経営戦略とは?主な種類と分析手法、フレームワークから成功事例まで



経営戦略は企業の成長と競争優位を築くための指針です。現代の企業には、限られた資源の効率的な配分や市場環境への柔軟な対応が求められています。
本コラムでは、経営戦略の基本概念から主な種類、分析手法やフレームワーク、さらに現代のビジネス環境における成功事例までを体系的に解説します。
経営戦略とは
はじめに、経営戦略の基本概念や現在必要とされている背景、企業経営における経営戦略の目的について詳しく見ていきましょう。
経営戦略の定義と基本概念
経営戦略とは、企業が経営目標を達成するための戦略全般を指す言葉です。ほとんどの企業の経営目的は、企業の存続・発展となっており、そのためにとられる手段や目標は多岐にわたります。
「戦略(strategy)」という用語は、もともと軍事分野で使われていた「戦争を包括的かつ体系的に運営するための方針や策」を意味する言葉です。この概念は徐々に経営学の領域に取り入れられ、A.D.チャンドラーを含む多くの研究者によって理論的に発展してきました。
経営に関する文献には、「事業戦略」「人事戦略」など、様々な「〇〇戦略」という表現がよく登場します。例えば、「企業が競争優位を獲得するために、どのような事業展開を行うべきか」「その事業を成功させるためにどのような組織体制を構築し、適切な人材をどのように配置するか」といった内容です。
これはつまり、経営が本質的に競争環境下での活動であることを示唆しています。企業の持続的な成功には、競合他社との差別化や市場での優位性確保が不可欠であり、そのための戦略的視点が極めて重要だということです。
経営戦略が求められる背景
現代のビジネス環境は、かつてないスピードで変化しています。日本においては、人口減少や労働者不足、消費市場の縮小などの課題が深刻化している一方で、デジタル技術の進化により、多くの企業でビジネスモデルの変革が急速に進んでいます。
このような激変する環境下では、「戦略を立てている間にも状況が一変する」という理由から、経営戦略そのものの意義を問う声も少なくないでしょう。しかし同時に、変化が激しい時代であるからこそ、限られた経営資源を効果的に配分するための指針として、経営戦略の重要性が増しているという見解もあります。
加えて、かつては比較的、長期間有効な戦略が機能していましたが、現在では競争優位性が一瞬で崩れる可能性も否定できなくなってきました。そのため、企業は環境変化に応じて、戦略を柔軟に修正する能力が求められているのです。
経営戦略の目的
経営戦略の目的として、例えば次のようなものがあります。
【経営戦略の主な目的】
経営戦略の目的 | 内容 |
---|---|
組織の一体感 | 組織全体が一丸となって目標達成に向かうための指針を示す |
競争力の強化 | 他社との違いを明確にし、市場のニーズに合わせて変化する力を高める |
組織の成長促進 | 変化する市場環境や競合状況に適応するための道筋を明確にする |
リソースの有効活用 | 経営資源を効率的に活用し、無駄な浪費を防ぐ |
リスク対策 | 市場の変化や予期せぬ問題に対応する準備をする |
これらの目的は相互に関連しており、企業が持つ限られた経営資源を最適に配分するための指針となります。
特に変化の激しい現代のビジネス環境では、経営資源の効率的な活用と適切なリスク管理が企業の持続的な成長に不可欠です。市場と自社の状況を客観的に分析することで、自社の強みを活かした戦略立案が可能になります。
経営戦略と関連する概念(経営戦術・経営計画)との違い
経営戦略と混同されやすい概念として、経営戦術や経営計画などがあります。ここでは、それぞれの特徴と、経営戦略との違いをご説明します。
経営戦術の概念と経営戦略との違い
経営戦術とは、経営戦略を実行に移すための具体的な行動や施策のことです。経営戦略が「何を達成するか」という目標を設定するのに対し、戦術は「どのように達成するか」という実行方法を示します。
例を挙げると、「若年層の顧客を獲得する」という経営戦略に対し、「SNSを活用したマーケティングキャンペーンを実施する」という具体的な施策が戦術にあたります。
経営戦略は通常1〜5年の中長期で設定されますが、経営戦術は数カ月ごとに見直されることが一般的です。
経営計画の概念と経営戦略との違い
経営計画とは、経営戦略を実現するために実施する具体的な行動計画です。「いつ、何を、どのように行うか」という詳細なスケジュールや計画、さらに収益目標やリソース配分などの具体的な要素で構成されます。
