リスクマネジメントとは|企業で取り組む必要性やプロセスについて

update更新日:2025.06.17 published公開日:2023.10.20
リスクマネジメントとは|企業で取り組む必要性やプロセスについて
目次

リスクマネジメントとは、企業をめぐる様々なリスクを選定・評価し、対策を立てることです。

急激に多様化し複雑化するビジネス環境の中で、企業の事業活動におけるリスクマネジメントが必須の取り組みとなっています。

今回のコラムでは、リスクマネジメントとは何か、企業で取り組むプロセスや活用できるフレームワークについて解説します。

リスクマネジメントとは?基本概念と重要性

リスクマネジメントとは、企業を取り巻く様々なリスクを洗い出し、リスクの測定や対策を行うことです。

はじめに、リスクマネジメントの基本的な意味や必要性についておさえておきましょう。

リスクマネジメントと似た言葉である、クライシスマネジメント(危機管理)やリスクヘッジといった言葉との違いについても解説します。

リスクマネジメントの基本的な意味

リスクマネジメントとは、企業経営において起こり得るリスクを想定し対策を立てることで、損失を最小限に抑える手法です。

ビジネスにおけるリスクマネジメントの「リスク」とは、事業活動に悪影響を及ぼす全てと考えるとよいでしょう。新技術が登場することで事業に不確定要素が生まれることもリスクの1つですし、DXによって業務がデジタル化することで、サイバー犯罪の被害を受ける可能性が生まれることもリスクです。グローバル化で海外進出をする場合は、進出先の国・地域の文化や価値観、法令に関わるリスクもあるでしょう。

リスクマネジメントでは、こうした事業活動において発生し得る悪影響を予測し、全体の方向性を調整し、予測されるリスクへの対処方法を検討します。企業・組織の文化や体制、戦略をチェックし、従業員一人ひとりの業務、チームや組織の活動、そして会社全体での活動において発生し得るリスクについて、あらかじめ細かく洗い出し、対策を立てておくことがポイントです。

リスクマネジメントの目的と必要性

リスクマネジメントを行う目的は、企業経営における損失を最小限に抑えることです。

技術の発展、社会の価値観や情勢の変化、自然災害や感染症など、ビジネスを取り巻く環境は常に変化し続けています。予測が困難なこの状況にあって、リスクに対して無策のままでは、高額な損害賠償金の支払い、サイバー犯罪などの被害などで大きな損失も発生しかねません。こうした時代で生き残り、企業価値を高めていくためにも、リスクマネジメントは不可欠なのです。

企業におけるリスクマネジメントの役割については、「企業とリスクマネジメント」(ページ内リンク)で詳しく説明します。

リスクマネジメントと危機管理(クライシスマネジメント)、リスクヘッジの違い

リスクマネジメントと似た概念に、「危機管理(クライシスマネジメント)」と「リスクヘッジ」があります。

危機管理とは、簡単にいえば「不祥事などの危機が起こってしまった結果」として企業が被る損失を最小化し、早期に回復するための施策のことです。

リスクマネジメントとの違いは、リスクマネジメントがリスクの発生の予測と防止に焦点を当てているのに対し、危機管理はリスク発生後の対処と事業活動の回復を視野に入れている点にあります。

リスクヘッジとは、リスクを予測して回避したり損害を最小限に抑えたりすることです。リスクマネジメントとリスクヘッジの意味はよく似ていますが、リスクマネジメントは企業のリスク全体の管理を指すのに対し、リスクヘッジはある特定のリスクを回避する意味で用いられることが多い、という点に違いがあります。

リスクマネジメントの4原則とは

リスクマネジメントのリスク対応策は、低減・回避・移転・受容の4種類に分類することができ、これをリスクマネジメントの4原則と呼んでいます。

リスクマネジメントの4原則を表にまとめると以下のようになります。

【リスクマネジメントの4原則】

分類 概要 事業活動における例
リスクの低減 リスクを減らすこと グローバル展開する企業において、各国の法令などに抵触しないよう、海外赴任する従業員に対して教育を実施する
リスクの回避 リスクの発生要因をなくすこと 災害の多い地域や治安の悪い地域に事業所・工場を建設しない
リスクの移転 リスク発生時の影響を他の方法でカバーすること 発生し得るリスクに備えて保険に加入し、リスク発生時に損失を充当する
リスクの受容 発生頻度が低くリスクの影響が小さい場合に、そのリスクが発生し得ることを認識する リスクを認識するだけにとどめ、対策を行わないこと

