契約社員とは?給与・社会保険やメリット、無期転換と正社員登用

update更新日:2025.09.19 published公開日:2024.04.25
契約社員とは?給与・社会保険やメリット、無期転換と正社員登用
目次

契約社員とは、直接雇用かつ有期雇用で働く社員のことです。仕事の裁量や社会保険、給与などの待遇面で正社員との違いがあります。

本コラムでは、契約社員とは何か、正社員や派遣社員、パート・アルバイトとの違い、契約社員という働き方のメリット・デメリットを、厚生労働省の調査結果とともに紹介。退職や無期転換ルール、正社員登用についても解説します。

契約社員とは?労働契約と業務・責任の範囲

はじめに、契約社員とはどのような社員なのか、他の雇用形態である正社員や派遣社員、パート・アルバイトとの違いは何かなどを見ていきましょう。

契約社員とは直接雇用・有期雇用で働く社員

契約社員の最大の特徴は、労働契約の期間があらかじめ定められている「有期雇用」で働くことです。契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了します。雇用を継続する場合、契約の更新が必要です。

有期雇用の契約期間は、法令の規定により、原則として1回あたり最長3年。専門業務に従事する人や満60歳以上の人の場合は、最長5年となっています(労働基準法14条1項)。*1

ただ、実際の契約期間は、半年〜1年となるケースが多いようです。一方で、厚生労働省の調査によれば、「できるだけ長く働いてもらいたい」とする会社も少なくありません。そのため、1回あたりの契約期間は1年程度でも、その後、契約更新をする会社が多いといえます。*2

契約社員には、正社員と同様に労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの基本的な労働法が適用されるとともに、パートタイム・有期雇用労働者法も適用されます。

*1 参考:「労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール」(厚生労働省)

*2 参考:「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査) 結果の概要」(厚生労働省)、p.22

契約社員の業務・責任の範囲

契約社員の業務・責任の範囲は、一般に正社員よりも狭くなります。特定の業務を遂行できることが重視され、それ以外の業務を求められることはほぼありません。反面、部門間の異動や昇進の機会は正社員より少なくなります。

ただ、労働契約に異動の可能性があることが記載されていれば、大きな異動を命じられる可能性はあります。会社によっては、正社員同様の業務範囲・責任で働くこともあるでしょう。

厚生労働省の調査結果では、有期雇用で正社員と同様の業務内容や責任で働く「正社員同様職務型」が約2割、正社員よりも責任の範囲が狭かったり業務内容が比較的シンプルであったりする「軽易職務型」が約6割でした。*

*参考:「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査) 結果の概要」(厚生労働省)、p.22

契約社員の給料・ボーナス・産休・育休・社会保険などの福利厚生

契約社員の給与は、多くの場合で正社員よりも低く設定されます。産休・育休・社会保険については、契約社員でも法律の規定に基づいて利用することができます。

契約社員の給料・昇給・ボーナス

契約社員の給与形態は、時給制と月給制があります。どちらの形態になるかは、会社によって異なります。

厚生労働省の調査結果で有期契約労働者の平均年収を見ると、大きな割合を占めたのは「100万円超〜200万円以下(34.3%)」および「200万円超〜300万円以下(30.4%)」でした。*1

契約社員の昇給は原則として契約の更新時に行われ、契約期間中の昇給はありません。

ボーナス(賞与)の支給については、支給する会社もあれば、しない会社もあります。厚生労働省の調査結果では、有期労働契約で働く人で正社員同様職務型の場合は約6割の人が、軽易職務型では約4.5割の人がボーナスを支給されていました。*2

*1 参考:「令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)結果の概要」(厚生労働省)、p.17

*2 参考:「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)結果の概要」(厚生労働省)、p.41

契約社員の産休・育休

産前・産後休業や育児休業は、一定の要件を満たせば契約社員でも取得可能です。いずれも、産前・産後休業中や育児休業中に「契約期間が満了となり、契約の更新もないことが明らかである場合」以外は、取得できます。*1

厚生労働省によれば、令和5年度に有期雇用で働く労働者のうち育児休業の取得対象者で実際に育児休業を取得した人の割合は、女性で75.7%、男性で26.9%でした。女性では近年8割程度の人が取得しており、男性の取得率も増加しています。*2

