クリティカルシンキングとは?意味・例題と簡単にできる実践トレーニング
更新日:2026.10.13
公開日:2018.01.31

クリティカルシンキング(critical thinking)は、日本語で「批判的思考」を意味します。現代のビジネスに必須のスキルであり、トレーニングによって鍛えることができます。
本コラムでは、クリティカルシンキングとは何かを例題とともに解説。役立つ場面とともにメリット・デメリット、実践トレーニングのコツと便利なフレームワークをご紹介します。
クリティカルシンキングとは何か?なぜ必要なのか
「整理して考えているはずなのに、なかなか成果につながらない……」
こうした悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくありません。これを解決するのが、クリティカルシンキングです。
まずはクリティカルシンキングの意味と日常の例、ビジネスにおける必要性を確認していきましょう。
クリティカルシンキング(critical thinking、批判的思考)の意味・特徴
クリティカルシンキング(critical thinking)は、日本語で「批判的思考」を意味します。簡単に言えば、ある結論を適切な根拠や基準に基づいて吟味する思考法のことです。
クリティカルシンキングの本質は根拠・基準・推論を吟味し、より適切な結論を導こうとする考え方にあります。「本当にこれで正しいのだろうか」という視点で物事を見つめ考えることによって、問題解決につながる建設的な案を得ようとする姿勢に特徴があります。
日常の例で見るクリティカルシンキング
クリティカルシンキングは、日常生活でもビジネスでも求められる重要な思考法です。
例えば、東日本大震災のときに発生したフェイクニュースで考えてみましょう。当時、「製油所のガス爆発で有毒ガスが発生した」「有毒物質を含む雨が降っている」といった情報がSNSで拡散されました。しかし、実際には有毒ガスは発生しておらず、「有毒物質を含む雨」も降っていませんでした。
ほかにも、災害発生直後に寄付金を募る詐欺アカウントやフィッシングサイトへ誘導する投稿が出現。被害拡大を伝える本物のニュースに紛れ込み、「何とか手助けをしたい」という善意を利用していました。
クリティカルシンキングを実践している人は、こうした情報に触れたとき
「この情報は事実だろうか」
「発信者を信頼できるのだろうか」
「他の報道メディアの情報と整合性があるのだろうか」
といった視点でチェックを行っています。
ビジネススキルとしての必要性
一方、ビジネスでクリティカルシンキングが求められる背景には、急速かつ目まぐるしく変化するビジネス環境があります。「以前はこの方法でうまくいったのだから、次も成功するはず」という考え方が通用しなくなっているからです。
ビジネス環境の変化に取り残されないようにするには、従来のやり方にとらわれず、別の切り口やアイデアを採り入れなければなりません。何を捨て、何を採り入れるべきかを“多角的に”吟味するために、クリティカルシンキングの必要性がますます高まっているのです。
クリティカルシンキングの例題と基本の考え方
クリティカルシンキングのイメージを具体的に得るため、2つの例題を見ていきましょう。
【例題1】電話窓口の対応についてクレームが「増えている」
例題1は、電話窓口の対応についてクレームが増えているという以下の主張です。部下や同僚にこのような相談をされたら、あなたはどう考えますか?
【例題1】
Aさん「最近、“電話窓口の対応が悪い”というお客さまからのクレームが増えています。顧客満足度を下げないために、電話窓口担当者の教育をするべきです」
Aさんの主張は正しく見え、「今すぐ教育施策を検討しなければ」と感じられるかもしれません。
ここで一度立ち止まりましょう。Aさんの主張には、曖昧な点がいくつかあります。例えば、以下の点です。
- “対応が悪い”とは、具体的にどのような内容を指すのか?
- どのくらいの期間で、何回、そのような意見をいただいたのか?
- その頻度は、過去と比べて増えているのか?
