心理的安全性がもたらすメリットとは?安心できる職場環境の作り方を紹介

update更新日:2023.10.18 published公開日:2023.03.27
目次
近年、多くの企業が関心を寄せ、企業の業績アップに欠かせないといわれている「心理的安全性」とは「誰もが安心して発言・行動できる環境」のことを指します。誰もが安心して発言・行動できる環境は、なぜそこまで重要視されているのでしょうか。本コラムでは、心理的安全性が職場にもたらすメリットを紹介します。職場環境の改善を検討している経営者・人事担当の皆さまは、ぜひ参考にしてみてください。

心理的安全性とは

心理的安全性とは、ビジネスの現場において誰もが安心して発言・行動できる職場環境のことです。「何でも言い合えるチームの中で、自分らしく働いている状態」ともいえます。

心理的安全性は1999年に、アメリカ・ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって提唱された概念です。心理的安全性のことを英語では「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」と表記します。

心理的安全性が高い職場は質問やアイデアを受け入れてもらいやすく、立場を問わず自由な発言が可能です。職場の心理的安全性を高めることで、生産性の向上や革新的なアイデアの創出につながるとされています。

心理的安全性が注目されている背景

心理的安全性が注目されている背景には米Google社の存在があります。米Google社では2012年~2015年までの4年間をかけて、生産性向上を目的とした「プロジェクト アリストテレス」を実施しました。

このプロジェクトでは社内の数百チームを分析対象として、生産性の高さという観点からチームごとの働き方を調査。その結果、メンバーの能力や働き方は生産性に影響しないことがわかりました。生産性に影響を与えていた要素は「メンバーへの気遣いや、安心して発言できる環境」だったのです。

米Google社の研究結果が2016年に発表されたことで、心理的安全性が注目されるようになりました。特に新規プロジェクトの立ち上げ時に、心理的安全性が高いほど建設的な議論ができると期待されています。

心理的安全性がチームにもたらす4つのメリット

心理的安全性が高い職場は、チームにとってポジティブな効果をもたらします。また、チームだけでなく、結果的には企業の業績向上にもつながるでしょう。ここでは、心理的安全性がチームにもたらす4つのメリットをそれぞれ解説します。

チームの生産性が向上する

心理的安全性が高い職場は、従業員が安心して仕事に取り組める環境です。チームのメンバーは過度なストレスがかからず、仕事に対してやりがいを見いだしやすくなります。また、チーム全体が仕事に夢中になることでそれぞれのパフォーマンスを高めることもできます。個人のパフォーマンスが高まれば、チームが目標を達成するまでのスピードアップも可能です。心理的安全性を高めて従業員が働きやすい環境を整えることで、企業の業績にも良い影響を与えてくれます。

情報共有・報連相が活発になる

職歴や立場にかかわらず発言しやすい環境のため、チームメンバーは不安を感じずに情報の共有や報連相が行えます。どんなに些細なことでも自由に発言できるため、個人の意見やアイデアが集まりやすくなるでしょう。また、個人間のコミュニケーションが活発になることで、チーム内での情報交換もスムーズになります。失敗などのネガティブな情報も伝わりやすく、ミスの早期発見・早期対応が可能です。

このように心理的安全性が高い職場では情報共有・報連相がスムーズになり、チーム全体で仕事が円滑に進むようになります。さらに、新しい知識の共有も盛んになり、学習促進にもなるでしょう。

メンバーが責任感を持って働くようになる

チームメンバーが責任感を持って働くようになるのも、心理的安全性が高い職場のメリットです。心理的安全性が高いと個人間のコミュニケーションが活性化しているため、チーム内で議論を重ねて同じ目標を共有しやすくなります。また、仕事にやりがいを感じることで、主体的になり一人ひとりに責任感が生まれるでしょう。責任感を持って働くようになれば、新しいことや困難なことにも前向きなマインドで取り組めるようになります。

離職率が下がる

多くの企業にとって離職率をいかに下げるかは重要な課題です。

従業員にとって心理的安全性が高い職場は、過度なストレスを受けることなく仕事に取り組める環境です。仕事へのやりがいを感じやすくなるため、心理的安全性が高いほど離職率が低くなるといわれています。「この会社で長く働き続けたい」と感じてもらうことで、エンゲージメントも高まり、優秀な人材が外部に流出してしまうのも防げるでしょう。

心理的安全性が低いとどうなるのか

心理的安全性が低い職場では以下3つの不安が起こるといわれています。

  • ・無知・無能だと思われる不安
  • ・邪魔をしていると思われる不安
  • ・ネガティブだと思われる不安

これらの不安を抱え続けると従業員は自由な発言ができず、生産性の低下や離職を招きかねません。これらの不安があることで、どういったデメリットがあるか解説します。

能力を発揮できる環境ではないので生産性が上がらない

心理的安全性が低い環境では先輩や上司に質問した際に、「こんなことも知らないのか」と言われるのではと不安になってしまいます。相手から無知だと思われるのは、誰にとっても避けたいことです。