*1 参考:「契約社員でも、産前・産後休業や育児休業は取れる?」(妊娠出産・母性健康管理サポート<厚生労働省委託 働く女性の心とからだの応援サイト>)

*2 参考:「令和5年度 雇用均等基本調査 事業所調査 結果概要」(厚生労働省)

契約社員の社会保険・福利厚生

社会保険や労働保険の加入については、契約社員自身の所定労働時間などによって異なります。

【社会保険・労働保険の加入条件】

保険の種類 適用(加入)条件・保険料の負担
雇用保険
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある労働者
  • 保険料は労働者と企業の双方が負担
労災保険
  • 労働者を1人でも雇用する企業
  • 保険料は企業が全額負担
健康保険
  • 法人の事業所の労働者、または一定の業種で常時5人以上を雇用する個人事業所の労働者
  • 有期雇用でも、1日または1週間の労働時間および1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の場合は、加入が必要(学生を除く)
  • 保険料は労働者と企業で折半して負担
厚生年金保険
  • 健康保険に同じ

労災保険は契約社員にも漏れなく適用されますが、雇用保険・健康保険・厚生年金保険は一定以上の所定労働時間でなければなりません。

なお、健康保険と厚生年金保険では、2016年から適用対象が拡大されました。正社員の4分の3未満の所定労働時間であっても、特定適用事業所や任意特定適用事業所で働き、週所定労働時間が20時間以上かつ所定内賃金が月額8.8万円以上である学生以外の労働者は、適用対象となります。*1

その他の法定外福利厚生については、企業によって適用が異なります。厚生労働省の実態調査によれば、多くの企業で有期契約労働者にも提供されている福利厚生は、「食堂・休憩室・更衣室の利用」「社内行事への参加」「慶弔見舞金」でした。

【有期契約労働者への法定外福利厚生・職務タイプ別】*2

正社員同様職務型 軽易職務型
1位 食堂・休憩室・更衣室の利用(84.1%) 食堂・休憩室・更衣室の利用(80.3%)
2位 社内行事への参加(72.2%) 慶弔見舞金(69.4%)
3位 慶弔見舞金(71.0%) 社内行事への参加(56.8%)

とはいえ、契約社員の福利厚生の範囲は、全体として正社員よりも狭い傾向にあります。

*1 参考:「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(日本年金機構)

*2 「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)結果の概要」(厚生労働省)p.44より作成

契約社員と正社員、パート・アルバイト、派遣社員との違い

次に、契約社員と正社員、パート・アルバイト、そして派遣社員との違いを確認しておきましょう。

契約社員と正社員の違い

正社員と契約社員は、雇用期間や待遇の面で大きく異なります。

【正社員と契約社員の違い】

正社員 契約社員
契約期間 無期雇用 有期雇用
給与 昇給あり 昇給なし
(契約更新時に検討)
ボーナス 会社規定に応じて支給あり 支給なし
または正社員より少ない金額で支給
社会保険 各種保険に加入 労働条件に応じて加入
福利厚生 広い範囲で適用 正社員より狭い範囲で適用

まず、契約期間で見ると、正社員は無期雇用であるのに対し、契約社員は有期雇用です。契約社員が契約終了後も続けて働き続けられるかどうかは更新の有無次第です。

給与・ボーナスについては、正社員には昇給や手当に関する制度が設けられている一方で、契約社員は契約期間中の昇給は基本的にありません。ボーナスは、正社員に支給される場合でも契約社員には支給されないか、正社員より少ない額となる傾向があります。

社会保険・労働保険では、フルタイム勤務が前提の正社員はいずれも適用対象。契約社員の場合、加入の可否は基本的に所定労働時間によって異なります。

福利厚生に関しては、先ほど見た通り、契約社員の適用範囲は正社員よりも狭くなります。それでも、「法定外福利厚生の適用が全くない」という企業は少ないようです。

契約社員とパート・アルバイトの違い

契約社員とパート・アルバイトの違いは、業務・責任の範囲や労働時間です。パート・アルバイトの場合は契約社員よりもシンプルな業務が任され、採用プロセスも簡略化されています。