これらの情報を確認・検証してみないと、Aさんの主張が適切かどうかは判断できないでしょう。
「本当にその論理は正しいのか?」「何に基づいた主張なのか?」などを吟味しながら、より適切な根拠・判断を目指すことが、クリティカルシンキングのポイントです。
【例題2】業務手順の変更が「急」だから「うまくいかない」
2つ目の例題は、次の主張です。
【例題2】
Bさん「急な業務手順の変更でうまくいった試しがありません。今回は手順の変更ではなく、業務を担当する人員を増やすほうがよいと思います」
確かに、突然の業務手順変更は現場を混乱させることがあります。では、Bさんの言うように、業務手順の変更ではなく人員増加を行うほうが適切なのでしょうか?
Bさんの主張に含まれる曖昧な点を探してみましょう。例えば、次の点は事実なのかBさんの印象なのか、この発言のみでは判断できません。
- 「急」な変更とは、検討から実施までどのくらいの期間を指すのか?
- 「うまくいった試しがない」という主張は、事実なのか?
- 手順変更よりも人員を増やす「ほうが」効果があるのか?
- そもそも、何を目的として手順変更または人員増加を図るのか?
これらの中には、既に現場で共有されている“暗黙の了解”があるかもしれません。しかし、「皆がそう思っているから」「今までそうやってきたから」という理由だけでは、クリティカルシンキングにおける根拠としては弱いものです。
吟味の対象となる主張を分解しながら、曖昧な点に関する情報・暗黙の了解に意識を向けることが大切です。
ロジカルシンキング、ラテラルシンキングとの違い
クリティカルシンキングと並んでビジネスに有用な思考法には、ロジカルシンキングとラテラルシンキング、そしてデザイン思考(デザインシンキング)があります。
3つの思考法とクリティカルシンキングの違いおよび関係性を見ていきましょう。
クリティカルシンキングとロジカルシンキング(論理的思考)の違い
ロジカルシンキング(logical thinking)とは日本語で「論理的思考」を意味し、「根拠から主張(結論)に向けて筋道を立てながら考える思考法」を指します。ロジカルシンキングを習得することで論理的に正しい推論が可能となり、提案や説明の説得力を高められます。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの大きな違いは、“思考の偏り”まで吟味するか否かです。ロジカルシンキングでは、与えられた前提から帰結を導くことに主眼を置くため、思考の偏り自体はあまり考慮しません。
一方、クリティカルシンキングでは、論理的正しさだけでなく、事実・前提の適切さも問います。仮に論理的に正しくても、前提が間違っていれば誤った結論に至り、課題解決に有効なアイデアを得られないからです。
ただ、クリティカルシンキングとロジカルシンキングは相反するものではありません。ロジカルシンキングだけでは前提情報の正しさを判断できず、逆にクリティカルシンキングだけでは物事をわかりやすく組み立て、帰結に導くことは困難です。クリティカルシンキングとロジカルシンキングの両方を身につけることで、2つの思考法の本当の効果を得られるのです。
コラム「ロジカル・シンキングの鍛え方~合理的なメッセージ共有に必要不可欠な思考力~」はこちら
クリティカルシンキングとラテラルシンキング(水平思考)の違い
ラテラルシンキング(lateral thinking)とは、日本語で「水平思考」を意味します。これまでの常識や固定観念を超えて、ある分野から別の分野にアイデアを応用する思考法です。論理の飛躍によって、新しい発想を生み出すやり方ともいえるでしょう。
「スマートフォン」を例に考えてみましょう。スマートフォンは、通話機能を中心とする「携帯電話」に本来の使用目的とは異なる「音楽プレイヤー」や「カメラ」などを搭載するという画期的なイノベーションにより誕生しました。さらに、インターネットへの接続・閲覧機能もつけることで、「通話もできる小さなコンピュータ」にまで進化。現在は「ゲーム機」として活用する場面も多くなっています。
