メンター制度とは?目的と企業成功事例、導入には研修実施も重要

update更新日:2026.06.17 published公開日:2017.08.30
メンター制度とは?目的と企業成功事例、導入には研修実施も重要
目次

メンター制度とは、新入社員や社会人歴の浅い後輩(メンティ)に対して、先輩社員(メンター)が仕事や個人的な悩みなどの相談にのり、助言を与える仕組みです。メンター制度を効果的に活用するには、メンターとメンティのマッチングが大変重要です。

本コラムでは、メンター制度の基本から企業における成功事例、導入やメンタリングのやり方のポイントなどを詳しく解説します。

メンター制度とは?意味と導入目的

はじめに、メンター制度の概要と制度の目的を見ていきましょう。

メンター制度の定義と関連用語の意味

企業におけるメンター制度とは、先輩社員が特定の後輩社員に対して、仕事を中心とした悩みや課題に助言を与え、サポートする制度です。サポートを受ける側を「メンティ(mentee)」、サポートする側を「メンター(mentor)」、メンター制度が想定する種類のサポートを「メンタリング(mentoring)」と呼びます。

【メンター制度の概要】

用語 意味
メンター メンティに対してメンタリングを行う人
メンティ メンターからメンタリングを受ける人
メンタリング 新入社員や社会人歴の浅い後輩に対して、仕事や個人的な問題・悩みに関する相談にのり、助言やサポートを行うこと

厚生労働省は、女性の活躍推進などにおけるメンター制度の重要性に注目してきました。同省の資料には、次のような定義が記載されています。

【厚生労働省によるメンター制度の定義】*

「経験豊かな先輩社員(メンター)が双方向の対話を通じて、後輩社員(メンティ)のキャリア形成上の課題解決や悩みの解消を支援して個人の成長をサポートする」制度

一般的に、メンターを務めるのはメンティとは異なる部署に所属する先輩社員です。直属の上司・先輩以外のメンバーがサポートを行うことから、メンター制度は「斜めからの支援」とも呼ばれます。

メンターには、主に3つの役割が期待されています。

【メンターの主な役割】

  1. ①メンティの業務上の問題について相談に乗り、解決の支援を行う
  2. ②悩みの相談に乗ることで、精神的な安定を支援する
  3. ③メンターが持つ技術・ノウハウ・マインドを継承して育成を図る

メンター制度はメンティの成長を支援する仕組みですが、メンターが自らの役割を果たすには、メンター自身も成長しなければなりません。

*出典:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)p.5

メンター制度の導入目的と必要性

メンターやメンティの中には、定期的な面談に出席しなければならず、煩わしく感じる人もいるようです。「メンター制度なんていらない」と不満を訴える人もいるでしょう。なぜ、メンター制度の導入が注目されているのでしょうか。

理由の1つは、人手不足と人材の流動化です。働き方の多様化やワークライフバランスの充実、そして人手不足による求人倍率の上昇などを背景に、転職がキャリア形成の選択肢として当たり前になりました。せっかく採用した社員が3年以内に離職してしまう事態に頭を抱える企業も珍しくありません。

「どうすれば、社員がこの会社で働き続けられるのか」

こうした問題への対策として注目されるのが、メンター制度です。メンバーの業務スキル向上と職場の人間関係構築や問題・悩み解決のサポートを行い、職場定着を促したいという目的があります。

実際、メンター制度を運用する企業は、以下のような目的で導入を決めていました。

【メンター制度の導入目的 TOP5】*

順位 目的 割合
1位 キャリアや仕事に関する不安や悩みの解消 84.9%
2位 モチベーション向上の支援 79.2%
3位 知識・スキル獲得の支援 66.0%
4位 仕事と育児の両立に関する不安や悩みの解消 62.3%
4位 定着率の向上 62.3%

これらの項目は、メンター制度の効果としても上位にランクインしています。メンバーの職場定着と業務スキル向上は、安定した事業活動には欠かせない要素です。

*出典:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)p.6

メンター制度とOJT、エルダー制度、ブラザーシスター制度の違い

新入社員や若手社員の育成手法には、メンター制度のほかに「OJT」や「エルダー制度」、「ブラザーシスター制度」もあります。これらの違いは、育成対象者や指導者の範囲、支援内容の範囲などにあります。