【パート・アルバイトと契約社員の違い】

パート・アルバイト 契約社員
契約期間 有期雇用 有期雇用
給与 昇給あり
(時給数十円程度)
昇給なし
(契約更新時に検討)
ボーナス 支給なし 支給なし
または正社員より少ない金額で支給
社会保険 多くの場合加入なし 労働条件に応じて加入
福利厚生 契約社員より狭い範囲で適用 正社員より狭い範囲で適用

雇用形態の面では、契約社員もパート・アルバイトも有期雇用です。

給与に関しては、パート・アルバイトでは一定期間ごとに「時給10円アップ」などの形で昇給するケースが見られます。半年や1年など比較的短い期間で労働契約を結ぶ場合は、契約更新時に検討される形になるでしょう。他方、契約社員の場合は、原則として期間中の昇給はありません。

社会保険の加入は、パート・アルバイトも契約社員も同じ基準で判断されます。ただ、契約社員のほうが週20時間以上で働く人が多いため、「パート・アルバイトは保険に入っていないけれど、契約社員は保険に加入している」といった状況が見られます。

福利厚生は、労働時間の長い契約社員のほうが、パート・アルバイトより広く適用されやすくなります。パート・アルバイトへの福利厚生は最低限といってもよいかもしれません。

契約社員と派遣社員の違い

契約社員と派遣社員の最大の違いは、契約相手です。契約社員は職場となる企業と契約しますが(直接雇用)、派遣社員は派遣元会社と労働契約を結び、別の会社で働きます(間接雇用)。昇給や保険加入、福利厚生を誰が提供するかという点にも違いがあります。

【派遣社員と契約社員の違い】

派遣社員 契約社員
契約期間 派遣先での就業は有期
派遣元との契約は有期または無期
有期雇用
給与 昇給あり
(派遣元が派遣先と交渉)
昇給なし
(契約更新時に検討)
ボーナス 支給なし
または派遣元の規定により支給
支給なし
または正社員より少ない金額で支給
社会保険 派遣元で労働条件に応じて加入 労働条件に応じて加入
福利厚生 派遣元の福利厚生を適用
または派遣先の福利厚生を適用
正社員より狭い範囲で適用

契約期間については、契約社員は有期です。これに対し、派遣社員の場合は、派遣元企業との労働契約と、派遣元企業と派遣先企業が結んだ派遣契約の両方を考慮しなければなりません。

派遣社員の労働契約は、有期契約の場合もあれば無期契約の場合もあります。しかし、派遣契約は有期です。つまり、派遣社員という働き方では、一定期間ごとに派遣先を変えながら働くことになります。

昇給に関してはどちらも契約期間中(派遣期間中)の昇給はありません。違いは、ボーナスにあります。派遣社員ではボーナスを加味した給与となることが多いのに対して、契約社員の給与にはボーナスに相当する金額は含まれません。

福利厚生の面では、契約社員に適用される範囲が職場のルールで定められる一方、派遣社員の場合は、一般に派遣元企業が提供する福利厚生を利用できます。

契約期間が満了となった際も、契約社員と派遣社員には大きな違いがあります。契約社員は自分で次の仕事を見つけなければなりません。しかし、派遣社員の場合は、派遣元会社が次の派遣先を探します。

雇用形態による労働条件や保険加入の違いについては、以下の関連コラムでもご紹介していますので、併せてご覧ください。

コラム「雇用形態とは?種類や必要な社会保険、変更手続きや注意点について解説」はこちら

契約社員の契約更新・無期転換ルール

契約社員が働き続けるには、契約更新や契約期間の満了、無期転換ルールに関する基本知識が必要です。まずは、雇用が継続するパターンとして、契約更新と無期転換ルールを解説します。

契約社員の契約更新とその実態

契約社員に代表される有期契約労働者の場合、企業が雇用する期間は、基本的に労働契約で定めた期間のみです。しかし、「契約期間が満了したら、雇用も終わり」というだけでは、契約社員の生活が不安定になり、企業にとっても採用コストがかさみます。自社の継続的な業務効率化に支障が出るでしょう。

そこで、企業は「引き続き働いてもらいたい」と考え、契約期間満了に際して契約社員と話し合い、次の有期労働契約を結びます。これが、契約の更新です。

では、実際にどのくらいの人が契約を更新しているのでしょうか。厚生労働省が有期契約労働者を対象とした調査によれば、「更新したことがある」と答えた人は、85.2%。ほとんどの人が、契約更新を経験していました。更新回数では、「3〜5回」が最も多い28.4%、次が「1回」と「6〜10回」でそれぞれ16.9%となっています。*1

