同一労働同一賃金とは?法律・ガイドラインと企業の導入ポイント

update更新日:2026.05.27 published公開日:2024.07.05
同一労働同一賃金とは?法律・ガイドラインと企業の導入ポイント
目次

企業は、正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇差を是正する義務があります。これは「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」に基づくものです。

本コラムでは、同一労働同一賃金に関する法律やガイドライン、企業のメリット・デメリット、導入手順を解説します。

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、「同じ仕事をしている労働者には、雇用形態にかかわらず同じ賃金を支払う」という原則です。企業は正社員と、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなどの非正規社員との間にある不合理な待遇差を解消する必要があります。

はじめに、同一労働同一賃金を規定する法律と厚生労働省のガイドラインを確認しましょう。

同一労働同一賃金に関する法律

同一労働同一賃金の原則は、パートタイム・有期雇用労働法第8条及び第9条、労働者派遣法第30条の3及び第30条の4で定められています。これらの法律では、正社員と短時間・有期雇用労働者の職務内容や責任の範囲、配置の変更の範囲などが同じ場合、待遇に差をつけることを禁止しています。

この法律の目的は、賃金格差を縮小し、公平な労働環境を作ることです。不合理な待遇差を解消することで、どの雇用形態を選んでも公正な処遇を受けられる人事制度を整え、深刻化する人手不足の解決を目指します。

パートタイム・有期雇用労働法における同一労働同一賃金の規定

パートタイム・有期雇用労働法は、働き方改革の一環として改正されました。2020年4月に大企業、2021年4月に中小企業へ適用され、現在は全ての企業が対象です。

第8条では、正社員と非正規社員の待遇について不合理な相違を設けることを禁止しています。第9条では、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由に差別的に扱うことを禁じています。

参考:厚生労働省「パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために」

労働者派遣法における同一労働同一賃金の規定

派遣先の正規雇用労働者と派遣労働者との不合理な待遇差をなくすため、労働者派遣法も2020年4月に改正されました。

第30条の3と第30条の4では、派遣元事業主は「派遣先均衡・均等方式」または「労使協定方式」によって、派遣労働者の公正な待遇を確保する義務があると定めています。

参考:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」

同一労働同一賃金ガイドラインとは

厚生労働省は2018年に「同一労働同一賃金ガイドライン」(告示第430号)を策定しました。正社員と非正規社員の待遇差について、何が不合理で何が合理的なのかを具体的に示しています。

同ガイドラインでは、短時間労働者や有期雇用労働者、派遣労働者などの基本給・賞与・各種手当・福利厚生などについて、不合理な待遇と合理的な待遇の例を確認できます。

参考:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」

同一労働同一賃金のメリット

同一労働同一賃金の導入には、企業にとって多くのメリットがあります。ここでは、自社に導入する際の主なメリットを3つ解説します。

企業の成長につながる

同一労働同一賃金が実現すれば、非正規社員の仕事を正社員と同じ基準で評価できます。公平な待遇は非正規社員のモチベーションを高め、仕事や企業への満足度が向上します。

業績や能力が正当に評価されることで、仕事の質や生産性が向上するでしょう。非正規の従業員が活躍できる職場環境を実現することは、企業の成長につながります。

人材不足を解消できる

同一労働同一賃金の導入により、労働に対する公平な評価が実現し、従業員の定着率向上や離職率低下が期待できます。

これまで非正規で働く労働者は、正社員と同じ勤務時間や業務内容でも低い賃金で働かざるを得ず、生活を安定させるために長時間労働が必要でした。しかし、能力や経験、職務内容に応じた公平な待遇が実現すれば、より安定した収入を得やすくなります。

スキルがあっても長時間働くことが困難な、子育て中や介護中の労働者、病気やケガ、障害などでフルタイム勤務が難しい労働者も、雇用形態にかかわらず働きぶりを公正に評価されます。雇用形態や就労時間を調整しながら、自身に適した働き方を選択できるようになるのです。