企業に具体的にどのようなリスクがあり、どのようにリスクマネジメントのプロセスを構築すべきかについては、次の章以降で詳しく解説します。

企業とリスクマネジメント

近年、企業が直面するリスクはますます多様化・複雑化しています。そのため、リスクマネジメントは企業の持続的成長や競争力強化のために不可欠な要素となっているのです。

ここでは、企業におけるリスクマネジメントの役割と、企業が抱えるリスクの種類について解説します。

企業におけるリスクマネジメントの役割

企業にとってリスクマネジメントは、経営の安定と持続的成長を実現するための重要な戦略の1つです。

リスクマネジメントの主な役割は以下の3つにまとめられます。

  • 経営の安定化
  • 法令順守と社会的信用の維持
  • 競争力の向上

企業におけるリスクマネジメントの最大の役割は、企業自身が抱えるリスクを事前に特定し、適切な対策を講じることで、経営の安定を図ることです。特に、財務リスクや市場リスクなどは、企業の存続に直結するため、綿密なリスク管理が必要といえます。

さらに、複雑化・多様化したビジネス環境において、コンプライアンス違反による企業の信用失墜は、経営に深刻な影響を及ぼします。企業は適切なリスクマネジメントにより、法令を順守し社会的責任(CSR)を果たすことが必要です。

また、リスクを適切に管理することで、危機に強い企業体制を構築できます。市場の変化に柔軟に対応できる企業は、競争力を高め、長期的な成長力を得られるでしょう。

企業のリスクマネジメントは、危機管理や損失の回避というマイナス面で捉えるのではなく、経営戦略の一環として取り組むことが重要です。リスクを適切に評価し、効果的な対策を講じることで、企業の成長と安定を支える基盤となります。

企業のリスクの種類

企業が直面するリスクは多岐にわたり、業種や事業形態によって異なりますが、いくつかのカテゴリーに分類が可能です。

企業活動を行ううえでのリスクは「純粋リスク」と「投機リスク」の2つに大別できます。「純粋リスク」とは、自然災害など損失しかもたらさないリスク、「投機リスク」とは、経済情勢や法令の変更など損失と利益の両方の可能性があるリスクのことです。

企業のリスクの種類を純粋リスクと投機リスクに大別してまとめると以下のようになります。

純粋リスク 投機リスク
自然災害リスク 台風・地震・火災などによるリスク 戦略リスク 新商品の開発や新規事業の開拓など
オペレーショナルリスク
(業務リスク)
業務プロセスの不備や人為的ミス、設備の故障などによるリスク 経済情勢の変動リスク 為替や金利の変動など
サイバーセキュリティリスク サイバー攻撃やテロによるシステム損害や情報漏洩のリスク 技術的変動リスク 技術革新や特許などの技術的環境の変化
コンプライアンスリスク
(法的リスク)
法令違反や倫理的問題によって生じるリスク 政治や法的規制の変更によるリスク 規制の強化や法令の変更など

企業の投機リスクは、損失だけでなく利益をもたらすこともあり、事業自体の性質にかかわるものであるため「ビジネスリスク」と呼ばれることもあります。

リスクマネジメントの基本プロセス

リスクマネジメントは、企業が直面するリスクを適切に管理し、事業の安定性を確保するために不可欠なプロセスです。

リスクを効果的に管理するためには、「リスクの特定・把握→分析→評価→対応」という4つのプロセスを着実に実施する必要があります。また、定期的なモニタリングやレビューを行い、リスクマネジメントを継続していくことも重要です。

ここでは、リスクマネジメントの基本プロセスについて解説します。

リスクの特定・把握

リスクマネジメントの第一歩は、組織に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定し、把握することです。

リスクには、自然災害、法規制の変更、サイバー攻撃、経済的リスクなど、様々な種類があります。

リスクの特定では、主観的な判断を避けるために、過去のデータ分析や業界のベストプラクティスを参考にします。また、リスクを特定する際には、内部環境(自社の強み・弱み)と外部環境(市場の変化や競争状況)を考慮することで、より包括的なリスク把握が可能です。経営陣だけでなく、現場の従業員からの情報収集も行うとよいでしょう。

リスクの分析

特定したリスクを詳細に分析することで、リスクの性質や影響度を明確にします。リスク分析では、以下のような視点から評価を行います。

発生確率 リスクがどの程度の確率で発生するか
影響度 発生した場合の企業や事業への影響の大きさ
根本要因 リスクが発生する原因やトリガーとなる要素

分析の際には、定性的な情報だけでなく、可能な限り数値化(定量分析)を行うとよいでしょう。例えば、過去の発生頻度や類似企業での事例を参考に、リスクが発生する可能性を測定するなどの対応が有効です。また、リスクの影響をシミュレーションし、企業に与える潜在的な損害を試算することで、より精度の高いリスク評価が可能になります。

