キャリアデザインとは?年齢別ポイントと設計方法、企業による支援策
更新日:2026.10.02
公開日:2021.10.27

キャリアデザインとは、仕事を中心とする人生全体の流れを方向づけること。日本型の終身雇用制度が崩れた現在、一人ひとりが自らのキャリアについて考え、デザインする重要性が高まっています。
本コラムでは、キャリアデザインとは何か、その定義やキャリアプランとの違い、設計方法と年齢別ポイント、役立つフレームワークをご紹介。企業が行うキャリアデザイン支援の具体的施策についても解説します。
キャリアデザインとは何か?定義と重要性
はじめに、「キャリアデザインとは何か」「なぜ重要なのか」を確認しておきましょう。
キャリアデザインの定義
キャリアデザインとは、簡単に言えば、人生における仕事を中心とした方向づけのことです。「キャリア」の定義は研究者によって異なりますが、「仕事に関する一連の流れ」というイメージは共通しています。
日本の研究者として有名な神戸大学の金井壽宏名誉教授の著書では、「たった1回限りの仕事生活における節目での選択の流れ」「長い目でみた仕事生活のパターン」としています。*1
このキャリアについて「今後、こうしよう」と方向づけるのが「キャリアデザイン」です。金井教授は「生き方、働き方の戦略」としています。*2
キャリアデザインの定義については、厚生労働省による定義も参考になるでしょう。それは、次のようなものです。
【厚生労働省による「キャリアデザイン」の定義】*3
「キャリアデザイン」とは、変化の激しい時代の中で、一人ひとりが自らの価値観や目標に基づき、主体的・継続的に職業を設計していく考え方
キャリアデザインは、現在から長期的な未来に向けた何十年にもわたる働き方の方向づけです。その全てをデザインすることは、なかなかできるものではありません。予測しない事態が発生することもあるでしょう。そうしたことから「キャリアデザインなんて意味がない」という言葉も聞かれます。
しかし、先がどうなるか見通しにくいからこそ、いざというときのためにキャリアの方向性を決めておく必要があります。金井教授は、キャリアの全てをデザインするのではなく、節目ごとの方向性を決めておくことの大切さを強調しています。
*1 出典:金井壽宏「第1章 キャリアは働くみんなの問題」および「第3章 キャリアをデザインするという発想―ただ流されるのとどう違うのか」『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP研究所、2002年(電子書籍)
*2 出典:同上、「第3章 キャリアをデザインするという発想―ただ流されるのとどう違うのか」
*3 出典:「令和8年度民間企業における女性活躍促進事業 大学生向け「出前講座」 キャリアデザインとは?」(厚生労働省)
キャリアデザインを行う重要性
キャリアデザインの重要性には、社会の変化も関わっています。人材の流動化と働き方・価値観の多様化です。
従来の日本企業では、長期雇用・終身雇用を前提とした体制が中心でした。しかし、近年はそれが“当たり前”ではなくなっています。「会社に勤め続ければ自動的に昇給・昇進する」とは限らず、転職によって自らの望むキャリアを実現しようとする人々も多く見られるようになりました。
また、少子高齢化による人手不足もあり、人材確保に向けて企業側も働きやすい職場づくりを進めています。会社が求める人材像に合わせた育成施策だけでなく、女性の活躍推進、男性の育休取得推進、育児・介護や治療との両立に向けた様々な勤務制度改革、副業の解禁などが代表的でしょう。
こうした選択肢が増える中で、進むべき道を見失ったり「こんなはずじゃなかったのに」と大きな後悔を抱えたりしないためにも、自らのキャリアをデザインする必要があるのです。
キャリアデザインとキャリアプラン、キャリアパスの違い
キャリアに関連する用語に「キャリアプラン」「キャリアパス」があります。いずれも「どのようなキャリアを築くかを設計する」という点では共通していますが、その具体性や範囲に違いがあります。
キャリアデザインとキャリアプランの違い