多様な働き方が浸透すれば、求職者の応募が増え、有能な従業員が雇用形態に基づく待遇差を理由に離職することも防げます。

企業イメージが向上する

働き方改革や多様な人材の活躍によって、企業の社会的評価が向上します。結果、自社のファンが増え、業績アップにもつながるでしょう。

同一労働同一賃金の実現は、長期的に見て、企業価値を向上させる重要な戦略なのです。

同一労働同一賃金のデメリット

同一労働同一賃金には多くのメリットがある一方、実施や運用に伴っていくつかの課題も存在します。適切な対策を講じられるよう、導入のデメリットも確認しておきましょう。

人件費が増加する

同一労働同一賃金ガイドラインでは、給与や賞与だけでなく、各種手当、福利厚生、教育研修の実施などでも公平な待遇を求めています。そのため、非正規社員の待遇を正社員と同等にすることで、人件費が増加します。非正規社員の待遇改善に応じたコストが新たにかかってしまうのです。

人件費増加対策として、キャリアアップ助成金の活用が考えられます。これは、非正規社員の正社員登用や処遇改善を実施した際に助成金が支給される制度です。当面の資金に余裕がない中小企業にとって、大きな助けになるでしょう。

人事制度や給与体系の見直しが必要

同一労働同一賃金を導入するには、人事制度や給与体系を見直し、再構築する必要があります。これには多くの手間やコストがかかります。

正社員と非正規社員の賃金や待遇の現状を把握し、不合理な待遇差がないか確認しなければなりません。確認の結果、正当な理由のない差異があれば、それを是正するための具体的な措置を講じる必要があります。

同一労働同一賃金の導入手順

同一労働同一賃金を導入するには、現状の見直しや分析、改善計画など多くの工程があります。厚生労働省による「パートタイム・有期雇⽤労働法対応のための取組⼿順書」を活用すると、スムーズに進められます。

手順書では、以下のような流れで導入を進めています。

参考:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」

導入手順の6ステップ

同一労働同一賃金の導入は、以下の6つのステップで進めます。

  1. ①労働者の雇用形態を確認する

    社内で短時間労働者や有期雇用労働者を雇用しているか確認します。

  2. ②待遇の状況を確認する

    短時間労働者や有期雇用労働者の区分ごとに、賃金や福利厚生などの待遇について正社員との違いがあるかを確認します。

  3. ③待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認する

    待遇の違いが、働き方や役割などの違いに見合ったものであり、「不合理ではない」ものといえるかを確認します。

  4. ④待遇の違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理する

    労働者に説明できるように、あらかじめ内容を文書にまとめます。

  5. ⑤「法違反」が疑われる状況から脱却する

    待遇の違いが「不合理ではない」とは言い難い場合、改善に向けての検討を行います。

  6. ⑥改善計画を立てて取り組む

    改善の必要がある場合、労働者の意見も聞きながら早急に取り組みます。

導入時に活用できる支援ツール

自社だけでの制度改革が難しい場合、厚生労働省が47都道府県に設置している「働き方改革推進支援センター」などの利用を検討するとよいでしょう。

【働き方改革推進支援センター】

厚生労働省が47都道府県に設置しています。専門家による無料相談やアドバイスを受けられます。

参考:厚生労働省「働き方改革推進支援センターのご案内」

【パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール】

同一労働同一賃金ガイドラインに従った待遇を実現できているかチェックできます。Web上で公開されており、無料で利用できます。

参考:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法等対応状況チェックツール」

待遇が合理的か不合理かを見極めるポイント

同一労働同一賃金を実現するには、どのような待遇が不合理で、どのような待遇が合理的なのかを理解する必要があります。厚生労働省のガイドラインで示された例をもとに、具体例を見ていきましょう。

基本給

基本給は、労働者の能力や経験、業績などに応じて支給されます。具体的な基準は会社によって異なりますが、短時間・有期雇用労働者が正社員と同じ能力や経験を持つ場合、同じ基準で給与額を決定しなければなりません。

