メタ認知とは?ビジネスでの重要性とトレーニング方法

update更新日:2025.06.26 published公開日:2024.08.05
メタ認知とは?ビジネスでの重要性とトレーニング方法
目次

メタ認知とは、自分の認知活動を客観的に把握し、コントロールする能力を指します。ビジネスにおいて、自己成長を支える重要なスキルです。

本コラムでは、メタ認知の基本概念とビジネスにおける重要性、メタ認知能力が高い人の特徴やトレーニング方法などについて解説します。

メタ認知とは

メタ認知は、学習や記憶の向上、仕事の効率化、自己成長などを支える重要なスキルです。最初に、メタ認知とは何か、そしてビジネスにおけるメタ認知の重要性について解説します。

メタ認知とは

メタ認知の「メタ」とは「高次の」という意味です。メタ認知とは、自分の認知活動(知覚、記憶、学習、言語、思考など)を高次の視点から捉え、必要に応じて調整することを指します。

例えば、重要な打ち合わせの最中に、「うまく話せているか」「相手に正しく伝わっているか」と自問自答しながら進め、必要に応じて話し方を変えることは、メタ認知の1つです。このように「もう一人の自分」の視点から自身を客観的に認知し、冷静に判断して行動することが、メタ認知なのです。

メタ認知の歴史

メタ認知の考え方は、さかのぼると古代ギリシャの哲学者ソクラテスの「無知の知」に通じます。「自分が何も知らないことを知っている」という自分の知識や思考を客観的に捉える概念は、メタ認知の原型といえます。

現在のメタ認知の概念は、アメリカの心理学者であるジョン・H・フラベル氏によって提唱されました。メタ認知を行うことで、自分自身をコントロールし、冷静な判断や行動が可能になると考えられています。

メタ認知は1970年代から研究が進み、当時の心理学や教育学の分野において広く知られました。その後、学習能力の向上において重要な要素と位置づけられるようになりました。日本でも、2020年度に小学校の学習指導要領に記載されるなど、学習や計画、主体性などの分野において重視されています。

参照:文部科学省「新しい学習指導要領等が目指す姿」

メタ認知のビジネスにおける重要性

近年、ビジネス分野においても、メタ認知の重要性が認識されるようになりました。変化の激しいビジネス環境において、自分の行動が正しいかを見極め、必要に応じて修正する能力は、常に求められています。

メタ認知能力が備わっていると、大きな変化や困難に直面しても、自分を見失わずに冷静に判断できます。メタ認知能力は日常業務だけでなく、ビジネスパーソンが成長するうえで欠かせない能力といえるでしょう。

メタ認知の2つの種類

メタ認知は、以下の2つの種類に分けられます。

  • メタ認知的知識
  • メタ認知的活動

これらは相互に補完し、繰り返されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、自分の長所や短所、得意なことや苦手なことなどを分析して理解し、その結果得た知識のことです。これは、主に「人についての知識」「課題についての知識」「方略についての知識」の3つの側面に分けられます。

「人についての知識」とは、自分や他人についての認知特性を指します。例えば、「私は書くことは苦手だが、話すことは得意」「読むよりも聞くほうが早く理解できる」「あの子は気が強い」といった理解のことです。

「課題についての知識」とは、課題自体の特性や難易度に関する知識です。例えば、「手入力するとミスをしやすい」「単調な作業を長時間行うと、集中力が低下しやすい」などが挙げられます。

「方略についての知識」とは、課題解決や目的達成のための知識を指します。例えば、「25分作業して5分休憩を取ることで、集中力が持続する」「相手に合わせて話し方を変える」といった考えのことです。

メタ認知的活動

メタ認知的活動とは、自分が何をしているかを把握し、必要に応じて対策を講じることです。メタ認知的活動には、「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」があります。

「メタ認知的モニタリング」とは、自分の行動を第三者の視点から見て(モニタリング)、認知することです。例えば、「聞いただけでは覚えられない」という気づきや「この問題は簡単に解けそうだ」という予想、「この方法は適しているのか?」といった点検、「しっかり話せた」という評価などが、モニタリングの一環です。これらの要素を通じて、自分の認知活動を確認し、状況に応じた調整が可能になります。

