MECEとは?具体例や鍛え方、フレームワークをわかりやすく解説

update更新日:2025.12.02 published公開日:2017.11.21
MECEとは?具体例や鍛え方、フレームワークをわかりやすく解説
目次

ビジネスにおけるロジカルシンキング(論理的思考)で欠かせないMECE(ミーシー)。業界や職種を問わず活用される考え方ですが、具体的にどのようなものなのでしょうか。

本コラムでは、MECEの意味と使い方、ビジネスにおける必要性といった基本から、便利な切り口・フレームワークまで、鍛え方とともにわかりやすく解説します。

MECE(ミーシー)とは?基本の意味とビジネスでの必要性

MECEは、ロジカルシンキングの基本概念の1つ。英語の「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive」の頭文字をとった造語であり、読み方は「ミーシー」「ミッシー」などです。

まずは、MECEの基本的な意味や用例、ビジネスパーソンに求められる理由などを見ていきましょう。

MECEとは?「漏れなくダブりなく」の概念と用例

MECEとは、次の4つの単語の頭文字をとったものです。

  • Mutually(相互に)
  • Exclusive(排他的な)
  • Collectively(全体として)
  • Exhaustive(網羅的な)

日本語に直訳すると、「お互いに重複せず、全体として漏れがない」という意味になります。一般的には「漏れなくダブりなく」と表現されます。

ビジネスシーンでは、

  • 「MECEに考える」
  • 「MECEを意識する」
  • 「MECEな状態である」
  • 「これはMECEではない」

といった言い方で使われます。

MECEの提唱者は、国際的なコンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーに所属していたバーバラ・ミント氏です。はじめは同社の社内用語として用いられていましたが、その後に広く普及し、現在では世界のビジネスシーンで活用されています。*

*参考:McKinsey Alumni「Barbara Minto: “MECE: I invented it, so I get to say how to pronounce it”」

MECEはなぜ必要?

MECEは、特にビジネス上の問題解決や戦略立案などで多く用いられています。

ビジネスでは、膨大な量のデータや情報を扱いながら、複雑な課題を解決したり新しいアイデアを検討したりしなければなりません。これらのタスクにやみくもに取り組んでも、ただ時間だけが過ぎてしまうでしょう。

ここで便利なのが、MECEの考え方。論理的に無駄なく検討を進められるからです。関係者間で「漏れなくダブりなく検討できているか」という共通の観点をもてるため、情報分析や戦略立案をする側だけでなく、報告を受ける側にとっても、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。

MECEを活用した分析の特徴・メリット

MECEを用いた分析では、その名の通り「漏れなくダブりなく」効率的に進められるとともに、各要素を見渡して論理的に施策・結論を導くことができます。これらのメリットを少し詳しく見ていきましょう。

「漏れなくダブりなく」分析できる

MECEな状態をイメージするには、具体例で見ることが効果的です。例えば、あなたの会社の従業員について考えてみましょう。

従業員を分類するに当たって「20代」と「管理職」に分けた場合、MECEと言えるでしょうか。

残念ながら、「20代」と「管理職」という分け方では、漏れもダブりも発生してしまい、MECEな状態ではありません。なぜなら、「30代以上の非管理職」が分類から漏れてしまいますし、「20代の管理職」はダブってしまうからです。

従業員を漏れなくダブりなく分類するのであれば、典型的には年齢による分類がMECEな分け方となります。

【年齢によるMECEな分け方(例)】

  • 18歳未満
  • 18歳〜19歳
  • 20歳〜29歳
  • 30歳〜39歳
  • 40歳〜49歳
  • 50歳〜59歳
  • 60歳〜65歳
  • 66歳以上

この場合、「年齢は〇月〇日時点で判断する」「管理職とは△△より上位の職掌を指す」など、定義を明確にしておくことも大切です。

こうした分類を活用して、育成施策の策定や利用可能な福利厚生の設定などを進めることができます。

ほかにも、MECEはマーケティング戦略の立案や会議における効果的なファシリテーションにも活用できます。ファシリテーションでの活用方法は、以下の関連コラムでご紹介していますので、併せてご確認ください。

