ハラスメントとは?定義・種類・原因・対策を簡単にわかりやすく解説

update更新日:2026.02.06 published公開日:2023.12.22
ハラスメントとは?定義・種類・原因・対策を簡単にわかりやすく解説
目次

ハラスメントは職場における信頼関係や生産性を著しく損なう深刻な問題です。

近年では、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに加え、カスタマーハラスメントや就活ハラスメントなど、新たな形態も増加しています。

本コラムでは、ハラスメントの定義や種類、法律上の義務、企業が取るべき防止策をわかりやすく解説します。

ハラスメントとは

ハラスメントとは、相手に不快感や精神的な苦痛を与える行為を指します。単なる意見の相違や業務上の指導とは異なり、立場や力関係を利用して相手を傷つけたり、尊厳を損なったりする行動がハラスメントです。

最初に、ハラスメントの意味や定義について、厚生労働省の見解を交えながら解説します。

ハラスメントの基本的な意味と由来

「ハラスメント(harassment)」という言葉は、もともと英語で「嫌がらせ」「いじめ」「悩ませること」といった意味を持ちます。

現代日本では、「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」など、職場や学校、公共の場などあらゆる場所で発生する社会問題として扱われています。単なる不快な発言にとどまらず、相手の人格を否定する行為や継続的に心理的圧力をかけるような行為も含まれます。

つまり、ハラスメントとは「相手の立場や感情に配慮せず、意図的または無意識に苦痛を与える行為」の総称です。

厚生労働省が示すハラスメントの定義

厚生労働省では、以下の3種類のハラスメントを定義しています。

ハラスメントの種類 定義
パワーハラスメント(パワハラ)

職場において行われる

  1. ①優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. ③労働者の就業環境が害されるもの
セクシュアルハラスメント(セクハラ)

職場において行われる

  1. ①労働者の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応により
  2. ②その労働者が労働条件につき不利益を受けたり
  3. ③性的言動により就業環境が害されたりすること
妊娠・出産・育児・介護等に関するハラスメント
(いわゆるマタニティハラスメント)
  1. ①産前休業、育児休業などの制度や措置の利用に関する言動または
  2. ②女性労働者が妊娠したこと、出産したことなどに関する言動により
  3. ③就業環境が害されるもの

これら3種類は全て、「職場において労働者の就業環境を害する行為」「職場において労働者の就業環境を害する行為」として、法律上の防止措置が義務付けられています。

特にパワハラについては、労働施策総合推進法により明確に定義され、企業には、防止に向けた方針の策定や相談体制の整備などが義務付けられています。さらに、令和7年(2025年)4月施行の改正法により、カスタマーハラスメント(顧客などからの著しい迷惑行為)への防止措置義務も追加されました。

参考:厚生労働省|職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

英語で「ハラスメント」は何という?日本と海外で異なるハラスメントの認識

英語で「ハラスメント(harassment)」といえば、一般的には「嫌がらせ」全般を指しますが、海外では特に「性的嫌がらせ(sexual harassment)」の意味で使われることが多いです。

日本では、ハラスメントという言葉が独立して幅広く使われるようになり、「パワハラ」など日本独自の派生語も増えました。パワーハラスメントは和製英語であり、諸外国ではこれに対応する問題は「精神的ハラスメント(psychological harassment)」、「モラルハラスメント(moral harassment)」、「職場のいじめ(workplace bullying, mobbing)」などの言葉が充てられています。

また、特にアメリカなどの英語圏では、「discrimination(差別)」と密接に結びついており、性別・人種・宗教・年齢などの属性を理由とした不当な扱いが「harassment」として問題視されます。

一方、日本では「人間関係のストレス」や「職場内の上下関係」など、より心理的側面が強調される傾向にあります。つまり、同じ「harassment」でも、文化や法制度によってその対象や認識の範囲が異なるのです。

参考:「職場における「パワー・ハラスメント」に関する比較法的考察―カナダ法のハラスメント規制を素材に―」東京大学法科大学院ローレビュー

参考:U.S. Department of the Interior| Discrimination, Harassment, Harassing Conduct, and Retaliation Defined

職場ハラスメントの種類一覧

ハラスメントの実態を具体的に理解するには、職場で起こりうる主なハラスメントの種類を把握しておくことが重要です。

代表的なハラスメントの定義と例を簡単にご紹介します。

パワハラ(パワーハラスメント)

パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場における優位な立場を利用して、業務に必要な範囲を超えて従業員の就業環境を悪化させることです。