なお、契約更新の回数について「上限がある」と答えた人は約4割、通算勤続年数については約半数が「上限がある」と回答しています。更新が多いといっても、無限に更新されるわけではないということです。

有期契約労働者の契約更新回数の上限および通算した勤続年数の上限は、それぞれ以下のようになっています。

【有期契約労働者の更新回数・通算勤続年数の上限(上限がある場合)】*2

更新回数の上限 通算勤続年数の上限
1位 3〜5回(47.7%) 3年超〜5年以内(29.6%)
2位 11回以上(19.1%) 1年超〜3年以内(25.6%)
3位 6〜10回(14.5%) 10年超(18.6%)
4位 1回(11.8%) 5年超〜10年以内(15.0%)
5位 2回(6.9%) 1年以内(11.2%)

具体的な年数の上限を5年以内で設定する企業が多く見られます。

*1 出典:「令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)結果の概要」(厚生労働省)p.29

*2 同上、p.30-31より作成

無期転換ルールの「5年」と適用状況

「5年」という期間は、有期契約労働者に適用される「無期転換ルール」とも深いつながりのある期間です。

無期転換ルールとは、同じ企業で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に、その労働者から申し込めば、無期労働契約に転換されるルールのことです(労働契約法18条)。契約社員だけでなく、パート・アルバイトの従業員にも適用されます。

無期転換するかどうかは、その有期契約労働者の意思に任されています。

【無期転換ルール適用の要件(無期転換申込権の発生要件)】

  • 有期労働契約の通算期間が5年を超えている

    • 同じ企業で通算5年を超えて有期雇用されている
    • 有期労働契約を締結していない期間(無契約期間)が規定の長さ以上ではない
      (例)10カ月超の有期契約の場合、6カ月以上の無契約期間があると、それ以前の有期契約期間は通算対象から外れる
  • 契約を1回以上更新している
  • 現時点で、同一の使用者(企業)と契約している

無期転換した労働者の多くは「無期転換社員」となっています。業務量や労働条件も変わらないケースが多く、契約社員の働き方のまま、「有期労働契約から無期労働契約になった」というのが実態のようです。*1

とはいえ、無期転換を希望する理由には安定性やキャリア形成などが見られます。

【無期転換を希望する理由・TOP3】*2

  1. ①雇用不安がなくなるから(81.2%)
  2. ②長期的なキャリア形成の見通しや、将来的な生活設計が立てやすくなるから(55.6%)
  3. ③その後の賃金・労働条件の改善が期待できるから(35.0%)

無期転換を申し込むか否かは、生活の安定とともに、契約社員自身のライフプランによっても判断されているようです。

*1 参考:「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)」(厚生労働省)p.18

*2 同上、p.42

契約社員の退職と失業保険(失業手当・基本手当)

続いて、契約社員の労働契約が終わるパターンとして、企業による解雇や雇い止め、契約社員からの申し出による退職を見ていきましょう。退職後の生活を支える失業保険(失業手当・基本手当)についても解説します。

契約社員の雇い止め

契約社員が退職となる一般的な理由は、契約期間満了によって契約が終了し、更新も行われないことです。これを「雇い止め」と呼びます。

令和2年の調査では、過去2年間に雇い止めを行った企業は、1割程度と少ない状況でした。そして、雇い止めを行ったことがある企業に、その理由を尋ねると、

  • あらかじめ更新しないと契約していたため(28.4%)
  • 労働者の勤務態度の不良のため(24.9%)
  • 業務量の減少のため(22.0%)

が上位を占めました。*

更新の上限回数や上限年数に達しておらず、勤務態度も不良でなければ、雇い止めになることはほぼないといえそうです。

*出典:「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)結果の概要」(厚生労働省)p.49

契約社員の解雇・辞職

これに対し、契約期間の途中で退職となるパターンもあります。企業側から契約社員を解雇したり、契約社員が辞職したりするケースです。

解雇については、法令による厳しい規定があります。原則として契約期間中の解雇はできませんし、解雇できる場合でも「やむを得ない事由」がなければなりません。そのため、雇用継続が難しくても、契約期間の満了を待って雇い止めとするのが基本です。