これは、雇用するときだけでなく、その後の昇給基準についても同様です。正社員と同じ勤続年数で同じように能力が向上した場合、正社員と同じように昇給させる必要があります。

【基本給における待遇差の判断例】

判断の視点 合理的な待遇の例 不合理な待遇の例
業務内容
  • 複雑な業務を担当している正社員の基本給を高く、単純な業務を担当している非正規社員の基本給を低く設定している
  • 同じ業務内容で同じ責任を負っているにもかかわらず、正社員と非正規社員の基本給に差がある
スキル経験
  • 専門知識を要する仕事をしている正社員の基本給を高く、専門知識が不要な仕事をしている非正規社員の基本給を低く設定している
  • 長年の経験を持つベテラン社員の基本給を、新入社員より高く設定している
  • 正社員の方が業務経験が豊富という理由で基本給を高く設定しているが、その経験は現在の業務とは関係ない
  • 勤続年数に応じて上乗せ支給される基本給について、有期雇用の契約社員は契約更新時に勤続年数をリセットして計算している
業績
  • 高い業績を上げた社員の昇給額を、通常の業績の社員より高く設定している
  • 一定の業績を上げた場合に基本給が上乗せされる制度を正社員にのみ適用し、非正規社員には適用しない
労働契約の内容
  • 転勤や部署異動の可能性があるキャリアコースの社員の基本給を高く、転勤や部署異動のないキャリアコースの社員の基本給を低く設定している
  • 土日祝に出勤の必要がある就業形態の社員の基本給を高く、土日祝は確実に休める就業形態の社員の基本給を低く設定している

賞与

賞与についても、非正規社員が正社員と同一の貢献を行った場合、同じ基準で賞与額を決定しなければなりません。

【賞与における待遇差の判断例】

判断の視点 合理的な待遇の例 不合理な待遇の例
業績 高い業績を上げた社員が、通常の業績の社員より高い賞与を受ける 同じ業績を上げたにもかかわらず、正社員への賞与は高く、非正規社員の賞与は低い
賞与支給基準 正社員には基本的に全員に賞与を支給するが、非正規社員には賞与を支給していない

各種手当

役職手当、住宅手当、通勤手当、深夜・休日労働手当など、基本給に付加する各種手当についても、正社員と非正規社員の支給基準は同じである必要があります。

【合理的な待遇の例】

  • 追加手当:夜間勤務や危険業務に従事する労働者が追加手当を受ける
  • 役職手当:8時間フルタイム勤務の社員には満額、時短勤務の社員には労働時間に比例した金額(例:4時間勤務の時短社員ならフルタイム社員の半額など)の役職手当を支給する
  • 通勤手当:週4日以上勤務する従業員には月額の定期券相当額を支給し、週3日以下や出勤日数が変動する従業員には日額の交通費相当額を支給する

【不合理な待遇の例】

  • 手当支給基準:通勤手当や住宅手当など、各種手当が正社員にのみ支給され、同じ条件で働いている非正規社員には支給されない、または金額に差がある
  • 手当単価の設定:非正規社員の深夜労働や休日出勤が正社員より少ないことから、非正規社員の深夜手当や休日出勤手当の単価を正社員の単価より低く設定する

業務内容や勤務時間、勤務地、居住地などによって手当に差が出ることは合理的です。しかし、雇用形態のみを理由として手当に差が出ることは不合理な待遇差とされます。

福利厚生

正社員に利用させている食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設は、非正規社員にも利用を認める必要があります。また、転勤者用社宅(転勤の有無などの要件が同一の場合)、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障などについても、非正規社員に対して正社員と同じ利用・付与を行わなければなりません。

【合理的な待遇の例】

  • 慶弔休暇:週2日勤務の短時間労働者に対しては、勤務日の振替での対応を基本とし、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与する

【不合理な待遇の例】

  • 施設利用:正社員のみが社員食堂や休憩室、更衣室、福利厚生施設を利用でき、非正規社員は利用できない
  • 社宅利用:正社員が利用できる社宅を、非正規社員には利用を認めない
  • 病気休職制度:正社員にある病気休職制度を、非正規社員には認めない