具体的なパワハラの例には、

理不尽な内容で特定の人物を叱責し続ける

業務に必要な情報を共有しない

本人の能力に対して過度に難易度が高い、または著しく簡単すぎる業務のみを継続的に割り当てる

などがあります。

パワハラというと、「上司から部下」または「先輩から後輩」といった、立場が上の者から下の者に行われる行為をイメージする方も多いでしょう。

しかし、他部署から異動してきた上司に対して、嫌がらせを行う「逆パワハラ(逆パワーハラスメント)」や、同僚や部下が集団で嫌がらせを行うケースもあります。

パワーハラスメントについて詳しい定義や裁判例などは、以下のコラムをご覧ください。

コラム「パワーハラスメント(パワハラ)とは?定義と裁判例、防止措置の内容」はこちら

セクハラ(セクシュアルハラスメント)

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、職場において従業員本人の意に反する性的な言動により、就業環境を悪化させる行為のことです。

男女雇用機会均等法に基づく指針ではセクハラは「対価型」と「環境型」に二分されています。

セクハラの種類 具体例
対価型セクシュアルハラスメント
  • 経営者の性的要求を拒否し解雇された
  • 出張中に上司からの性的接触を拒否したため遠方へ異動させられた
環境型セクシュアルハラスメント
  • 事務所内で上司の身体接触が続き勤務意欲が低下した
  • 同僚がプライベートな性的うわさを流布したため業務に支障が出た

被害者の性別や性的指向、性自認は関係ありません。そのため、同性同士でも、相手の意に反する言動であれば、セクハラと認定されるケースがあります。

セクハラの判断基準や企業の対策例などについては以下のコラム記事をご参照ください。

コラム「セクシャルハラスメント(セクハラ)とは?具体例と判断基準、企業の対策」はこちら

参考:あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト|ハラスメント基本情報|ハラスメントの類型と種類

モラハラ(モラルハラスメント)

モラハラ(モラルハラスメント)は身体的なダメージではなく、言葉や態度により相手に継続して精神的な苦痛を与える行為です。

  • 周りに聞こえるよう過剰に叱責する
  • 特定の人に対して無視や舌打ちをする
  • 人格を否定するような言葉を投げつける

などがモラハラに該当します。

パワハラと混同しやすいですが、モラハラは職場の立場や優位性を問わず、相手に屈辱的な言葉を浴びせる行為全般を指します。

モラハラは、身体的な暴力ではないため、周囲に気づかれにくいという点が問題視されています。

モラルハラスメントの具体例や企業における対策方法については以下のコラムもあわせてご参照ください。

コラム「モラルハラスメントとは?職場モラハラの恐ろしさと具体例、対策方法」はこちら

マタハラ・パタハラ(マタニティハラスメント・パタニティハラスメント)

マタハラ(マタニティハラスメント)やパタハラ(パタニティハラスメント)は、妊娠・出産やそれに伴う休業の利用、育児休業や時短勤務制度の利用に関する言動によって、従業員の就業環境を害することです。

  • 産休・育休制度や時短勤務などの利用を拒否する
  • 育児を行う従業員に対して嫌味を言ったり解雇を示唆したりする

などの行為が主な例です。

マタハラやパタハラでは、会社の休業制度や時短勤務制度などを活用する際に不利益を被るケースを想像する方も多いかもしれません。しかし、

「妊娠で職場に迷惑をかけるのだから、退職すべきではないか」

「忙しい時期の妊娠なんて信じられない」

こうした発言もマタハラやパタハラに該当するため、企業としての注意喚起が求められます。

マタハラやパタハラについて、詳しい定義や防止措置などについては以下のコラムで解説しています。

コラム「パタニティハラスメント(パタハラ)とは何か?定義・法律と防止措置」はこちら

コラム「マタニティハラスメントとは?定義・種類と事例、防止措置の例」はこちら

カスハラ(カスタマーハラスメント)

カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先が企業の商品やサービスに対して行う理不尽なクレームや言動のことです。

顧客の要求内容に妥当性がなかったり、妥当性があったとしても求める対応手段が常識の範囲を超えたりする場合は、通常のクレームではなくカスハラとみなされます。

例えば、

企業に落ち度のない、顧客都合による返金要求を行う

暴言を浴びせる

土下座を要求する

1時間以上にわたり店員を拘束する

差別的な言動や性的な言動を行う

などの行為は、カスハラです。

もちろん、顧客の要求に合理性と妥当性が認められる場合は、通常のクレーム対応と区別され、カスハラには該当しません。

正当なクレームとカスハラを見極めやすくするには、企業側で事前に対応マニュアルなどの策定を行うとよいでしょう。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル」