メンター制度とOJTの違い

OJT(On-the-Job Training)とは、簡単に言えば、直属の上司・先輩社員が業務上の指導を行うことです。指導内容は配属部署での業務に関する内容であり、具体的な業務の進め方や仕事への向き合い方などが含まれます。育成対象者のプライベートな悩みに対する助言は含まれません。

メンター制度との大きな違いは、指導・助言を行うことです。OJTでは直属の上司・先輩が務める一方、メンター制度では他部署の先輩が務めます。メンター制度における相談内容もOJTとは異なり、現場の業務についての具体的な進め方や指導は含まれません。

【OJTとメンター制度の違い】

指導・助言役 支援内容
OJT 直属の上司・先輩
  • 現場の業務についての知識・スキル
  • 具体的な業務の進め方
  • 仕事への向き合い方
  • 自部署での振る舞い方など
メンター制度 他部署の先輩
  • 仕事への向き合い方
  • 人間関係などの個人的な悩み・不安
  • 仕事とプライベートの両立
  • 今後のキャリアなど

メンター制度では、異なる職場の先輩が相談役となるため、メンティの職場に関する困りごとも相談しやすく、より広い視野で問題を捉えるきっかけをつくることができます。

OJTについては以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

コラム「OJTとは?意味・目的・メリット、“放置”を防ぐ進め方のポイント」はこちら

メンター制度とエルダー制度の違い

エルダー制度とは、先輩社員が指導役となって新入社員のスキルアップを支援する手法です。

所属が異なる先輩社員が指導役となる点では、エルダー制度とメンター制度は似ています。しかし、エルダー制度の目的は業務に必要なスキルの向上であり、育成対象者は原則として新入社員・若手社員に限定される点がメンター制度と異なります。

【エルダー制度とメンター制度の違い】

指導・助言役 支援内容
エルダー制度 他部署の先輩
  • 業務についての知識・スキル
  • 具体的な業務の進め方
  • 仕事への向き合い方など
メンター制度 他部署の先輩
  • 仕事への向き合い方
  • 人間関係などの個人的な悩み・不安
  • 仕事とプライベートの両立
  • 今後のキャリアなど

メンター制度では、新入社員や若手社員を対象とするケースも多く見られますが、必ずしもそれに限定されるわけではありません。例えば、女性の管理職登用を目的にメンター制度を導入する場合、次期管理職候補である女性社員をメンティとします。

メンター制度とブラザーシスター制度の違い

ブラザーシスター制度とは、主に新入社員向けに実施される育成の仕組みです。新入社員を同じ部門の先輩社員が支援します。

メンター制度との共通点は、育成対象者の精神面の支援を先輩社員が行うこと。メンター制度との違いは、育成対象者の範囲や助言・相談役の対象者の範囲です。

【ブラザーシスター制度とメンター制度の違い】

育成対象者 指導・助言役
ブラザーシスター制度 新入社員 同じ職場の先輩
メンター制度 新入社員〜管理職(目的に応じて異なる) 他部署の先輩

メンター制度の場合、

  • メンティよりも勤続年数が長い
  • メンティよりも上の職位

といった条件で選定されることはありますが、メンティとの年齢の近さは必ずしも前提されません。一方で、ブラザーシスター制度は、その名の通り“きょうだい”のような関係性の構築を仕組みの前提としています。

メンター制度はいらない?メリット・デメリット

人材の成長を目的に注目されるメンター制度ですが、「メンター制度なんていらない」という声も聞かれます。メンターの存在を煩わしく感じたり、メンティとの面談に割く時間を“コスト”としか捉えられなかったりする状況では、こうした感想が出てくるのも無理はありません。

