社員研修の中でアウトプットを意識し“知識”を“スキル”に

published公開日:2017.07.18
人事担当者の知りたいに応える「人材育成コラム」。これまで、階層別・テーマ別の社員研修を実施する際のポイントなどをお伝えしてきましたが、今回は社員研修全般に共通する、研修を企画する際に取り入れていただきたい考え方をご紹介します。

他者からの刺激を受け、一体感を醸成する集合型研修

社員研修には、集合型の研修と自習型の研修があることは皆さんもご存知かと思います。以前のコラム では、集合型研修のうち「講師派遣」「公開型」「社内講師」の3つの方法について、それぞれのメリットとデメリットを理解し、自社の計画に沿って活用することの有効性をお伝えしました。今回は、自社で研修を企画することを前提に、集合型と自習型の対比という前回とは異なる視点で社員研修について考えていきます。

社員研修の中でアウトプットを意識し“知識”を“スキル”に。集合型と自習型の対比という視点で社員研修について考えていきます。|人材育成コラム_4

まずは、対象となる社員が会議室などに集まって行われる集合型研修の特徴から見ていきましょう。集合型研修のメリットは、講師に直接質問ができることと、社員同士の交流を図れることです。疑問に思ったことをその場で質問すれば、学習内容を芯から理解し、納得して研修を終えることにつながります。また意見交換を通じて参加者同士が刺激を受け、一体感を醸成できるといった効果も望めます。

一方デメリットとして挙げられるのは、時間と場所の制約が大きいということです。新入社員を対象とした入社時の社員研修は別として、対象となる社員全員が同じ時間・同じ場所にいないといけないというのはビジネス上の負荷が高く、さらに社内に適当な教室がない場合には、外部の会場を用意する必要があります。

教室で行う座学研修のほかに、アクティビティなどを取り入れた合宿もよく実施されている集合型研修の一つです。時間や会場の制約があるだけでなく、費用負担も大きくなってしまいますが、非日常的な場で仲間と一緒に課題に取り組むことで社員同士の交流がより活発となります。職場への帰属意識や一体感の醸成にもつながることから、多くの企業で活用されています。

このように、集合型研修は「貴重な時間・費用を使ってでも、同じ時間・同じ場所に集まって行うに値するだけの濃い内容」にすることが求められますが、「濃い内容」は「講師との直接のやり取り」と「参加者同士の交流」という集合型研修のメリットを追求することで得られます。つまり、参加者がいかに受け身にならず、講師や参加者に積極的に働き掛ける=アウトプットできるかが、集合型研修企画のポイントとなります。

個人のタイミングで知識をインプットできるeラーニング

次に、自習型の研修について見ていきたいと思います。自習型の代表的なものがeラーニングです。eラーニングのメリットは、何と言っても時間と場所の制約を受けないことです。パソコンやスマートフォンなどの受講環境さえ整っていれば、対象者の都合のよいタイミング・ペースで受講してもらうことができ、遠隔地の社員にも本社などで実施するのと同様の研修を提供することが可能です。また、一度コンテンツを作成してしまえば繰り返し利用することができるため、人事側の負担を軽減することもにもつながります。一般的にeラーニングには、設問に回答して進めるものと動画を視聴するものの2つのタイプがありますが、動画は自社ならではのコンテンツを制作することで、社員にとって関連性の高い事例を再現しやすいといったメリットもあります。

一見してeラーニングにはメリットばかりがありそうですが、デメリットがあることも事実です。集合型の研修と違い社員同士の交流がなく、一人で画面に向かって勉強するために受講者のモチベーションを維持しにくいといった面があります。また、強制的に受講させられ、内容的にも興味を持てないような場合や業務に忙殺されている場合には、作業をしながら動画を視聴するなどして大切なポイントを聞き流されてしまう恐れも否定できないため、事後の確認テストなどが欠かせません。

このように、自習型研修の効果を高めるためには「受講者を惹きつけておくだけの魅力的なコンテンツ」や「学んだことを研修後にアウトプットする機会」を用意することが求められます。受講者にとってできるだけ身近な事例を取り上げる、音楽やキャラクター、点数化などゲームの要素を取り入れる(ゲーミフィケーション)といった工夫も、魅力的なコンテンツを作るポイントです。

実践的なスキルを鍛える反転学習の高い効果

以上、集合型研修と自習型研修の特徴を見てきました。もちろん、それぞれの研修を単独で実施することでも多くの学びは得られますが、学習効果をさらに高めるという視点では、集合型と自習型の両方を組み合わせて設計するという選択肢もあります。

その際に有効なのが反転学習の考え方です。皆さんが子どもの頃に受けていた学校教育は、授業で新しい知識を教わり、その教わった内容を宿題などで復習することで定着を図るという講義形式であったと思います。これに対し反転学習は、事前にデジタル教材などを使って自宅で知識の習得を済ませ、教室では学んだ知識の確認やディスカッションなどを行って知識を定着させるというスタイルです。学校教育の現場では、反転学習によって生徒の学習意欲が高まり、ディスカッションを通して考え方の幅が広がったり理解が深まったりと、学習効果の向上が期待されています。

企業の研修でも同じことが言えます。eラーニングであらかじめ知識をインプットした上で、その知識を集合型研修でアウトプットすることで定着させ、実践につなげられるスキルへと変えていく、というように、反転学習を取り入れることで高い学習効果が得られます。また、あらかじめアウトプットを意識して学習することでインプットの質が高まり、受講者が「分かったつもり」の状態にとどまるのを解消することができます。

ここでは、集合型と自習型の組み合わせによる反転学習の効果を紹介しましたが、「集合型研修で明らかになった課題をeラーニングで補完する」「集合型研修の一部をeラーニングに置き換える」といった活用方法もあります。それぞれのメリット・デメリットをしっかりと把握した上で、自社の目的や計画、予算に合わせて社員研修を企画し、研修の効果を最大化させてください。