リスクの評価

リスク分析が完了したら、次にリスクの評価を行います。このプロセスでは、分析結果をもとに、どのリスクを優先的に管理すべきかを決定します。リスク評価では、一般的に「発生確率」と「影響度」を軸としたマトリクスを使用し、リスクの優先順位を決定します。

リスクの大きさ 優先度
高リスク 発生確率・影響度ともに高い 最優先で対策を実施する必要がある
中リスク 発生確率・影響度いずれかが高い 可能な限り迅速に対策を講じる
低リスク 発生確率・影響度ともに低い 必要に応じて対応する

このようにリスクの重要度を明確化することで、企業の限られたリソースを効率的に活用し、リスクマネジメントを最適化することが可能になります。

リスクへの対応

リスクの評価が終わった後は、実際にリスクに対処するフェーズに移ります。上で説明したリスクマネジメントの4原則にしたがって、それぞれのリスクへの具体的な対応策を検討していきましょう。

リスクへの対応方法 具体的な対応策
回避(リスクを発生させない) 法規制リスクを回避するため、新市場への参入を見送る
軽減(リスクの影響を小さくする) 情報セキュリティ対策を強化し、サイバー攻撃のリスクを低減
移転(リスクを第三者に移す) リスクのある業務について保険を活用して損害を補償する
容認(リスクを受け入れる) 影響が小さいリスクは、コストをかけずにそのまま許容する

企業は、これらの対応策を単独または組み合わせて実施することで、リスクの影響を最小限に抑えることができます。

継続的なモニタリングとレビュー

リスクマネジメントは、「対応策マニュアルを作ったら終わり」「対応策を実施したら終わり」ではありません。環境の変化や新たなリスクの発生に対応するため、定期的にモニタリングとレビューを行い、対策の有効性を確認することが重要です。

ビジネス環境や法令、ニーズや価値観は変化するものです。社内を見ても、必ずしもずっと同じ業務を続けていたり、同じメンバーが働いていたりするわけではありません。企業がリスクマネジメントを継続的に改善し、適応力を高めることで、長期的な事業の安定性を確保できます。

リスクマネジメントのフレームワーク(ガイドラインや認証)

企業のリスクマネジメントの重要性が増している中、国内外でリスクマネジメントのガイドラインや認証制度が普及してきています。

これらのフレームワークを活用することで、企業はリスクの特定・評価・対応のプロセスを体系的に整理し、規模や業界に応じた適切なリスク管理が可能になるでしょう。

ここでは、代表的なリスクマネジメントのフレームワークとして「ISO31000」「ISO27001/ISO27005」「Pマーク」について解説します。

ISO31000

ISO31000は、企業や組織が包括的なリスクマネジメントを実施するための国際標準規格です。リスクの特定、評価、対応の基本原則やフレームワークを定めており、業種や規模を問わず適用可能な汎用性の高いガイドラインとなっています。

ISO31000では、組織の戦略や意思決定プロセスにリスクマネジメントを統合し、リスクを事業戦略の一部として管理することを推奨しているのが特徴です。また、継続的な改善を促すため、リスク管理のプロセスをPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルで運用することを前提としています。

ISO31000は、リスクマネジメントを単なるリスク回避ではなく、組織の持続可能な成長のための戦略的アプローチとして捉えるための指針として提供されているのです。

ISO 27001/ISO 27005

ISO27001およびISO27005は、情報セキュリティに特化したリスクマネジメントの国際標準規格です。デジタル化が進む現代において、企業の機密情報や顧客データの保護は最優先事項となっており、これらのフレームワークを導入することで情報セキュリティ対策を強化できます。

ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を構築・運用するための国際規格です。組織が情報の機密性、完全性、可用性を確保し、サイバー攻撃や内部不正などのリスクを最小限に抑えることを目的としています。一方、ISO27005は、ISO27001のフレームワークを補完する形で、情報セキュリティリスクマネジメントの具体的な手法を定めたガイドラインとなっています。

ISO27001とISO27005を組み合わせることで、情報セキュリティ対策の精度を高め、企業のリスクマネジメントを強化することが可能です。

Pマーク

Pマーク(プライバシーマーク)とは、個人情報を適切に取り扱っていることを評価された事業者であることを示すマークです。審査基準は、「JIS Q 15001:個人情報保護マネジメントシステム—要求事項」に準拠した個人情報保護マネジメント(PMS)を構築・運用できているかどうかです。Pマークの取得・使用には、JIPDECによる審査を受けなければなりません。

