自己肯定感とは?低い人の特徴と原因、対策や高め方、職場での実践方法

update更新日:2025.11.20 published公開日:2023.05.09
自己肯定感とは?低い人の特徴と原因、対策や高め方、職場での実践方法
目次

自己肯定感は、自分の価値を認識し、ありのままの自分を受け入れる心理的基盤となるものです。この感覚は、日々の意思決定や行動、仕事への取り組み方に影響を及ぼすと考えられています。

本コラムでは、自己肯定感の概要と低い人に見られる特徴とその原因、仕事への影響、対処法と高め方、部下やチームの自己肯定感を育てる方法についてわかりやすく解説します。

自己肯定感とは

自己肯定感とは「ありのままの自分」を受け入れ、自分の価値や存在意義を肯定する感覚のことです。他人からの評価に振り回されず、「自分には価値がある」と心から感じられることがポイントになります。似たような概念として「自己尊重感」や「自尊心」という言葉もありますが、本質的には同じ意味です。

自己肯定感が高い人は物事を前向きに捉えられるため、仕事でも人間関係でも好循環を生み出しやすくなります。一方、自己肯定感が低いと「自分はダメな人間だ」「周りの人より劣っている」といったネガティブな思考に陥り、なかなか自分を認めることができません。

ただし、自己肯定感は生まれつきの能力ではありません。考え方や捉え方を少しずつ変えていくことで、大人になってからでも十分に高めることができます。

自己肯定感の種類

自己肯定感には大きく分けて「絶対的自己肯定感」と「社会的自己肯定感」の2つがあります。

絶対的自己肯定感は、「自分は自分のままでいい」と自分の存在そのものを受け入れる感覚です。他者の評価や自分の長所・短所に関係なく、「どんな自分であっても価値がある」と認められることが特徴です。この感覚は幼少期に十分な愛情を受けた経験が土台となって育まれると言われています。

対して、社会的自己肯定感は他者との比較や外部からの評価によって培われる感覚です。「仕事で成果を上げた達成感」「努力して資格を取得したときの充実感」「周囲から感謝されたときの喜び」などが代表例です。社会的自己肯定感は、職場での自信やモチベーション向上に直結します。

自己肯定感と自己効力感の違い

自己肯定感とよく混同される概念に「自己効力感」がありますが、この2つは明確に異なります。

自己効力感とは、「目標達成や課題解決に必要な能力が自分にはある」と信じる感覚のことです。例えば、新しい仕事を任されたとき、自己効力感が高い人は「きっとできる」と前向きに捉え、低い人は「自分には無理だ」と最初から諦めてしまうことが多くなります。

一方、自己肯定感は能力とは関係なく、自分の存在そのものに価値を見いだす感覚です。たとえ失敗したとしても自分を受け入れられるため、挫折しても再び挑戦しやすいという特徴が見られます。

つまり、自己効力感は行動の原動力であり、自己肯定感はそれを支える土台と言えるでしょう。

自己肯定感が注目された背景

自己肯定感という概念は、1994年に心理学者の高垣忠一郎氏が著書で紹介したことから、主に教育現場で広まりました。

その後、内閣府が発表した調査結果で、日本の子どもや若者の自己評価が他国と比べて著しく低いことが明らかになり、社会問題として注目されるようになりました。日本財団が2024年2月に実施した「18歳意識調査」でも、この傾向は顕著に表れています。

「自分の行動で国や社会を変えられると思う」と回答した日本の若者は約46%、「自分には人に誇れる個性がある」と答えた人は約54%で、いずれも調査対象6カ国中で最下位という結果でした。

こうした自己肯定感の低さには、謙虚さを美徳とする日本独特の文化背景や、他人との比較を重視する教育環境が深く関わっていると考えられています。

出典:日本財団ホームページ

自己肯定感が低い人の4つの特徴

自己肯定感の高さは、日常の行動に大きく影響します。

自己肯定感が高い人は新しいことにも前向きに取り組み、人とのつながりも自然に深められますが、低い人には以下のような特徴が現れやすくなります。

挑戦をためらってしまう

自己肯定感が低い人は自分への信頼感が薄く、「どうせ失敗する」「自分にはできるはずがない」といったネガティブな思考に支配されがちです。失敗への恐怖心が強いため、新しいことにチャレンジする前から諦めてしまう傾向があります。

他人と比較して自分を責める

周りの人と自分を過度に比較し、劣等感に苦しみやすいのも特徴の1つです。SNSで他人の充実した生活を見ては落ち込んだり、同僚の成功を素直に喜べなかったりします。比較することで成長のヒントを得るのではなく、自分を責める材料にしてしまうのです。