メンター制度を上手に活用するためにも、導入によるメリットとデメリットを確認しておきましょう。

メンター制度の3つのメリット

メンター制度のメリットは、主に以下の3つです。

【メンター制度のメリット】

  1. ①メンティのモチベーションが高まる
  2. ②メンターが自分を成長させられる
  3. ③離職防止につながる

1つずつ解説します。

①メンティのモチベーションが高まる

メンター制度は、先輩社員から仕事に対する姿勢やマインド、社内での立ち居振る舞いなどを学べる仕組みです。これには、マニュアルだけではわからない「誰がどんな情報を持っているか」という社内の暗黙知も含まれます。

まだ十分に会社のことを知らず、人間関係も限られている新入社員・若手社員にとって、こうした知識や考え方を質問できる相手がいることは、大変重要です。職場の人間関係や人事評価と直接つながりのない先輩社員なら、不安や悩みを1人で抱え込む前に安心して相談できるでしょう。

中堅社員・管理職にとっても、マネージャーになるための視点転換には、相談できる人物の存在が欠かせません。他部署の上位職がメンターにつくことで、より広い視野で管理職の役割や求められるスキルを理解できます。キャリア形成に必要なポイントも教えてもらえるでしょう。

こうした相談しやすい環境と成長を支援する仕組みは、メンティの成長およびキャリア形成のモチベーション向上を促します。

②メンターが自分を成長させられる

メンター制度によって成長を促進されるのは、メンティだけではありません。ドラッカーが「人は自ら教えるときに最もよく学ぶ」と述べる通り、メンティへの助言・指導を通じて、メンター自身も業務レベルを高めたり、組織に対する理解を深めたりできるからです。メンティから相談されることで新たな気づきを得る機会もあるでしょう。

具体的に伸ばせるスキルには、例えば

  • メンティが理解しやすいよう伝えるコミュニケーション力(傾聴力・言語化力・説明力など)
  • マネジメント能力に必要な基礎力(目標設定と達成に向けた取り組み、メンタルケア、キャリア支援のスキル)

などがあります。

③離職防止につながる

メンター制度の導入により、メンティは相談しやすい体制の中で成長できるようになります。メンターとの関係性から、“組織の一員”としての実感も得られるでしょう。ひいては社内での部署横断的な人間関係構築が進み、帰属意識を高めることも期待できます。

「この会社に貢献したい」「この会社で成長したい」という社員の気持ちも高まり、離職率低下につなげられるでしょう。

メンター制度の2つのデメリット

反対に、メンター制度の導入で注意すべきデメリットは2つあります。

【メンター制度のデメリット】

  1. ①マッチングに失敗するとトラブルになる
  2. ②メンターとなる社員の負担が増える

順番に見ていきましょう。

①マッチングに失敗するとトラブルになる

メンター制度で最も注意すべき点は、メンターとメンティのマッチングです。

例えば、メンティのキャリア志向と異なるメンターの場合、メンティの考え方が一方的に否定されてしまい、「この会社では望むキャリアの実現が難しい」と感じて仕事への意欲を失ってしまうかもしれません。

メンティが相談したい内容について、メンティに経験や知見がない場合も、不正確な情報や不適切なアドバイスでトラブルに発展する可能性があります。

こうした事態を回避するには、メンター制度の目的に応じたメンティとメンターの選定、および両者の知識・スキルの状況をふまえたマッチングが重要です。

②メンターとなる社員の負担が増える

メンター制度は会社が人材育成のために導入する仕組みであるため、原則として業務時間内にメンタリングを行います。これは、メンター・メンティともに、業務に使える時間が減ることを意味します。

特にメンターにとっては、それまでの日々の業務に加えてメンティとの面談が入ることになり、業務量を調整しなければなりません。メンターの上司がこれを考慮しなければ、メンターの残業時間の増加や短い時間での業務遂行などを招き、大きな負担をかけることになってしまいます。

同時に、メンティの不安や悩みを共有するため、メンターはストレスを感じたり、「解決に役立つアドバイスをしなければ」とプレッシャーを感じたりするでしょう。

メンターの負担を軽減するには、組織としてメンターを支援する体制が欠かせません。メンタリングの具体的なノウハウを伝えるだけでなく、上司による業務量の調整、相談窓口の設置を行い、メンターだけでは対応できない事案については人事部やメンター・メンティの直属の上司が介入する仕組みを整えましょう。

