有給休暇|取得義務の日数や付与の基準とは

published公開日:2024.03.29
有給休暇|取得義務の日数や付与の基準とは
目次

有給休暇は従業員のリフレッシュなどを目的とした休暇です。労働基準法に定められているため、企業の担当者は制度を正しく理解し、運用する必要があります。

本コラムでは、有給休暇の概要や取得義務、年次有給休暇管理簿などについて解説します。

有給休暇とは

有給休暇とは、賃金が保障された休暇日のことです。労働基準法第39条に「年次有給休暇」として定められており、「有給」と略すことや、会社によっては「年休」と呼ぶ場合があります。

有給休暇の目的

有給休暇は「労働者の心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障する」ために設けられたものです。リフレッシュの意図が含まれており、使用用途は問われません。趣味や旅行、家族の用事といった私用でも問題なく取得できます。

有給休暇は対象者全員が取得可能

要件を満たす従業員は全員、有給休暇を取得する権利があり、その旨が労働基準法に定められています。会社側が有給休暇の申請を受理しなかったり、取得しないよう抑制したりすることは、労働基準法に反します。「うちの会社には有給休暇はない」などと主張することもできません。

有給休暇5日の取得義務 と罰則

2019年4月から施行された働き方改革関連法案により、労働基準法の一部が改正されました。具体的には、年間10日以上の有給休暇がある従業員に対し、5日以上の有給休暇を、会社側が時季を指定して取得させるというものです(時季指定義務)。

違反した場合は、労働基準法第120条の罰則規定により、雇用主に30万円以下の罰金が科せられます。従業員1名の違反につき罰則が科せられるため、注意が必要です。例えば、有給休暇を取得させなかった従業員が10名いる場合、300万円以下の罰金が科されることになります。

また、労働基準法第89条において、休暇は就業規則に掲げるべき事項のため、時季指定義務の対象者や方法を、就業規則に記載しなければなりません。こちらも違反すると、30万円以下の罰金が科されます。

※参照:厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説

有給休暇の付与日数とルール

有給休暇は労働基準法第39条により、付与要件、付与日数、不要の方法などが定められています。一つ一つ見ていきましょう。

※参照:e-Gov法令検索|労働基準法第39条

※参照:厚生労働省|Q&A「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」

有給休暇の付与要件

有給休暇の付与要件は以下の2点です。

  • 雇い入れの日から6カ月 継続勤務している
  • その期間の全労働日の8割以上出勤している

上記の要件を満たす従業員は、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態に関わらず、有給休暇付与の対象となります。

有給休暇の付与日数

有給休暇の日数は、勤続年数や所定労働時間・所定労働日数などによって異なります。

通常の労働者の場合

通常の労働者に付与される有給休暇の日数は、以下の表の通りです。「通常」とは、週所定労働時間が30時間以上、所定労働日数が週5日以上、または1年間の所定労働日数が217日以上を指します。

勤続年数 有給休暇の付与日数
6カ月 10日
1年6カ月 11日
2年6カ月 12日
3年6カ月 14日
4年6カ月 16日
5年6カ月 18日
6年6カ月以上 20日

週所定労働日数が通常より少ない労働者の場合

週所定労働時間が30時間未満、かつ、週所定労働日数が4日以下、または1年間の所定労働日数が48日から216日までの労働者には、以下の日数の有給休暇が付与されます。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 6カ月 1年6カ月 2年6カ月 3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月以上
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
週所定労働日数 1年間の所定労働日数 6カ月 1年6カ月 2年6カ月
4日 169~216日 7日 8日 9日
3日 121~168日 5日 6日 6日
2日 73~120日 3日 4日 4日
1日 48~72日 1日 2日 2日
3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月以上
10日 12日 13日 15日
8日 9日 10日 11日
5日 6日 6日 7日
2日 3日 3日 3日

有給休暇の取得日

有給休暇の取得日は従業員が決められます。ただし、従業員が指定した日に有給休暇を取得すると、事業を正常に運営できない場合は、会社側が日程を変更できる「時季変更権」が認められます。例えば、多くの従業員が同じ日に休暇を指定した場合などが、これにあたります。

また、前述の通り、年10日以上の有給休暇を付与される従業員に対しては、1年以内に5日、会社側が時季を指定して取得させる必要があります。時季の指定については、従業員の意見を聞き、尊重しましょう。ただし、対象の従業員が有給休暇を5日以上取得している場合は、時季の指定は不要です。

有給休暇は時間単位で取得可能

有給休暇は、原則として1日単位で付与されます。しかし、労使協定を結んだ場合は、1時間単位で、上限年間5日分まで付与が可能です。

有給休暇の計画的付与 (計画年休)