対して、経営戦略は企業の中長期的な目標達成のための大局的な方針を示すものです。
両者の関係は、経営戦略が「何を目指すか(なぜ・何を)」を示し、そのうえで経営計画が「どのように実現するか(いつ・どのように)」を示すという補完関係にあります。つまり、経営計画は、経営戦略を実行に移すための詳細なロードマップとも言い換えられます。
経営戦略の3つの階層構造
経営戦略は、大別すると「企業戦略(全社戦略)」「事業戦略」「機能別戦略」の3つの階層に分けて考えることができます。「企業戦略が全体の方向性を示したものを、事業戦略が実現方法を具体化し、機能別戦略が実行計画を詳細に定める」という構造です。
それぞれの階層の特徴を詳しく見ていきましょう。
企業戦略(全社戦略)
企業戦略(全社戦略)は経営戦略の最上位に位置し、会社全体の方向性を示す役割を担っています。どの市場で競争するか、どの事業に注力するか、どのような価値を提供するかといった基本方針を定める戦略です。
企業戦略が担う主な機能は次の3つです。
【企業戦略(全社戦略)の主な機能】
企業戦略の主な役割 | 内容 |
---|---|
全社的な方向性の統合 |
|
企業の存在意義の明確化 |
|
事業ポートフォリオの最適化 |
|
企業戦略は通常、5〜10年といった長期的な視点で策定されるもので、CEOや経営陣が中心となって決定します。市場環境の変化や自社の強み・弱みを分析したうえで策定し、企業全体としての競争優位性を確立するための基盤となります。
事業戦略
事業戦略は、会社の事業部門ごとに立てる具体的な計画です。企業戦略が示した大きな方向性に沿って、各事業がどのように競争優位性を実現するかを示します。
企業戦略と事業戦略の概念を比較すると、次のようになります。
【事業戦略と企業戦略の主な違い】
比較項目 | 企業戦略 | 事業戦略 |
---|---|---|
対象範囲 | 企業全体 | 特定の事業部門 |
時間軸 | 中長期的(3〜10年) | 比較的短期的(1〜3年) |
意思決定者 | 経営トップ(CEO、取締役会) | 事業部長・部門責任者 |
主な焦点 | 「どの事業で戦うか」 | 「その事業でどう勝つか」 |
主要課題 | 経営資源の最適配分 | 市場での競争優位性確立 |
事業戦略は独立して存在するものではないため、常に企業戦略との整合性を保つことが重要になってきます。各事業部門が企業全体のビジョンや方向性を理解し、それに沿った戦略を立てることで、組織全体としての一貫性や相乗効果が生まれるという関係性です。
機能別戦略(マーケティング戦略、財務戦略など)
機能別戦略とは、企業の各部門が持つ専門性を最大限に活用して、事業戦略の実現を支援する具体的な計画のことです。例えば、マーケティング部門・財務部門・人事部門などが、それぞれの専門知識やスキルを活かして立てる戦略がこれに該当します。
主な機能別戦略には、次のようなものがあります。
【機能別戦略の主な種類】
戦略 | 内容 |
---|---|
マーケティング戦略 | 顧客ニーズを深く理解し、効果的な製品開発や販売促進を行う |
財務戦略 | 適切な資金調達や投資判断を行い、企業の財務基盤を強化する |
人事戦略 | 必要な人材の採用、育成、配置を戦略的に行い、組織の競争力を高める |
生産戦略 | 効率的な製造プロセスを構築し、品質向上とコスト削減を両立させる |
研究開発戦略 | 市場ニーズに合った新技術や新製品の開発を推進する |
機能別戦略は、企業戦略と事業戦略を踏まえて策定されます。全社の方向性に沿って、各事業に必要な経営資源が配分され、さらにその中で各機能に割り振られるという流れです。
しかしこれは同時に、機能別戦略の成否が事業戦略の目標達成に直接影響するということでもあります。例えば、マーケティング戦略で新たな顧客層を開拓できれば事業の売上が増加し、生産戦略でコスト削減が実現すれば事業の収益性向上につながります。
経営戦略の主な種類と成功事例
前章では経営戦略の階層構造について解説しました。ここからは、経営戦略には具体的にどのような種類があるのか、代表的な成功事例とともに見ていきましょう。
有名な経営戦略の1つに、マイケル・ポーターが1980年に著書『競争戦略論』(Competitive Strategy)で提唱した「3つの基本戦略」と呼ばれる3種類の経営戦略(コストリーダーシップ戦略・差別化戦略・集中戦略)があります。
