ブレイクスルーとは?ビジネスに役立つ思考と実践方法や事例

update更新日:2025.04.23 published公開日:2024.03.28
ブレイクスルーとは?ビジネスに役立つ思考と実践方法や事例
目次

ブレイクスルーとは、多方面からのアプローチによって現状を打破することです。課題に直面している際に、新しい展開をもたらす可能性があります。

本コラムでは、その種類やビジネスに役立つブレイクスルー思考を踏まえて、実践方法や事例をご紹介します。

ブレイクスルーとは

ブレイクスルーとは、「困難や障害を突破すること」や「突破口」など意味する言葉です。英語の「breakthrough」に由来し、「ブレークスルー」と表記することもあります。科学や医療、スポーツなど幅広い分野で使われ、停滞した状況や障壁を打破する際に注目される概念です。

ビジネスにおけるブレイクスルーとは

ビジネスシーンにおけるブレイクスルーは、困難な状況を打破し、前に進むための「突破口」を指します。従来の仕組みや固定観念から抜け出し、新たな視点やアプローチを取り入れることで、本質的な課題解決につなげます。

ブレイクスルーの使い方と例文

では、ビジネスにおいて「ブレイクスルー」という言葉はどのように使われるのでしょうか。具体的な例文を見ていきましょう。

  • 新入社員の意見がブレイクスルーのきっかけになった
  • A社とB社の提携がブレイクスルーにつながった
  • これは改善の一種であり、ブレイクスルーとはいえない

このように「ブレイクスルー」は、ビジネスにおける重要な突破口や革新的な解決策を表す際に使われます。

ブレイクスルーとイノベーションの違い

ブレイクスルーとイノベーションは混同されがちですが、それぞれに特徴があります。イノベーションは「革新」という意味を持ち、技術の変化だけでなく、新しい市場の発見や製品の開発なども含みます。一方、ブレイクスルーは革新的な変化を生み出す「突破口」のことです。つまり、ブレイクスルーはイノベーションの一種であり、その類語ともいえます。

ブレイクスルーの4つの種類

ブレイクスルーは、段階に応じて以下の4つのタイプに分類されます。

  • タイプ0
  • タイプ1
  • タイプ2
  • タイプ3(タイプ1+タイプ2)

それぞれの特徴を見ていきましょう。

タイプ0

タイプ0は、既にある技術を活用し、改良や改善を重ねて商品を開発することです。それまでの常識やルール(パラダイム)の延長線上にあることから、「パラダイム持続型イノベーション」と呼ばれます。

ただし、問題を根本から解決するには至らないと考えられることから、タイプ0と呼ばれ、ブレイクスルーに含めない場合もあります。そのため、ブレイクスルーの種類を3つとする見解もあります。

タイプ1

タイプ1は、既存の技術や研究をさらに深く掘り下げ、革新的なアプローチを見いだすことです。新しいアイデアを生み出し、製品やサービスとして形にします。

これは「知の創造」と「知の具現化」の2つの思考から成り立っています。「知の創造」とは誰も知らないことを見いだす「研究」であり、「知の具現化」はその「知」を社会的に価値のあるものに仕上げる「開発」です。既存の技術を向上させるだけでなく、新しいアイデアを探求することで、他にはない新しい技術や製品が生まれます。このプロセスは、「パラダイム破壊型イノベーション」とも呼ばれます。

タイプ1の有名な事例として、青色LEDの開発があります。実現不可能といわれていた青色LEDは、研究中の偶発的な反応をきっかけに生まれたのです。

タイプ2

タイプ2は既存の商品や技術に対し、再度、徹底的に検証し、新たな価値や優位性を見つけ出す方法です。改善や開発を進めるだけでなく、新たな視点から可能性を探します。

タイプ3(タイプ1+タイプ2)

タイプ3は、タイプ1とタイプ2を組み合わせた方法です。既存の研究を追求すると同時に、新たな価値創造を平行して行います。

例として、蒸気機関の発明があります。フランスのドゥニ・パパンは「熱エネルギーを力学的エネルギーに変換する」という研究と、「気体は膨張と圧縮をする」という研究を進め、シリンダー式の蒸気機関を発明しました。異なる分野の知識と経験が交流し、重要な役割を果たしたのです。

