静かな退職とは?何が悪いのか、40代・50代にも広がる静かな退職という働き方の原因と対策を解説

published公開日:2026.02.05
静かな退職とは?何が悪いのか、40代・50代にも広がる静かな退職という働き方の原因と対策を解説
目次

「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、職場に在籍しつつ、心理的に距離を置く働き方を指します。

日本では若手に限らず、40〜50代にも広がっているといわれており、背景には価値観の変化や組織への不信感があります。

本コラムでは、静かな退職という働き方が広がっている原因やリスク、企業が講じるべき対策を解説します。

静かな退職とは?意味と特徴をわかりやすく解説

静かな退職とは、表立って退職を宣言するのではなく、心の中で「会社との距離を取る」働き方を指します。仕事への情熱を失ったわけではなく、精神的な負担を減らし、自分の生活を優先しながら働く姿勢が特徴です。

社会の価値観が「仕事中心」から「自分らしい生き方」へと変化する中、静かな退職という概念は多くの人の共感を集めています。

ここでは、海外で生まれたこの考え方がどのように日本に広がり、どのような特徴を持つのかを整理して解説します。

「静かな退職(Quiet Quitting)」とは?海外発の新しい働き方の概念

静かな退職(Quiet Quitting)とは、与えられた業務の範囲を超えず、必要最低限の仕事だけをこなす働き方を意味します。

アメリカの若い世代を中心にSNSで広まり、「過剰な努力をやめ、自分の時間を大切にする」という考え方として注目を集めました。

The big bang began on TikTok, with a video uploaded by a 20-something engineer named Zaid Khan. [...]"I recently learned about this term called quiet quitting, where you're not outright quitting your job, but you're quitting the idea of going above and beyond,"

<日本語訳>

ビッグバンの始まりはTikTokだった。20代のエンジニア、ザイド・カーンという人物が投稿した動画がきっかけである。(略)

「最近、“静かな退職(Quiet Quitting)”という言葉を知りました。これは、仕事を辞めるわけではないけれど、“必要以上に頑張る”という考えをやめることを指すんです。」*

背景には、コロナ禍を経て広がったリモートワークやメンタルヘルスへの意識の高まりがあります。

多くの人が「仕事中心の生活」から一歩引き、自分の幸福や家庭、趣味とのバランスを取り戻そうとしているのです。

この動きは単なる怠慢ではなく、「自分を守る働き方改革」として、世界的に共感を集めています。

*引用元:NPR Planet Money|The economics behind 'quiet quitting' — and what we should call it instead

日本で広がる「静かな退職」の特徴と兆候

日本でも静かな退職は徐々に広がっています。特徴として、目立った不満や対立を表に出さず、職場にいながら心の中で「距離を置く」状態が挙げられます。

例えば、以前より意見を言わなくなる、会議で発言しなくなる、最低限の仕事のみ行うなどが兆候です。

また、日本では若手だけでなく40代・50代の人にも静かな退職が広がっているのも特徴的です。

社会学で静かな退職について扱ったレポートでは、いわゆる日本で「働かないおじさん」と呼ばれる中高年社員と静かな退職には、「必要最小限の業務を行うことで企業内に留まっているという点で共通点がある」としています。*

40代・50代にも静かな退職が広がっている原因や背景については後ほど詳しく解説します。

*参考:齊藤豊「静かな退職と働かないおじさん」大妻女子大学人間関係学部紀要

「静かな退職」と「サイレント退職」の違い

「静かな退職」と似た言葉に「サイレント退職」がありますが、両者は異なる意味を持ちます。

静かな退職は、職場に残りながらも積極的な関与を控える「心理的撤退」です。一方、サイレント退職は、退職の意思を伝えずに突然辞める、または退職を周囲に知らせずに去る行動を指します。

つまり、静かな退職は「心の中での退職」であり、実際に職場を去るわけではありません。

静かな退職が起こる原因とは?若手から40代・50代社員にも広がる背景

静かな退職が広がっている背景には、働き方や価値観の変化、職場への不信感、過重な負担など、複数の要因が重なっています。

とくに近年では、若手社員だけでなく40代・50代のベテラン層にもこの傾向が見られるようになりました。

ここでは、静かな退職が生まれる背景を世代横断的な視点で詳しく解説します。

コロナ禍以降に変化した働き方と価値観

コロナ禍によってテレワークが普及し、多くの人がワークライフバランスを見つめ直しました。家族との時間や自分の趣味に価値を見いだす人が増え、仕事中心の生き方に疑問を持つようになったのです。

この変化により、従来の「成果を出すために頑張る」から、「健康を守りながら長く働く」へと意識が転換しました。結果として、過剰な業務や過度な責任を負うことを避け、あえて職務に境界線を引くという選択が生まれています。

つまり、静かな退職は怠慢ではなく、変化する時代に合わせた新しい働き方の防衛反応という側面があります。

上司や組織への不信感・評価への不満

静かな退職を引き起こすもう1つの要因が、上司や組織への信頼低下です。努力が正当に評価されないことや、上司とのコミュニケーション不足、目標や方針の曖昧さなどが挙げられます。こうした環境では、社員は「頑張っても報われない」と感じやすくなります。