本来の目的に応じた機能とは異なるものを実装するこうしたアイデアは、ラテラルシンキングによって生まれたものです。
クリティカルシンキングとラテラルシンキングの違いは、「正しさ」を重視するか否かです。クリティカルシンキングとロジカルシンキングは、1つのことについて論理的な矛盾がないか、事実と印象を混同していないかなどを重視して、正しく“深掘りする”点が特徴といえます。
これに対し、ラテラルシンキングでは、むしろ“一面的な特徴を他の分野に展開する”点がポイント。必ずしも論理的整合性や前提の適切さは問われません。
クリティカルシンキングとデザイン思考(デザインシンキング)の違い
デザイン思考(デザインシンキング、design thinking)とは、顧客(ユーザー)の立場から課題を発見して解決を図る思考法です。デザインを考えるプロセスを他のビジネス分野にも応用することで生まれました。デザイン思考は、「顧客が本当に求めていること」を見いだし、潜在的ニーズを満たす商品・サービスを開発するために用いられます。
クリティカルシンキングとデザイン思考の違いは、目的にあります。デザイン思考の目的は顧客の潜在的ニーズを満たす商品・サービスを開発すること。他方、クリティカルシンキングの目的は、より妥当で建設的な結論を得ることです。
そのため、デザイン思考の中でもクリティカルシンキングが用いられます。例えば、ニーズの洗い出しや解決策の検討、効果の検証においては、クリティカルシンキングによって思考を深めます。
クリティカルシンキングの5つの役立つ場面とメリット
では、クリティカルシンキングは、ビジネスにおいてどのように活用できるのでしょうか。その具体的な活用場面とメリットを5つご紹介します。
日常業務でコミュニケーションが円滑になる
クリティカルシンキングを習得すると、日常業務でのコミュニケーションが以前よりも円滑になります。何を根拠に、どのような判断をしたのかをしっかり説明できるようになるからです。相手からさらなる説明を求められても物怖じしなくて済むでしょう。
加えて、反論された場合でも「自分はダメだ」と感じることが減ります。クリティカルシンキングが習慣になれば、自身の感情よりも前提の違いや基準の違いに目を向けやすくなり、「適切でない部分があった」「では、どうするのがよいのか」と考える姿勢が身につくからです。
会議で直感頼りでない「データドリブン」な提案ができる
会議でも同様です。
「なぜそのような結論になるのか」を問われて答えられなかった経験がある人でも、クリティカルシンキングができるようになれば、常に根拠をもって思考・判断できるようになります。“直感頼り”の意見を減らし、「なぜ」という質問にも明確な説明ができるようになるということです。
近年、戦略立案において理想や漠然としたイメージだけでなく、データに基づいて考えることの重要性が注目されています。VUCAの時代にあって外部環境の変化が激しいからこそ、得られるデータを総動員し、それに基づく活動を展開しなければなりません。
クリティカルシンキングは、そうした「データドリブン」な戦略立案に欠かせないスキルとなっています。
トラブル発生時に本質的な問題解決を図れる
ビジネスでは、大小様々なトラブルが発生します。顧客への対応でクレームが発生することもあれば、社内業務に問題が見つかることもあるでしょう。こうしたときも、クリティカルシンキングが大いに役立ちます。
問題解決のポイントは、「実際に何が起きているのか」をきちんと見極めること。「きっとこれが原因だ」と印象だけで決めつけてしまうと、問題解決どころか事態が悪化しかねません。「Aが原因かもしれない」という1つの視点だけでなく、
- Bの可能性はないか?
- Aが原因だとして、その大元にはどのような要因があるのか?