嫉妬や劣等感といったネガティブな感情が心を占めるため、精神的に不安定になることも少なくありません。

他人からの承認を過度に求める

自分で自分を認めることが苦手なため、他人からの評価や承認に依存しやすいという特徴があります。周囲の期待に応えることで自分の価値を感じようとし、本当の自分の気持ちよりも「他人にどう思われるか」を優先して行動することが多いでしょう。

結果的に、自分軸で物事を判断する力が弱くなり、ますます周囲に依存する悪循環に陥ってしまいます。

過去の失敗を引きずりがち

過去のネガティブな体験を引きずりやすく、「また同じ失敗をするかもしれない」という不安に支配されやすい傾向があります。

過去への執着が強いほど、「また傷つくかもしれない」という恐怖心が大きくなり、さらに自己肯定感を低下させる原因になります。

自己肯定感の低さにつながる主な原因

自己肯定感の低さを改善するには、まず原因を正しく理解することが重要です。

ここでは、自己肯定感の低さにつながる主な原因を2つご紹介します。

幼少期の環境や人間関係の問題

自己肯定感が低くなる最も大きな要因として、幼少期の環境や対人関係が挙げられます。

例えば、親の過保護や過干渉や放任など、幼少期の親子関係に偏りがある場合や兄弟姉妹と過度に比較されて育った人は、大人になってから自分を認めることが難しくなりがちです。

また、学校での友人関係がうまく築けなかったり、学校生活に満足感を得られなかったりした体験も、自己肯定感の形成に深刻な影響を与えます。

自分の存在を周囲に認めてもらえる環境にあったかどうかが、その後の自己認識を大きく左右するのです。

完璧主義的な思考パターン

自己肯定感が低くなるもう1つの原因として、完璧主義の思考パターンが挙げられます。

完璧主義的な思考の人は常に高い目標を設定し、少しでもミスがあると「完全に失敗だった」と考えがちです。結果に満足するハードルが高いため、「うまくできなかった」と落ち込む機会が増え、成功体験として積み重ねることが難しくなります。

自己肯定感の低さが仕事に与える影響

自己肯定感は、仕事のパフォーマンスや取り組み方に大きな影響を与えます。自己肯定感が高い人は積極的に良い結果を生み出しやすい一方で、低い人は様々な課題が生じがちです。

ここでは、自己肯定感が低い場合の仕事への具体的な影響について解説します。

新しい仕事への挑戦を避けてしまう

自己肯定感が低いと、「失敗したらどうしよう」「周囲に批判されるのではないか」という恐怖心に振り回されやすく、新しいことへの挑戦を避ける傾向があります。慣れ親しんだ業務にとどまり、成長の機会を逃してしまうことも少なくありません。

また、些細なミスでも自分の人格まで否定してしまい、失敗への恐怖心がさらに強くなってしまいます。

自分の能力を正しく評価できない

自己肯定感が低い人は、自分の能力を過小評価して「自分にはできない」と最初から決めつけがちです。「どうせ失敗する」という思い込みが先行するため、本来持っている能力を発揮する前にチャンスを手放してしまいます。

失敗を恐れるあまり保守的な選択ばかりしてしまい、結果として自分の可能性を狭めてしまうことも多いでしょう。こうなると本来は実力があっても十分な成果を上げることが困難になります。

チーム内でのコミュニケーションが不足する

仕事を円滑に進めるには、チーム内での情報共有が不可欠です。しかし、自己肯定感が低い人は他者とのコミュニケーションを避ける傾向が見られます。

その理由は、「周りの人と比較して劣等感を抱きたくない」「ミスを報告して怒られたり、がっかりされたりしたくない」という懸念があるからです。

このような思いが情報共有を滞らせ、業務の効率を下げるだけでなく、職場での人間関係にも悪影響を与える可能性があります。

仕事を引き受けすぎて納期に間に合わない

自己肯定感が低い人は、依頼を断ることを「相手を否定すること」だと捉えがちです。そのため、自分の処理能力を超えた仕事でも引き受けてしまい、結果的に納期に間に合わず周囲に迷惑をかけてしまうことがあります。

さらに、「自分のせいで仕事が遅れている」と自分を責め、1人で抱え込むなど、悪循環に陥ってしまいます。

必要以上に頑張って心身ともに疲弊する

自己肯定感が低い人は「今の努力ではまだまだ足りない」と感じやすく、必要以上に頑張りすぎる傾向があります。責任感の強さや完璧主義、他人に頼ることへの抵抗感などが要因として挙げられます。

