採用とは何か|会社の人事担当者が知っておくべき意味や採用基準

update更新日:2025.05.21 published公開日:2023.12.26
採用とは何か|会社の人事担当者が知っておくべき意味や採用基準
目次

会社が事業を継続し成長するには、採用活動で事業に必要な人材を獲得する必要があります。人手不足で人材獲得競争が激化する中、採用の手段や手法も多様化しています。

本コラムでは、人事担当者が知っておくべき採用の意味、キャリア採用やアルムナイ採用といった採用の手法、人事採用を成功させるためのポイントなどを解説します。

採用とは?基本の意味と会社が行う理由

ここでいう採用とは「人材採用」を指します。つまり、企業の経済活動に必要な経営資源の中で最も重要な「人材を雇い入れること」です。

採用活動で不可欠なことは、目的の明確化です。目的があいまいだと「採用しても長続きしない」「早期離職者が多い」など、ミスマッチの原因になる可能性があります。

しかし、求める人材を容易に見つけることは難しく、多くの企業が課題と感じているでしょう。そのため、採用活動には適切な戦略が必要です。

採用という言葉の意味

採用には、「必要なものを採取して利用する」「適当である人物や意見、手法などを用いる」といった意味があります。

ビジネスシーンでは、「人を雇用する」という意味で使いますが、大元の意味からもわかるように、単に人を雇うのではなく、「適した人材を選んで雇用する」ことが採用の本質です。

採用の英語や類語、例文

人事採用の英訳は「recruitment」です。動詞だと「recruit」となり、以下のように使われます。

<例文>

We are recruiting a new staff member.(新しいスタッフを募集中です)

「recruit」の同意語・類語としては、「hire」「employ」などがあり、いずれも「雇う」「雇用する」といった意味です。

また、上で説明したように、「採用する」という言葉は人だけでなく意見や手法などを対象にも使われますが、この場合の英語では、「adopt」や「accept」がよく使用されます。

<例文>

I’ll adopt this method.(この方法を採用しよう)

採用と内定の違い

人事採用の活動としては、採用とともに「内定」という言葉もよく使用されますが、採用と内定では法的に意味が異なりますので注意が必要です。

採用とは応募者が企業の採用試験に合格した段階のことを指します。一方、内定は応募者が入社に同意して、企業と応募者双方の合意形成がなされた状態です。つまり、採用は内定の前段階であり、企業側が一方的に採用したいとの意思表示をしているだけなので法的拘束力は生じませんが、内定では両者が合意して労働契約が締結されているとみなされます。

人事上で採用や内定という言葉を混同して使用したり、口頭のみの通知で済ませたりすると、法的トラブルにつながる恐れがありますので注意してください。

採用と内定の取り扱いについては、以下のコラムも参考になります。

コラム「内定取り消しとは|企業の採用判断の重要性」はこちら

採用の目的:会社運営を支える人材の確保

企業はどのような目的で採用を行うのでしょう。

代表的なケースを以下に3つご紹介します。

欠員を補充するため

目的の1つには、欠員補充があります。

例えば、5人のチームで退職者が1人出たとします。従来5人でやっていた業務を4人でこなそうとすると、負担が大きく、生産性の低下などが懸念されます。このような場合は、退職した人と同等、または、それ以上のスキルを持つ人材の採用を目指すことになるでしょう。

課題解決のため

2つ目は、組織が抱えている問題を解決したい場合です。

問題解決のノウハウやスキルを持つ人材を新しく採用することで、異なる経験やアイデアを獲得したり、既存の社員に刺激を与えたりすることができます。専門知識の不足や考え方の硬直化といった課題の解決に役立ちます。

リーダーとなる人材を確保・育成するため

3つ目は、組織拡大や新規事業の立ち上げで、新たな役職者やリーダーが必要になるケースです。

社内で育成してきた人材にリーダーを任せられればよいのですが、新しい分野で事業を始めたり、海外進出を図ったりする場合など、自社の人材でまかなえないときは、外部から採用する必要があるでしょう。