などをクリティカルシンキングによって考える必要があります。
このように、思考の偏りを防いで本質的な問題に辿りつき、根本的な問題解決を図るために必要な思考法の1つが、クリティカルシンキングなのです。
問題解決の手法について、以下の関連コラムでも詳しく解説しています。併せてご活用ください。
コラム「問題解決とは?3ステップのプロセスと便利なフレームワーク・ツール」はこちら
戦略立案でリスクを予測しやすくなる
クリティカルシンキングは、様々な要因や考え方の道筋について多角的な視点で検討を行うため、戦略立案におけるリスクマネジメントにも有用です。
人間には、それまでの自分の成功体験や立場を重視する傾向があります。「確証バイアス」と呼ばれるこの傾向は、言い換えれば、自身の思い込みの根拠となりそうなものばかりに目を向け、対立する事象や主張を軽視するものです。
例えば、自社の業界で「画期的」と言われる商品・サービスを開発し、高い売上を見込んでいたにもかかわらず、全く予算を達成できなかったとしましょう。その商品・サービスは、業界の歴史や動向を知る人にとっては「売れ筋」だとしても、価値観の変化が激しく多様化も進んだ社会においては、需要が大きく減っていた可能性があります。
クリティカルシンキングができるメンバーがいれば、成功体験による楽観的な予測だけでなく、社外の変化や今の価値観からの評価、ステークホルダーに与え得る不利益などを考慮し、戦略のチェックができます。
商品開発や業務改善における新しいアイデアにつながる
クリティカルシンキングには、よりポジティブな活用法もあります。その分析力を商品開発や業務改善に活かすのです。
例えば、売れる商品には、自社の強みだけでなく、顧客の問題解決につながる魅力が必要です。業務改善では、何が円滑な業務遂行の妨げになっているのかの特定が求められます。いずれの場合も、問題の本質を見極めて解決策となるアイデアの創出にクリティカルシンキングが使えます。
クリティカルシンキングに対して「これはダメ、あれはダメ」と否定的な印象を抱く人もいるかもしれません。しかし、本来は
「Aがダメなら、その理由は何か」
「あれが原因なら、解決策としてBを用いてもよいのではないか」
といった建設的な提案につなげるための思考法です。
クリティカルシンキングを活用することで、事業活動に必要な大きな推進力を得られるでしょう。
クリティカルシンキングのデメリット・注意点
こうしたメリットがある一方で、状況を無視してクリティカルシンキングだけを使ってしまえば、思わぬトラブルを招きます。適切な活用には、クリティカルシンキングを活用すべき場面を見極めなければなりません。デメリットが発生しやすい3つの場面をご紹介します。
話が複雑・長くなる可能性がある
クリティカルシンキングの1つ目のデメリットは、話が複雑になり、かつ長くなりやすいことです。例えば、戦略の策定やトラブル解決に向けた提案を行う際、複数の要因が絡む問題では、その把握にも説明にも時間がかかります。たとえ順序立てて説明しても、相手にとっては理解しにくいものになってしまうでしょう。
この問題を軽減するには、「きちんと話せば聞いてもらえる」という思いだけで延々と話し続けないことが大切です。「複雑で長い説明は、相手の時間を奪う」という側面にも注意してください。
- ①まずは結論と主な理由を簡潔に説明する
- ②相手に求められてから、より詳しい説明を行う
という手順を試してみるとよいでしょう。
相手の気持ちを無視して嫌われる恐れがある
クリティカルシンキングに慣れてくると、「理屈で説明すれば理解してもらえる」と思い込みやすくなります。相手が解決策や意見を求めているわけではないケースでは、こうした思い込みが逆にトラブルを招いてしまいます。
例えば、相手が求めているのは気持ちのうえでの共感や謝罪だったとしましょう。「そうだね」や「申し訳ありません」という言葉と態度を求めているにもかかわらず、データ・事実の解釈・事態の原因・自分の意見といったように長々と話されては、気分を害してしまいます。
相手が共感や謝罪を求めているなら、クリティカルシンキングによる分析と解決策の提案よりも、相手の気持ちに応じた対応を優先しましょう。事態の分析や提案、解決策の提示は、共感・謝罪のあとでも遅くはありません。
「否定的」と勘違いされることがある
クリティカルシンキングによる分析を“否定的である”と誤解されることもあります。
一度きりなら「そういう考え方もあるかもしれない」と受け入れてもらえても、何度も繰り返されれば、相手に「私のことが嫌いなのだろうか」という印象を与えかねません。前述した共感・謝罪を求める場面なら、火に油を注ぐ結果となるでしょう。
これを回避するには、自分の意見を言ってもよい状況かどうかを判断する必要があります。意見を言ってよい状況でも、疑問や反論、提案だけを行うのではなく、相手の良い部分を見つけて同意することが大切です。
相手の良い部分を探すには、
- 問題を解決しようとする姿勢
- 相手の提案で効果がありそうな視点・やり方
- 相手の提案で、そのままでは使えなくても、少し変えれば有効そうな視点・やり方
- 前回の内容から改善された部分
といった点に注目してみましょう。
クリティカルシンキングに必要な態度と疑う要素