責任感は本来良い資質ですが、行きすぎると心と体が疲弊し、対処できなくなってしまうでしょう。

自己肯定感が低い場合の対処法と高めるコツ

自己肯定感は、大人になってからでも十分に高めることができます。「自分は自己肯定感が低いかもしれない」と感じても、決して諦める必要はありません。

考え方や気持ちの切り替え方を少しずつ改善し、それを習慣にしていくことで、自己肯定感は徐々に向上していきます。

ここでは、効果的な対処法として、今日からでも始められる方法を2つご紹介します。

ネガティブな感情を書き出して整理する

自己肯定感を高める第一歩は、自分の現状を客観的に見つめることです。自己肯定感が低いという状況も含めて、まずは今の気持ちを整理することから始めてみましょう。

簡単にできる方法として、ネガティブな気持ちや不安、モヤモヤした思いをノートに書き出してみてください。誰に見せるものでもないので、思いつくまま素直に書いて構いません。

書き出した内容に否定的な言葉が含まれていたら、以下のようにポジティブな表現に言い換えてみるのがコツです。

  • 「どうせうまくいかない」→「やってみないとわからない」
  • 「失敗した」→「貴重な学びを得た」
  • 「あの人みたいにはできない」→「自分に合ったペースでやろう」

このような思考の整理を続けていくと、物事の受け取り方が少しずつ変わってきます。ネガティブな感情をポジティブに変換する力も、自然と身についてくるでしょう。

小さな成功体験を積み重ねる

自己肯定感を高めるには、小さな成功体験を少しずつ積み重ねることが大切です。成功体験とは、自分が行動して「できた」と実感する瞬間のことを指します。

成功体験を作るために、まずは少し頑張れば達成できそうな目標を設定してみましょう。大きな目標を目指すより、すぐに取り組める現実的なものがおすすめです。例えば、「締切を守る」「タスクを書き出して優先順位をつける」など、日常の中で取り組みやすい内容がよいでしょう。

もし目標が思い浮かばないときは、「マズローの欲求5段階説」を参考にする方法もあります。この理論では、人間の欲求を生理的欲求から自己実現欲求まで5段階に分け、下位の欲求が満たされると次の段階に進みやすくなると説明されています。

マズローの欲求5段階説

まずは、基本的な生理的欲求を満たすことから始めてみましょう。「毎日7時間以上の睡眠をとる」「規則正しい時間に食事をする」といった目標をクリアすることで、次のステップに進みやすくなります。

目標を達成できたら、しっかりと自分を褒めてあげましょう。定期的に振り返ることで次第に自信を持てるようになり、自己肯定感が高まっていきます。

部下とチームの自己肯定感を育てる方法

職場で部下とチームの自己肯定感を高めることは、組織全体の生産性や働きがいに大きな影響を与えます。ここでは、管理職やチームリーダーが部下とチームの自己肯定感を育てるために効果的な方法をご紹介します。

部下のやる気を引き出す声かけのポイント

部下の自己肯定感を高めるには、日常的なコミュニケーションの中で部下の良いところを見つけ、具体的に言葉で伝えることが大切です。

例えば、「この資料はとてもわかりやすい」「プレゼンの内容が的確だった」など、抽象的な褒め言葉ではなく、具体的にフィードバックを伝えましょう。部下は自分の能力を客観的に認識しやすくなり、自己評価を上げるきっかけになります。

また、今取り組んでいる仕事よりも少しだけレベルの高い仕事を任せることで、部下の成功体験につながります。目標を達成したときは、少し大げさなくらいに褒めると、次のチャレンジへの意欲をいっそう高められます。

失敗したときは、責めるのではなく「落ち込む必要はない」ことを伝え、「この経験から何を学べたか」を一緒に話し合いましょう。成功だけでなく、失敗からも学びを得られるという実感から、部下のチャレンジ精神が育ち、自己肯定感も高まるでしょう。

自己肯定感を高める環境づくり

チーム全体の自己肯定感を高めるには、職場の雰囲気をポジティブに保ち、メンバーが安心して力を発揮できる環境づくりが欠かせません。

メンバー同士が気軽に意見を交換し、お互いを認め合える環境を整えることが大切です。社内のイントラネットやチャットツールを活用し、感謝やポジティブなフィードバックを伝える場を設けるのも効果的でしょう。

リーダー自身がオープンな姿勢でフィードバックを受け入れ、失敗を恐れない態度を示すことで、チーム全体の心理的安全性が高まります。

チーム全員で目標を共有し、小さな目標を達成した際にはその喜びを皆で分かち合いましょう。「みんなで成し遂げた」という実感が、個人の自己肯定感だけでなく、チーム全体の結束力も高めてくれます。

継続的な取り組みで自己肯定感を高めよう

自己肯定感は仕事の成果や人間関係の質を左右する大切な要素です。この感覚を育てることは、個人にとっても組織にとっても価値のある取り組みと言えるでしょう。

小さな成功体験を積み上げ、自分の成長を受け入れる習慣を身につけることで、自己肯定感は少しずつ高まります。

ALL DIFFERENTでは、自己肯定感を高めるための研修プログラムを豊富にご用意しています。詳しくはページ下部の「関連する研修」をご覧ください。