キャリアデザインとキャリアプランの違いは、内容の具体性にあります。
キャリアプランは、今後の働き方に関する長期計画であり、多くの場合は5年以上の期間について計画を作成します。ただ、キャリアデザインにおける「方向づけ」とは異なり、より具体的な「行動計画」となる点が特徴です。
さらに、キャリアデザインは仕事に関する事柄だけでなく人生全体の節目も考慮して方針を定めますが、キャリアプランは、特に仕事に関する行動計画となります。
「キャリアプランとは、キャリアデザインの中で作成する実践に向けた具体的な行動計画である」と理解するとよいでしょう。
コラム「キャリアとは?キャリア形成の考え方と会社側にできるキャリア支援」はこちら
キャリアデザインとキャリアパスの違い
キャリアデザインとキャリアパスの大きな違いは、対象とする範囲にあります。
キャリアデザインは、本人の人生全体における働き方の方向づけ。1つの会社の中でキャリアを積み上げていくという方向性もあれば、複数の会社でキャリアを築く方向性もあるでしょう。つまり、特定の会社に限定されず、本人の職業生活を中心に考える視点です。
これに対し、キャリアパスは特定の会社におけるキャリア形成のプロセスを意味します。社員自らが作成することもあれば、会社側が「当社ではこのようなキャリア形成が可能である」と具体的に示すために作成することもあります。
簡単にいえば、キャリアデザインは転職も含む方向づけ、キャリアパスは特定の会社内におけるキャリアの流れということです。
キャリアデザインのやり方・4つのステップ
キャリアデザインの設計は、4つのステップで考えると進めやすくなります。
【キャリアデザインの4ステップ】
- (1)これまでの経験について振り返る
- (2)自分の得意分野・能力や考え方を振り返る
- (3)将来のキャリアの方向性を決める
- (4)将来像と現在のギャップを埋めるための行動計画を立てる
順番に見ていきましょう。
(1)これまでの経験について振り返る
まずは、過去の経験について棚卸しを行います。それぞれの経験がどのような結果につながってきたのか、失敗経験から何を学んできたのか、成功体験も含めてどのような評価を受けたのかなどを書き出してみましょう。
金井教授によれば、以下の3つの観点で分析するとよいとされています。
【過去の経験に関する分析の観点】*
- ①生活面・仕事面で、どのような節目があったか、それはどのような経験だったか
- ②それらの経験について、どのような感情を抱いたか
- ③それらの経験について、「あの時期が終わらなければよかった」と感じるものはどれか、どのようにしてその気持ちを乗り越えたか、頼りになった人や事物は何か
①の例は、生活面であれば結婚、子どもの誕生、仕事面であれば就職や人事異動、職種の変更などです。②の感情は、例えば「わくわくした」「不安だった」「怖かった」といったもので構いません。③は、変化を受け入れたときの自身の対応や周囲の手助けに関する項目です。
*参考:金井壽宏「第1章 キャリアは働くみんなの問題」および「第2章 揺れ動くキャリア観——なぜ移行期、節目に注目するのか」『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP研究所、2002年(電子書籍)
(2)自分の得意分野・能力や考え方を振り返る
過去の経験を振り返ると、自身の得意分野や価値観の傾向を把握しやすくなります。そこで、改めて「自分は何が得意なのか」「どのような能力があるのか」「何に価値を置いているのか」といった点を分析してみましょう。これが第2のステップです。
分析には、以下の観点が役立ちます。
【自分の能力・価値観を分析する3つの観点】
- 自分の得意なこと、強みは何か(知識・スキル・才能)
- 自分は何をやりたいのか(欲求)
- なぜそれをやりたいと思うのか、何をすることに意味を感じるのか(動機・価値観)
この3点に加えて、自身の経験や価値観に影響を与えた人々との関係も振り返ってみてください。キャリアは1人だけで築くものではなく、周囲との関係性や予想外の縁によってきっかけが生まれることもあるからです。
(3)将来のキャリアの方向性を決める
