内定者フォローの目的と辞退防止・早期戦力化を実現する研修や教育の在り方

published公開日:2017.02.01
2017年新卒採用は学生が企業を深く吟味する時間が少ないまま、内定を獲得してしまう状況が生じやすくなり、結果として、近年で最も内定者の内定辞退が起こる危険が高くなっています。今回は内定者フォローについて、各社が取り組む内定者フォローの事例も交えてご紹介します。

2017年卒学生(大学・大学院生)の就職活動の状況

2017年新卒採用は、経団連加盟企業の選考開始時期が、2016年卒採用の8月から2カ月前倒しの、6月スタートとなりました。その結果、3月の主要採用サイトのオープンから内々定までの期間が最短で3カ月となり、採用活動の短期化が進みました。 また、大学生・大学院生対象の求人倍率は1.7倍超、前年を上回る水準で、学生の売り手市場が続いています。

つまり、本年は学生が企業を深く吟味する時間が少ないまま、内定を獲得してしまう状況が生じやすくなっています。
結果として、近年で最も内定者の内定辞退が起こる危険が高くなっています。

今回は、内定者フォローについて、各社が取り組む内定者フォローの事例も交えてご紹介させていただきます。
まずは内定者フォローの目的について見ていきましょう。

内定者フォローの目的は

貴社では内定者フォローをどう位置付けて行っていらっしゃるでしょうか。多くの企業では以下の2点が内定者フォローの目的として掲げられています。

  • (1)内定者の辞退防止
  • (2)内定者の早期戦力化

上記(1)と(2)は一般的に、内定式を境に目的の比重が変化すると言われています。

内定者フォローの目的は?内定式を境に目的の比重が変化する|人材育成コラム_4

  • ・内定式前:特に、(1) 内定者の辞退防止に重点が置かれる
  • ・内定式後:特に、(2) 内定者の早期戦力化に重点が置かれる

各社が目指す最適な内定者フォロー施策とは、まず (1) 内定者の辞退防止策として、内定式前までに内定者の不安を払拭し、会社の一員になることに対して期待を抱いた状態にさせる施策と、(2) 内定者の早期戦力化施策として内定者教育や内定者への情報提供を適時実施することだと言えます。

それでは(1)(2)について、それぞれ見ていきましょう。
具体的な企業事例もご紹介します。

(1) 内定者の辞退防止施策 -決め手は不安を取り除くこと-

内定者の辞退防止のコツは内定者の心理を正しく把握し、必要な施策を行うことです。
それでは内定者の心理とはどのようなものでしょうか?
一般に、内定者は「社会へ出ることへの不安」を抱えています。

昨今は一人の学生が複数の会社から内定を得る場合も多いと言われます。それでも学生は、応募する全ての企業に対して「御社が第一志望です」と言い切って活動しています。内定を得るために「御社が好きです」「自分は御社で活躍できます」と自分自身に言い聞かせて活動を続けているのです。
そんな多くの学生にとって、本当の意味でその会社で活躍する自分を思い描くタイミングは、実は内定を得てからだと言われます。内定を得た後に「自分が働く会社は、本当にこの会社で大丈夫だろうか?」「自分はこの会社で活躍できるだろうか?」と急に不安になる学生が多いのです。「内定ブルー」を経験する学生が多いのはこのためです。

内定者の辞退防止のためには、具体的に以下のような不安を、会社側が協力して取り除く必要があります。

  • ・社内の人間関係に対する不安(先輩や同期との人間関係)
  • ・業務内容・キャリアに対する不安

具体的な企業事例としては以下のような施策が一般的です。

  • ・既存社員への相談の機会をつくる
  • ・職場見学会を催す
  • ・同期の結びつきを強めるためのSNSの活用や同期会の実施
  • ・人事担当者への相談窓口の設置

内定辞退防止の最後の決め手は、実は実際の業務内容よりも、フォロー期間中に内定者が会社と接する中で頭の中に形成されていく、会社への漠然とした印象です。
就活を終えた学生になぜその会社に決めたのか尋ねると「人事担当者が親身に相談に乗ってくれた」「質問に最も丁寧に答えてくれた」「尊敬できる先輩がいて、一緒に働きたいと思った」などといった答えが聞かれます。施策を実行する際は「誰が」「どのように対応するのか」をしっかりと決める必要があります。内定者に適性検査を実施し、内定者が求める社会人像を体現している既存社員に対応を依頼するなど、フォローを担当する社員がしっかりと応対できるよう配慮する必要があります。

(2) 内定者の早期戦力化 -課題の多寡と目的の共有がポイント-

内定式から入社前までは、内定者の早期戦力化に重点が置かれます。内定式までに内定者の不安を払拭できていると、内定者は安心し、やがて会社の一員となることを期待して待つようになります。また、早くも会社の一員としての自覚を持ち始めます。「今までに学んだことを活かしたい」「いち早く活躍したい」「入社後に役立つことを学びたい」という、自身の活躍や成長への意欲が生まれる時期です。
一方で、内定者にとって内定式後は「残り少ない学生生活期間」に当たります。卒業研究に取り組んだり、旅行や趣味などを満喫したりしようという学生が多いことも事実です。内定者と社会人の意識にはまだまだギャップがあることを踏まえて、内定者の早期戦力化を進めましょう。

内定者の成長への意欲と早期戦力化の両面を叶えるためには、以下の点に注意し施策を実行すると良いでしょう。

内定者の負担にならない適当な分量の課題を与える

→ 多すぎる課題では、会社側の都合で残り少ない学生生活の時間を取られることを負担に感じる可能性があります。逆に、少なすぎる課題では、内定者の不安感を募らせる可能性があります。内定者にとって安心できる分量が理想的です。

「内定辞退させないために縛られている」「放置されている」と感じさせないために、課題の目的や意味をしっかりと伝える

→ 課題は「何のために」行わなければならないかを明確にする必要があります。「早く活躍したい」「入社後に役立つことを学びたい」という成長への意欲に対応していることを直接的に説明できる課題内容が望ましいです。

具体的な企業事例としては以下のような施策が一般的です。

内定者研修会を実施する

→ 適当なタイミングで適当な内容の研修を実施する

e-Learning・通信教育を実施する

→ 内定者のタイミングで学習がすすめ易い。社内開催研修同様、適当な内容を選択する。

社内アルバイトを実施する

→ 早期戦力化のために社内で勤務してもらうということをしっかりと伝達する(人手不足の解消や負担が大きすぎる業務内容は逆効果)。

内定者の早期戦力化のための施策は、会社側の都合だけではなく内定者の成長への欲求を満たすためにも有効な施策です。
一方で「内定者の負担にならない分量で」「内定辞退させないために縛られている」「『放置されている』と感じさせないために課題の目的や意味をしっかりと伝える」必要があるわけですから、ただなんとなく研修や課題を行うことは、逆効果になる可能性もあります。
適切な研修内容を適切なタイミングで実行できる施策をしっかりと検討することが、内定者の早期戦力化と内定者のつなぎとめの鍵となります。

まとめ

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本コラムでは内定者フォローについてお伝えさせていただきました。皆さまの会社に合った内定者フォローを模索していく一助になれば幸いです。