一方で、「メタ認知的コントロール」とは、モニタリングの結果をもとに、言動を調整することを指します。例えば、「この章を30分で理解する」と目標を設定することや、「全体を読んでから細かい部分を確認する」という計画、「やり方を変える」といった修正がこれに当たります。

会話を例にすると、他者との会話中に自分の話が正しく伝わっているかをチェックすることがモニタリング。うまく伝わっていないと感じたら、説明を補足する、話すスピードを変えるなど、内容や話し方を調整することがコントロールです。

モニタリングとコントロールを交互に行うことで、継続的に思考や行動を改善できます。

メタ認知能力が高い人・低い人の特徴

では、メタ認知能力が高い人と低い人には、どのような特徴があるのでしょう。それぞれ見ていきます。

メタ認知能力が高い人の特徴

メタ認知能力が高い人は、自己認識と自己管理が優れており、周囲と良好な関係を築く能力に長けている傾向があります。具体的な特徴を解説していきます。

良好な人間関係を構築できる

メタ認知能力が高い人は自分の立ち位置を客観的に把握できるため、周りの人との距離を適切に保てます。踏み込みすぎず、他者のプライバシーや感情に配慮しながら接することができるため、コミュニケーションがスムーズです。

仕事上でも、良好な人間関係を構築できるため、周囲の人と協力しながら業務に取り組めます。また、リーダーシップを発揮しやすく、チームの目標達成などにも貢献できるでしょう。

冷静な判断ができる

メタ認知能力が高いと、状況や目的を客観的に把握できるため、冷静な判断が可能です。トラブルやクレームなど想定外の問題が発生しても、感情に流されず、最適な解決策を見つけられるでしょう。

冷静に状況を見極められることは、仕事でも役立ちます。複数の業務を抱えていても、効率的に優先順位をつけられ、マルチタスクに対応できます。

柔軟な対応ができる

メタ認知能力が高い人は、自分にできることや周りの状況をしっかり認識しているため、柔軟な対応が可能です。固定観念や偏った考えにも気づきやすく、変化や課題に臨機応変に対処できます。

意欲的に仕事ができる

メタ認知能力が高いと自己理解が深まるため、目標設定が適切にできるようになります。将来のビジョンが明確になると、日々の仕事にも意欲的に取り組めます。

プレゼン能力が高い

プレゼンでは、相手にわかりやすく伝えるための構成や、説明の工夫、聞き手の反応に応じた柔軟な対応が求められます。

メタ認知能力が高い人は、自分の話し方や伝え方を客観的に把握し、「この説明はわかりやすいか」「どのような例を入れると伝わるか」などを意識しながら話すことができます。その場の状況に応じて内容や話し方を調整できるため、説得力のあるプレゼンができるのです。

メタ認知能力が低い人の特徴

では、メタ認知能力が低い人にはどのような傾向があるのでしょう。それぞれの特徴を解説します。

感情に左右されやすい

メタ認知能力が低い人は、自分を客観的に認知できず、感情に左右されやすくなります。感情に任せて行動することで、ストレスや衝突を引き起こし、職場や日常生活で問題が増えることがあります。

対人関係に影響が出やすい

メタ認知は自分のことだけでなく、相手の理解を深める際にも役立つ能力です。メタ認知能力が低いと、相手の行動や質問の意図を汲み取りにくく、誤解が生じることがあります。

人間関係のトラブルが増えやすく、信頼関係の構築やチームでの協力体制にも悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。

モチベーションが低下しやすい

メタ認知能力が低い人は、自分の長所と短所を把握しにくく、その結果、適切な役割や仕事を見つけにくい傾向があります。自分に合った成長機会を得られないと、自己評価が低下し、モチベーションが下がる可能性があります。

メタ認知を高めるメリットとデメリット

メタ認知を高めることで、様々なメリットが期待できる一方で、注意が必要なデメリットも存在します。ここでは、メタ認知を高めるメリットとデメリットを解説します。

メタ認知を高めるメリット

メタ認知を高めることで得られる主なメリットは、以下のようなことがあります。

課題解決力が向上する

課題に対する自分の思考プロセスを振り返ることで、課題の本質を深く理解し、適切な解決策を見つけやすくなります。また、自分の心理状態を意識することで、感情的にならずに冷静に事態を判断できます。