加えて、現代のビジネス環境で注目されている代表的な経営戦略(多角化戦略、ブルーオーシャン戦略)もご紹介します。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略は、ポーターが提唱した3つの基本戦略の1つです。この戦略では、業界内で最も低いコスト構造を実現し、競争優位性を確立することを目指します。
コストリーダーシップ戦略で用いる手法のうち、代表的なものとして以下の5つがあります。
【コストリーダーシップ戦略の主要手法】
手法 | 概要 |
---|---|
規模の経済 | 生産量を増やすことで、1単位当たりの固定費を低減させる効果を活用 |
経験曲線効果 | 同じ製品の生産を繰り返すことで、ノウハウが蓄積され、効率が向上する効果を活用 |
生産プロセスの効率化 | 生産工程の最適化、自動化や無駄の排除などにより、生産効率を高める |
サプライチェーンの最適化 | 原材料の調達方法の工夫や中間業者の排除により、調達コストを削減する |
製品設計の簡素化 | 製品の設計段階からコスト削減を考慮し、部品点数の削減や標準化を図る |
コストリーダーシップ戦略では、これらを活用することで、競合他社より低価格で商品やサービスを提供します。そうすれば、他者と同じ価格でも利益を多く確保することができます。結果として、価格競争が発生したとしても、競争力を維持しながら多くの顧客を獲得し、市場シェアを拡大することができるのです。
【成功事例】
- マクドナルド:食材調達から販売までの過程を効率化・省力化し、低価格販売を実現
- ユニクロ:SPA(製造小売業)モデルにより中間業者を排除し、低コスト生産を実現
差別化戦略
差別化戦略もポーターの基本戦略の1つですが、コストリーダーシップ戦略とは以下の点で異なります。
- 製品・サービスの独自性や希少性を追求する
- ブランドイメージや品質、機能などの面で、他社との違いを明確にする
簡単にいうと、競合他社との価格競争を回避し、顧客ロイヤルティの向上を狙う戦略になります。
【成功事例】
- スターバックス:「サードプレイス」という自分らしくくつろげる場所を提供することで他社との差別化を実現
- 無印良品:徹底してシンプルなデザインの製品を提供することで、他社とは一線を画すブランドイメージを確立
集中戦略
集中戦略は、マイケル・ポーターが提唱した基本戦略の3つ目で、小規模な市場に経営資源を集中させる戦略です。特定の顧客層や地域に焦点を当て、そのセグメントにおける競争優位性を確立します。
この戦略は、さらに「コスト集中」と「差別化集中」の2種類に分類され、ターゲットに応じてどちらか、または両方を選択し実施することで、ニッチな市場での成功を目指します。
【成功事例】
- フェラーリ:高級スポーツカー市場に特化することで競争優位性を確立
- しまむら:ターゲットを20~50代女性、出典エリアを郊外型店舗に限定して気軽に購入できる低価格の衣料品を提供し、主婦層のファンを獲得
多角化戦略
多角化戦略とは、既存事業だけでなく、複数の事業領域に進出して事業拡大を目指す戦略です。環境変化の激しい現代のビジネスシーンにおいて特に注目を集めています。
経営多角化戦略は、市場と技術(製品)の関連性によって以下の4つのタイプに分類されます。
【多角化戦略の4類型】
多角化戦略の類型 | 特徴 |
---|---|
水平型多角化 | 既存の技術やノウハウを活用して、既存市場と類似した市場に新製品を投入する戦略 |
垂直型多角化 | 既存製品のサプライチェーンにおいて、上流(製造)や下流(流通-販売)に事業を拡大する戦略 |
集中型多角化 | 既存の中核技術や強みを活かして、新しい市場に進出する戦略 |
集成型(コングロマリット型)多角化 | 既存事業と技術面でも市場面でも関連性がない、全く新しい事業分野に進出する戦略 |
多角化戦略のメリットは、複数の事業を同時に展開することで、1つの事業が不振になった場合でも他の事業でカバーでき、経営リスクを分散させられる点です。
また、既存の技術や人材などの経営資源を新規事業に活用したり、これまで築いた顧客基盤を新たな事業展開に活かしたりすることで、効率的に事業を拡大しやすいといった利点もあげられます。
【成功事例】
- 富士フィルム:フィルム事業の衰退に対応し、医療機器や化粧品など新分野へ進出
- トヨタ自動車:自動車製造だけでなく、金融サービスや住宅事業など多角的に展開
ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略は、競争の激しい既存市場(レッドオーシャン)ではなく、競争のない未開拓の市場(ブルーオーシャン)を創造し、新たな需要を生み出していく戦略です。