教育訓練

職務に必要な技能・知識を習得するために実施する教育訓練も、雇用形態に関係なく、職務内容に応じて実施しなければなりません。

【教育訓練における待遇差の判断例】

判断の視点 合理的な待遇の例 不合理な待遇の例
訓練受講の機会 広範な職務内容を担当する正社員には職務内容に応じた多様な教育訓練の機会を設け、担当する職務内容が限られている非正規社員には、担当する内容に応じた教育訓練の機会を設ける 正社員のみが職務に関連する教育訓練を受けられ、非正規社員にはその機会が与えられない

退職金

退職金については、同一労働同一賃金ガイドラインに直接の記載はありません。しかし、賞与と同様の考え方が適用されると解釈されています。

退職金の性質によって、待遇差の合理性の判断が異なります。退職金が長期勤続への功労報償として位置づけられている場合、正社員と非正規社員の勤続年数や職務内容の違いに応じた待遇差は合理的と判断される可能性があります。一方、退職後の生活保障という性質が強い場合は、より慎重な検討が必要です。

2020年の最高裁判決(メトロコマース事件)では、契約社員に退職金を支給しないことは不合理ではないと判断されました。判決では、退職金が労務の対価の後払いや継続的な勤務に対する功労報償など複合的な性質を持つこと、正社員と契約社員の職務内容に相違があったことが考慮されています。

退職金制度を設ける場合、その目的を明確にし、正社員と非正規社員の職務内容や責任の範囲、勤続年数などの違いを踏まえた合理的な設計が求められます。

参考:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」

同一労働同一賃金を導入する際の注意点

最後に、同一労働同一賃金制度を導入する際に注意すべきポイントを確認しておきましょう。

待遇差について説明できるようにする

パートタイム・有期雇用労働法では、非正規社員から求めがあった場合、待遇差の内容や理由を説明する義務があります。この説明義務は、2020年4月(中小企業は2021年4月)の法改正で強化されました。

説明義務が発生するのは、「雇用時」と「求めがあったとき」の2つのタイミングです。雇用時には、短時間労働者や有期雇用労働者を雇い入れる際に待遇の内容を説明します。雇用後に労働者から求めがあった場合は、正社員との待遇差の内容や理由について説明しなければなりません。

説明は口頭でも文書でも可能ですが、労働者が理解できるよう丁寧に説明する必要があります。正社員との待遇差について、職務内容や責任の範囲、配置の変更範囲などの違いを踏まえ、合理的な理由を明確に示すことが求められます。待遇差の説明資料をあらかじめ文書で準備しておくと、スムーズに対応できるでしょう。

なお、説明を求めた労働者に対して、そのことを理由に解雇や降格、減給などの不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。

不利益変更を行わない

不合理な待遇差を是正する際は、労働者にとっての不利益変更が発生しないよう注意しなければいけません。

不利益変更とは、労働条件が悪くなるような労働契約の変更を指します。不利益変更を行うには、原則として従業員の合意が必要であり、会社側が一方的に変更することはできません。合意が不要とされる場合でも、不利益の程度や変更の必要性などから見て、その変更が合理的なものと認められる必要があります。

同一労働同一賃金ガイドラインには「正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を解消するに当たり、基本的に、正社員の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえない」という趣旨の記述があります。つまり、不合理な待遇差の是正は、正社員の待遇を引き下げるのではなく、非正規社員の待遇を引き上げることで実施しなければならないということです。

罰則はないが、違反した場合のリスクを理解する

同一労働同一賃金を守らない企業への罰則は定められていませんが、同一労働同一賃金への違反が認められた場合、都道府県労働局長による助言や指導、勧告の対象になります。これを無視して改善を行わなければ、企業名が公表される可能性もあります。

罰則規定はないとはいえ、違反を続ければ最終的に企業のイメージが大きく損なわれます。関連する法律や同一労働同一賃金ガイドラインを遵守し、人事制度や社内体制を改革していくことが重要です。