メンター制度導入企業の成功事例

デメリットを最小化しメリットを引き出すには、実際にメンター制度の活用に成功した企業の取り組みが参考になります。今回は、情報通信業と製造業の企業事例をご紹介します。

情報通信業におけるメンター制度の導入事例

ある情報通信業の企業では、離職率の高さやメンタル不調といった課題を解決するため、社員の就労継続を目的にメンター制度を導入しました。メンティは全ての新入社員、メンターはキャリアコンサルタントの資格を持つ2名の社員(男女1名ずつ)です。

導入の準備段階で行ったのは、

  • メンター制度の内容の社内周知
  • メンター用資料の作成と認識の擦り合わせ

などです。メンタリング期間は1年以上で、同性のメンティを担当するものとしました。

メンタリングの具体的な内容は、以下のようになっています。

【メンタリングの内容】

  • プログラミング未経験の新入社員が抱える不安・悩みの受け止め
  • 自信をつけられない社員に対する声かけと上長との連携
  • 人間関係の悩みや将来の希望などに関する対話

メンター制度の導入により、同社における若手社員の離職率は低下。出産を機に離職する女性社員も減少したとのことです。メンターにしっかり話を聴いてもらったり、応援してもらったりすることが、新入社員・若手社員の意欲を高めていました。

参考:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)pp.70-71

製造業におけるメンター制度の導入事例

製造業の事例では、女性の管理職の比率を高めるためにメンター制度が活用されました。それまでも短時間勤務制度やフレックスタイム制、テレワーク推進などに取り組んできましたが、女性管理職の割合が10%を超えない状況でした。そこで、女性従業員を対象とする育成プログラムの一環として、メンター制度を導入しています。

メンティは課長・部長級の女性従業員、メンターは異なる組織に属する上位の役職者です。課長級は手挙げ制、部長級は人事部の声かけによりメンティを決定しました。

導入の準備段階で行ったのは、

  • メンター用ガイドブックとチェックリストの作成
  • メンティに対する事前アセスメント(強み・弱みの確認)

などです。

メンタリングは最低4回、2名のメンターによって行われます。メンタリング内容では、以下の例が紹介されました。

【メンタリングの内容】

  • 部下のマネジメントに関するアドバイス
  • メンティ自身の成長やセルフケアに関するアドバイス

メンター制度を活用した育成の結果、ライン責任者の女性比率は10%超に上昇。昇進や異動といったキャリア開発にもつながっているとのことです。

参考:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)pp.56-57

メンター制度で何をする?導入方法・やり方のポイント

メンター制度におけるメンター・メンティの在り方について、「これが正解」というものはありません。企業や組織の状況によって、具体的な導入・運用のやり方が異なるからです。

ただし、共通しておさえておきたいポイントはいくつかあります。導入から運用へのプロセスごとに見ていきましょう。

メンター制度導入の前に必要性・目的・役割を明確にする

メンター制度の最大の目的は、人材の育成環境を整えること。そのうえで、具体的な目的を自社の課題に応じて明確にすることが、メンター制度の成功に欠かせません。例えば、下表のように考えてみてください。

【自社の課題とメンター制度の導入目的の例】

課題 メンター制度の導入目的
若手社員の離職率が高い 若手社員の悩み解決や精神的支援を行い、離職率を下げる
若手社員のキャリア意識が低い 若手社員に対して、キャリア形成と昇格に向けた動機付けを行う
育児を理由に離職する社員が多い 育児中の社員に対して、育児と仕事の両立に向けた支援を行う

経営層だけで目的を定めるのではなく、現場の社員にヒアリングを行うことが重要です。

メンター制度導入の目的を定めたら、メンターに求める役割も明確にしましょう。特に、

  • 精神的な支援だけを行うのか
  • 業務上の問題解決の支援まで行うのか

という点は、必ず決めておいてください。

メンター制度の失敗事例として見られるのは、「あの子の面倒を見てあげてほしい」という大雑把なアサインです。メンターの役割が曖昧であるため、「具体的に何をすればいいのか、わからない」「ただなんとなく話を聴いて終わり」という運用になりかねません。