では、クリティカルシンキングの実践方法に入りましょう。クリティカルシンキングを行うには、建設的な態度や目的の設定、疑うべき要素の把握が重要です。
クリティカルシンキングに必要な態度・目的
効果的なクリティカルシンキングには、「対決・論破する」ではなく「ともに改善する」という態度が必要です。ビジネスにおけるクリティカルシンキングの主な目的は、問題解決だからです。
「ともに改善する」という態度を保つには、「トラブルの本質的な原因を突き止めるため」「顧客満足度を高める、より良い製品を作るため」といった具体的な目的を明確にしましょう。クリティカルシンキングを進めるなかで、たびたびこの目的に立ち戻ることで、「相手に勝つ」「論破する」といった敵対的な姿勢を和らげることができます。
クリティカルシンキングのプロセスでは、ときとして前提から崩れてしまうことさえあります。それでも、閉鎖的な態度を避けて「どうするとよいのか」を探し続けていきましょう。
情報や前提は正しいか
クリティカルシンキングを進める中で第一に意識したいのは、考えている問題を構成する情報や前提の正しさです。
例えば、「当社の顧客はサービスAにおけるBの部分を評価してくれている。だから売上が向上した」という仮説があるとします。このとき、
- 顧客はサービスAを評価している
- 顧客はサービスAのBの部分を評価している
- 売上が向上した
という3点が正しいか否かを確認しなければなりません。ここが間違っていては、仮説自体が成り立たないからです。
さらに、「当社の顧客は〜評価している」「だから売上が向上した」ということについても、
- 具体的に顧客の何割がサービスAやBの部分を評価しているのか
- 売上の向上とサービスAのB部分に対する評価に、本当に因果関係があるのか
といった点を確認する必要があるでしょう。
仮説で用いられている事実や前提を問われる側は、不快に感じることもあるかもしれません。それでも、こうした細かいチェックが、その後の思考の生産性を高めてくれます。
推論は正しいか
事実や前提の確認ができたら、次は推論の流れをチェックしましょう。
例えば、前述の「当社の顧客はサービスAにおけるBの部分を評価してくれている。だから売上が向上した」に続いて、「さらなる売上向上に向けて、製造業をターゲットに、Bの良さを全面に出した製品を開発し、高い顧客満足度を実現できるようにしよう」という提案があったとします。
ここでは、以下の点がチェック対象になるでしょう。
- Bを主体とする製品は、本当に売上向上につながるのか
- Bは製造業の顧客にも評価されるのか
推論のチェックでは、仮説を「PはQである/ない」「PだからQである/ない」といった形に細かく切り分け、それぞれについて確認していくことが重要です。
反証できるか
前提や推論をチェックする際に併せて意識したいのが、「反証できるか」というポイントです。簡単に言えば、「主張されている内容に反する例を挙げられるか」ということです。
例えば、「当社商品のターゲット層Aには、αという特徴がある。だから、売れている」という仮説があるとします。この場合、「ターゲット層Aで特徴αをもつ人でも、その商品を購入しなかった人が一定数以上いる」あるいは「ターゲット層Aで特徴αをもたない人にも売れている」と示せれば、この仮説が全面的に正しいわけではないことがわかります。
反例がある場合は、その仮説を却下し、別の仮説を立てなければなりません。
クリティカルシンキング実践トレーニングの3つのコツ
クリティカルシンキングの能力を鍛えるには、以下のコツをおさえましょう。
- 事実と意見を区別し、根拠を問う
- 先入観・隠れた前提を疑う
- 思考過程の偏りを減らし、多角的に考える
順番に解説します。
社会問題について事実と意見を区別し、根拠を問う
1つ目のコツは、「事実」と「意見」を区別することです。意見は「解釈」「判断」と言い換えても構いません。これを実践する良い教材は、日々報道される社会問題です。
社会問題を使う利点は、複数のメディアが情報を伝えたり意見を述べたりするケースが多くあるからです。
- この問題を構成する事実は何か
- 事実同士に、どのような相関関係・因果関係を想定しているか
- 誰が、どのように評価・判断しているか
- 今後、社会においてどのような影響がありそうか(なぜそのような影響があるのか)
といったことを意識しながら、新聞・雑誌・テレビ・インターネットメディアなどにおける報道を見比べてみましょう。具体的な数値やデータが示されているなら、それもチェックしてください。
アンケート結果の場合は、
- 誰が調査対象か
- 調査期間はいつか
- どのような方法で調査しているか
- 有効回答数はどのくらいあったのか
といった点も忘れずにチェックしましょう。
なお、客観的と思われる数値・データでも、利害関係などから恣意的な情報が出されることがあります。これに惑わされないよう、「誰が・どのような目的で出した情報か」も確認しましょう。
バイアス・思い込み・隠れた前提を疑う
2つ目のコツは、「バイアスや思い込みに気づく」「隠れた前提を疑う」ことです。これには、次の4つの視点が有効です。
- ①根拠となる情報や事実が少なすぎないか?