役職者やリーダーには高いスキルや経験が求められるため、採用の難易度は高くなります。

対象者ごとの採用方法

次に、採用方法をご紹介します。新卒者や中途採用者など、対象者ごとに様々な採用方法があります。

それぞれの方法を簡潔にまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。

新卒採用

新卒採用とは、高校や大学を卒業予定の学生を採用する手法です。

新卒者は通常、卒業してすぐの4月に一斉入社するため、採用担当者は、会社説明会や求人から選考まで事前にスケジュールを組んで準備します。新卒者の採用活動の解禁日は卒業年度前年の3月1日からで、広報活動開始日として関係省庁(内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)が毎年のスケジュールを案内しています。*

新卒採用の目的は、毎年一定数の人材を安定的に確保することです。企業が持続的に成長するためには、各世代の人材を絶えることなく確保する必要があります。

新卒者は、他の企業での就業経験がなく、いわば真っ白な状態です。他企業の文化や価値観にとらわれず、自社の風土の中で一から教育できるため、企業のマインドや風土をしっかり吸収できるでしょう。

人材の選定や育成にコストや時間がかかりますが、長期的に雇用・育成する方法として、多くの企業が取り入れています。

*参考:厚生労働省|大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期について

第二新卒採用

第二新卒採用とは、高校や大学を卒業して就職した後に1~3年で離職し、転職活動に取り組む若手求職者を採用することです。一般的な第二新卒の定義は卒業後3年以内、年齢は4年制大学卒の場合は25歳前後とされていますが、明確な定義はありません。

第二新卒者採用のメリットは、新卒者ほど育成コストがかからない点です。多少なりとも社会人経験があるため、一通りのビジネスマナーや社内での立ち居振る舞いを身につけていると考えてよいでしょう。それでいて社会人経験自体はまだ浅く、自社の風土になじみやすい点が魅力です。

新卒採用で想定していた人数を確保できなかった場合、第二新卒採用にも注力するとよいでしょう。第二新卒者は、前職の経験を踏まえてスキルアップやキャリアアップを考えていることが多いため、意欲の高さにも期待できます。

中途採用(キャリア採用)

中途採用とは、就業経験がある人材を採用する手法です。即戦力を確保するための手段として用いられることが多く、人手が足りない部署の人員補充などで活用されます。

中途採用者はしっかりとした社会人経験があるため、ビジネスの基礎に関する研修はほとんど必要ありません。前職の業種が自社と同じであれば、業界研修の手間も省け、それまでに培ってきた経験をすぐに活かせます。

キャリア採用とは、中途採用の中でも、特に専門的な経験やスキルを積んだ人材をターゲットとして採用することをいいます。キャリア採用では、特定の職種の職務経験や資格取得を条件にするなど、より即戦力としての活躍を期待して採用が行われます。

中途採用者が自社に入ってくるメリットは、他社で培ったノウハウが自社に入り、これまでとは異なる視点で事業の課題を捉え、より効果的なアプローチにつながる可能性があることです。

アルバイト・パート採用

アルバイト・パート採用とは、パートタイム労働者を採用することです。パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が正社員より短く定められている、アルバイト、パート、嘱託、契約社員などを指します。

労働人口におけるアルバイト・パートの割合は年々増加しており、企業の戦力として欠かせません。繁忙期や閑散期に合わせて人員を調整できるため、人件費の削減を目的に採用活動が実施されます。また、アルバイト・パートとして雇った人材が自社に合うとわかれば、本人の意志や会社からの要請によって正社員登用することもあります。

主な採用手段12選

続いて、どのような手段で採用を行うかを見ていきます。ここでは、実際に利用されている12種類の採用手段をご紹介します。

(1)求人広告

1つ目は、求人情報サイトや就職情報誌などに自社の求人広告を掲載する方法です。掲載には費用が発生します。求人広告の内容に興味を持った求職者からの応募が来るため、それを待ち、連絡が来たら選考を進める形となります。