ステップ3では、いよいよ将来のキャリアについてデザインします。
ステップ1およびステップ2を通じて、自分にとって大切なことや得意なことが少しずつ見えてきます。それらを総合して「これから、どうなりたいのか」を決めましょう。
例えば、法人営業の仕事をしてきた人なら、その経験を活かして営業マネージャーや営業部長を目指すという方向性が考えられます。あるいは、法人営業を通じて「顧客にとってより魅力的な商品を提供したい」と考えるようになったのであれば、商品開発部に異動し、自ら開発に携わるという道もあるでしょう。
ここでデザインしたキャリアが、その後の働き方の軸となります。
キャリアデザインを行ったあとも経験は新たに蓄積されていきますので、方向の微調整や思い切った転換を求められることもあるかもしれません。しかし、短期間で頻繁に方向性を変えてしまっては、結局、向かう先が定まらずに迷子になってしまいます。
キャリアデザインでは、迷子にならないための羅針盤として、少なくとも5年以上の期間にわたって活用できるものをつくりましょう。
(4)将来像と現在のギャップを埋めるための行動計画を立てる
キャリアデザインの4つ目のステップは、キャリアプランの作成です。描いた将来像と現状を比較し、そのギャップを埋めるための具体的な行動計画を立てましょう。
例えば、特定分野でのスペシャリストになりたいのであれば、その分野の知識・スキルの向上が欠かせません。目指す職位や部署に配属される条件に特定の資格取得があるなら、資格取得に向けた取り組みも必要です。
マネジメント職を目指すのであれば、信頼される上司となるためのコミュニケーション、チームビルディング、アンガーマネジメント、予算管理や雇用管理といった組織として成果を出すスキルを習得しなければならないでしょう。
こうした「やるべきこと」を洗い出し、いつ・どのくらい・どのようにやるかを決めるのです。
なお、実際に取り組みを進めていると、思わぬ業務や人事異動を命じられることもあります。しかし、多少計画外の事態が生じても、「自分のキャリアデザインに合わないから」と安易に断ることは避けましょう。自ら経験を積む機会を手放すよりも、「それによって、どのような経験ができるのか」を積極的に考えるほうが、豊かな知見を得られるからです。
特に20代は可能性にあふれる時期。隠された自分の可能性を発見するためにも、キャリアプランをベースに、柔軟な対応を意識しましょう。
キャリアデザインはいつから描く?年齢とポイント
キャリアデザインを行うに当たり、「いつから描けばいいのか」「自分はもう遅いのではないか」と首をかしげる人もいるかもしれません。
キャリアデザインは、今から始めても遅くはありません。どの年代であっても、その後の働き方・生活の仕方の戦略を考えることは重要だからです。ただし、キャリアデザインでおさえるべきポイントは年齢によって少しずつ異なります。
20代のキャリアデザイン
20代のキャリアデザインでは、少なくとも2つの節目があります。1つは就職活動のとき、もう1つは入社です。
就職活動では、「どのような会社に入社したいか」を決定するため、候補となる会社の公式サイトや入社案内、事業の状況に関する情報を集めます。
【就職活動における会社選びの4つのチェックポイント】
- 社風や人間関係の傾向
- 仕事内容・仕事量・労働時間
- キャリアパスやロールモデル
- 会社としての課題
公式サイトや入社案内には、ポジティブな印象の言葉が目立つかもしれません。しかし、それだけで期待を膨らませていると、入社後のギャップ(リアリティ・ショック)も大きくなる恐れがあります。「どのような働き方が基本となるのか」「人材の多様性に関する取り組みはしているのか」「経営課題は何か」といった視点で、会社のリアルな姿も見ながら戦略を練りましょう。
入社前後では、キャリアの始まりに所属する企業が決定し、より具体的なキャリアを描けるようになります。そこで参考にしたいのが、会社が示すキャリアパスや各種制度。内定者研修、新入社員研修などを通じて事業内容を学び、先輩社員の話を聴くことも、キャリアデザインには欠かせません。