解雇が認められる「やむを得ない事由」に該当するのは、懲戒解雇に当たるような、非常に重大なケースのみです。勤務態度などの問題行動がある場合はまず指導・教育を行い、それでも改善しないなら就業規則にしたがって段階的に懲戒処分とします。いきなり懲戒解雇をすると、不当解雇となる恐れがあります。

契約社員が辞職するケースについては、契約開始から1年以内であるか否かが重要です。

1年以内での辞職は、基本的に認められません。認められるのは、病気やケガ、ハラスメント、家族の介護などのやむを得ない事情がある場合です。そうした事情もなく契約期間中に辞めるのであれば、会社側と相談し、合意退職にします。

反対に、有期労働契約の期間が1年を超えるものであり、その契約期間の開始日から1年を経過しているなら、契約社員から申し出ることで退職できます。

契約社員の退職に関わる失業保険(失業手当・基本手当)

契約社員にとって、退職から次の仕事が決まるまでの生活を支える大切な収入が、いわゆる失業保険(失業手当)です。失業保険とは、正式には雇用保険の「求職者給付」における「基本手当」です。

失業保険の受給には、それまでの雇用保険の加入状況や退職理由が関わってきます。

【基本手当の受給条件】*1

離職理由のタイプ 要件
自己都合
懲戒解雇
離職した日以前の2年間のなかで、雇用保険に加入していた期間が通算で12カ月以上ある
会社都合 離職した日以前の1年間に、雇用保険に加入していた期間が通算6カ月以上ある

会社都合で退職するケースとしては、2つの分類があります。1つは「特定受給資格者」、もう1つは「特定理由離職者」です。

特定受給資格者とは、会社の倒産・事業所の廃止や解雇・賃金不払い・会社側の法令違反などのほか、3年以上継続して雇用される有期契約労働者が雇い止めになった人や、ハラスメントを受けて離職した人などです。特定理由離職者には、3年未満の有期雇用で雇い止めになった場合や病気・ケガ・介護を理由に離職を余儀なくされた場合などが該当します。*2

これらの条件に当てはまる場合、日額計算で90日〜330日分が支給されることになります。自己都合や懲戒解雇による退職なら、雇用保険の加入期間(1年以上)に応じて支給日数が決定されます。特定受給資格者と特定理由離職者の場合は、加入期間(1年未満も含む)と年齢によって決定される仕組みです。

*1 参考:「基本手当について」(ハローワークインターネットサービス)

*2 参考:「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」(ハローワークインターネットサービス)

契約社員のメリット・デメリット(労働者側)

ここまで見てきた契約社員の特徴を、メリット・デメリットにわけて確認しておきましょう。まずは、契約社員にとってのメリット・デメリットです。

契約社員にとってのメリット

契約社員として働くメリットは、主に以下の3つです。

  • 一定の業務に特化した働き方ができる
  • 勤務日数・時間を調整し、ワークライフバランスを保ちやすい
  • 転勤・異動・昇進の可能性がほとんどない

業務に特化した働き方では、自身がそれまで培ってきた専門スキルを活かしやすくなります。業務範囲が限られることで、効率的にスキルアップを図れるという利点もあるでしょう。

勤務日数・時間では、フルタイム勤務で働くこともできれば、育児や介護、自身の健康管理などと両立するために短時間で働くこともできます。週3日や1日5時間といった労働時間の調整だけでなく、育児・介護などで仕事ができない時間帯を業務時間から外すことも不可能ではありません。

転勤・異動・昇進がほぼないことについては、やはり育児・介護・健康管理との両立に有効です。転勤や異動で職場が変われば、通勤時間の延長などで家庭生活に大きな影響を与える恐れがありますし、昇進して管理職になれば労働時間が長くなるでしょう。そうした悪影響の可能性を排除できるという点に、契約社員のメリットがあります。