コラム「ファシリテーションとは?わかりやすい意味・役割・流れと必要スキル」はこちら

ロジカルシンキング(論理的思考)につながる

MECEは、多様な要素を網羅的に分析・検討するに当たり「漏れなくダブりなく」進めることを求める概念です。そのため、「検討すべき項目を見落としていた」という事態を防ぐとともに、「これは以前も検討した」「1つの項目に2つの異なる方針が生まれてしまった」という不毛な事態を防ぐ効果もあります。

検討する要素に過不足がなければ、各要素の関係性が見えやすくなり、スムーズに議論が進むでしょう。これが、ロジカルシンキングによる問題解決につながるのです。

ロジカルシンキングの詳細については、以下の関連コラムで解説しています。MECEの理解にぜひお役立てください。

コラム「ロジカルシンキング(論理的思考)とは?必要性と基本的な考え方、トレーニング方法を解説」はこちら

コラム「論理的思考と合理的思考の違いとは?ビジネスでの重要性、鍛える方法」はこちら

MECEではない例と注意点

MECEな思考を習得していない状態では、具体的な分類方法を見ても、それがMECEな状態になっているかどうかを判断しにくいかもしれません。そこで、MECEではない例も確認しながら、理解を深めていきましょう。

MECEではない具体例

MECEではない具体例として、先ほど見た従業員に関する分類をいくつかご紹介します。それぞれの分類が、どのような点でMECEではないのかを一緒に考えてみてください。

【例1】従業員を「若手社員」と「管理職」に分ける

1つ目は、従業員を「若手社員」と「管理職」に分ける方法です。

仮に「若手社員」の定義を「10代〜30代」としましょう。自社の管理職に40代以上の社員が多い場合は、一見MECEな状態に感じられるかもしれません。

しかし、40代以上の社員で管理職ではない社員は、この分類から漏れてしまいます。30代で管理職になっている社員がいる場合、その社員は「若手社員」かつ「管理職」となり、ダブってしまいます。

よって、この分類は「漏れがありダブりもある」分け方となり、MECEではありません。

【例2】「パート・アルバイト」「一般社員」「管理職」に分ける

2つ目は、従業員を「パート・アルバイト」「一般社員」「管理職」に分ける方法です。一般社員とは、役職に就いていない正社員を意味します。

もし契約社員や派遣社員、嘱託社員といった非正規社員がいないのであれば、上記の分類方法はMECEになる可能性が高いでしょう。しかし、パート・アルバイト以外の非正規社員がいるのであれば、この分類はMECEではありません。契約社員や派遣社員といった従業員が漏れてしまうからです。

したがって、この分類は「漏れがありダブりがない」分け方となります。

【例3】「育児を行っている従業員」「介護を行っている従業員」「どちらも行っていない従業員」に分ける

3つ目は、従業員の家庭生活の状況に応じて「育児を行っている従業員」「介護を行っている従業員」「育児も介護も行っていない従業員」に分けてみましょう。この分類はMECEでしょうか。

残念ながら、これもMECEではありません。なぜなら、「育児も介護も行っている従業員」が2つの項目に分類されることになり、ダブりが発生しているからです。

そのため、この分類方法は「漏れがなくダブりがある」分け方となっています。

MECEのチェック方法

MECEな状態になっているかどうかをチェックするには、

  • 分類Aに属する要素aが分類Bにも入っていないかどうかを見る
  • 分類Aに属さない要素が必ず分類Bに属しているかどうかを見る

などの方法が有効です。前者は“ダブり”のチェック、後者は“漏れ”のチェックです。

先ほどの従業員の例であれば、分類「若手社員」に属する社員として30代の社員を考え、その社員が分類「管理職」にも入っていないかどうかを見て“ダブり”をチェック。続いて、分類「若手社員」に属さない社員として40代の社員を考え、40代の社員が分類「管理職」に入っているかどうかで“漏れ”をチェックできます。

分類に使う項目は一般化した表現になるため、抽象度が高くなります。これを具体的な人物像に置き直すことで、漏れや重複のチェックを進めやすくする工夫です。もちろん、ほかのメンバーとのブレインストーミングや事例検討によって、多角的な視点でチェックする方法も効果的です。

MECEにおける3つの注意点

MECEな思考を行う際、以下の3つの注意点にも気をつけてください。

1つ目は、「何のために分析・検討したいのか」という目的の明確化です。目的から外れた分類は、検討の役に立たなかったり、途中で基準がずれて混乱してしまったりします。さらに、目的が曖昧では、分類自体の目的化にもつながります。必要以上に細かく分類して時間を浪費することになりかねません。