この戦略では、競合との直接対決を避け、新しい価値を創造することで市場を拡大します。既存の枠組みにとらわれず、業界の常識を覆すような革新的なアプローチが求められます。
【成功事例】
- Uber:既存のタクシー業界とは異なり、スマートフォンアプリを通じて乗客とドライバーを直接つなぐサービスを提供
- 任天堂Wii:高性能ではなく、直感的な操作性という新たな価値を提供
経営戦略の分析手法と5つの主要フレームワーク
企業経営では、経営戦略策定に様々な分析手法やフレームワークを活用します。ここでは、代表的な5つの分析手法を解説します。
SWOT分析
SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの視点から整理するフレームワークです。
分析方法は、まず自社の状況から以下の4つの要素を洗い出していきます。
【SWOT分析の4要素】
プラス要因 | マイナス要因 | |
---|---|---|
内部環境 (自社内でコントロール可能なもの) |
強み(Strength)
|
弱み(Weakness)
|
外部環境 (自社でコントロール不可能なもの) |
機会(Opportunity)
|
脅威(Threat)
|
具体例を挙げると、自社の商材が独自の技術で汚れを落とす洗剤である場合、「強み」は他社にはない洗いあがりを実現できることです。一方、開発コストが高いため販売価格が上昇しがちという点が「弱み」になります。
「機会」は、環境意識の高まりや高品質商品への需要増加が考えられます。そして「脅威」としては、大手メーカーによる類似製品投入や洗剤成分に対する消費者の懸念などが挙げられるでしょう。
上記のSWOT分析で抽出した要素をもとに、さらに以下の「クロスSWOT分析」を行うことで、より具体的な戦略を導き出すことができます。クロスSWOT分析では内部環境の「強み」「弱み」と外部環境の「機会」「脅威」を掛け合わせて、以下のような戦略タイプを検討します。
【クロスSWOT分析による戦略タイプ】
戦略タイプ | 戦略内容 |
---|---|
強み×機会 | 自社の強みを最大限活かすために、積極的に進めていくべき戦略 |
弱み×機会 | 現在の弱みや課題を解決しつつ、好機を逃さないよう取るべき戦略 |
強み×脅威 | 自社の強みを活かせるように、他社対策や市場での差別化を図る戦略 |
弱み×脅威 | 内部・外部のリスクを最小化するための対策 |
先ほどの洗剤の例で説明すると、独自技術による高い洗浄力という「強み」と、環境意識や高品質志向の市場ニーズという「機会」を掛け合わせれば、例えばプレミアム市場向けの差別化戦略が有効だと考えられます。対して、開発コストの高さという「弱み」と、同じく市場の「機会」を組み合わせる場合は、生産効率の改善やコスト削減によって価格競争力を高める戦略が考えられます。
また、「強み」と「脅威」を掛け合わせるなら、安全性や独自性を前面に打ち出して大手メーカーとの差別化を図るのがよいかもしれません。最後に、「弱み」と「脅威」が重なる場合は、リスクを抑えるため特定のニッチ市場に集中する戦略が有効でしょう。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、マイケル・ポーターが提唱した業界全体の競争環境を分析するフレームワークです。このツールを使うことで、業界全体の収益構造や競争状況を体系的に把握し、事業展開の判断材料とすることができます。
具体的には、
- 自社の強みや課題の発見
- 収益性向上のための戦略立案
- 経営資源の最適配分
- 新規参入や事業撤退の判断
などに活用できます。
ファイブフォース分析では、以下の5つの要素から業界を分析します。
- ①業界内の競合の状況:既存企業間の競争の激しさはどうか
- ②新規参入の脅威:新たな企業の市場参入による競争激化のリスクはあるか
- ③代替品の脅威:同じニーズを満たす別の製品やサービスの存在はあるか
- ④買い手の交渉力:顧客や消費者が持つ価格交渉などの影響力はどうか
- ⑤売り手の交渉力:サプライヤーが持つ価格設定などの影響力はどうか
