますが、特にマーケティング職やマーケターを目指す人に役立つ資格にはどのようなものがあるでしょうか。

マーケティング初心者やマーケターをこれから目指す人に役立つ資格を4つご紹介します。

マーケティング・ビジネス実務検定

国際実務マーケティング協会が主催する、特定の業種・業界にとらわれない共通のマーケティング知識の習得を判定する検定試験です。オフィシャルテキストは、大学や専門学校でのマーケティング科目の基本テキストとしても使用されており、汎用的かつ体系的なマーケティング知識の基礎が学べます。

実施団体 国際実務マーケティング協会
級数・レベル

C級:マーケティング・オペレーション基礎レベル

B級:マーケティング・オペレーション応用レベル

A級:マーケティング・戦略、マネジメントレベル

検定試験実施時期 年4回
試験方式 Web試験(団体受験もあり)

参考:マーケティング・ビジネス実務検定(R)|どこでも通用するマーケティングのスキルを磨く

マーケティング検定

公益社団法人日本マーケティング協会が主催する検定試験です。マーケティングの基礎概念の習得から幅広い実務能力や応用力まで総合的にマーケティング力を測ります。

実施団体 公益社団法人日本マーケティング協会
級数・レベル

3級:マーケティングの基礎概念の習得度(マーケティング初心者)

2級:マーケティングの幅広い知識と応用力(マーケティングの実務経験者)

1級:マーケティング課題に対応する総合力(マーケティング部門のリーダー)

検定試験実施時期 2~3級は随時、1級は年1回
試験方式 CBT試験

参考:日本マーケティング協会|マーケティング検定

ネットマーケティング検定

ネットマーケティング検定は、株式会社ワールドエンブレムが運営するネットマーケティングに特化した検定試験です。Webマーケティングの基礎から、SEOやネット広告の概要、リサーチや関連法規まで体系的に知識を習得できます。

実施団体 サーティファイ Web利用・技術認定委員会
級数・レベル

特になし

受験者には合否にかかわらず結果表を配布、合格者には「オープンバッジ(デジタル認定証)」と「デジタル認定証明書」を授与

検定試験実施時期 年4回
試験方式 Web試験

参考:資格検定のサーティファイ|ネットマーケティング検定

ウェブ解析士

ウェブ解析士は、一般社団法人ウェブ解析士協会が主催する、アクセス解析をはじめとしたウェブ解析データの活用やデジタルマーケティングスキルを測定する検定試験です。ウェブ解析士の上級資格として、「上級ウェブ解析士」や「ウェブ解析士マスター」の認定講座があるほか、ウェブ活用を深める認定講座として「SNSマネージャー」や「ウェブ広告マネージャー」などがあります。

実施団体 一般社団法人ウェブ解析士協会
級数・レベル 特になし
検定試験実施時期 月2回
試験方式 Web試験(試験用システムMoodle)

参考:一般社団法人ウェブ解析士協会|認定資格

マーケティングの戦略の立て方

マーケティング戦略の立案は、商品やサービスを「誰に・何を・どのように届けるか」を明確にする重要なプロセスです。

市場調査からターゲットの設定、メッセージの決定、そして具体的な実行計画に至るまで、マーケティング戦略には一貫性が求められます。

ここでは、マーケティング戦略の基本的な立て方について、順を追ってわかりやすく解説します。

市場調査と分析

マーケティング戦略立案の出発点は、市場調査です。顧客のニーズや競合の動向を把握するために綿密な市場調査と分析を行う必要があります。

例えば、新商品を出す際には「どんな人が何を求めているか」「既に類似商品はあるか」などは最低限調査する必要があるでしょう。また、類似や既存のサービス・商品についての意見やクレームから、顧客の隠されたニーズを発掘することも重要です。

アンケートやインタビュー、統計データの分析など様々な手法を用いて市場調査と分析を行います。マーケティングに活かせる分析のフレームワークについては、後ほど詳しく解説します。

ターゲットの選定

次に、市場調査の結果をもとに、ターゲットを明確に設定します。全ての人に商品を売ろうとすると、誰にも響かないメッセージになり、新規性や独自性が失われてしまうため、ターゲットの選定は重要です。

例えば「20代女性で健康志向が強い人」など、具体的な顧客像を定めることで、訴求力のある戦略がつくれます。ターゲットを絞ることで、顧客の悩みや価値観に合ったメッセージを届けられ、成果につながる確率が高まります。

メッセージやストーリーの決定

ターゲットが決まったら、届けるメッセージやストーリーを考えます。

マーケティングにおいて、顧客に対して価値を提供できるような魅力的なメッセージは何かを考えることは非常に重要です。顧客の共感を得るためには、単に商品の特徴を説明するだけでは不十分で、以下のような3点に留意して、メッセージやストーリーを届ける必要があります。

