プロジェクトマネジメントとは?スコープ管理と必要スキル、代表的な実務手法


複数の部門や専門分野のメンバーが連携して取り組むプロジェクトでは、個人の能力だけでなく、チーム全体を効率的に運営する「プロジェクトマネジメント」が重要です。
プロジェクト管理において最大の成果を生み出すためには、マネジメントスキルの知識習得と実践が欠かせません。
本コラムでは、プロジェクトマネジメントの本質やスコープ管理、必要スキル、具体的手法について詳しく解説します。
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメントは、システム構築やマーケティング戦略などの特定の目的を持つ「プロジェクト」を効率的に管理・運営する手法です。
はじめに、プロジェクトの定義とマネジメントの主な業務内容について解説します。
プロジェクトの定義
プロジェクトとは、「独自の成果物やサービス、成果を生み出すために実施する期限付きの取り組み」と定義されます。通常業務との最大の相違点は、「期限の有無」と「独自性」です。
同一条件で反復される業務や、完了時期が設定されていない業務はプロジェクトの範疇には含まれません。また、独自性や新規性を持つこともプロジェクトの必要条件となります。
プロジェクトマネジメントの実務内容
プロジェクトマネジメントの実務には、中間・最終ゴールの設定、企画・タイムラインの策定、予算やリソースの管理、進行状況の監視などが含まれます。
プロジェクトマネージャーはプロジェクトの責任者としてプロジェクトの進行方法や戦略を立案し、目標達成に向けてチーム全体を導く役割を担います。
プロジェクトマネジメントが必要とされる理由
企業は限られた人材・資金・時間を活用し、最大限の成果を上げなければなりません。そのためには、戦略的な資源配分と効率のよい業務運営が求められます。
また、プロジェクトでは通常、複数の部門や専門領域のメンバーが連携して作業を進めます。どれか1つでも進行が滞ると、他の作業やプロジェクト全体に深刻な影響を与えるため、進行状況の監視が極めて重要です。
プロジェクトマネジメントを導入することで、各メンバーの能力を正確に把握できるようになります。その結果、業務負荷の偏りを解消し、チーム全体の成果を最大化することが可能になります。
プロジェクトマネジメントの主な手順
プロジェクトマネジメントは大きく分けて「プロジェクト構想」「計画・立案」「実施・運営」「リスク管理」「評価・フィードバック」の5つのプロセスに分類されます。
「プロジェクト構想→計画・立案→実施・運営→評価・フィードバック」の流れが一般的です。リスク管理は、全段階を通じて実施されます。
それでは、各プロセスの手順を詳しく見ていきましょう。
(1)プロジェクト構想
プロジェクトの冒頭では、以下の作業から着手します。
- 目的の明確化
- 成果物の特定
- プロジェクトメンバーを含むステークホルダーの特定
- 制約条件の確認
プロジェクト構想の段階でプロジェクトの具体的な成果物を明確に定義し、予算、人員、技術的制約などの条件を洗い出しておくことが大切です。
(2)計画・立案
プロジェクトの目的やメンバーを設定した後、具体的な作業について細かく分解していきます。
- WBS(作業分解図)の作成
- スケジュール(ガントチャート)の策定
- タスクの割り当て
- 作業範囲の決定
- 資源見積もり
- 品質計画の立案
例えば、WBSでタスクを時系列に沿って分解し、それぞれの工程にかかる工数を算出してスケジュールを組み立てていきます。ガントチャートを活用すると各タスクの依存関係や全体の進捗状況を一目で把握することができます。具体的な手法については、後ほど詳しく解説します。
ここで同時に行うのが、各タスクに最適な人材の配置と、設備・予算などの見積もり作業です。この段階での精度がプロジェクト全体の成功を左右するため、慎重かつ綿密な計画立案が求められます。
(3)実施・運営
プロジェクトの実施段階では、次のような業務を行います。
- 進捗管理
- ステークホルダーとのコミュニケーション
- キーパーソンへの情報共有
- メンバーの育成およびモチベーション維持
- 顧客との良好な関係維持
実際のプロジェクト運営では、チームメンバーの成果が期待通りではなく、スケジュールが遅延したり、ステークホルダーとの対立が生じたりなど、当初の計画と現実のズレに直面する状況が頻繁に発生します。プロジェクトマネジャーは各作業の完了時点で、順調に進んでいるかを都度チェックしなければいけません。
予定通り進んでいない場合は、目標設定または作業内容そのものが間違っている可能性があるため、早急にプロセスの見直しを検討する必要があります。