2つ目は、「完璧な分類をする」ことを最初から目指さないことです。完璧な分類を目指すことも、分類自体の目的化につながります。また、「木を見て森を見ず」という状態に陥り、漏れやダブりが生じやすいという難点もあります。まずは大まかに分類し、次に中分類・小分類をつくるなど、段階的に進めていきましょう。

そして3つ目は、「MECEな分類に適さないものもある」ということです。基本的にはMECEを目指して分類・分析を行いますが、どうしても重複が生じる場合は無理に「ダブりなく」を目指す必要はありません。アンケートにおける複数回答選択のように、重複を許す形で集計するほうが実態を捉えやすいケースもあるからです。

MECEはあくまで手段であるという点を忘れず、上手に活用していきましょう。

MECEに活用できるトップダウンアプローチ/ボトムアップアプローチ

MECEを実現するには、いくつかの手法を覚えておくと便利です。その代表的なアプローチが、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチです。

トップダウンアプローチとは

トップダウンアプローチは、大きな枠組みを決めてから、その枠の中で細かく分類していく手法です。全体像を確認しながら構造的に分析することができます。

例えば、売上高の減少要因を分析する場合、大きな枠組みとして市場環境の変化や顧客行動などマクロな観点を設定します。次に、市場環境の変化を確認しながら下位分類を作成したり、顧客行動の傾向に関する下位分類を設定してデータを確認したりします。

トップダウンアプローチは、分析目的が明確で、分類基準を設定しやすい場合に有効です。逆に全体像が見えにくい場合は、重複や抜け漏れが生じやすくなりますので、気をつけてください。

ボトムアップアプローチとは

一方、ボトムアップアプローチは、個別の要素を先に洗い出し、関連性に基づいてグルーピングを行うことで全体構造をつくり上げる方法です。目の前の課題や事象を整理しながら全体像を把握したい場合に便利です。

売上高の例で言えば、営業支社や営業社員ごとの売上を確認することで、地域差やスキル習得状況の把握が可能になります。組織全体の売上を伸ばす施策として、地域差に対応した施策と従業員のスキル向上を図る施策を検討できるでしょう。

ボトムアップアプローチは、複雑なテーマや全体像が不明確な場合に効果的です。ただ、全体像が見えていないため、要素の抜け漏れが発生しやすいことには注意してください。コツは、グルーピングにおいて「どのような特徴で分類しているのか」を常に明確にしながら進めることです。

MECEのための要素分解や因数分解など4つの切り口

MECEを目指す際に使える便利な思考の切り口もあります。「どう分類すればいいのか、わからない」と頭を抱える前に、まずはこれらの切り口で分類してみましょう。

要素分解

要素分解は、全体像や解決したい問題を細かい要素に分解する方法です。それらの要素を全て組み合わせていくと全体像と一致するため、「足し算型」「積み上げ型」とも呼ばれます。要素分解を行うメリットは、全体における各要素の役割や構造を明確にできることです。

例えば、顧客の分類なら「10代」「20代」「30代」などと区切り、年代ごとの購買傾向やニーズを分析することが考えられます。サービスを分解するなら、具体的内容による分解が可能です。「顧客が抱える課題のヒアリング」「課題解決策の提案」「サービスの提供」「フォローアップ」といった具合です。

各要素の合算が全体像と一致しない場合は、どこかで漏れ・ダブりが発生している可能性があります。

対照的概念

対照的概念を用いる切り口では、反対の性質を意識しながら要素を分類します。具体的には、「大きい・小さい」「多数・少数」「高い・安い」などです。

自社商品の売れ方について分析したい場合、高価格帯と低価格帯に分けて、市場や顧客を分析できます。競合商品を対象とするなら、その価格帯・サイズ・シェアなどに関して自社と比較したり分類したりするとよいでしょう。