(2)合同企業説明会

2つ目は、合同企業説明会です。合同企業説明会とは、1つの会場で複数の企業が出展し、説明会に参加した求職者と直接会って話す採用活動です。地方自治体や求人情報サイトが主催するケースが多く見られます。

1人の参加者が複数の企業をまわる形が多いため、企業側としても、より多くの求職者に自社をアピールできるでしょう。1対1で話す時間もあり、質疑応答や面接を効率良く進められます。

(3)人材紹介サービス

3つ目は、人材紹介サービスの利用です。人材紹介サービスとは、登録した求職者と採用を行いたい企業のマッチングを行うサービスをいいます。複数の業種から広く選べる場合もあれば、1つの業種に特化している場合もあります。特定の業種に特化したサービスでは、より専門性の高い人材を見つけられるでしょう。

(4)ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、求職者への職業紹介や企業側の雇用に関する相談などを行う国の行政機関です。無料で求人情報を掲載できるため、通常の採用手段の1つとして活用するほか、あまりコストをかけられない場合にも有用です。

基本的には、人員の補充や未経験者の採用・育成を前提とする企業に向いています。エージェントを利用する転職活動とは異なり、どのような求職者も利用できる仕組みですので、高度なスキルを持つ求職者の割合は低い傾向にあります。

ハローワークでは、障害者雇用や助成金に関する相談が可能です。採用戦略に応じて活用するとよいでしょう。

(5)自社Webサイト(採用サイトの運用)

5つ目は、自社サイトで採用情報をメインに扱うサイトやページを作成し、これを通して人材を募る方法です。企業サイトでは「求人情報」「採用情報」といった名称で見かけることが多いでしょう。

採用サイトや採用ページには、募集要項だけでなく、企業理念やビジョンを踏まえたメッセージ、在職者インタビューなども掲載できます。自社の魅力をしっかり提示できますので、企業風土や事業内容、働き方にマッチした人材にアプローチしやすい点が特徴です。

(6)リファラル採用

リファラル採用とは、自社の従業員による紹介をもとに新たな人材を採用する手法です。自社の文化や業務内容をよく知っている従業員が候補者を選んで採用担当者に紹介する形ですので、職務経歴やスキルだけでなく、人柄や企業風土との相性も考慮した採用ができます。他の採用手段で発生しやすいミスマッチのリスクを下げられるでしょう。

ただ、紹介者や求職者が「採用されるだろう」と大きな期待を持っていると、万が一紹介された求職者が不採用となった場合に、人間関係へ悪影響を及ぼす恐れがあります。「まずは少し話してお互いを知る」など、一気に採用プロセスを進めず、自社が本当に求める人材かどうかを検討するとよいでしょう。

(7)ソーシャルリクルーティング

7つ目のソーシャルリクルーティングは、X(旧、Twitter)やFacebook、InstagramなどのSNSを活用して採用活動を行う方法です。

ソーシャルリクルーティングの利点は多くあります。最も大きな特徴は、求職者か否かを問わず、広い層にアピールできること。媒体ごとに主な年齢層が異なりますので、採用戦略に合わせて媒体を使い分けるとよいでしょう。まだ就職・転職活動をしていない潜在層にも気軽に自社を知ってもらえる点も魅力です。

また、SNSを利用した採用活動では、候補者のアカウントからプロフィールや日頃の発信内容を閲覧できるという特徴があります。候補者が積極的にSNSを利用していれば、興味・関心、仕事や社会問題への向き合い方、他の人とのコミュニケーションの仕方などを確認できるでしょう。