特に近年は、管理職の多忙化やリモートワークによってフィードバックの機会が減少しています。承認や共感が得られないまま業務を続けるうちに、社員のモチベーションは次第に低下していくのです。

社員が口に出して不満を訴えることなく、心の中で働く意味を見失っているのが、静かな退職における最大のリスクといえるでしょう。

「やりがい搾取」や過剰な業務負担の蓄積

「やりがいがあるから頑張れる」という言葉の裏で、「やりがい搾取」が起きているケースもあります。成果や熱意に見合わない報酬、慢性的な人手不足、終わりのない残業などが続けば、心身が疲弊します。

こうした働きすぎの状態を放置すれば、燃え尽き症候群(バーンアウト)を招き、組織全体の生産性にも悪影響を及ぼします。

燃え尽き症候群(バーンアウト)については、以下のコラム記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

コラム「バーンアウトとは?バーンアウト症候群の診断からうつ病との違い、対策方法」はこちら

40代・50代に静かな退職が増えている理由

静かな退職は、若手から40代・50代のミドル層にまで広がりを見せています。

この世代は長年企業に尽くしてきた一方で、昇進や給与の頭打ち、組織改革による役割変化などに直面しやすい立場にあります。

また、家庭では介護や子育ての負担が重なり、仕事との両立に限界を感じる人も少なくありません。

「これ以上頑張っても報われない」「無理をしても健康を損なうだけ」と感じたとき、静かな退職という選択が現実的な逃避手段になります。

さらに、職場での世代交代が進む中で、ベテラン社員の経験や意見が軽視されるケースも見られます。最近のVUCAと呼ばれる変化の速いビジネス環境では、多様化やDX化が進み、ベテラン社員の経験が活かしづらくなっているのも要因の1つといえるでしょう。

長年にわたる業務負荷と期待との乖離が、徐々に失望となって積み重なり、組織への信頼を失ったミドル層は静かにフェードアウトしていくのです。

静かな退職は何が悪い?その影響とリスクを正しく理解する

静かな退職は一見、波風を立てずに仕事を続ける「穏やかな選択」に見えますが、放置すると本人・職場・企業の全てに悪影響を及ぼします。

本人のキャリア停滞や評価低下だけでなく、周囲の士気低下、組織全体の生産性悪化にもつながる可能性があるのです。

ここでは、静かな退職について、具体的なデメリットとリスクを整理しながら解説します。

本人にとってのデメリット

静かな退職を続けると、本人のキャリア形成や評価にマイナスの影響が出やすくなります。

  • 成長機会の減少
  • キャリアの停滞
  • 人事評価への悪影響
  • 自己肯定感の低下

最低限の仕事だけをこなす状態では、スキルの成長機会が減り、昇進・昇給のチャンスを逃す可能性が高まります。

また、上司や周囲から「意欲が低い」「変化に消極的」と見られやすく、将来的な異動やプロジェクト参加の対象から外されることもあります。

本人の意思として「無理をしない働き方」を選んでいても、組織内では「やる気がない」と誤解されやすいのが実情です。

さらに、心理的にも「惰性で働く状態」が続くと、仕事への達成感やモチベーションを失い、自己肯定感が低下していきます。

結果として、キャリアの停滞だけでなく、働く意義を見失うリスクがあります。

職場・チームに及ぼす影響

静かな退職は、本人だけでなくチーム全体の雰囲気にも大きな影響を与えます。

  • 全体のモチベーション低下
  • 職場のコミュニケーション悪化や一体感の喪失
  • 生産性の悪化

1人の社員が受け身になれば、その姿勢は周囲にも伝わり、チーム全体の士気が低下する可能性があります。

とくに、静かな退職は「目立たない離脱」であるため、上司や同僚が気づきにくく、じわじわと組織の活力を奪うリスクがあります。前向きな意見が出なくなり、協力関係が弱まり、最終的にはチーム全体の生産性が低下してしまうのです。

また、意欲的に働く社員との温度差が生まれると、不公平感や不満が広がり、職場の一体感が失われます。

このように、静かな退職は職場の空洞化を引き起こし、チームの生産性にも影響を及ぼすことが少なくありません。

企業にとってのリスク

企業にとっても、静かな退職は見過ごせないリスクです。

  • 離職率上昇
  • 人材育成コストの増加
  • エンゲージメント低下による生産性の低下

静かな退職が広がることで、若手社員への悪影響や離職の連鎖を招く可能性があります。

「頑張っても評価されない」「上司が何も気づかない」といった不信感が職場に広がり、組織の信頼関係が崩れていくのです。優秀な人材が離職すれば、新たな採用や育成に時間とコストがかかります。