対照的概念の活用には、見逃しやすい属性を積極的に意識できるというメリットがあります。MECEで重要な漏れの防止に役立ちます。

時系列・工程

物事が進む流れに注目する切り口もあります。時系列や工程に沿って分解・分類する方法です。

時系列・工程による分解が使える典型例は、業務フローの改善です。業務の依頼から完成までのフローを実際の手順に従ってリストアップすると、全体の流れを把握しつつ工数の削減や新たな工程の追加を行うことができます。例えば、途中で複数回発生する「上司によるチェック」で待ち時間が発生しているなら、チェック回数を減らしたり、チェック対象項目の明確化によってチェック時間の短縮を図ったりするなどの工夫が可能です。

因果関係の把握に便利な切り口ですので、MECEをはじめて学ぶビジネスパーソンは、まず時系列・工程による分析から習得するのもよいでしょう。

因数分解

因数分解は、構成要素を組み合わせて数式のように表し、要素同士の関係を明確にする方法です。かけ算だけでなく、必要に応じて足し算・引き算・割り算も使われます。

例えば、「売上=単価×個数」として表し、客数や単価という各要素に注目して個別に分析するやり方です。ほかにも、以下のような表現があり得るでしょう。

【MECEのための因数分解の例】

  • 業務効率化=フロー改善×ツール選択×周囲からの支援
  • 店舗の売上=客単価×顧客数×リピート率
  • 社会的信用={(商品の質+カスタマーサポートの質+社会貢献の効果)−トラブルの影響}×認知度

厳密に数値を代入して成立するならそれに越したことはありませんが、多くの場合、MECEの因数分解は比喩的表現として用いられます。

MECEを意識した思考力の鍛え方

新しいことを習慣化するには、ある程度の努力と期間が必要です。特に思考を変える場合、慣れた考え方との違いが大きいほど、習慣化に要する時間も多くなります。それでも、日常の様々な場面を活用して地道な訓練を続けることが重要です。

例えば、日々の買い物や家事、業務上のタスクを要素分解または時系列・工程で分解し、「緊急度と重要度のマトリクス」などにマッピングして、優先順位を決めてみましょう。

優先順位の決定方法については、以下の関連コラムで解説しています。

コラム「マルチタスクを仕事に活かすには?メリットや実践方法を解説」はこちら

コラム「タイムマネジメントとは?時間を味方につける能力向上のコツと実践手順」はこちら

仕事上のトラブルを分析して改善策を考える場合は、因果関係の分析に強いフィッシュボーンを使って、順番にチェックしていくとよいでしょう(フィッシュボーンについては後述)。

ニュースやビジネス書を読む時間も、MECEを意識した情報整理のチャンスです。言及されている人々の年代・性別・年収などを確認すれば、「ほかの区分や対照的概念の分類では、どのような傾向が見られるか」という一歩進んだ視点を持ちやすくなるでしょう。

これらの訓練を積み重ねることで、次第にMECEな思考が身につき、自然に実践できるようになります。

MECEに活用できるフレームワークとツール一覧

慣れていないうちは、MECEに考えようとしてもうまく進められないことが多いものです。もし要素分解などで行き詰まってしまった場合は、既存のフレームワークや思考ツールも活用してみてください。これらはビジネスでよく用いられる枠組みですので、効率的に分解・分析することができます。

そこで、本コラムの最後に、代表的なフレームワークとツールをまとめてご紹介します。

【MECEに活用できる主要フレームワーク・ツール一覧】

名称 要素 主な目的
3C分析
  • Customer
  • Competitor
  • Company
自社の事業の改善
4P分析
  • Product
  • Price
  • Place
  • Promotion
マーケティング戦略立案
SWOT分析
  • Strength
  • Weakness
  • Opportunity
  • Threat
ビジネスチャンスの発見
5フォース分析
  • 競合他社との関係
  • 新規参入者の脅威
  • 代替品の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力
収益性・競争優位性の分析
QCD
  • Quality
  • Cost
  • Delivery
製造現場での優先順位決定
PEST分析
  • Politics
  • Economy
  • Society
  • Technology
マクロ環境の分析
7S分析
  • Strategy
  • Structure
  • System
  • Shared Value
  • Staff
  • Style
  • Skill
自組織の分析と課題発見
ロジックツリー 要素を分解しながらツリー状に書き足していく思考ツール
フィッシュボーン 結果・結論に対してその根拠や因果関係を整理していく思考ツール