  • 独自性や新規性のある特徴かどうか
  • その特徴が顧客のニーズに適していて魅力的かどうか
  • その特徴をわかりやすく伝えているか

例えば「この製品は日々の〇〇を楽にします」「このサービスを利用することで○○の作業時間が短縮されます」といったように、顧客の生活や感情に寄り添う言葉選びが大切です。さらに、ブランドの世界観や信念を伝えるストーリーも加われば、より記憶に残るマーケティングが実現するでしょう。

参考:「世界一わかりやすいマーケティングの教科書」宮永博史 KADOKAWA/中経出版社

具体的なマーケティング戦略立案

最後に、具体的な施策として「どのチャネルで、どんな手法を使うか」を決定します。これがマーケティング戦略の実行計画です。

例えば、20代の若い女性をターゲットとした商品ならSNSを活用したキャンペーンを中心にする、中高年向けのサービスであれば中高年が集まる場所でイベントを開催してストーリーを印象づける、など決定したターゲットやメッセージに沿って施策を立てることが重要です。

施策の実行に当たっては、予算やスケジュール、効果測定の方法も合わせて検討します。様々な制約がある中で、社内外の関係者を説得し、戦略を実行していくコミュニケーション力と実行力が求められます。

マーケティングの戦略に役立つフレームワーク

マーケティング戦略を考える際には、複雑な情報を整理し、適切な方向性を導くためのフレームワークが有効です。

中でも「3C」「4P」「SWOT」は基本かつ汎用性の高い手法として知られています。

それぞれのフレームワークを使い分けることで、市場の状況や自社の強みを明確にし、具体的な戦略へとつなげることができます。最後に、代表的な3つのフレームワークの特徴と活用ポイントを解説します。

3C

3Cは「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から戦略を立てるフレームワークです。

3C

「Customer(顧客)」視点では、ターゲットとなる顧客層のニーズ、購買行動、市場規模などを分析し、「Competitor(競合)」で競合他社の強みや弱み、「Company(自社)」で自社のブランドや技術力などを総合的に分析します。

バランス良く3つの視点を分析することで、自社あるいはターゲットとする商品・サービスの強みや弱みが抽出でき、効率的なマーケティング戦略立案に役立ちます。

戦略の出発点として、まず取り組むべき手法といえるでしょう。

4P

4Pは「製品(Product)」「価格(Price)」「販売促進(Promotion)」「流通(Place)」の4要素で構成されるフレームワークです。

4P

この4つを組み合わせて商品を市場に届ける戦略を設計します。例えば、高価格の商品には高級感あるプロモーションが必要となるように、4つの要素は互いに影響します。

4Pを活用することで、ターゲット顧客に効果的にアプローチするための戦略を具体的に構築することができます。

SWOT

SWOTは「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字をとった分析手法です。

SWOT

自社の内部環境(強み・弱み)と、外部環境(機会・脅威)を整理することで、現在の状況を多角的に把握できます。

例えば、競合が少ない市場は「機会」となり、技術不足は「弱み」として対策が必要です。環境変化や新しいテクノロジーの発展は、「脅威」となると同時に、新たな「機会」を生み出す可能性があります。

SWOTの4つの要素に分解して分析することで、今まで見落としていたポイントや潜在的なリスクなどを洗い出し、自社の強みやポジションに適したマーケティング戦略を構築できるのです。

「3C」「4P」「SWOT」などのフレームワークはマーケティングだけでなく、経営戦略の立案・策定などにも活用できます。以下のコラムでもフレームワークを解説していますので参考にしてください。

コラム「経営戦略とは?主な種類と分析手法、フレームワークから成功事例まで」はこちら

まとめ|マーケティングは全てのビジネスマンに必要なスキル

マーケティングは、商品やサービスを売るための専門知識だけではなく、全てのビジネスマンにとって必要な基本スキルです。なぜなら、マーケティングの考え方は「相手のニーズを理解し、価値を提供すること」に通じるからです。

営業や商品開発、経営など、あらゆる業務でマーケティングの視点が活かされます。社会や顧客のニーズを見極める分析力、社内外の人を巻き込んで説得するコミュニケーション力と企画実行力などは、ビジネスマンにとって職種・業種を問わず必要なスキルといえるでしょう。

まずはマーケティングの基礎を知ることから始め、実践を重ねる中で「どうすれば相手に価値が伝わるか」を常に考える姿勢を持つことが、ビジネスの成功につながる第一歩となります。

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