20代は、学ぶことがとても多い時期です。夢を描きながら、その後のキャリア形成に向けた経験を積み、キャリアの幅を広げましょう。
30代のキャリアデザイン
30代は、仕事の経験を重ねて知識・スキルともに伸びてきた年代です。一方で「先が見えてこない」という焦りも生まれてきます。
「仕事は頑張っているけれど、本当にこれは自分がやりたい仕事なのだろうか」
「夢中で走ってきたけれど、自分が目指したのはこんなものだったのか」
こうした不安や失望を感じる人もいるかもしれません。
また、育児を担う人も多く、家庭生活と仕事の両立に苦労することもあるでしょう。
ライフステージが大きく変化しやすい30代は、「自分はこういう人間である」というアイデンティティと周囲から期待される役割を調和させていかなければなりません。20代までの自己イメージの修正が必要になることさえあります。
30代のキャリアデザインのポイントは、自己の見つめ直しと再定義です。上司や先輩社員、家族の意見も聞きつつ、「これからどのように歩むのか」を決めていきましょう。仕事・働き方に関してメンターを持つことも効果的であるとされています。
40代・50代のキャリアデザイン
40代からは、意欲的に働いて活躍する人と停滞感を覚える人との差が大きくなる時期といわれています。
身体的な変化を感じるとともに、親の介護を担う人も出てくるでしょう。同世代の人で大病を患う人、早くに亡くなってしまう人などを見ると、「あと何年働けるか」も気になってきます。
40代・50代のキャリアデザインでは、人生の終わりから逆算した方向づけや後進の育成に向けた行動がポイントとなります。逆算のキャリアデザインでは、「残りの人生でどのように働いていきたいか」を考えましょう。後進の育成では、自身のノウハウを次世代に継承することで、社会や組織へのより大きな貢献を目指せます。
【40代・50代のキャリアデザインのポイント】
- 人生を逆算して、改めて本当にやりたいことを見定める
- 本当にやりたいことのために必要な行動を洗い出し、実行する
- 後輩社員のサポートやノウハウの継承を行う
例えば、リーダー職やマネジメント職として部下を指導する道もありますし、研修講師やOJTトレーナーを務めるといったやり方も考えられます。
60代以降のキャリアデザイン
60代以降のキャリアデザインでは、退職やシニア雇用が視野に入ります。これまでの人生を振り返り、「失敗も成功もキャリアの一部であり、それによって今の自分がある」と認識することが大切です。
大きな節目となる退職では、社員としてのキャリアを一度終わらせることになります。その後は、
- 企業でのシニア雇用で再び社員として働く
- 年金収入を軸とした生活でスポット的に働く
- 生涯学習・学び直しを行う
など、一人ひとり異なる道があるでしょう。40代・50代に方向づけた「本当にやりたいこと」を実践できる時期ともいえます。
キャリアデザインで役立つフレームワーク
キャリアデザインを進めるポイントは以上の通りですが、ほかにも役立つフレームワークを2つご紹介します。1つはWill-Can-Mustの3つの輪、もう1つはニコルソン博士のトランジション・サイクル・モデルです。
Will-Can-Mustの3つの輪
キャリアデザインの4ステップと併せて活用したいのが、Will-Can-Mustの3つの輪です。
【Will-Can-Mustの3つの輪】
| Will | 将来的に何をしたいのか、どうありたいのか |
|---|---|
| Can | 自分の強みは何か・何ができるのか |
| Must | 自分は会社から何を求められているのか |
Willは、将来像を描くということです。ただ夢想するのではなく、自身の仕事観・人生観やCanの内容を考慮しながら方向性を定めます。
このとき、ぜひ「スペシャリストか、ゼネラリストか」という視点でも考えてみてください。ゼネラリストは、多様な分野で経験を積み、管理職や経営者となるキャリアデザインができます。これに対し、スペシャリストは、特定分野の知見と技能を追求します。