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新しい職場ハラスメントの種類一覧

近年、社会の変化や働き方の多様化に伴い、これまでにない種類のハラスメントが認識されるようになってきました。法令では明確に定義・規制されていない場合でも、職場環境を悪化させる可能性があるとの懸念が高まっています。

以下に、新たな職場ハラスメントの分類をご紹介します。

【新たな職場ハラスメント一覧】

ハラスメントの種類 概要
レイハラ
(レイシャルハラスメント)
人種や国籍に基づく差別や嫌がらせ行為。外国人労働者の増加に伴い、問題が顕在化している
ロジハラ
(ロジカルハラスメント)
論理的思考を強要し、相手に精神的苦痛や不快感を与える行為
フキハラ
(不機嫌ハラスメント)
不機嫌な態度で、周囲に不快感や過度な緊張感を与える行為
ため息ハラスメント 頻繁なため息で周囲に不快感を与える行為。不機嫌ハラスメント(フキハラ)の一種としても認識されている。加害者は無意識に行っているケースも多いのが特徴
エイハラ
(エイジハラスメント)
年齢を理由とした差別や嫌がらせ行為。高齢者や若年層が対象となることがある
ジェンハラ
(ジェンダーハラスメント)
性別を理由とした差別や嫌がらせ行為。性別によって評価や扱いを変える、役割を決めつけるなど。LGBTQに関する差別も含む
スメハラ
(スメルハラスメント)
体臭や口臭、香水などの強い香りや匂いで周囲に不快感を与える行為。加害者に悪意がなく、無自覚であることが多い
音ハラスメント キーボードを強く叩く音やボールペンをノックする音など、周囲が不快に感じる音を出し続ける行為。サウンドハラスメントとも呼ばれる
アルコールハラスメント
(アルハラ)
飲酒を無理強いしたり、飲めない人への配慮を欠いたりする行為。泥酔状態での迷惑行為も含む。
テクハラ
(テクノロジーハラスメント)
ITスキルなど、技術的な知識の差を利用した嫌がらせ行為
リモハラ
(リモートハラスメント)
リモートワーク環境での嫌がらせや不適切な行為。オンライン会議での不適切な言動なども含まれる
ジタハラ
(時短ハラスメント)
経営陣や管理職が従業員に対して、必要な対策を講じずに一方的に労働時間の短縮を強要する行為。従業員の負担増加につながる可能性がある
ソーハラ
(ソーシャルメディアハラスメント)
SNSを利用した嫌がらせや不適切な行為。プライベートと仕事の境界が曖昧になりやすい現代社会で問題となっている

認知度が低いハラスメントであっても、職場環境や従業員の心身の健康に与える影響は決して小さくありません。企業はこのような新たな課題にも注目し、適切な対策を講じる必要があります。

新しい職場ハラスメントの種類については、以下のコラムも参考にしてください。

コラム「アルコールハラスメント(アルハラ)とは?定義と具体例、企業がとるべき対策」はこちら

コラム「不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは?原因と企業リスク、職場の対策」はこちら

最近話題のシングルハラスメントとは

シングルハラスメントとは、独身者に対して結婚や恋愛に関する発言を繰り返したり、「まだ結婚しないの?」「いい人いないの?」といった無神経な言葉で不快な思いをさせたりする行為を指します。

少子化やライフスタイルの多様化により、結婚・非婚・独身はいずれも個人の自由な選択であるにもかかわらず、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)によって差別的な対応が起こることがあります。

企業としては、結婚・出産を前提としない人事制度やコミュニケーション教育を通じ、シングルハラスメントを防ぐ職場文化を築くことが重要です。

ハラスメントハラスメントとは

様々なハラスメントが認識されていく一方で、ハラスメントハラスメント(略称:ハラハラ)という言葉まで生まれています。

ハラスメントハラスメントとは、本来の「ハラスメント防止」や「ハラスメント被害の訴え」が行きすぎることで、逆に職場の自由な発言や行動を萎縮させてしまう現象です。

例えば、上司が部下に業務上の注意をしただけで「パワハラだ」と受け取られる、指導や冗談が一切できなくなるなど、過剰な反応によって職場のコミュニケーションが停滞する、といったケースです。