厚生労働省の調査でも、有期契約を選んだ理由に仕事の内容・責任の程度を挙げた人が43.8%、勤務時間・日数を挙げた人が33.3%で上位を占めました。*

*出典:「令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)」(厚生労働省)p.27

契約社員にとってのデメリット

しかし、業務範囲が限られていたり昇進の可能性がほぼなかったりすることは、将来的な不安材料となる恐れがあります。

具体的には、

  • 幅広いスキルアップが難しい
  • 昇給・キャリア形成が難しい
  • 契約終了のリスクが高い

といったデメリットです。

スキルアップに関しては、契約社員では福利厚生面で能力開発・育成施策が正社員ほどは充実していないことがあげられます。業務範囲が狭い場合は、OJTでもその範囲のスキルアップしか図れません。良くも悪くも「現在のスキルを活かして働く」ことになります。

昇給・キャリア形成の難しさは、業務範囲の狭さと昇格が前提されていないシステムから来ています。契約更新時の労働条件で意識的に報酬アップを狙わなければ、何年も同じ給与で働くことになりかねません。社内の一般的なキャリアパスに乗ることも難しいでしょう。

契約社員からのキャリアアップを目指すなら、契約社員として働きながら業務の確実な遂行と自己研さんに励み、正社員登用を見据えて動く必要があります。

契約終了のリスクは、有期労働契約であることそのもののデメリットです。しかも、有期労働契約の期間は1回あたり最長3年(または5年)。無期労働契約に転換できるかどうかが大きな分岐点となるでしょう。

契約社員のメリット・デメリット(企業側)

企業側にとっても契約社員の雇用にはメリット・デメリットがあります。主なメリットは、人手を確保しやすいことや人件費削減など。デメリットは、人材の入れ替わりが生じやすいことです。

契約社員雇用の企業側のメリット

契約社員を採用する企業側のメリットは、主に以下の3つです。

  • 柔軟な労働力の確保
  • 人件費などのコスト削減
  • 専門スキルがある人材の確保

契約社員は正社員と比べて雇用の調整が容易です。具体的には、繁忙期や新規事業の立ち上げなど人手が必要な時期に採用し、あまり人手が要らない時期には減らせる(新規採用や契約更新を行わない)からです。会社が事業を急速に拡大させる際に、正社員がコア業務に専念し、バックオフィスを契約社員でまかなうケースもよく見られます。

人件費などのコスト面では、契約社員の雇い止めにより余剰人員を減らせる点が大きく関係しています。また、業務内容・配属の範囲などを理由に、正社員よりも少ない賃金で雇用できる可能性も高いでしょう。既に一定以上のスキルがある人材を契約社員として迎えられれば、新卒社員を一から育成するより低いコストで活躍してもらえます。

さらに、契約社員には他社で業務経験を積んでいる人材、特定分野で専門スキルを習得している人材もいます。こうしたハイレベルな人材が正社員となっていない理由には、育児・介護・健康管理との両立があるかもしれません。フルタイムの正社員として雇用することを断られても、時間・時期・業務範囲を限定して働ける契約社員でなら雇用できる可能性があります。

契約社員雇用の企業側のデメリット

ただ、契約社員の雇用には企業にとって無視できないデメリットもあります。それが、次の3つです。

  • 人員の入れ替わりによる指導・育成の負担
  • 優秀な人材の契約終了と退職
  • 契約社員のモチベーション低下

繰り返しになりますが、契約社員との労働契約は有期契約であり、契約期間の満了後はそのまま退職となる可能性があります。企業側が「続けて働いてほしい」と思っていても、契約社員と合意できなければ、更新はできません。契約終了となった場合、担当業務を引き継ぐ新たな人員の確保が必要です。

そして、契約社員の契約期間は、原則として最大3年(または5年)。契約更新がない場合、新しい人材に一から業務指導を行わなければなりません。

更新なしとなる契約社員が優秀な人材であるほど、その穴を埋めるのは大変です。その社員の仕事の質やスピードを前提に割り振られていた各人の業務範囲・納期を見直さなければならず、生産性を落とさないための体制改善も求められるでしょう。特に業務が属人化していると、退職による甚大な影響が発生する恐れがあります。

契約更新によって働き続けてもらう場合でも、当該社員のモチベーションには注意してください。契約社員は正社員に比べて業務上の裁量が限られ、人によっては思うように能力を発揮できないケースがあります。能力を発揮できていても、「自身の能力や経験に見合った待遇を受けていない」と感じているかもしれません。