自社と相性が良さそうなら、SNSのメッセージ機能を使って直接コミュニケーションすることも可能です。

(8)学校の就職課

8つ目は、高校や大学・専門学校などの教育機関の就職課に、求人を掲示してもらう方法です。学部や専門分野を指定して募集できますので、自社に必要なスキルを持った人材にピンポイントでアプローチできるでしょう。採用において特に重視したい知識やスキルがある場合にも有効な方法です。

また、学校内に設置された掲示板などに貼り出されるため、求人情報が学生の目に留まりやすいというメリットもあります。

(9)インターンシップ

インターンシップとは、選考活動の6カ月~1年前に企業内で就業体験をしてもらう方法です。

産学協議会の定義では、「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」と「高度専門型インターンシップ」があります。2025年3月卒業予定者から、「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」により企業が得た学生情報を、広報活動や採用選考活動に使用できるようになりました。*

実際の採用活動が行えるのは卒業前年の3月1日からですが、それより前にインターンシップで、優秀で意欲的な新卒人材にアプローチできるため、大手企業から中小企業、スタートアップまで企業規模を問わず活用が進んでいます。

インターンシップでは、実際に自社で学生が働く姿を見て、適性を見極められる点に大きな魅力があります。就業体験の中で、得意な業務や苦手分野、発想力、コミュニケーション力などを見ることもできるでしょう。入社後のミスマッチも発生しにくくなります。

*出典:厚生労働省ホームページ|「令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります」【職業安定課】

(10)ヘッドハンティング

ヘッドハンティングは、経営者や管理職・幹部候補者、特定の分野で大きな業績を上げた専門職など、ビジネスの最前線で活躍している優秀な人材を引き抜く採用手段です。自社に必要なハイクラスの人材をヘッドハンティング会社に探してもらい、自社に引き入れます。

ヘッドハンティングを行う目的は、専門スキルや経験のある人物をスカウトし、優秀な人材を確保することです。そのため、入社段階で高いポストや好待遇を用意するケースが一般的です。

(11)アルムナイ採用

アルムナイ採用とは、一度離職した従業員を再び雇用する方法です。かつての日本では終身雇用を前提とした働き方でしたが、現在は転職が身近な選択肢となっています。こうした人材の流動化が進む中で、「自社を離れた人材を再雇用する」というアルムナイ採用が注目されています。

アルムナイ採用の魅力は、自社の業務を経験している人材を再雇用できることです。企業理念や業務に関する教育コストを削減できるとともに、即戦力としての活躍も期待できます。

2024年には、三菱電機株式会社や味の素株式会社など大手企業が続々とアルムナイ採用の導入を発表しており、人材獲得競争が激化する中、今後もアルムナイ採用は増加していくと考えられます。*

*参考:三菱電機|ニュースリリース 退職者との継続的なつながりを構築する「アルムナイネットワーク」を新設

*参考:味の素株式会社|味の素株式会社はこの度、「味の素アルムナイコミュニティ」を新設

(12)ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、企業が求職者に直接アプローチする採用手法です。求人を出して待つのではなく、自社にマッチする人材を企業自ら探してコンタクトを取るため、「攻めの採用」といわれます。前述したソーシャルリクルーティング、リファラル採用、ヘッドハンティングなども、ダイレクトリクルーティングの一種です。

ダイレクトリクルーティングは、他の業者を通さず自社が直接アプローチするため、求める人材にピンポイントでオファーできます。一方で、適切な人材を探したり個別に対応したりする必要があり、採用担当者の負担は大きくなるでしょう。

採用に関連する用語

採用の意味や主な手法などについて解説しましたが、ほかにも多種多様な採用に関連する用語があります。

ここでは、採用に関連する用語でビジネス上よく使われるものを解説します。

採用マーケティングとは?意味と実例

採用マーケティングとは、企業の採用活動にマーケティング手法を取り入れた考え方を指します。人材獲得競争が激化し、労働者の価値観も多様化する中で、採用する人材を顧客と捉え、マーケティング手法を活用して戦略的に優秀な人材を獲得する必要性が増しているのです。