日本企業では、従来「総合職」のようなゼネラリストを育成する傾向がありました。しかし、グローバル化が進む中で、日本でもスペシャリストを重用する企業が出てきています。日本企業での活躍を考える場合でも、「ゼネラリストかスペシャリストか」という選択が可能になっているのです。
Canの分析では、自身の主観的な評価だけでなく、他者から得た評価も含めて考えましょう。例えば、法人営業経験者であれば、顧客の反応やフィードバックで「商品の魅力をうまく伝えられた」「提案が喜ばれた」「資料が見やすいと言われた」などの経験があれば、「プレゼンテーション力や資料作成能力が高い」という強みをあげることができます。
Mustは、自分の視点を一度離れ、周囲から求められている役割を認識することです。
キャリア形成には、自身の意思決定や努力とともに、周囲の人々との関係性や環境も影響を与えます。所属する組織が自分に求めていることを知り、その期待や役割と調和させる形でキャリアデザインをしていけば、より実現に近づけられるでしょう。
求められていることの例では、例えば「前年比120%の売上を獲得する」「新人営業スタッフのOJTトレーナーとして適切な指導を行い、目標達成に導く」などがあります。次期マネジメント職候補者なら、「マネジメントに必要な知識・スキルを習得する」「チームメンバー一人ひとりの特性と業務内容の相性を見極め、適材適所の視点を養う」などが考えられるでしょう。
Will・Can・Mustをベン図のように配置すると、3つの輪が重なり合う部分ができます。この重なり合う部分が、自身のキャリアデザインの要です。
ニコルソン博士のトランジション・サイクル・モデル
キャリアデザインにおいて重要な理論の1つが、ナイジェル・ニコルソン博士のトランジション・サイクル・モデルです。新しい節目の前後で生じるいくつかのステップをわかりやすく説明したものであり、仕事・生活の両面で活用できる汎用性の高いモデルとなっています。
【ニコルソン博士のトランジション・サイクル・モデル】
| 第1段階 | 準備(Preparation) | 新しい世界に入る準備段階 |
|---|---|---|
| 第2段階 | 遭遇(Encounter) | 新しい世界に入り、様々なことに遭遇する段階 |
| 第3段階 | 順応(Adjustment) | 少しずつ新しい世界に溶け込んでいく段階 |
| 第4段階 | 安定化(Stabilisation) | 「新しい」とはいえないほど慣れ、落ち着いた段階 |
トランジション・サイクル・モデルの特徴は、「サイクル」とあるように、4つの段階が何度も繰り返されることを前提とする考え方です。各段階において、次の段階に向けてどのような取り組みを行うべきか意識すれば、より良いサイクルを回すことができます。
例えば、「準備」の段階で情報収集や心構え、知識・スキル習得の準備ができていれば、「遭遇」以降の段階でうまく環境に適用し、良い結果に結びつけられるでしょう。反対に、「準備」で何もしなければ、「遭遇」以降で大きな衝撃を味わい、新たな学びや役割認識に支障が出てしまいます。その結果、「順応」「安定化」がうまく進まず、疲弊したり自信を失ったりしてしまうでしょう。
トランジションに関するモデルは、ほかにもいくつかあります。詳しくは以下の関連コラムで解説していますので、ぜひご覧ください。
キャリアデザイン支援で企業ができること
社員一人ひとりが自身のキャリアデザインを進めるには、会社による支援も重要です。会社側からの情報提供により、具体的な将来像を描きやすくなるからです。また、社員が目指すキャリアに応じた人材配置ができれば、社員のワーク・エンゲージメントも高められるでしょう。
具体的に取り得る主な施策は、キャリア面談・情報提供・研修実施の3つです。
【キャリア面談】上司との関係構築と適切なフィードバック
社員の自律的なキャリア形成に取り組む企業で多く見られる施策が、キャリア面談です。部下自身にキャリアに対する考えを整理してもらうとともに、部下のキャリア形成を会社として支援することを目的に行います。
キャリア面談の基本的な流れは、以下の通りです。
【キャリア面談の基本的な流れ】
| 時期 | やること |
|---|---|
| 面談前 |
|
| 面談中 |
|
| 面談後 |