無知だと思われたくない気持ちから、業務内容に関する質問でさえ気軽にできなくなってしまいます。また、ミスをした際には「こんなこともできないのか」と非難されるのではないかと萎縮してしまうでしょう。

このように心理的安全性が低い職場には、無知・無能だと思われる不安がはびこっており、萎縮することにより本来の能力を発揮できなくなります。そうなると、自分ができる範囲の仕事しかしなくなり、組織として生産性が向上しにくくなります。

意見や指摘がされずミスの隠蔽が起きる

自分の発言がチームの邪魔をしていないかと不安を抱えてしまうのも、心理的安全性が低い状態によるデメリットです。例えば、チームのミーティング中、自分の発言により議題からズレてしまうこともあります。そのようなときに「議論の邪魔だ」と思われていないか心配してしまうのです。そのような不安を抱えていると、発言や提案の機会を自分から避けるようになります。また、チームメンバーがミスをした際にも、指摘や意見ができない状態に陥るでしょう。

このような意見や指摘がない職場では、ミスの隠蔽が起きる可能性が高まります。気付いたときには、取り返しがつかない重大なインシデントが発生しているかもしれないので、注意が必要です。

不満や不安をため込んだまま離職してしまう

心理的安全性が低い職場では、不満や不安をため込んだまま離職してしまうケースが少なくありません。

意見や指摘をしにくい環境であるため、周りのやり方がおかしいと思っていてもなかなか発言できません。そのまま何も言わずに我慢できる人もいますが、違和感により息苦しさを感じ続けると離職を選択してしまう人もいるでしょう。

また、邪魔だ・ネガティブだと思われたくない気持ちから誰も指摘しないため、職場環境の改善も進みません。見切りをつけた人から退職してしまうので、人材が定着しない職場となってしまいます。

心理的安全性が高いチームの作り方

心理的安全性が高いチームを作るには、メンバーが抱える不安を解消することが必要です。メンバー同士が信頼し合い、コミュニケーションを深めるには、まず上司が主体的になって行動で示さなければなりません。

ここでは心理的安全性が高いチームの作り方を紹介します。

相手に理解者であることを示す

心理的安全性が高いチームを作るには、上司が部下の理解者であることを示す必要があります。そのためには、メンバーそれぞれの意見を尊重して話を聞いてみてください。

話を聞いているようであっても、表情や仕草に否定的な反応が出てしまえば相手に不安を与えます。相手の目を見ながら時にはうなずくなどして、話の内容を理解していると行動で伝えましょう。

また、部下のミスに対して責めるような発言をしてはいけません。「ミスが再発しないように対策を考えよう」など、前向きな姿勢を示すことが重要です。

コミュニケーションを増やす

信頼関係の構築には、チーム内のコミュニケーションを増やすことが大切です。例えば、チームでランチタイムを共有したり、週に1度のショートミーティングを設定したりしてみましょう。

また、職場以外の場所でチームの交流を持つことも有効です。近年は感染症対策として、なかなか積極的な職場外交流が難しい状況ではありますが、食事会が実施できるようであれば、そうした機会を持つことも有効でしょう。オンライン飲み会なども近年のコミュニケーション方法としてはよいかもしれません。

気をつけたいのは、仕事とプライベートをハッキリと分けるタイプの部下です。無理に仕事終わりの食事や飲み会などに誘うと逆効果になるので、その場合は、業務時間内にできる対応をしましょう。

従業員の多様性に気を配る

従業員が意見しやすい環境を作るには、多様性を認めて邪魔をしていると思われる不安を解消しなければなりません。働く理由1つをとっても、従業員一人ひとり異なります。しかし、トップダウン的に目的を押し付ける形になれば、受け入れられない部下はやる気をなくしてしまうでしょう。

また、この多様性には価値観だけでなくジェンダーや人種、国籍なども含まれます。グローバル化が進んだことで、中小企業でも外国人を人材として受け入れる機会が少なくありません。国籍に関係なくコミュニケーションを取れるような職場を目指しましょう。

自身が主体的に行動して示す

何より部下をまとめる立場である上司が、主体的に行動してチーム内の人間関係構築を進めましょう。なぜなら、チーム内でコミュニケーションを深める際に、上司と部下の信頼関係が欠かせないからです。

部下から上司には話しかけにくいので、まずは上司から積極的なコミュニケーションを心がけるとよいでしょう。上司が主体的に行動していれば、「この人はちゃんと行動してくれるんだ」と部下を安心させられます。

まずは自分が率先して行動すること

心理的安全性を高めることは、チームの生産性を向上するうえで欠かせない要素です。立場を問わずに意見を言いやすくなるため、チーム内の情報共有や報連相が円滑になります。

しかし、心理的安全性が低い職場では従業員が不安を抱えてしまい、本来の力を発揮して業務を遂行できません。不安を抱えたままの従業員は離職する可能性もあり、人材の流出にもつながります。

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