Pマーク取得のメリットの1つは、PMSの構築・運用によって、個人情報漏洩などの事故を予防・抑制できることです。万が一事故が発生しても、定期点検によって早期発見が可能となり、事故後の対応や責任の所在が明確であるため、迅速に適切な対応が行えます。また、個人情報の管理方法について第三者機関によって評価されることで、顧客からの信頼も得られる点もメリットといえるでしょう。

企業のリスクマネジメント事例

企業のリスクマネジメント手法やフレームワークなどについて解説してきましたが、業種、規模、成長ステージなどにより、企業ごとに対応すべきリスクは様々です。

大手企業から中小企業まで、実際に企業が行っているリスクマネジメント事例を3つ紹介しますので、自社との比較や参考にお役立てください。

【事例①】BCP(事業継続計画)の導入(森ビル株式会社)

BCP(事業継続計画)とは、企業が地震やテロなどの大きな災害に見舞われた際、損害を最小限にとどめ事業を継続するための対策を取りまとめたものです。内閣府の調査によれば、令和5年度で国内の大企業の7割以上、中堅企業の4割以上が、BCPを策定しています。*1

リスクマネジメントの一環として、企業単位ではなく、開発・管理物件の所在する街全体のBCPを導入しているのが不動産開発会社の森ビル株式会社です。『「逃げ出す街」から「逃げ込める街」へ』をテーマに、高い耐震性能技術や都市ガスを活用した発電システムの採用、独自のエネルギープラントによる電力の安定供給など、様々な施策を展開しています。独自の災害ポータルシステムの開発、管理物件を拠点とした防災ネットワークの構築など、ソフト面での災害復旧や防災対策を導入しているのも特徴です。*2

*1 参考:内閣府防災情報|『令和5年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査』

*2 参考:森ビル株式会社|『「逃げ出す街」から「逃げ込める街」へ 森ビルの総合震災対策』

【事例②】介護サービス事業者の情報セキュリティ対策(株式会社ホスピタリティ・ワン)

訪問介護サービス事業の株式会社ホスピタリティ・ワンは、リスクマネジメントとしてBCP策定のほか、情報セキュリティ対策を強化しています。

介護サービス事業者は、医療情報などセンシティブな個人情報まで取り扱うものの、利用者が高齢者層なこともあり、FAXの誤送信事故が頻繁に起こっているというのが実状でした。ホスピタリティ・ワンは自社でFAX誤送信事故が起きた事態を重く受けとめ、区の支援制度を利用してプライバシーマークを取得し、全国でも数少ないプライバシーマークを取得した訪問介護ステーションを展開しています。

プライバシーマーク取得に当たっては、社内に専用の担当者を置いて社内規定の整備や申請手続きなどを実施。プライバシーマーク取得に取り組む過程が、社内の情報セキュリティに関する意識付けや文化醸成にもつながったそうです。

参考:中小企業庁|中小企業白書(2016年版)

【事例③】新規事業や海外進出のリスクマネジメント

株式会社東研サーモテックは、海外でタイ・マレーシア・中国・メキシコの4拠点を展開する、基盤の熱処理加工受託業者です。マレーシアに進出した直後にアジア通貨危機が起こり売上が激減した経験や、中国進出後に日系メーカーの苦戦により販路が制限されてしまった失敗などを活かし、海外進出や事業展開のリスクマネジメントを強化しています。

具体的な取り組みは、顧客との優先的な覚書の締結、日系以外の欧米メーカーとの取引などによる販路の拡大、顧問弁護士の社外取締役化などです。同社代表取締役によれば、『「現地に会社が設立しやすい」ことと「商売が成り立つ」ことは別』であり、海外進出に当たっては中長期的な採算性や価格戦略を十分考慮して、リスクマネジメントを徹底しています。

参考:中小企業庁|中小企業白書(2016年版)

企業に必要とされるリスクマネジメント

企業を取り巻くリスクが多様化している中で、企業にはどのようなリスクマネジメントが必要とされているのでしょうか。

最後に、企業に必要とされているリスクマネジメントについて、コンプライアンス、パワハラ・セクハラ防止、クレーム対応の3つの側面から解説します。

コンプライアンス

コンプライアンスとは「法令を遵守すること」です。

現代の企業経営において、コンプライアンスは非常に重要です。帝国データバンクの「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2024年度)」*によれば、「不正発覚による倒産」は過去最多の388件となりました。コンプライアンスをおろそかにすることが、企業活動の停止、倒産へつながる例は珍しくなくなっているといえます。