こうした状況を放置すれば、契約社員のモチベーションが低下しやすくなります。契約期間満了のタイミングで更新に同意せず、他社へ流れてしまう恐れもあります。より安定的に人材を確保したいのであれば、自社の業務との相性を見極めた適材適所の配置とスキルアップ支援、優秀な人材の正社員登用が必要です。

契約社員から正社員登用・無期転換するには?4つのポイント

能力の高い契約社員に継続して働いてもらうには、正社員登用や無期転換を行うのが近道です。いずれも労働契約期間の定めがない無期契約ですので、更新や再育成の手間もなくなります。

そこで、本コラムの最後に、正社員登用や無期転換をする際のポイントを解説します。

(1)正社員・無期転換社員募集のタイミングで働きかける

パートタイム・有期雇用労働法第13条では、契約社員など有期労働契約で働いている労働者を正社員雇用に転換する施策を求めています。

転換するタイミングは、

  • 自社で正社員募集を行うとき
  • 社内公募で正社員のポストの募集を行うとき

などです。

その際、契約社員に対しても情報を提供し、応募の機会を与えることが大切です。正社員登用だけでなく、無期転換する場合も同様に考えましょう。

「社外から雇う前に、社内に目を向ける」といった方針を明確化することで、現在働いている契約社員からの登用を進めやすくなります。

(2)現在の評価を本人に伝える

正社員への登用や無期転換は、会社側の一方的な決定では実現できません。本人の意思を確認することが何よりも大切です。

新しい雇用形態に同意してもらうには、キャリアプランや家庭の事情などを考慮したうえで、現在の働きぶりに対する評価を本人にフィードバックしましょう。

  • これまでの業務を通してどんな点を評価しているのか
  • なぜ正社員/無期転換社員として働いてもらいたいのか
  • 正社員/無期転換社員となったあと、どのような役割を期待しているのか

こうしたポイントを具体的に伝えることで、契約社員の心理的ハードルを下げ、その後のモチベーション維持・向上につなげられます。

「高く評価しているので、長く働いてほしい」という思いを丁寧に伝えましょう。

(3)具体的なキャリアパスを提示する

契約社員にとって、正社員や無期転換社員となることはキャリアの大きな転換点です。それまでの不安定になりやすい働き方が安定するほか、特に正社員登用であれば、ボーナスや広い範囲での福利厚生も受けられるようになるからです。

自社でさらに活躍してもらうには、ぜひ会社側からキャリアパスを提示してください。これまで培ったスキルや経験の棚卸しを行い、本人が望むキャリア形成を面談等でヒアリングし、その実現に向けて会社側から情報共有やサポートを行うのです。

それでも正社員や無期転換社員として働くイメージをつかみにくそうであれば、過去に登用・無期転換した事例を紹介したり、実際に登用・無期転換した社員と話す機会を設けたりすると効果的です。

(4)人事制度の仕組みを説明する

具体的なキャリアパスを提示する際は、人事評価制度の仕組みも伝えましょう。

特に正社員の場合、日頃の勤務態度や業績への評価が昇給と深く結びついています。一定の基準にしたがって公平に判断されることや、具体的な昇給テーブルの内容を知ることが、無期雇用で働くモチベーションにつながります。

本人が望むキャリアプランと昇給のタイミングを照らし合わせることで、社員自身が「いつまでに、何を達成するか」などをよりイメージしやすくなるでしょう。

契約社員の活躍に欠かせないスキルアップは研修・セミナーで

契約社員という働き方には、大きなメリットがある一方で、雇用が不安定になるというデメリットもあります。限られた業務範囲であることから、幅広いスキルアップも難しいでしょう。企業にとっては、人員の頻繁な入れ替わりが育成コストの増加につながる恐れもあります。

育成コストを抑えながら着実なスキルアップを図るなら、定額制のスキルアップ研修がおすすめです。多くの企業にご利用いただいているALL DIFFERENTのBiz CAMPUSシリーズは、一定の料金で150種類以上の研修が受け放題。ビジネスパーソンとしてぜひ身につけてほしい基礎スキルとともに、営業事務やマーケティングなど業務ごとの知識・スキルも基本レベルから学べます。効率的な人材育成に、ぜひお役立てください。