ファイブフォース分析は単独でも有効ですが、SWOT分析と組み合わせることで競争環境における自社のポジションをより明確に把握することができます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、組織の事業活動を細かく分類し、それぞれの工程がどのような価値を生み出しているかを分析したうえで経営資源の最適化を図る手法です。日本語では「価値連鎖」とも訳されます。
具体的な手順としては、
- ①原材料の調達から製品が顧客に届くまでの流れを分析する
- ②他社との差別化ポイントを見つける
- ③競争で優位に立つための戦略を立てる
という流れになります。
バリューチェーン分析を行うメリットとして、以下のようなものがあります。
- 競合他社と比較することで、自社の独自性や市場での優位点を明確にできる
- 自社の事業を見直す良い機会となり、特に大企業では現場の声を汲み取る機会になる
- 自社の強み・弱みを正確に把握し、競合他社との差別化を図れる
- 複雑化した事業構造を可視化できる
- ステークホルダーに自社のビジネスを理解してもらいやすい
現在、多くの企業がバリューチェーン分析を活用しています。例えば伊藤忠商事では、デジタル分野において子会社や提携先との連携をバリューチェーンの視点で体系化し、事業全体の構造や自社の役割を可視化するという取り組みを実施しています。
3C分析と4P分析
3C分析は、市場環境を「Customer(市場/顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)」の3つの要素別に分類し、多角的に分析するフレームワークです。それぞれの要素について、次のような視点で検証します。
【3C分析の要素と分析内容】
要素 | 分析内容 |
---|---|
Customer(市場・顧客) | 顧客ニーズがどのように変化しているか |
Competitor(競合) | 環境変化に競合他社がどう対応しているか |
Company(自社) | 市場や競合の動向を踏まえ、自社の成功要因はどこにあるのか |
3C分析の目的は、市場や競合の状況を総合的に把握し、自社がどこで競争優位を築けるかを明らかにすることです。
なお、3C分析では自社の技術や製品を起点に考える「プロダクトアウト」の発想に偏りがちですが、現代のビジネス環境では「マーケットイン」、つまり顧客ニーズを起点とした発想への転換が重要とされています。
マーケットインを実現するためには、3C分析で環境を把握したうえで、次の「4P」と呼ばれる要素を競合と比較し、販売戦略を具体化していきます。
- Product(製品/サービス)
- Price(価格)
- Place(立地/流通/販路)
- Promotion(販促/広告)
このプロセスでは、「顧客が何を求め、競合がどう対応しているか」を軸に分析することで、より実効性の高い戦略立案が可能になります。例えば、顧客の購買行動やニーズを見直し、競合が活用していない販売チャネル(Place)に注力するなど、独自の販売戦略を構築できます。
VRIO分析
VRIO分析は、自社の経営資源や強みを
- 価値(Value)
- 希少性(Rareness)
- 模倣可能性(Imitability)
- 組織(Organization)
の4つの視点から評価するフレームワークです。
この分析を通じて、商品やサービス、人材、システムなど自社が持つ経営資源の強み・弱みを体系的に把握できます。例えば、価値があり希少で、他社が簡単に真似できず、さらに自社がその資源を最大限に活用できる体制が整っていれば、その資源は長期的な競争優位につながるということです。
VRIO分析を行うことで、経営資源ごとに「どこが自社の核となる強みか」「どの部分を強化すべきか」が明確になり、経営戦略の立案や見直しにも役立ちます。全ての項目で「YES」と評価できる資源は、持続的な競争力の源泉となるため、企業の成長や市場での優位性を築くうえで非常に重要です。
経営戦略を立てて企業を存続させよう
経営戦略は経営層だけに求められるものではありません。部門・部署・支社・支店・チームの管理・運営においても経営的視点を持つことや、目標達成のために戦略を立てることはとても有効です。この機会に経営戦略の立て方や考え方を改めて学んでみませんか。「ご自身や役員、管理者と戦略を立てていてもうまくビジョンが見えない」「5年先、10年先、30年先といった長期スパンで戦略を立てるのが難しい」といったお悩みに、ALL DIFFERENTの経営戦略概論がお役に立つはずです。
また、戦略を練る・部下に伝える際には管理職や経営幹部の手腕も必要です。より強固な組織にしたいとお考えの方は、下記の研修もぜひご利用ください。