それぞれの特徴や使いどころを以下で簡単にチェックしていきましょう。

3C分析

3C分析は、事業の問題点・改善点を考える際の基本フレームワークです。3Cとは、以下の3つの単語の頭文字です。

【3C分析の要素】

  • Company(自社)
  • Competitor(競合)
  • Customer(市場・顧客)

自社の強み・弱みとともに市場の成長性や競合他社の強み・弱みを分析します。新規事業の立ち上げなどにも活用されています。

4P分析

4P分析は、主にマーケティング戦略の立案に使われるフレームワーク。4P分析のような複数の要素を総合的に考慮した戦略立案は「マーケティングミックス」と呼ばれます。

4Pは、次の4つの単語の頭文字です。

【4P分析の要素】

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(流通・場所)
  • Promotion(販売促進)

例えば、4P分析によって自社の商品・サービスと競合他社の類似商品・サービスを比較することで、具体的な品質改善や価格調整、販売する地域、プロモーションの方針といった施策を検討することができます。

SWOT分析

SWOT分析は、外部環境における機会と脅威、自社の強み・弱みを分析し、ビジネスチャンスを発見するためのフレームワークです。SWOTは以下4つの単語の頭文字から成る造語で、読み方は「スウォット」です。

【SWOT分析の要素】

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

環境分析と自社の商品・サービスの特徴を組み合わせる点に特徴があります。ビジネスチャンスの有無に応じて、新商品・サービスの開発や経営資源の配分の最適化などを検討できます。

5フォース分析

5フォース分析は、5つの要素をもとに事業の収益性・競争優位性を分析するフレームワークです。

【5フォース分析の要素】

  • 競合他社との関係
  • 新規参入者の脅威
  • 代替品の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 売り手の交渉力

5フォース分析では、既に市場に参入している企業相互の競争関係だけでなく、新規参入にどの程度のハードルがあるかを見ることで、競争激化リスクを考えます。さらに、自社が展開しようとする事業や製品が想定するニーズについて、同じニーズを満たす他社の製品・サービスをチェックする視点もあります。競争激化が予想される場合、5フォース分析と3C分析や4P分析を組み合わせて、具体的な戦略を策定しなければなりません。

また、買い手と売り手がそれぞれに持つ交渉力は、価格への影響を見る視点です。買い手の交渉力が高い場合は「買い手市場」となり、価格競争が激しくなります。他方、売り手の交渉力とは、原材料のサプライヤーや卸売業者が持つ力。「特定の業者からしか入手できない」という状況は売り手の交渉力が高い状況であり、自社の収益性にネガティブな影響を及ぼす恐れがあります。

3C分析、4P分析、SWOT分析、そして5フォース分析の詳細は、以下の関連コラムをご覧ください。

コラム「経営戦略とは?主な種類と分析手法、フレームワークから成功事例まで」はこちら

QCD

QCDは、主に製造現場において重視される観点です。以下3つの単語の頭文字をとっています。

【QCDの要素】

  • Quality(品質)
  • Cost(価格)
  • Delivery(納期)

製造業の場合は、これにSafety(安全)を加えて「SQCD」と呼ぶこともあります。

例えば、品質を優先するケースでは、納期を長めに設定する必要があるでしょう。コストカットを優先するなら、ある程度の品質低下を容認しなければならないかもしれません。納期を優先させる場合は、人員確保の必要性から、通常よりコストが高くなることについて、取引先との合意形成が求められます。

こうした3要素(または4要素)のバランスを見ながら、現場の方針を決めていくためのフレームワークです。

QCDは製造現場から生まれた手法ですが、業務改善やプロセスマネジメントなどでも活用できます。

PEST分析

PEST分析は、企業を取り巻く制御不可能なマクロ環境を分析するフレームワークです。「PEST」は、4つの要素の頭文字を取った造語です。

【PEST分析の要素】

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

PEST分析は、主に新規の事業展開や事業エリア・分野の拡大時などの分析で活用されます。自社にはコントロールできない要素を明確にすることで、逆に自社ができる施策に絞って検討を進められるからです。「避けられない外部環境から生じる課題に、どのように対応するか」という点で、重要な枠組みです。

7S分析

7S分析は、組織の状況を7つの要素に分けて分析するフレームワークです。7つの要素それぞれの頭文字がSであることから、「7S」とされています。

【7S分析の要素】

  • Strategy(戦略)
  • Structure(組織構造)
  • System(システム)
  • Shared Value(共通の価値観)
  • Staff(人材)
  • Style(社風)
  • Skill(スキル)