(4)リスク管理
「計画・立案」~「実施・運営」のプロセスでは、各タスクにおけるリスク管理が特に重要になってきます。主なリスクは以下の通りです。
- スケジュールの遅滞
- 人的資源の不足
- コストの増大
こうしたリスクに対し、事前対策だけでなく、発生時の対応計画も準備しておく必要があります。想定されるリスクを列挙して優先順位を決定し、リスク防止のための対策を講じます。さらに、管理体制の整備や管理マニュアルの作成なども行います。
(5)評価・フィードバック
プロジェクトの完了時には、プロジェクト構想の段階で決定した目的や成果が達成されているかを確認するためにフィードバックを実施します。プロジェクト全体の目的達成度や、品質・費用・納期・組織体制などの項目を個別に評価します。
問題が発生した項目に関しては原因分析を行い、今後に向けての対策・改善案を検討することが重要です。また、ステークホルダーへの結果報告も行います。
プロジェクトマネジメントにおけるスコープ管理のポイント
プロジェクトでの作業範囲や成果物を明確にするための取り組みを「スコープ管理」や「スコープマネジメント」といいます。具体的には「何を、どこまで実施するか」の境界線を設定する作業になります。
スコープの種類と特徴
スコープ管理は、作業範囲を設定する際、何に焦点を当てて考えるかによって「プロダクトスコープ(成果物スコープ)」と「プロジェクトスコープ(作業スコープ)」の2種類に分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
【プロダクトスコープとプロジェクトスコープの特徴と比較】
項目 | プロダクトスコープ | プロジェクトスコープ |
---|---|---|
定義の対象 | プロジェクトで作成する成果物の要件を定義 | プロジェクトで実施すべき作業の範囲を定義 |
性質 | 「何を作るか」(ゴール)に焦点を当てた管理 | 「何をするか」(手段)に焦点を当てた管理 |
対象範囲 | 最終成果物や各工程で作成される仕様書・設計書 | 要件定義・基本設計・詳細設計などの作業プロセス |
プロダクトスコープは各工程で作られる中間的な成果物とプロジェクトの最終成果物を管理し、その仕様や要件を規定して管理する手法です。プロジェクトの進み具合を正確に把握し、トラブル発生時の責任範囲を特定しやすくするために行います。
一方、プロジェクトスコープは、プロジェクト全体を見て、必要な作業範囲を明確にする管理手法です。必要な業務を詳細に洗い出し明確化しておくことで、予期せぬトラブルが生じた際もプロジェクトをスムーズに進めることができます。
スコープ管理のポイント
スコープ管理では、プロダクトスコープとプロジェクトスコープの両方を明確に定義することが重要です。
プロジェクトが失敗する要因の1つとして、要件定義や詳細の確認漏れがあります。仕様書や作業一覧などの書類を各自が十分に確認し、関係者間の認識の食い違いを防止することが大切です。
また、プロジェクト進行中は常に最新の情報を把握し、全体に共有しなくてはいけません。計画変更があればスコープも変更する場合があるため、現場が混乱しないよう定期的に情報更新を行いましょう。
プロジェクトマネジメントに必要な9つのスキル
プロジェクトマネージャーには、技術的な知識のみならず、問題解決能力やコミュニケーションスキルなど多面的な能力が求められます。ここでは、プロジェクトマネジメントに必要なスキルの中でも特に重要な9つのスキルについてご紹介します。
(1)計画立案能力
プロジェクトの成功は、プロジェクト開始時の計画の精度に大きく左右されます。
計画立案能力とは、プロジェクトの目標達成に向けて、具体的かつ実行可能な計画を立案するスキルです。プロジェクト全体を管理可能な作業単位まで細分化し、各タスクの依存関係を明確にしていく必要があります。
さらに、過去のプロジェクトデータを参考にして正確な工数見積もりを行い、現実的なスケジュールを策定することが重要です。プロジェクトの重要な節目にはマイルストーンを設定し、進捗状況を定期的に確認できる仕組みを構築します。
想定されるリスクを織り込み、柔軟性を持たせて計画を立てておくと、突発的な変更やトラブルにも対応しやすくなります。
(2)QCDの管理能力
プロジェクトには品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)という3つの制約条件が設定されています。
プロジェクト中は常にQCDのバランス状況をチェックし、問題が発生した際には迅速かつ適切な対応策を講じなくてはいけません。プロジェクトマネージャーには、これらの条件を満たしながら最大の成果を出すことが求められます。