- ②情報の信憑性は低くないか?
- ③過去の成功例を使い回していないか?
- ④リスクのある結論を敬遠していないか?
バイアス・思い込みや隠れた前提を疑う視点を身につける方法として最も取り組みやすいのは、前提の中にある“不明瞭な言葉”を探し出すことです。例えば
- 「方向性」「強化」といった人によって捉え方が異なる言葉
- 「多い/少ない」「多忙/閑暇」など、程度を抽象的に表す言葉
などがあります。
先の例題1では、クレームが「増えている」という表現、例題2では「急」な変更は「うまくいった試しがない」という表現が、これに該当します。
ほかにも、
「他の人がそう思っているから」
「世の中そうなっているから」
なども、よく登場する不明瞭な言葉です。
こうした表現が含まれている場合は、具体的に何を言わんとしているのかを事実と照らし合わせながら確認しましょう。
思考過程の偏りを減らし、多角的に考える
クリティカルシンキングにおける3つ目のコツは、思考の偏りを軽減して多角的な考え方を目指すことです。具体的な方法としておすすめなのが、「オズボーンのチェックリスト」の活用です。
オズボーンのチェックリストとは、1つの事柄に対して9つの視点で考えるためのリスト。先入観や固定されてしまった捉え方を強制的に変える効果があり、企画会議でもよく活用されます。
具体的なトレーニング方法を、身近な「鉛筆」を例に見ていきましょう。
【鉛筆についての多角的思考トレーニング】
| 転用 | 2本あればお箸になる/木材なので燃料になる |
|---|---|
| 応用 | 芯を足せる仕様にする |
| 変更 | 芯の色を蛍光色にする |
| 拡大 | 芯の強度を上げることで、折れにくい芯をつくる |
| 縮小 | 削らなくても芯が出続けるようにする |
| 代用 | 軸の材料をプラスチックやゴムにする |
| 置換 | おしゃれなインテリアになるデザインにする |
| 逆転 | 書くと文字が消せる鉛筆をつくる/消しゴムで消せない鉛筆をつくる |
| 結合 | 消しゴムをつける/削りカスを掃除する機能をつける |
大切なのは、突拍子もないことや強引な発想でもいいから、再考し続けることです。普段考えない切り口で思考したり、限界まで考え続けたりすることが、染みついてしまった思考の偏りを自覚するきっかけとなるでしょう。
自分の思考の偏りを自覚できれば、意識的に“別の視点”を探せるようになります。
クリティカルシンキングで使える分解ツール・フレームワーク
最後に、以上のような実践で活用できる思考のフレームワークを4つご紹介します。これらを用いて情報を整理すると、より進めやすくなるでしょう。
MECE(ミーシー、ミッシー)
1つ目は、MECE(ミーシー、ミッシー)という概念です。これは、ロジカルシンキングで用いられる基本概念であり、英語の「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive」の頭文字をとった用語です。日本語では、一般に「漏れなくダブりなく」と訳されます。
例えば、顧客の分類において「年齢」を基準にすると、MECEな分類ができます。他方、「大学生」「20代」「30代」といった分類方法では、大学生と20代で重複が発生し、MECEではありません。
MECEはロジカルシンキングのツールではありますが、クリティカルシンキングでも大いに役立つ考え方です。要素同士の関係性をチェックしやすくなるからです。
MECEな分類のやり方や注意点については、以下の関連コラムで詳しく解説しています。