7Sにおける前半の3つ(戦略・組織構造・システム)は、「ハードの3S」と呼ばれるもので、自組織の構造に関わる要素です。「戦略」は自組織の目標達成に必要な戦略であり、経営資源の配分も含みます。「組織構造」は、組織の分け方や権限付与、指揮命令系統などです。そして「システム」は、組織で運用する各種制度のこと。人事考課や福利厚生、就業規則だけでなく、業務手順などの細かなルールも該当します。

他方、後半の4つ(共通の価値観・人材・社風・スキル)は「ソフトの4S」です。いずれも組織の人材に関わる要素となっています。

「共通の価値観」は、企業理念やミッション・ビジョンなど。「人材」は、従業員一人ひとりが持つ実績や知識・スキル、勤務態度、組織への貢献度、人間関係などの特徴・傾向です。

「社風」は、読んで字の如く当該組織の風土です。各種制度やルールに基づいて形成される風土だけでなく、従業員の行動の傾向や職場の雰囲気などが含まれます。最後の「スキル」は、組織として蓄積してきた知識・ノウハウを指します。製品開発や製造の技術、マーケティング力、営業力、人材育成力、採用力といった様々なノウハウが含まれます。

7S分析は、組織全体の課題を明確化して経営戦略を立案するためのフレームワークです。

ロジックツリー

以上のようなフレームワークを活用するに当たり、「どのように書いていくか」という点で便利なのがいくつかの思考ツールです。

代表的なツールであるロジックツリーは、情報の構造化・視覚化に役立ちます。各要素を論理的に大分類から小分類へと枝分かれさせながら書くため、各要素の論理的なつながりや、階層ごとの要素を見渡しやすくなります。

わかりやすい例としては、地域区分をあげられるでしょう。東京都であれば、「23区」「多摩地域」「島しょ地域」に分けられ、「多摩地域」は「北多摩エリア」「南多摩エリア」「西多摩エリア」に分けることが可能です。これらをロジックツリーに書いていくと同じレベルの地域区分が同一階層に並ぶため、地域差の比較が容易になるという仕組みです。

以下の関連コラムでは、人材育成に関する課題にロジックツリーを用いるケースの作成例もご紹介しています。

コラム「ロジカルシンキング(論理的思考)とは?必要性と基本的な考え方、トレーニング方法を解説」はこちら

フィッシュボーン

フィッシュボーンは、各要素の因果関係を表す際に便利な思考ツールです。全体として魚の骨のような形になるため、「フィッシュボーン」と呼ばれます。「特性要因図」という名称でご存じの方もいるかもしれません。

フィッシュボーンの作成手順は、概ね次のようになります。

【フィッシュボーンの作成手順】

  1. ①紙の中心に横一本線(背骨)を描き、その先に「頭」を描く
  2. ②頭に解決したい課題や分析対象となる事象・結論を書く
  3. ③背骨に向けて「大骨」を描き、そこに主な要因を書き込む
  4. ④大骨に向けて「小骨」を描き、そこに主な要因の原因を書き込む

背骨を時間の流れとして捉えて大骨を書き込んでいくと、物事が発生する時系列も含めて相互の関係性が見えやすくなります。「どの段階で、どのような対策を講じればよいか」を検討しやすくなるでしょう。

MECEな思考の習慣付けには日々のトレーニングが重要

MECEを効果的に活用するには、何よりも使い慣れていくことが大切です。日常のタスク管理やプロジェクトでの検討にMECEを取り入れ、「漏れがないか、ダブりがないか」をチェックしながら進めましょう。繰り返し取り組むことで、MECEな思考を習慣付けられます。

「全体像の整理が苦手」「考えをうまくまとめられない」といったお悩みがある場合は、MECEに欠かせない情報収集力や分析力などの向上が必要かもしれません。

多くの企業で人材育成をご支援してきたALL DIFFERENTでは、MECEな考え方やロジカルシンキングを身につけるための様々な研修・セミナーをご提供しています。若手社員向け・中堅社員向けなどの階層に応じたプログラムもご用意していますので、ぜひMECEの習慣化にお役立てください。