採用マーケティングでは、求職者に自社の魅力を伝え、入社意欲を高めるために戦略的なアプローチをとります。マーケティングのフレームワークである「ファネルモデル」を採用プロセスに応用することで、認知から採用に至るまでの流れを管理するのが特徴です。

例えば、採用マーケティングではSNS広告や採用専用サイトを活用してターゲット層へアプローチします。内定者向けのフォローアップイベントを開催することで、入社意欲を維持するなどの実例もあります。こうした施策により、優秀な人材を獲得できる確率がアップするでしょう。

ジョブ型採用とは?

ジョブ型採用とは、特定の業務や職務に対して必要なスキルや経験を持つ人材を採用する手法を指します。日本で従来主流のメンバーシップ型採用が「総合職」として幅広い業務に適応できる人材を募集するのに対し、ジョブ型採用では「職務内容」が明確に定義されます。特に専門性が求められる職種やプロジェクトベースの業務に適しているのが特徴です。

欧米では一般的なジョブ型採用ですが、日本でも雇用の流動化やITなど専門性の高い職種が増えた影響により、大企業を中心に導入が進んでいます。

例えば、ジョブ型採用は、デジタルマーケティングの専門家やAIエンジニアなど、具体的なスキルセットを持つ人材を必要とする場合に効果的です。ジョブ型採用の導入により、採用ミスマッチを減らし、効率的な人材配置が可能になります。

ブラインド採用とは?

ブラインド採用とは、応募者の個人情報を採用プロセスの初期段階で隠す手法を指します。名前、年齢、性別、出身校などの情報を伏せた状態で、スキルや職務経験などの客観的要素に基づいて選考を行います。

この採用手法は、多様性(ダイバーシティ)を重視する企業で活用されることが増えています。例えば、履歴書を匿名化し、スキルテストや課題の提出結果だけで選考を進めることで、先入観のない公平な評価を実現します。結果として、多様な背景を持つ人材の採用が可能になり、企業文化の革新やイノベーションの促進につながるのです。

ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用とは、応募者の現時点でのスキルや経験よりも、将来の成長可能性やポテンシャルを重視する採用手法です。特に、新卒採用や若手人材の中途採用でよく用いられます。

例えば、ポテンシャル採用では「課題解決力」や「学習意欲」など、経験や資格だけでは測りきれない要素を評価基準とします。この採用方式により、柔軟性が高く、企業文化に適応しやすい人材を確保することが可能です。育成前提の採用であるため、長期的な成長を視野に入れた組織構築に適しています。

採用基準の作り方

応募者を採用する際は、面接官によって判断に差が出ないよう、明確な採用基準の設定が大切です。

ここでは、採用基準の作り方のチェックリストをご紹介しますので、適切な人材採用にお役立てください。

(1)人材要件を定義する

人材要件とは、企業がどんな人材を求めているかを定めた基準です。業務経験、スキル、資質、資格や免許、雇用形態など、必要な要件を設定しましょう。

こうした要件を定める際は、経営陣だけでなく現場担当者などの意見も取り入れ、現場が必要とする人材像から乖離しないよう注意してください。

育成を前提とするか、即戦力となる人材を募集するかで、求職者に求めるべき経験やスキルは大きく異なります。採用後の育成計画も考慮しつつ、人材要件を定義することが大切です。

(2)コンピテンシー項目を洗い出す

コンピテンシーとは、高い業績を上げる人材(ハイパフォーマー)に共通する行動特性のことです。日本では2000年前後から人事評価や人材育成に活用されています。

コンピテンシーを設定するには、自社で高パフォーマンスを発揮する社員の行動・思考を分析し、できるだけ細かく行動内容や動機を洗い出すことが重要です。職位・職種別に分析する必要がありますので、十分に時間を取って進めましょう。