QCDは相互に影響し合うため、1つの要素を改善するには他の要素への影響も考える必要があります。全体のバランスを見極めながら、最適解を見つける判断力も大切です。
(3)分析力
プロジェクト運営では予期しない問題が発生することが多く、その際の状況分析能力がプロジェクトの成否に大きく影響します。複雑に絡み合った課題を整理し、本質的な原因を見極め、効果的な解決方法を見つけ出す論理的思考力が必要です。
プロジェクトマネジメントにおいては、データやチームの動きを分析し、問題の根本原因を特定するスキルが重要になってきます。また、定量データと定性データの両方を活用し、多角的な視点から状況を把握する能力も求められます。
(4)コミュニケーション能力
プロジェクトマネージャーは、顧客やチームメンバーなど、全ての関係者との調整役を担います。そして、顧客には期待される成果を、チームには専門性を発揮できる環境を提供しなくてはいけません。
実際のプロジェクトでは多様な専門分野のメンバーが協働するため、情報伝達のミスや認識のズレが生じないよう、情報を整理・伝達する必要があります。
また、プロジェクト進行中には意見の対立や利害関係の衝突が発生することも少なくありません。こうした問題を事前に察知し、適切な対話で解決に導くため、スムーズな情報交換と信頼関係の構築が不可欠です。
相手の立場や背景を理解し、適切なタイミングで必要な情報を伝えるという技術もプロジェクトマネージャーに必要なスキルの1つだといえるでしょう。
(5)リーダーシップ
プロジェクトでは、チーム全体を統率し、各メンバーのモチベーションを高く維持しながら、設定された目標に向けてチームを導く力が必要です。プロジェクトの状況や局面に応じて適切なリーダーシップスタイルを選択し、全員のパフォーマンスを向上させるための取り組みが求められます。
そのためには、各メンバーの専門性や個性を深く理解して、それぞれの強みを最大限に活かせる役割分担を行う必要があります。
また、プロジェクト進行中に発生する困難な状況や予期しない問題に対しても、冷静な判断力と迅速な決断力を持って対応することが重要です。
(6)チームビルディング
プロジェクトマネジメントには、メンバー同士の関係性を深め、協力して目標に向かうチームを構築する「チームビルディング」が欠かせません。チームビルディングとは、各メンバーが能力を発揮しながら協働し、チームとして付加価値や生産性を高めるために行う取り組みのことをいいます。
チームビルディングの効果を高めるには、チーム全体での目標設定や情報共有、信頼関係を築くための安心できる環境づくりなどがポイントになります。プロジェクトのビジョンや各メンバーの役割を明確にし、オープンな意見交換を促進することで、チーム内のコミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。
コラム「チームビルディングとは?意味・目的・手法と効果を高めるポイント」はこちら
(7)ステークホルダーマネジメント
プロジェクトマネージャーには、関係者の利害を十分に理解し、それぞれの期待値を適切に管理する能力が求められます。
ステークホルダー間で利害が対立した場合には、中立的な立場から各者の意見を聞き取り、プロジェクト全体の利益を最大化するための解決策を見つけ出さなくてはいけません。
プロジェクトの進捗に応じてステークホルダーの関心や影響力は変化するため、定期的な関係の見直しや調整が必須です。
(8)戦略立案能力
戦略立案能力とは、市場環境や競合状況を踏まえ、プロジェクトが組織にもたらす価値を最大化するための戦略を構築するスキルです。市場動向の分析、顧客のニーズや競合他社の動向を正確に把握することが求められます。
さらにプロジェクトにおいて何ができて何ができないのか、何を優先すべきかなどの状況を正確に分析し、将来の方向性をふまえた戦略策定が重要になります。
(9)ビジネス全体を意識した視点
プロジェクトは会社の目標を実現するための手段であり、全体の戦略と合わせて進めることが大切です。プロジェクトマネージャーにはコストや納期の管理だけでなく、会社全体のことを考えながら仕事を進める視点が必要でしょう。
戦略との整合性が取れていないと、優先順位が混乱したり、資源の無駄遣いが生じたり、チーム間の連携がうまくいかなったりする恐れがあります。プロジェクトが会社の戦略とどうつながっているか、その成果が事業全体にどんな影響を与えるかを理解し、それに合わせてプロジェクトを進めていく能力が求められます。
プロジェクトマネジメントのガイドライン「PMBOK」とは