既にメンター制度を導入している職場なら、メンターやメンティの意見を聞き、目的に沿った運用になっているかを再確認しましょう。

運用ルール・対象者の検討と決定

メンター制度の運用ルールを定める段階では、目的をふまえた目標を設定し、メンター制度の推進・サポートチームを設置しましょう。サポートチームを中心に情報提供や具体的な体制の構築を進め、メンター・メンティ向けの研修・セミナーを実施します。

メンター制度の運用における必須ルールには、以下の4つがあります。

【メンター制度運用の必須ルール】

  • メンタリングで話し合った内容を口外しない(守秘義務)
  • メンタリングにおけるトラブル・困り事は放置せず、相談する(相談窓口の設置・利用)
  • 原則として、メンタリングは就業時間内に実施する(業務の一部としてのメンタリング)
  • 原則として、メンタリングはメンターとメンティの1対1で行う

自社の状況に応じて定めるルールとしては、メンタリング期間や面談の頻度、時間、面談方法などがあります。

【メンター制度運用で状況に応じて設定するルール】

  • メンタリング期間(1年程度が一般的)
  • 面談の頻度(週1回〜月1回)
  • 面談時間(1回当たり30分〜2時間程度)
  • 面談方法(「初期は対面、その後はオンライン」など)
  • メンティの状態を部門責任者や人事部へ報告・共有する方法(定期報告書の活用など)
  • メンター同士、メンティ同士の交流会(意見交換、課題の共有、運用における改善事項のヒアリングなど)

メンターが対応できない状況の発生に備え、組織としてサポートする体制や手順も定めておきましょう。メンター制度が適切に運用されているかどうかをチェックする時期も事前に定めておくと、大きなトラブルを防げます。

メンティとなる対象者は、多くの場合、新入社員や若手社員です。ただ、成功事例でも見たように、目的によっては管理職がメンティとなることもあります。メンターの選定は、メンティよりも経験やスキルが優れていること、管理職がメンティとなる場合は他部署の上位職から選ぶことがポイントです。

メンターとメンティのマッチング

メンター制度の核ともいえるメンター・メンティのマッチングでは、それぞれの業務経験やスキル、キャリア志向、コミュニケーション力などを考慮する必要があります。

特にキャリアについては、メンティにとって参考となる経歴や考え方を持つメンターを組み合わせなければなりません。可能であれば、リーダーやマネジメント経験のあるメンターをつけましょう。

厚生労働省の資料では、以下の4項目をマッチングのポイントに挙げています。

【メンター・メンティのマッチングにおけるポイント】*

  • メンティのキャリア志向にメンターの経歴が合うか
  • メンティの期待とメンターの特性が合うか
  • メンティ、メンターが直属ライン以外か
  • メンティの能力開発ポイントを補強できるメンターか

なお、「人材育成の一環だから」という理由で、人事部のメンバーをメンターとすることは好ましくありません。「こんなことを言ったら、人事評価が悪くなるのでは」という不安をメンティに与えてしまうからです。安心して相談できる仕組みを実現するためにも、メンティの人事評価に携わらないメンバーをメンターに選びましょう。