|
なお、直属の上司と部下の関係性が良いと、部下の職場への適応や働き方に好影響を与えることが指摘されています。部下が新入社員や若手社員なら、組織の一員としての自覚が芽生え、仕事を覚えやすくなるでしょう。中堅社員なら、組織の成果に積極的に貢献し、後輩社員への指導も意識できるようになります。
参考:金井壽宏「第3章 キャリアをデザインするという発想―ただ流されるのとどう違うのか」および「第5章 節目ごとの生涯キャリア発達課題」『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP研究所、2002年(電子書籍)
【情報提供】キャリアパスの提示とロールモデルの育成
社員がキャリアデザインを進めるには、「この会社ではどのような働き方ができるのか」を知るための情報が欠かせません。情報不足のままでは将来のキャリアを描けず、不安になって転職を選ぶ人もいるほどです。
キャリアデザインに関して社員に提供すべき情報は多岐にわたります。自社の事業や業務内容、役職や等級の種類、明確な人事考課の基準、モデル賃金、特定の年代や職位の社員が発信する経験談などです。
よりわかりやすく示すには、キャリアパスを提示したりロールモデルを育成したりするとよいでしょう。
キャリアパスの提示では、大きく分けてゼネラリストとスペシャリストの2種類を作成できます。ゼネラリストの場合は、管理職になるまでのプロセスや平均年数、モデル賃金、管理職への昇格条件、求められる知識・スキル・経験の獲得の流れなどを明示すると、社員が具体的にイメージしやすくなります。スペシャリストの場合は、モデル賃金と能力向上のプロセスやその評価基準、取得すべき資格が提供情報の中心となるでしょう。
こうしたキャリアパスでキャリアを実現した社員(ロールモデル)の存在も重要です。キャリアパスに現実味を与えられるとともに、ロールモデルの育成を通じて、自社の人事評価制度や育成施策を改善できるからです。
「社員にキャリアデザインの意識が根付かない」と悩んでいるなら、まずはキャリアパスの提示とロールモデルの育成に取り組んでみましょう。
【研修実施】キャリアデザイン研修で重要性・基本ノウハウの理解へ
社員一人ひとりがキャリアについて考えるには、「そもそもキャリアとは何か」「なぜキャリアについて考えなければならないのか」を理解している必要があります。キャリアデザインを行う本人だけでなく、部下のキャリア面談に対応する管理職や、社員が求めるキャリアを考慮して配置を行う人事担当者も例外ではありません。
理解の深化を目的とする施策の代表例は、キャリアデザイン研修などの研修・セミナーの実施です。
本コラムで見てきたように、キャリアデザインのポイントは、生活・仕事における節目によって異なります。20代・30代・40代・50代・60代と年代別に実施すると、自分事として捉えやすくなるでしょう。各年代のキャリア形成に役立つ社内制度(手当や休業、時短勤務制度など)の情報提供も、研修・セミナーと併せて行いたいところです。
キャリアデザインには情報提供・学びの機会が不可欠
キャリアとは仕事を中心とする人生全体の流れであり、キャリアデザインとは、その流れをあらかじめ方向づけることです。キャリアデザインの基準や具体的な選び方は人それぞれ。キャリアそれ自体に正解・不正解はなく、他人との比較で優劣をつけられるものでもありません。大切なのは、「何をしたいのか、どうありたいのか」を自ら考えることです。
上司や人事担当者、経営層には、社員が納得できるキャリアをデザインできるよう、正確な情報提供や相談体制の整備、一人ひとりの思い描く将来像と職務のマッチングなどが求められます。「自分の人生は、こんなはずじゃなかった」と社員が嘆かずに済むよう、しっかりとサポートしていきましょう。
多くの企業で人材育成に伴走してきたALL DIFFERENTでは、“はじめの一歩”である「キャリアデザイン研修」とともに、一人ひとりの能力開発やキャリア実現に向けたノウハウの習得に役立つ研修・セミナーを多数ご用意しています。社員が自分らしく働くためのキャリアデザインと夢の実現に、ぜひご活用ください。