国内の法律や助成金などの受給で不正を行わないことは当然ですが、海外で事業を行う企業は進出先の国・地域の法令に抵触することがないよう注意が必要です。法令は新設・改正が行われますので、自社の事業に関連する法令の知識が最新であるかどうかも常にチェックしましょう。

*参考: コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2024年度)|帝国データバンク

パワハラ・セクハラ防止

上司と部下の関係においては、ハラスメント防止も欠かせません。ハラスメントによる訴訟は、高額の賠償金だけでなく社会からの信用を損なうことにもつながりますので、ハラスメントの発生は非常に大きなリスクと考えるべきです。

ハラスメントの中でも、職場におけるパワーハラスメント、セクシャルハラスメントについては事業主が防止対策を講じることが義務化されました。具体的に求められているのは、以下の5つの取り組みです。

  • 会社としての方針を明確にして、経営層や管理職も含む労働者に周知・啓発する(研修などを行う)
  • 労働者からの相談・苦情に応じて適切に対処するための体制を整備する(相談窓口の設置、担当者の配置、相談・苦情による不利益な取扱いの禁止を明記・周知、処罰内容を就業規則などに規定)
  • 相談・苦情があった場合に、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者および行為者に適正に対処、再発防止に取り組む
  • 相談者や行為者のプライバシーを保護する
  • 業務体制の整備、ハラスメントの原因の解消に向けた措置を行う

コンプライアンスの項目で述べたように、法令は必要に応じて改正・新設されることがあります。ハラスメント関連の法令や取り組みは厚生労働省の公式サイトで紹介されていますので、定期的にチェックしましょう。

参考:厚生労働省|職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント

クレーム対応

顧客との関係性においては、クレーム対応に関するリスクマネジメントを意識することが大切です。今はSNSなどで一気に情報が拡散される時代となっています。一方で、新たに「カスハラ(カスタマーハラスメント)」という言葉が普及してきており、企業にとってクレーム対応のハンドリングが重要になってきています。

従業員にクレーム対応研修を実施する場合は、次の4つの内容を取り入れるとよいでしょう。

【クレーム対応研修のおすすめ内容】

項目 概要
クレーム対応の重要性
  • 企業の評価を下げないために行う
  • インターネットやSNSで評価を検索する人が多く、たった1件のクレームでも悪評として拡散され、企業経営のリスクになる恐れがある
クレームが発生する背景を知る
  • クレームは商品・サービスに対する顧客の期待を、現実が大きく下回ったときに発生する
  • 顧客が抱く期待は、意識的な場合もあれば無意識的な場合もある
クレームの捉え方を理解する
  • クレームは顧客が抱いている期待の表れと捉えることができる
  • 商品・サービスの成長・改善に活用できる
  • クレーム内容を考慮した改善により、顧客満足度向上につながる
ケーススタディや
実践トレーニング
  • クレーム対応担当者には、マニュアルに沿った具体的で実践的なトレーニングを行う
  • 営業職や事務職には、クレームの連絡を受けた際の対応・心構え・言葉遣いのトレーニングを行う

「クレームに耳を傾け、きちんと対応してくれた」という顧客の体験は社会的な評価の低下を最小限にとどめられますし、改善が成功すれば「誠実な対応をする会社である」という信頼関係の構築につながります。

クレームをただ「嫌なもの」として扱うのではなく、自社の商品・サービスの改善や顧客満足度向上に活かしましょう。

リスクマネジメントで危機に強い会社に

リスクの多様さ・複雑さは、関係者が多くなればなるほど、また想定する期間が長くなればなるほど複雑になり、不確定要素も多くなります。ある1つのリスクを考えても、部門によって損失・影響範囲の捉え方が異なるケースもあるでしょう。

上手にリスクマネジメントを行うには、従業員一人ひとりがリスクに対する理解を深め、リスクに敏感に反応できる知識と組織文化の醸成が重要です。リスクマネジメント研修やeラーニングを通して、コンプライアンスやハラスメント防止、適切なクレーム対応などのポイントを学びましょう。

ALL DIFFERENT株式会社でも、リスクマネジメントに関する研修をご用意しています。集合型・オンラインの両方で受講できるリスクマネジメント向上研修では、リスクマネジメントの知識を習得できるだけでなく、ワークショップやケーススタディによって実践的内容に触れることも可能です。また、e-ラーニングによって個人情報保護や情報セキュリティなど、現代に必須のリスクマネジメントを学べるコースもご提供しています。

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