このように、多角的なアイデアの交差が、新しい革新を生み出すことがあります。

ブレイクスルー思考とは

ブレイクスルー思考は「目的を問う」ことで、課題の根本や本質に迫る考え方です。南カリフォルニア大学・名誉教授のジェラルド・ナドラー氏や中京大学・名誉教授の日比野省三氏によって提唱されました。

通常の問題解決手法は、現在や過去の状況を把握し、原因を分析して、解決策を探るものです。しかし、ブレイクスルー思考では、過去や現在の状況にとらわれず、目的となる未来に視点を置き、それを実現するための方法を模索します。

ブレイクスルー思考を活用するためには、「非凡ブレイクスルー思考」と呼ばれる、3つの基礎原理と4つのフェーズの把握が有用です。

ブレイクスルー思考の3つの基礎原理

最初に、ブレイクスルー思考を構成する3つの基礎原理をご紹介します。

  1. ①目的情報
  2. ②ユニーク(unique)
  3. ③システム

1つずつ見ていきましょう。

①目的情報

「目的情報」は目的達成のために必要な情報を指します。多くの情報を集めることは重要ではなく、収集する情報は必要最小限とすることが推奨されています。

②ユニーク(unique)

「ユニーク」という言葉には「特異な」「特徴的な」「既存には当てはまらない」といった意味があります。ブレイクスルー思考では「万物にはユニークな差がある」という考えをもとに、既存の概念から自由になり、独自の視点やアプローチを採用することが重要です。これは、類似事例から解決策を探るのには限界があることを意味しています。

③システム

ブレイクスルー思考では、「万物はシステムである」と考えます。個々の要素や出来事は孤立して存在するのではなく、相互に影響しあうと認識することが重要です。

ブレイクスルー思考の4つのフェーズ

次に、4つのフェーズについて解説します。

①人間のフェーズ

人(関係者)との関わり方を考える段階です。ブレイクスルー思考では「万物はシステムである」と考えるため、目的を達成するためのシステムに人も含まれます。「いつ、どこで、誰に」関わってもらうか(もらわないか)を、見極めることが重要です。

②目的のフェーズ

目的を明確にし、「何のために、その目的を達成するのか」を考えます。「目的の目的」を突き詰めることにより、本来の大きな目的(目的の本質)に気づくことがあります。

③未来解のフェーズ

本来の目的をもとに、未来を創造します。「現状や過去の延長線上にある未来」ではなく、未来の「あるべき姿」を創造する思考が重要です。

④生解のフェーズ

環境や状況により、解決策は変化します。変化に合わせて、改善や調整を行うことが必要です。

ブレイクスルー思考の重要性

では、なぜ、ビジネスにおいてブレイクスルー思考が重視されるのでしょうか。ここでは、そのメリットと役割を解説します。

幅広い視点で解決策が探せる

先述したように、ブレイクスルー思考は多角的な視点で現状を把握し、課題解決に取り組む手法です。あらゆる側面から課題解決を模索するため、それまで考えつかなかった方法を思いつく可能性があります。

ビジネスチャンスを見つけやすい

状況の改善だけでなく、原点回帰し打開策を見つけるブレイクスルー思考は、新たな土俵や予想外のアイデアを生むことがあります。これは、他の企業がまだ進出していない未開の領域である可能性があり、新しいビジネスチャンスとなり得るでしょう。

幅広く意見交換ができる

ブレイクスルー思考では、多方面から問題を考えるため、経験値のある社員からだけでなく、新入社員や他部署の社員などの意見も取り入れます。そこから、新たな可能性が見つかることも珍しくありません。もし、意見が出てこなければ、チームの雰囲気や企業風土を見直すきっかけにもなります。

打開策を実現しやすい

話し合いを進めることで、チーム内の全員が必然的に現状と向き合います。全員が当事者意識を持つことで、打開策が見えたときに、迅速な実行につながりやすいでしょう。

ブレイクスルーを実現するためのステップ

ここからは、ブレイクスルーを実現するためのステップを4つに分けてご紹介します。

  1. ステップ1:課題と目的を明確にする
  2. ステップ2:ラテラルシンキングを身につける
  3. ステップ3:アイデアを出し合う
  4. ステップ4:実行する