*参考:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)p.22

メンターおよびメンティへの研修・セミナー実施

メンター制度の効果的な運用には、メンター・メンティによる目的の理解が重要です。そこで実施したいのが、メンター・メンティを対象とする研修・セミナーです。

メンタリング実施前に研修・セミナーを行うことで、お互いの役割や期待を理解することができ、混乱を防げるでしょう。メンタリングに必要なスキルの習得も支援できます。

メンター・メンティの双方に対して研修・セミナーで伝えたい内容は、

  • メンター制度の目的
  • メンター制度で想定している助言の範囲
  • メンター制度の運用ルールや進め方

といった項目です。

メンター制度の進め方に関しては、3つの段階を意識するとよいでしょう。

【メンタリングの3段階】*

概要 内容の例
第1段階
  • メンタリングの目的を理解する
  • お互いを知る
  • 自己紹介
  • メンタリング期間の目標設定
  • お互いの仕事観
第2段階
  • 信頼関係を深める
  • 目標達成に向けて、メンターがメンティを支援する
  • 自己啓発の進め方
  • 仕事で困っていること
  • 人間関係の構築方法
  • ワークライフバランス
  • 今後のキャリア
第3段階
  • メンティの自律に向けて、これまでの内容を振り返る
  • メンティの今後のキャリア
  • ライフイベントへの対応方法
  • 組織・会社への提言

メンターを対象とする研修・セミナーでは、メンタリングに関する知識・スキルの習得支援やマインド醸成を行います。

【メンターを対象とする研修・セミナーの内容】

  • 会社がメンターに期待する役割
  • 自社における人材育成の方向性(基本方針・人材要件・人事評価項目)
  • 傾聴をベースとするコミュニケーションスキル
  • 課題解決へ導くコーチングスキル
  • 守秘義務の意識付けと高い倫理観の獲得

繰り返しになりますが、メンティが安心して相談できる環境づくりがメンター制度の成功には不可欠です。メンターは常にメンティのプライバシーに配慮し、機微な情報を共有する必要がある場合には、事前にメンティの許可を得るよう、しっかりと研修・セミナーで伝えましょう。

*参考:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)p.26

メンター制度の運用状況の確認・改善

メンター制度の運用を開始したあとは、導入目的に沿った運用が行われているかを定期的にチェックしてください。チェック方法には、メンター・メンティへのヒアリングや報告書の回収といったやり方があります。

【メンター制度運用状況の確認方法】

手法 調査・報告する項目の例
メンター・メンティへのヒアリング
  • 現在の状況
  • 困っていること
  • 改善するほうがよいと思われることなど
面談時の報告書・面談ワークシートの回収
  • メンタリングの回数・日時・場所
  • メンター・メンティそれぞれの所属・氏名
  • メンタリングの目的・目標
  • 前回からの取り組み(メンティが記入)
  • 今回相談したいこと(メンティが記入)
  • 今回の面談での気づき
  • 次回までの行動計画・目標
  • 次回メンタリング実施予定日

運用状況に問題が見られるなら、運用方法の修正やメンター・メンティの組み合わせの変更といった改善が必要かもしれません。メンターに過重な負担がかかっている場合は、業務量の調整や周囲によるサポートを行いましょう。メンティの上司や先輩、人事担当者が支援に入ることも選択肢の1つです。

参考:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)p.27

メンタリング期間終了後の振り返り・改善

最後に、メンタリング期間が終了したあとに全体的な評価と振り返りを行いましょう。これには、メンター・メンティへのヒアリングのほかに、関係者が出席する合同報告会を開催するというやり方があります。

【メンタリング期間全体の振り返りのポイント】

手法 振り返り内容の例
メンター・メンティへのヒアリング
  • 総合的な満足度
  • 良かった点(成長したこと・気づいたこと・影響など)
  • 困ったこと
  • 改善すべき点など
合同報告会
  • 仕事に関する気づき
  • 意識の変化
  • 今後の取り組みなど

合同報告会には、メンター・メンティのほかに人事担当者や経営層も出席すると、自社におけるメンター制度の効果や課題を実感することができます。課題に対しては、運用ルールの見直し、メンターに必要なノウハウ集の作成、ケーススタディの整理などを行うとよいでしょう。

参考:「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」(厚生労働省)pp.32-33

メンター制度の成功はメンターの役割認識とスキルが鍵

メンター制度を成功させるには、メンター・メンティが目的と役割をしっかりと理解し、ルールに従って運用することが重要です。メンターが安心して相談できる体制でなければ、メンタリングの意義が薄れてしまいます。メンターが守秘義務を守り、メンティと対話しながらアドバイスできるようにするためにも、メンター候補者のコミュニケーションスキル向上を支援しましょう。

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