PMBOK(Project Management Body Of Knowledge:ピンボック)は、プロジェクトマネジメントの知識を体系的にまとめた世界標準のガイドラインです。1987年にアメリカのPMI(Project Management Institute)によって発表されたもので、現代のビジネスシーンにおいても様々な場面で広く活用されています。
PMBOKの基本構造
PMBOKは「5つのプロセス」と「10種類のマネジメント法」で構成されています。この2つの要素を組み合わせることで、プロジェクトの開始から終了までを一貫して管理できるようになります。
【5つのプロセス】
段階 | 主な活動内容 |
---|---|
立ち上げ | プロジェクトの承認を得るため、目的・目標や予算、期待される成果を明確に設定する |
計画 | 設定された目標を達成するための詳細な計画を策定し、具体的な作業内容に細分化する |
実行 | 策定された計画に従い、必要な人材や資源を調達し、各作業を実際に推進する |
監視・コントロール | 計画と実際の進行状況を比較検証し、ズレが生じている場合は適切な修正を実施する |
終結 | 全ての工程が完了したことを確認し、プロジェクトを正式に完了させる |
【10種類のマネジメント法】
- 品質管理:成果物の品質基準を設定し、品質保証活動を通じて要求水準を満たす
- コスト管理:予算策定、コスト見積もり、支出の監視・制御を行う
- スケジュール管理:作業の順序付け、所要時間の見積もり、進捗の追跡・調整を実施する
- 統合管理:プロジェクト全体を統合し、各知識エリア間の調整を図る
- スコープ管理:プロジェクトの作業範囲を明確に定義し、範囲の逸脱を防ぐ
- 資源管理:人材や設備などの必要な資源を確保し、効率的に配分する
- コミュニケーション管理:関係者との情報共有を円滑に行う
- リスク管理:潜在的なリスクを特定し、対策を講じて影響を最小化する
- 調達管理:外部からの調達活動を計画・実行・監視する
- ステークホルダー管理:プロジェクト関係者の期待値を管理し、関係性を維持する
PMBOKを活用するメリットと注意点
PMBOKの最大の強みは、業界や業種を問わず、あらゆる種類のプロジェクトに活用できることです。プロジェクトの特性や規模に合わせ、必要な手法だけを選んで組み合わせる「テーラリング」というアプローチが可能なため、大規模なプロジェクトでは包括的に適用し、小規模プロジェクトでは重要な部分に絞って運用できます。
さらに、PMBOKはプロジェクト運営に必要な要素が体系的に整理されており、「やるべきことを見落としていないか」「今何を優先すべきか」などのポイントを確認する際の指針としても役立ちます。
ただし、PMBOKはプロジェクト手法やプロセスに重点を置いているため、チームワークやコミュニケーションといった人的要素については十分にカバーされていません。それゆえ、実際の運用ではPMBOKだけに頼るのではなく、メンバーとの関係構築や動機づけなどのヒューマンスキルも同時に身につけることが重要です。
プロジェクトマネジメントの代表的な6手法
プロジェクトマネジメントには、プロジェクトの特性や規模、業界に応じて様々な手法が存在します。それぞれの手法の特徴やメリット・デメリットを理解し、プロジェクトに最適なものを選択することが重要です。
ここでは、実際の現場で広く活用されている代表的な管理手法を6つご紹介します。
(1)WBS(Work Breakdown Structure)
WBSは、大型プロジェクトを管理可能な単位まで細分化し、階層構造にして整理する技法です。
具体的には、プロジェクト全体をトップに、詳細タスクレベルまで段階的に分解します。これにより、各作業の担当者や実施期間、必要な資源が明確になり、プロジェクト全体を把握しやすくなります。
また、作業の漏れや重複を事前に発見できるため、効率的にプロジェクトの計画・立案ができる点もメリットです。
(2)ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクトの進行状況を時系列でまとめ、視覚的にわかりやすく図表形式で管理するツールです。縦軸を作業項目、横軸を時間軸と設定し、各タスクの実施期間を棒状のバーを使って表現します。
ガントチャートを用いることで、プロジェクト全体の流れや各作業の重複関係が一目で理解でき、進捗状況が把握しやすくなります。
(3)PERT(Program Evaluation and Review Technique)
PERTは、プロジェクトの作業工程をネットワーク形式で図示する分析手法です。各工程をボックスで表現し、矢印によって作業の流れや依存関係を視覚化します。