それでは、各ステップについて詳しく解説します。

ステップ1:課題と目的を明確にする

まずは、今ある問題を洗い出し、課題や目的を明確にします。これまでの方法に縛られることなく、問題の本質に立ち返り、原因を探ることが重要です。課題や目的が見えてきたら、目的を達成するための目標を設定します。「目的のフェーズ」で示したように、「目的の目的」を突き詰めましょう。

ステップ2:ラテラルシンキングを身につける

ラテラルシンキングは、既存の枠組みや固定観念にとらわれず、様々な視点から新しい発想を生み出すための思考法です。日本では「水平思考」とも呼ばれます。

ロジカルシンキングのように、物事を論理的に縦方向に深堀する思考とは異なり、発想を自由に横に広げます。複数の視点から考察することで、問題解決の糸口をつかめるでしょう。

ラテラルシンキングの手段として、社内研修会やワークショップの活用が有効です。チームのメンバーが集まることで、他者の意見を取り入れ、多角的な視点で考えられます。

ステップ3:アイデアを出し合う

ラテラルシンキングについて理解が進んだら、いよいよブレイクスルーの実現に向けたアイデアを出します。他者の意見を積極的に傾聴し、否定せず、あらゆる意見を尊重することが重要です。部署を横断した意見交換や、社外との交流を取り入れることで、より広い視点からアイデアが集まります。

ステップ4:実行する

チーム内で出たアイデアを絞り込み、実行してみましょう。PDCAサイクルを活用し、実施後に結果を検証し、必要に応じて改善することで、目的達成に近づけます。

アイデアの実行前には意図や目的、やるべきことなどを、関わる人に改めてシェアすることが重要です。経験者だけでなくチームに新しく加入した人も、新商品や新戦略の展開にスムーズに取りかかれます。

ブレイクスルーを実現した3社の事例

最後に、ブレイクスルーを実現した企業の事例を3つご紹介します。

ベネトンの実践事例

イタリア発の世界的なアパレルメーカー「ベネトン」は、ファッション業界の流動的な需要にも対応できる製造工程を採用しています。

以前は、大量の生地を一度に染色し、製造の効率化やコスト削減を図っていました。しかし、流行の移り変わりに対応できず、売り上げが伸び悩むといった課題に直面しました。

そこで、同社が取ったのは「製造工程の見直し」です。トレンドを予測して大量に染色するのではなく、縫製後に流行に合わせて染める「後染め」に変更したのです。結果的に、流行のカラーを需要に合わせて展開できるようになり、業績が回復しました。

コクヨの実践事例

コクヨは1905年創業の老舗文房具製造販売会社です。2005年に主力商品であるCampus(キャンパス)ノートの中国展開を開始しましたが、輸送コストなどの課題を抱えていました。

さらに、中国ではCampusの模倣品であるGambol(ギャンボル)がシェアを獲得しており、苦戦を強いられていました。

そのような状況で、コクヨが取った意外な戦略は「模倣品との提携」です。2012年には、Gambolの製造元から生産・販売事業を継承し、CampusだけでなくGambolの製造も開始しました。

この戦略により、日中関係の悪化により日本製品の不買運動が広まる逆境の中でも、販売を拡大。業績は順調に推移し、現在では中国市場でトップブランドとしての地位を確立しました。

JTRRD cafeの実践事例

JTRRD cafe(ジェイティードカフェ)は、「心と体の美を作るフードアート」を主軸にしたカフェです。看板商品のスムージーの売り上げ向上を目指し、ブレイクスルーを実践しました。

芸術大学卒の店長が持つ色彩やデザインの知識をもとに、それまでになかった「カラフルで独創的なスムージー」を開発。メインターゲットの女性の間で人気が高まり、オリジナリティやSNS映えするビジュアルが注目を浴びました。

ブレイクスルー思考を取り入れよう

ブレイクスルーは、現状の課題を突破し、停滞していた状況を前進させることです。組織でこれを実現するためには、従来の枠組みにとらわれない柔軟な思考や、多角的な視点を取り入れることが重要です。

そのためには、組織をまとめるリーダーの役割が欠かせません。課題の本質を見極め、メンバーの力を引き出すことで、ブレイクスルーのきっかけとなるでしょう。

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