ハラスメント対策は本来、誰もが安心して働ける環境をつくるためのものですが、行きすぎると「指導できない職場」や「意見を言えない風土」を生み出すリスクがあります。

ハラスメントに関する法律と企業の義務

ハラスメントは、もはや個人のモラルの問題ではなく、企業の法的責任や社会的信頼に直結する重要なコンプライアンス課題です。

厚生労働省は、職場におけるハラスメント防止を強化するため、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)や男女雇用機会均等法などを通じて、全ての企業に防止措置を義務付けています。

ここでは、主要な法的根拠と企業が果たすべき義務について整理します。

職場のハラスメントを規定する主な法律(労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法など)

現在、職場におけるハラスメントに関して明確な法的根拠を持つのは、主に以下の3つの法律です。

  • 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
  • 男女雇用機会均等法
  • 育児・介護休業法

パワハラ防止法では、職場でのパワーハラスメントを防止するため、事業主に方針の明示や相談体制の整備が義務付けられています。

2つ目の男女雇用機会均等法においては、職場でのセクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児・介護などに関連する不利益取扱い(いわゆるマタハラ・パタハラ)を防止するため、企業に対して防止措置が求められています。

3つ目の育児・介護休業法では、育児や介護を理由とするハラスメントを防止する規定が設けられています。

さらに、令和7年(2025年)4月施行の労働施策総合推進法改正により、カスタマーハラスメント防止の義務化が追加され、顧客など外部からの不当な言動にも対応が求められるようになりました。

法律上の「職場」の範囲と「労働者」の定義

ハラスメント防止法制では、「職場」と「労働者」の定義が重要なポイントです。

厚生労働省によると、「職場」とはオフィスや店舗だけでなく、出張先・リモートワーク環境・社内SNS上のコミュニケーションなど、業務に関連して行われる全ての場所を含みます。つまり、オンライン会議中の発言やチャット上でのやり取りもハラスメントの対象です。

また、「労働者」には、正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイト・派遣社員・業務委託に近い形で働く人なども含まれます。

このように、法律上の定義は非常に広く、企業は雇用形態や勤務場所を問わず、全ての労働者が安全に働ける環境を整備する責任を負っています。ハラスメント防止は、一部の社員だけでなく、全従業員を包括的に保護する取り組みが求められます。

企業に義務付けられているハラスメント防止措置とは

ハラスメント防止において企業が果たすべき役割は明確に法令で定められています。

  • 方針の明確化およびその周知・啓発
  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

これらの防止措置は全ての事業主に義務付けられており、違反した場合は行政指導や企業名公表などのリスクもあります。

企業が行うべき具体的なハラスメント防止・対策方法については後ほど詳しく解説します。

参考:「職場におけるハラスメント対策パンフレット」

ハラスメントの影響やリスク

ハラスメントの定義でも述べたように、ハラスメントが発生すると就業環境に悪影響を与えます。その責任を問われるのは、直接ハラスメントを行った人物だけではありません。「労働者が働きやすい職場環境を整備できていない」として、企業も責任を問われます。

なぜハラスメント対策が必要なのか、改めて主な影響やリスクを確認しましょう。

企業が法的責任を問われる可能性がある

第一に、職場でハラスメントが発生すると、直接ハラスメントを行った加害者はもちろん、加害者が所属する企業も責任を問われる可能性があります。

労働安全衛生法において、企業には「職場における労働者の安全と健康の確保」「快適な職場環境の形成促進」が求められています。また、近年改正された労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法でも、ハラスメント対策が企業に義務付けられました。

そのため、職場でハラスメント行為を認識しながら対策を取らずにいれば、企業側も法律違反として責任を追及されるでしょう。

さらに、「ハラスメントを放置した会社」として世間に広まってしまえば、企業全体のイメージダウンにもつながり、業績悪化を招く恐れがあります。

職場環境が悪化し、生産性低下を招く

ハラスメントは、従業員の心身や職場の雰囲気に悪影響を及ぼします。これにより、被害者はもとより、周囲の従業員もモチベーションを維持しにくくなるでしょう。

モチベーションの低下は、作業効率の悪化やミスの増加につながります。

さらに、ハラスメントが発生すると、ハラスメント対策の担当者は被害者をフォローしつつ状況の調査や環境改善を行わなければなりません。当然、ハラスメント当事者だけでなく周囲の従業員へのヒアリングも行われます。それぞれの従業員が担当業務に使える時間が減り、職場環境への不安も高まるでしょう。