分析によって抽出したコンピテンシーは、求職者がどのくらいその特性を持っているかを判断するために活用します。5段階程度にレベル分けをして指標とすると、自社への適合性を確認しやすくなります。

コンピテンシーについては以下のコラムで詳しく解説しています。

コラム「コンピテンシーとは?意味と評価・面接に使える項目一覧」はこちら

(3)求める人材像の明確化

3つ目のチェックポイントは、求める人材像の明確化です。人材要件の定義やコンピテンシーの分析をもとに、求める人材像を明確化します。その際、できるだけ具体的な人物像を設定すると、面接官もイメージしやすくなります。スキルセットやマインドセットなどについても明記しましょう。

例えば、経理の経験者で有資格者を募集する場合、「経理としての実務経験が3年以上あり、経理に関する資格を保有しているにもかかわらず、給与が上がらないため転職活動をしている」のように具体的に言語化しましょう。

(4)重視すべき評価項目の決定

最後に、各要件や行動特性、そのほか人物像にある要素から、特に自社が重視する評価項目を決めます。企業理念やミッション・ビジョンにかかわる項目もあれば、業務に必須となるスキルや特性といった項目もあるでしょう。

ただし、あれもこれもと多くの項目を重視しすぎると、候補者の誰もそれを満たさないケースが発生します。採用担当者や面接官の負担が増えてしまう点にも注意してください。「最低限、これだけは満たしてほしい」「この点を満たしていれば高評価する」など、絞り込んでいくことが大切です。

明確な評価項目と重視するポイントを設定し、各面接官による評価のばらつきを減らしましょう。

人材採用を成功させるためにおさえるべきポイント

人材採用を成功させるためには、単に求人を出すだけでなく、情報発信や応募者との関係構築、採用ブランディングの強化など、様々な取り組みが求められます。

これらの施策を効果的に実施することで、求職者に自社の魅力を的確に伝え、マッチする人材を採用しやすくなるでしょう。

最後に、採用活動を円滑に進め、優秀な人材を確保するためにおさえておきたい3つのポイントを解説します。

採用活動での情報発信を効果的に

採用活動において情報発信を効果的に行うことは、優秀な人材を惹きつけるために欠かせない要素です。特に自社の魅力や価値観をわかりやすく伝えることで、求職者とのマッチング精度が向上します。

情報発信の手段としては、公式採用サイトやSNS、動画コンテンツなどを活用するのが一般的です。例えば、採用サイトでは社員インタビューや職場の雰囲気を伝える写真を掲載し、SNSでは企業の活動やイベントの様子をタイムリーに発信します。これにより、応募前に会社のイメージを具体化できるため、応募者の動機づけにつながります。

採用者との関係構築が鍵

採用プロセスの中で応募者との関係を築くことは、入社後の定着率向上にも寄与します。特に、応募者が企業に対して信頼感を持てるかどうかが重要なポイントです。

応募者とのコミュニケーションを密にすることで、疑問や不安を解消し、企業文化や価値観を共有できるでしょう。

例えば、選考過程での迅速なフィードバックや、面接後にフォローアップメールを送るといった取り組みが挙げられます。また、内定者向けの懇親会を実施することで、職場や同僚との親近感が深まることが期待できます。

採用ブランディングの強化

採用ブランディングとは、自社を「働きたい会社」として求職者に認識してもらうための活動です。採用ブランディングは、採用マーケティングの一環として、優秀な人材を引き寄せるための企業ブランディングを行います。

具体的には、企業のビジョンやミッションを明確にし、それを一貫したメッセージとして外部に発信します。また、社員の働き方やキャリアパスを紹介することで、リアルな職場イメージを伝えることも効果的です。例えば、従業員の声やキャリアストーリーをSNSやウェブサイトに掲載してみましょう。求職者が「自分もここで働きたい」と思える環境をアピールできれば、採用ブランディングが強化され優秀な人材を惹きつけられます。