この手法の最大の特徴は、クリティカルパス(最も時間を要する工程の連続)が特定しやすいことです。プロジェクト全体において遅延が許されない重要な経路が明確になるため、リソース配分や進捗管理などの焦点を絞りやすくなります。
ガントチャートとの違いですが、ガントチャートは個別工程の進捗把握に適しているのに対し、PERTは作業間の相互関係や全体の流れを把握するのに優れています。一般的に、PERTの方は複雑なプロジェクトの計画段階で活用されるケースが多いでしょう。
(4)CCPM(Critical Chain Project Management)
CCPMは、各作業の所要時間や必要予算を最小限で設定し、プロジェクト全体に余力(バッファ)を確保するという考え方の管理アプローチです。この手法は、パーキンソンの法則(与えられた時間を全て使い切ってしまう人間の特性)を考慮したものだといわれています。
具体例を挙げて説明すると、システム開発案件において総作業時間が120時間、同等の作業量が5段階の工程があると想定しましょう。CCPMを用いる場合、総時間を均等に配分して各工程に24時間を振り分けるのではなく、各工程を20時間と設定し、プロジェクト全体として20時間のバッファを持たせます。こうすることで、万が一トラブルが発生した場合も、余裕をもって対処できるようになります。
(5)P2M(Project & Program Management)
P2Mは日本で開発された独自のマネジメント体系で、複数プロジェクトの統合管理に優れた手法です。PMBOKなどの国際標準を基盤としながら、日本の企業文化や産業特性も考慮した内容となっています。
P2Mは「構想」「構築」「運営」の3段階に分けてプロジェクトライフサイクルを管理し、デザイン・計画・実行・調整・成果の5つのプロセス要素によって統合マネジメントを実現します。
従来のプロジェクトマネジメントが「決められた仕様通りに作る」ことに重点を置いているのに対し、P2Mは「何を作れば価値を生み出せるか」を考えることから始める点が特徴です。
(6)PPM(Project Portfolio Management)
PPMは、組織レベルで複数のプロジェクトの最適化を図る管理手法です。限られた経営資源を最大限活用できるように、プロジェクトの選択や優先順位の決定、資源配分を戦略的に実施します。
特に大規模組織や多角的事業を展開する企業で、複数のプロジェクトが同時進行する環境において効果的な手法として広く活用されています。
プロジェクトマネジメントを成功に導くためのポイントと注意点
プロジェクトマネジメントを成功させるには、注意すべきポイントがいくつかあります。
最後に、プロジェクト管理における主な注意点を4つご紹介します。
目標設定とスコープを明確にする
プロジェクトを成功させるために最も重要なのは、目的とゴールを明確に設定し、全メンバーに共有することです。
目標設定が曖昧だと、メンバーが同じ方向を向いて進むことが難しくなり、失敗のリスクが高まります。また、「何をするか」と「何を作るか」を明確に定義し、境界線を設定しておかないと、不必要な業務拡大(スコープクリープ)を引き起こす恐れがあります。
そのため、プロジェクト開始時に作業範囲を文書化し、関係者から承認を得ておくことが重要です。
プロジェクトの途中で範囲の変更が必要になった場合は、他のタスクやリソースへの影響を十分に検討し、慎重に調整を行いましょう。
リソース管理を徹底し、品質を確保する
限られた人材、資金、設備、時間を最大限に活用するには、プロジェクトの目的と範囲を正確に把握し、適切に見積もり、配分することが不可欠です。プロジェクトマネージャーは進行状況を継続的に監視・調整し、遅延やコスト超過を防がなくてはいけません。
また、途中で品質の評価基準がブレないように、プロジェクト開始時の目標設定から最終的な成果物の検証までの評価基準を統一することも重要です。
ステークホルダーとの関係構築に留意する
関係者のニーズや期待を正確に把握し、適切に管理することがプロジェクト成功の鍵となります。ミーティングやアンケートを通じて意見収集を行い、収集した情報をもとに対応状況が適切かどうか定期的に確認しましょう。
ステークホルダーと良好な関係を構築できれば、情報共有が円滑になり協力も得やすくなります。
リスクを十分に考慮して計画を立案する
プロジェクト全体を通して、進行状況を総合的に分析し、想定されるリスクを可能な限り特定しておく必要があります。
特定したリスクに対しては、回避・軽減・転嫁・受容など適切な対策を講じ、プロジェクトの進行に合わせて都度計画を見直しましょう。
予測不能な変化や課題に対応するには、チーム全体でリスク意識を共有すること、計画自体に適度な余裕を持たせておくことが大切です。