このように、ハラスメントの発生は、当事者と周囲の従業員、ひいては会社全体の生産性を低下させる恐れがあるのです。

離職者が増加し、人材不足に陥る

ハラスメントを受けた被害者は、会社に居づらくなるだけでなく、適応障害やうつ病などで休職・退職せざるを得ない状況になる場合があります。被害者にとって職場は恐れや不安の多い場所となり、働くうえで重要な心理的安全性を確保できないからです。

ハラスメントは、多くの従業員に心身の過大な負担を与えます。本来発揮できるはずの能力を発揮しにくい環境では、せっかく採用した人材も流出してしまうでしょう。社会的信頼の低下により、求人を出しても応募者が来ないといった事態も考えられます。

ハラスメントの発生・放置は、企業にとって百害あって一利無し、と考えるべきです。

ハラスメントが起こる原因

ハラスメントの加害者は、自分の発言や行動がハラスメントであると認識していない場合がほとんどです。多くの場合、その原因はハラスメントに対する知識不足です。

また、ハラスメントに関する知識自体はあっても、相手の立場から考えることを疎かにしたために、相手にとって働きにくい環境にしてしまうケースもあります。簡潔にいえば「誤ったコミュニケーションをしている」ケースです。

それぞれのケースをもう少し詳しく見ていきましょう。

ハラスメントに対する知識不足

ハラスメントが発生する最大の要因のひとつが、従業員や管理職の知識不足です。

「どこからがハラスメントになるのか」「注意や指導との違いは何か」といった基本的な理解がないまま行動してしまうと、無意識のうちに相手を傷つける結果を招くことがあります。特に、職場の上下関係や性別、雇用形態などが絡む場合、立場の強い側が自覚を持たないとトラブルに発展しやすい傾向があります。

定期的な研修を通じて、最新の法令・事例を共有し、全社員が正しい判断基準を身につけることが重要です。

誤ったコミュニケーションを取っている

ハラスメントの多くは、悪意ではなくコミュニケーションの誤りから生じます。

例えば、冗談のつもりで言った一言が相手にとっては屈辱的に感じられたり、過度な指導や感情的な叱責が「パワハラ」と捉えられるケースがあります。

組織としては、上司・部下間の信頼関係を築く研修や1on1面談などを取り入れ、「伝え方・受け取り方のズレ」を減らす努力が欠かせません。相手を尊重する言葉選びと聞く姿勢が、ハラスメントを防ぐ第一歩です。

アンコンシャス・バイアスによるもの

ハラスメントの根底には、本人が気づかないアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が潜んでいることがあります。

「女性は感情的」「若手は責任を持てない」「独身者は気楽だ」などの思い込みが、差別的な発言や不公平な扱いにつながるのです。

こうした偏見は、本人に悪意がなくても、相手の尊厳を損なう行為となり得ます。

企業は、管理職やリーダー層を中心にアンコンシャス・バイアス研修を実施し、固定観念に基づく判断を減らす取り組みが必要です。

多様な価値観を受け入れる職場文化を醸成することが、真のハラスメント防止につながります。

ハラスメントを防ぐために組織ができること

ハラスメントの発生を防ぐためには、個人の意識だけでなく、組織としての仕組みづくりと職場風土の改善が欠かせません。企業は「起きてから対応する」のではなく、「起こさないための予防体制」を整えることが求められています。

ここでは、組織として実践すべき具体的な対策を紹介します。

ハラスメントに関する社内規定の制定と風土づくり

まず、ハラスメント防止の基盤となるのが明確な社内規定の整備です。就業規則やコンプライアンス規程に「ハラスメントを許さない」という姿勢を明文化し、具体的な行為例・処分基準・相談体制を明示することで、全従業員に対する抑止効果を高めます。

また、ルールを定めるだけでなく、社内の風土づくりも重要です。社内の風土づくりは一朝一夕ではできません。管理職やリーダー層が率先して公正な言動を示し、職場全体に安心感を広げることが求められます。さらに、経営層が定期的にメッセージを発信し、ハラスメント防止を経営課題の1つとして位置付ければ、全社的な意識浸透が進むでしょう。

人事部が行うべき教育と研修

人事部は、ハラスメント防止の中核的役割を担う部門として、積極的な取り組みが求められます。

まず実施すべきは、全社員を対象としたハラスメント防止研修です。パワハラ・セクハラ・カスハラなどの具体的事例をもとに、「何がハラスメントに該当するのか」「どんな発言・対応が問題となるのか」を明確に理解させることが重要です。