コラム「MECEとは?具体例や鍛え方、フレームワークをわかりやすく解説」はこちら
5W1H分析
情報の抜け漏れのチェックに役立つフレームワークでは、5W1Hが有名です。When・Where・Who・What・Why・Howという6つの疑問詞で構成されるため、5W1Hと呼ばれます。
ビジネスの現場における報連相で活用されることが多い5W1Hですが、クリティカルシンキングでも事実の確認に役立ちます。
【5W1Hとは】
| 疑問詞 | 注目する要素 | 具体例 |
|---|---|---|
| When | 時 | 時期・日付・時間帯など |
| Where | 場所 | 会場・建物・部署・イベントなど |
| Who | 人 | 担当者・責任者・顧客など |
| What | 物事 | 商品・サービス・業務内容・課題など |
| Why | 理由・原因 | ニーズの変化・システムの不具合・誤認など |
| How | 手段 | 業務フロー・使用ツール・分析手法など |
5W1Hの詳しい解説や原因分析・問題解決のやり方、ビジネスシーンでの具体例などは、ぜひ以下の関連コラムをご確認ください。
コラム「5W1Hとは?わかりやすい意味と例文、フレームワークの使い方」はこちら
ロジックツリー
ロジックツリーも、クリティカルシンキングで役立つツールです。階層構造をつけた情報整理に便利で、下(または右)にいくほど要素が細分化される点に特徴があります。目標設定や問題の因果関係の整理、商品・サービスの構成要素などの可視化に広く用いられてきました。
ロジックツリーは一覧性が高く、全体と細部を同時に確認しながら分析できる点が魅力です。課題の整理や仮説の流れをロジックツリーにしておけば、細かい要素まで漏れなくチェックできるでしょう。
なぜなぜ分析
問題分析の手法には「なぜなぜ分析」もあります。トヨタ生産方式「TPS」の1つとして有名な手法ですので、聞いたことがあるという人も多いでしょう。
なぜなぜ分析は、「なぜ」を繰り返し問うことで問題の本質的な要因を見いだそうという考え方が特徴です。1回の「なぜ」だけでは、直接的・直感的な原因は出てきても、問題の再発防止につながる原因にたどりつくことは困難なもの。そこで、意識的に「なぜ」を繰り返し、掘り下げていくのです。
クリティカルシンキングでは、思い込み・前提のチェックや推論の妥当性の確認が欠かせません。問題の原因を安易に決めつけないためにも、1つの事実・推論に対して「なぜそうなるのか」「原因・根拠は何か」を複数回問うていきましょう。
ただし、注意すべき点が1つあります。なぜなぜ分析で原因を繰り返し掘り下げていくと、「担当者の能力が低かったから」と結論付けるケースが出てくることです。こうした個人の責任に帰着させる考え方は、本質的な問題解決にはなりません。個人を責めるのではなく、あくまでも組織体制・業務フローなどのシステムの面で解決を図ることを目的に分析を進めましょう。
クリティカルシンキング向上や部下育成には、研修の活用もおすすめ
日々トレーニングを積むことで、誰でもクリティカルシンキングの能力を向上させられます。トレーニングでは意識的に不明瞭な言葉を探し、「そもそもの事実・前提は正しいのか」「他の視点はないか」と考える姿勢が大切です。
効率的にトレーニングを進めるには、まずクリティカルシンキングを体感する研修で概要を理解し、仕事や私生活での実践へつなげるという「インプット・アウトプットのサイクル」をつくると効果的です。
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