成長が促進される

メタ認知を通して、自分の長所や短所、行動パターンを客観的に把握できるようになります。これにより、自分自身の強みや弱みの理解が深まり、現実的な目標設定ができるようになるでしょう。適切な目標を掲げることで、成長が建設的に促進されます。

発想が豊かになる

メタ認知により、多角的な視点から物事を捉えることで、発想の幅が広がります。過去の経験から学びを引き出したり、独自の視点から考えたりできるため、柔軟で創造的な発想が生まれるでしょう。

対人関係が良くなる

メタ認知能力が高いと、相手の気持ちや状況を客観的に捉えながらコミュニケーションを取ることができます。「この発言は適切か」「今伝えるべきか」と考えながら会話ができるため、相手に配慮した対応が可能です。

また、相手の発言の意図や背景にも目を向けられるため、表面的なやりとりにとどまらず、より深い信頼関係を築くことができるでしょう。

メタ認知を高めるデメリット

メリットが多いメタ認知ですが、過剰になると、デメリットになってしまう可能性があります。デメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  • 過度な思考がストレスにつながる
  • プレッシャーが大きくなってしまう
  • 過剰に気遣いして疲れてしまう

上記のように感じた場合は、休憩をとってリフレッシュすることも必要です。信頼できる人と対話して異なる考えも取り入れましょう。

メタ認知を社内で高めるトレーニング方法

メタ認知を社内で高めるためには、個人で行う方法と組織で行う方法の両方があります。ここでは、それぞれの方法について解説します。

個人でメタ認知を高めるトレーニング方法

1人でメタ認知を高める方法としては、自分の行動や考え、その日の出来事などを書き出すことが効果的です。書くことにより、自分自身を俯瞰し、思考を可視化できるため、物事の本質に気づきやすくなります。

組織でメタ認知を高めるトレーニング方法

組織でメタ認知を高めるためには、他者からフィードバックを受けることが重要です。自分一人で考えるだけでは限界があり、他者から見た自分の姿を知ることが、メタ認知を高めるために役立ちます。

具体的には、以下のような方法があります。

①人事評価面談

最初に、社員と上司で行う人事評価面談の方法をご紹介します。自己評価と上司の評価、対話を通じて、社員自身のメタ認知を高める機会になります。

  1. ステップ1:
    社員が自身の評価を行い、なぜそのように評価したかをレポートにまとめる
  2. ステップ2:
    面談で、社員が自己評価の内容を発表する
  3. ステップ3:
    上司は発表内容とレポートをもとに、社員に質問をする(質問することで、思考を深める)
  4. ステップ4:
    上司が評価した内容と、社員の自己評価をもとに、同じ点と違う点について意見を交換する
  5. ステップ5:
    社員は気づいたことをレポートにまとめ、上司に提出する

②報告書や日報

次は、報告書や日報を通じてメタ認知を高める方法です。上司からフィードバックを受けることで、自分では気づきにくい行動面での課題に気づくことができ、メタ認知が自然と高まります。

  1. ステップ1:
    社員が日報や報告書を書く際に、具体的な行動とその結果を入れる
  2. ステップ2:
    社員は結果の原因となったこと、課題や改善点を記載する
  3. ステップ3:
    上司は日報や報告書の内容に対して、フィードバックをする

③顧客満足度アンケート結果

最後に、顧客アンケートなどを活用する方法をご紹介します。以下のステップをくり返し行うことで、顧客の視点に立てるようになり、メタ認知が高められます。

  1. ステップ1:
    アンケート結果によって気づいたことを書き出す
  2. ステップ2:
    書き出した内容について、同僚と意見を交換し、新たな気づきがあれば追記する
  3. ステップ3:
    上司に報告する
  4. ステップ4:
    上司はフィードバックを行う

メタ認知を高めてビジネススキルを向上させよう

メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に把握し、必要に応じて調整する能力です。ビジネスにおいて、冷静な判断、問題解決、対人関係の向上など、様々な場面で欠かせません。

メタ認知は先天的な能力ではなく、トレーニングによって高めることが可能です。ALL DIFFERENTでは、「リフレクション研修」や「自己理解研修」を提供し、社員のメタ認知能力向上をサポートしています。社員の自己調整力や判断力を強化したい企業のご担当者は、ぜひご活用ください。

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