有給休暇のうち、5日を超える部分については、会社側が付与日を計画的に定められます。これにより、従業員はためらわずに有給休暇を取得でき、従業員同士で有給休暇取得日が重なるリスクも軽減できるでしょう。ただし、計画的付与を行う場合は、就業規則に定め、労使協定を結ぶ必要があります。

有給休暇の時効

有給休暇は発生日から2年間で時効により消滅します(労働基準法第115条)。1年間で取得できなかった有給休暇は翌年に繰り越されます。

※参照:e-Gov法令検索|労働基準法第115条

年次有給休暇管理簿とは

年次有給休暇管理簿とは、有給休暇の取得状況を把握するための書類やシステムのことです。ここでは、概要と記載すべき3つの必要項目について解説します。

年次有給休暇管理簿の概要

働き方改革により、年次有給休暇管理簿の作成と保存が企業に義務付けられました。従業員ごとに有給休暇を付与した日(基準日)や日数、取得した日などを記載し、3年間保存する必要があります 。

年次有給休暇管理簿の3つの必要項目

年次有給休暇管理簿に必要な項目は以下の3つです。これらは、労働基準法施行規則第24条の7に定められており、従業員ごとに記す必要があります。

基準日

基準日とは、従業員に有給休暇を付与した日です。前述した取得義務では、この基準日が起点となります。基準日から1年以内に、年間10日以上の有給休暇がある従業員に対して、5日以上の有給休暇を付与しましょう。

また、新入社員などにおいて、1年間に2つの基準日が存在する場合は、両方の基準日を記載します。法定の基準日(半年後)を待たずに、入社日から前倒しで有給休暇を付与する場合 や、初年度と翌年度の基準日が異なるケースなどは、これにあたります 。

日数

基準日から1年間のうちに、従業員が取得した有給休暇日数 を記載します。半日や時間単位で取得する場合も、同様です。

時季

時季とは、従業員が実際に有給休暇を取得した日のことです。「10月1日」や「10月1日から10月3日まで」のように、具体的に記します。時間単位で取得する場合は、「10月1日14時00分から10月1日16時00分まで」のように、時間帯も記載しましょう。

有給休暇に関する4つの注意点

最後に、有給休暇を付与する際の注意点をまとめました。有給休暇は法律で定められたもので、違反すると会社側に罰則が科せられます。制度を正しく理解し、適切な対応と管理を行うことが重要です。

(1)有給休暇の基準日を統一する

前述の通り、対象者に対して1年に5日以上の有給休暇を付与することが、労働基準法により定められています。管理ミスなどによる付与の漏れは、法的な違反につながるため注意が必要です。漏れなく確実に管理するためには、基準日の統一が有効です。

例えば、4月に入社した社員の基準日は半年後の10月1日ですが、2年目以降は年度始め(4月1日)に統一します。これにより、従業員ごとの基準日を把握する手間が減り、管理の確実性が向上するでしょう。

また、従業員が上司や同僚などに遠慮なく有給休暇を取得できるよう、年次有給休暇取得計画表の運用も有効です。基準日に作成し、職場で共有することで、計画的に有給休暇を取得できます。

(2)有給休暇の申請理由をしつこく聞かない

「会社に有給休暇の取得申請をしたら、理由をしつこく聞かれた」というケースは少なくありません。有給休暇は、心身のリフレッシュを目的としているため、どのような理由で使うかは、取得する人の自由です。取得理由によって付与の可否を決めるものではないため、理由をしつこく聞くことは避けましょう。

ただし、申請日に有給休暇を与えると業務の妨げになる場合などは、その理由を伝え、時季を変更して付与できます。

(3)有給休暇取得の有無で評価しない

労働基準法附則第136条では、「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と定められています。有給休暇の取得により、皆勤手当を減らしたり、賞与の査定を下げたりすることは禁じられているため、注意しましょう。

※参照:e-Gov法令検索|労働基準法附則第136条

(4)有給休暇の買取は原則不可

労働基準法第39条では、有給休暇を与えることが定められており、買い取りによる代用は認められていません。原則として、有給休暇の買い取りは不可です。 しかし、法律に基づいた有給休暇の日数よりも多く付与している場合は、法律を上回る日数分は買い取りしても問題ありません。また、時効や退職の場合も、買い取ることができます。 有給休暇の買い取りは会社の義務ではありません。ただし、買い取ることにより退職日が早まり、社会保険料の負担が軽くなるなどのメリットもあるため、総合的に見て判断しましょう。