研修を単発で終わらせず、定期的な実施により、知識の定着と職場文化の変化を促します。

また、人事部は相談窓口の運営や社内アンケートの実施を通じて、職場の実態を可視化し、早期にリスクを発見する仕組みづくりが求められます。教育と風土改善を両輪で進めることで、ハラスメントを防ぐ強い組織文化が生まれます。

ハラスメント相談窓口の設置

ハラスメントを予防するためのルールづくりや周知・啓発とともに行うべき取り組みに、ハラスメント相談窓口の設置もあります。ハラスメントの被害やその兆候に関する相談がしやすい環境を整備することで、早期の対応が可能となります。

相談窓口設置に当たって具体的に行うことは、相談対応担当者の選定と相談体制の構築です。どのような手段で相談ができるのか、相談に対してどのような対応を行うのかなどを事前に決めておきましょう。相談窓口の担当者と人事部の連携も重要です。

相談窓口の社内設置が難しければ、外部機関に委託することもできます。窓口を設置したら、従業員に周知しましょう。

ハラスメントが起きたときの対応方法

ハラスメントが発生した場合、企業には、迅速かつ公正に対応する責任があります。

被害者・加害者双方の人権を尊重しつつ、職場の信頼回復と再発防止を図る必要があります。対応を誤れば、被害者の二次被害や企業の社会的信用失墜、法的責任につながるおそれもあります。

ここでは、企業側がとるべき実務的な対応手順を整理します。

相談前に整理しておくべきポイント(記録・証拠・状況)

企業がハラスメント対応を行う際は、まず客観的事実を正確に把握することが基本です。

相談を受ける担当者は、感情的な判断を避け、被害者・加害者双方の話を公平に聞き取りながら、発生日時・場所・発言内容・関係者の証言などを時系列で整理します。記録は可能な限り書面で残し、メール・チャット履歴・録音データなどの客観的証拠を確保しておきましょう。

早い段階での正確な情報収集が、のちの調査や判断を左右します。

社内相談窓口・労働局・弁護士などの相談ルート

企業には、社内にハラスメント相談窓口を設置する法的義務があります。

人事・総務・コンプライアンス部門など、相談者がアクセスしやすい部署を明確にし、複数の相談ルートを用意しておくとよいでしょう。

また、外部の弁護士・社会保険労務士・EAP(従業員支援プログラム)などと連携し、必要に応じて第三者の意見を取り入れる体制を整えることも有効です。労働局の「総合労働相談コーナー」や「あっせん制度」など、外部機関へのエスカレーション経路を社内で明示しておけば、相談者が安心して行動できる環境を整備できます。

相談後の流れと解決までのステップ

相談を受けた後、企業が最初に着手すべき対応は、事実関係の確認と調査です。

第三者を含む調査委員会を設置し、公正中立な立場でヒアリングや証拠確認を行います。調査結果に基づき、事実が認められた場合には、加害者への懲戒処分や配置転換などの措置を速やかに実施し、被害者には、業務環境の整備や心理的サポートを提供する必要があります。

対応を終えた後も、再発防止策の策定とフォローアップが欠かせません。具体策としては、社内規程の見直し、管理職研修の実施、職場アンケートによる定期的な実態把握などが挙げられます。

ハラスメントについて企業に求められるコンプライアンスと意識改革

ハラスメント防止は、もはや企業の「努力義務」ではなく、法令遵守(コンプライアンス)と企業倫理の根幹を担う重要な取り組みです。

法的に定められた防止措置の実施は当然として、それ以上に重要なのは、組織全体に「人を尊重する文化」を根付かせることです。企業は、パワハラ・セクハラ・マタハラといった法定ハラスメントに加え、カスタマーハラスメントや就活生へのハラスメントなど、時代とともに多様化するリスクにも対応しなければなりません。単に違反を防ぐだけでなく、従業員が安心して意見を述べ、互いを尊重できる職場づくりが求められます。

そのためには、経営層が中心となってハラスメントに対する明確な方針を発信し、社内全体で共有する必要があります。管理職には教育研修を通じて、部下への適切な指導・評価方法を学ばせ、従業員一人ひとりにも「加害者にも被害者にもならない意識」を浸透させることが重要です。

法令対応にとどまらず、企業風土としての意識改革と継続的な教育体制の整備こそが、健全な職場環境を守り、組織の信頼と持続的成長につながる最大の防止策といえるでしょう。

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