さらに、表面上の勤務実態と裏腹に、従業員の心が離れていれば、組織の生産性やエンゲージメントが大きく低下します。

企業がこのサインを見逃せば、組織力そのものが弱体化してしまう恐れがあります。

静かな退職は、数値化が難しい損失として、企業経営に長期的な影響を与えるのです。

静かな退職を防止・改善するための組織的対策

静かな退職を防ぐためには、社員の意欲と信頼を回復するための仕組みづくりが欠かせません。一人ひとりの声を拾い、納得感のある評価やキャリア支援を行うことが重要です。

「気づかないうちに社員が離れていた」という事態を防ぐには、企業が積極的にエンゲージメントを高め、社員の自己実現を支援する姿勢を持つ必要があります。

ここでは、組織が実践すべき具体的な4つの対策を紹介します。

社員エンゲージメントを高める仕組みづくり

エンゲージメントとは、社員が仕事や組織に対して持つ誇りや愛着の度合いを示す指標です。静かな退職を防ぐには、このエンゲージメントを高めることが最も有効なアプローチといえます。

  • 定期的なエンゲージメントサーベイの実施とフィードバックの共有
  • 社員の意見を経営に反映する「ボトムアップ提案制度」の導入
  • 成果の見える化、正当な評価制度の導入

そのためには、単に福利厚生を整えるだけでなく、社員の意見を反映させる「双方向のコミュニケーション文化」を築くことが必要です。

定期的なアンケートや意見交換会を通じて、現場の課題やストレス要因を早期に把握することができます。

また、仕事の成果や貢献を見える化し、努力が正当に評価される環境を整えることも重要です。

社員が「自分は組織に必要とされている」と感じられれば、離職や静かな退職の抑止力となります。

社員のエンゲージメントを高める意味やサーベイの仕方などについては、以下のコラムにわかりやすく解説しています。

コラム「エンゲージメントとは?意味・サーベイ・高める方法を解説」はこちら

キャリア面談・1on1による早期フォロー

静かな退職は、上司が部下の変化に気づけないまま進行するケースが多く見られます。そのため、定期的なキャリア面談や1on1ミーティングを実施し、社員一人ひとりの思いや不安を丁寧に聞くことが重要です。

  • 月1回以上の定期1on1ミーティング制度化
  • 組織全体でのフォロー体制の構築
  • 管理職向けの研修実施

1on1では、業務の進捗確認だけでなく、本人のキャリアビジョンや働き方への希望をヒアリングします。

これにより、「本音を言える場」が生まれ、離職や静かな退職の予兆を早期に察知できるのです。

1on1で得た内容を簡易に記録し、人事部や他部署と共有することで、問題を個人や上司だけに抱え込ませないようにしましょう。必要であれば、組織として早期に配置転換や教育機会の提供をできる仕組みを整えます。

また、管理職向けに、傾聴スキルやフィードバックなどの研修を実施することも重要です。上司の面談スキルを向上させ、社員の本音を引き出す対話力を育成しなければ、効果的な1on1は実現できません。共感的な姿勢で話を聴く上司が増えれば、心理的安全性が高まり、静かな退職の予防につながります。

効果的な1on1実践方法については、以下のコラム記事もぜひ参考にしてください。

コラム「1on1とは?意味・目的、部下に「苦痛」と言われないための進め方」はこちら

多様な働き方やキャリアパスを認める企業文化の醸成

静かな退職の背景には、「成長の停滞」や「将来像が見えない」といった閉塞感が存在します。

企業は、社員一人ひとりのライフステージや志向に合わせて、多様な働き方やキャリアパスを提示することが求められます。

  • 社員のキャリア自律を支援する教育・対話の場を設ける
  • 管理職・専門職・プロジェクト型など複線型キャリアパスの導入
  • フルリモート・時短勤務・副業など柔軟な働き方を選べる制度設計

例えば、リスキリング(学び直し)や社内副業制度、専門職としてのキャリア継続など、選択肢を広げることで社員の意欲を引き出せます。

また、管理職以外のキャリアにも価値を認める文化を築くことで、社員は「自分の働き方にも意味がある」と感じられるようになります。

働く時間や場所を柔軟に選択できる多様な働き方を支援する制度設計も重要です。

こうした柔軟なキャリア支援は、単なる人事施策ではなく、社員の幸福度と組織の持続的成長を両立させる基盤となります。

多様性を受け入れる企業ほど、静かな退職を防ぎ、健全で前向きな職場を維持できるのです。

「静かな退職=悪い」ではなく、より良い働き方を考えるきっかけに

静かな退職は、単なる怠慢と捉えられがちですが、必ずしも悪い現象ではありません。むしろ、働く人が「自分にとって無理のない働き方とは何か」を見つめ直す機会ともいえます。

企業にとっても、社員が静かに距離を置くことは、組織の課題を可視化する重要なサインです。

この現象をネガティブに捉えるだけでなく、働き方の在り方を再考し、より健全で持続可能な職場づくりにつなげることが重要です。

働く人がやりがいを持ち続けられるかどうかが、これからの企業の競争力を左右する時代になっています。

静かな退職を防ぐための本質的な解決策は、社員が安心して意見を言え、成長を実感できる組織文化を育てることです。企業が一方的に努力を求めるのではなく、社員の幸福と成果の両立を目指す姿勢が欠かせません。

そのためには、短期的な成果よりも長期的なキャリア支援、そして心理的安全性の高い職場づくりが重要です。

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