傾聴とは?意味や実践のポイント、ビジネスで身につける方法を解説

update更新日:2025.07.23 published公開日:2023.04.18
傾聴とは?意味や実践のポイント、ビジネスで身につける方法を解説
目次

傾聴は、相手との良好な信頼関係を築くために欠かせないコミュニケーションの技法です。話を聞くテクニックはビジネスシーンにおいて非常に重要であり、ビジネスパーソンにとって必要なスキルの1つです。

本コラムでは、傾聴の意味や実践する際のポイント、身につけ方、ビジネスにおける活用事例などを解説します。

傾聴とは

傾聴とは、相手に対して共感・理解を示すコミュニケーション技法です。相手の話を深く聴き、理解を示すことで、円滑なコミュニケーションが生まれます。

まずは傾聴の意味と目的を確認しましょう。

傾聴の意味

傾聴とは相手の話に関心を持ち、共感を示しながら「聴く」ことです。「積極的傾聴(active listening)」と呼ばれることもあります。

ただ漠然と相手の話を耳に入れる「聞く」とは異なり、相手に積極的にかかわり、意図や感情を理解しようとする能動的な行動です。この能動的な関わりによって、相手との信頼関係が深まり、効果的なコミュニケーションが実現します。

傾聴の目的

傾聴を行う目的は、相手が伝えたいことにフォーカスを当て、相手を理解することです。耳だけで話を聞くのではなく、目で相手の表情を伺いつつ、心で言葉の奥に隠された感情を感じ取る必要があります。

傾聴を活用することで、相手も自分を理解してくれるようになり、良好な人間関係をスムーズに築けます。傾聴はビジネスシーンにおいても非常に重要です。営業や人事、マネジメントなど、顧客や社員との円滑なコミュニケーションに必須のスキルといえます。

傾聴の3原則

傾聴は、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャーズが提唱したものです。ロジャーズは自身が行ったカウンセリング事例を分析し、聴き手に必要な要素として、以下の3つを挙げています。

  1. (1)共感的理解
  2. (2)無条件の肯定的関心
  3. (3)自己一致

1つずつ解説します。

(1)共感的理解(empathy, empathic understanding)

共感的理解とは、相手の立場に立って話を聴き、共感しながら理解しようとすることです。「話し手」と「聴き手」は異なる人間であることを前提に、相手の言葉の裏にある心情を読み取ることが求められます。

ただし、「共感」と「同情」を混同しないよう注意が必要です。共感は、相手の気持ちに寄り添い、理解を示すことであり、「かわいそう」と同情することではありません。相手の気持ちを尊重して、理解しようとする姿勢が重要です。

(2)無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)

無条件の肯定的関心とは、相手が話す言葉をそのまま受け入れて聴くことです。会話の内容について、善悪の判断や否定、好き嫌いなどの評価をせず、無条件に相手の話を受け入れることが大切です。相手の話をストレートに受け入れることで、話し手の心に安心感が生まれ、どんな話題でも話しやすくなります。

お互いの意見が一致しなくても、相手を批判せず、尊重することが重要です。異なる意見を批判するような態度は避けましょう。

(3)自己一致(congruence)

自己一致とは、聴き手である自分自身と相手に対して、誠実に言葉の真意を理解しようとすることです。

相手の話に不明点があった場合、そのままにせず、率直に「わかりにくい」ことを伝えます。わからないまま進むのではなく、正確に理解するため、真摯に確認する姿勢が大切です。

自己一致を実践するためには、聴き手と話し手の間に認識のズレがないよう努めます。言葉の真意を把握するために、会話の内容を正しく理解することが重要です。

傾聴のメリット

傾聴は、個人やチームにとって重要なスキルです。ここでは、傾聴を実施することで得られる主なメリットを2つご紹介します。

信頼関係の構築

傾聴は信頼関係の構築に役立ちます。傾聴を実践すると、相手は「自分の気持ちを理解してもらえている」と感じ、心を開きやすくなります。これにより、安心して話を進めることができ、信頼関係が深まります。信頼関係が深まることで、誤解が減り、互いの意見や感情を尊重しやすくなります。

業務の効率化

傾聴を実践することで、組織やチームのコミュニケーションが円滑になります。意見を言いやすく、相手の考えも理解しやすくなるため、誤解や情報の行き違いを防げます。

また、チームのリーダーが傾聴力を高めることで、メンバーは「自分は尊重されている」と感じやすくなり、自信を持って業務に取り組むことができます。これにより、業務がスムーズに進行し、最終的には業務の効率化やチーム全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

傾聴で重要な心構えと姿勢

傾聴するときは、適切な心構えと姿勢について理解しておくことが重要です。コミュニケーションを円滑に進めるため、以下の4つを把握しておきましょう。

  1. (1)聴くが8割、話すが2割というスタンスで
  2. (2)相手に興味がある姿勢を示す
  3. (3)相手の言いたいことを理解する
  4. (4)繰り返し確認する

(1)聴くが8割、話すが2割というスタンスで

傾聴は相手に話しやすいと感じさせるためのコミュニケーション技法です。相手の話に耳を傾け、その言葉の裏に隠れた真意を引き出すことが求められます。

そのため、聴くことが8割、話すことが2割というバランスが理想とされています。相手の話がメインであるため、口を挟んだり、話を変えたりせず、聴き手は共感・理解を深めましょう。適度に相槌を打つなど、相手が話しやすい雰囲気を作ることが大切です。

(2)相手に興味がある姿勢を示す

傾聴を実践する際には、相手に興味がある姿勢を示します。聴き手の態度は、相手にとって「話しやすさ」に大きな影響を与えます。

例えば、腕や脚を組む、背もたれに身を預けるなどの姿勢は、相手に高圧的な印象を与えてしまいます。こうした態度は、「この人は話を真剣に聴いてくれそうにない」と感じられやすく、相手が心を開きにくくなるため、注意が必要です。会話中は相手の目を見て、真摯な態度で傾聴を実践しましょう。

(3)相手の言いたいことを理解する

傾聴の目的は、相手の言葉の裏にある真意を理解することです。話を聴くときは、相手の立場に自分を置き換え、言葉や心情を受け入れる姿勢が重要です。耳から得る情報だけでなく、目や心を使って情報を整理することが、真意の理解に役立ちます。

例えば、話し手の声の大きさやトーン、表情、しぐさなどから、相手の意図を読み取るよう心がけます。言葉の意味だけでなく、感情や表現にも注目することで、より深い理解につながるでしょう。

(4)繰り返し確認する

傾聴の際には、認識を擦り合わせるため、繰り返し確認が重要です。「今の話はこういうことですか?」と要所ごとに確認し、誤解を防ぎましょう。これは、「自己一致」の原則にも基づいています。

また、相手の言葉をそのまま、もしくは同じニュアンスで繰り返すことで、話の腰を折らずに、共感を示せます。これにより、相手は「しっかり聴いてくれている」と感じ、安心して話を進められるでしょう。

傾聴を効果的に実践するポイント

傾聴を実践する際には、適切な相槌や質問が効果的です。ここでは、相手との信頼関係を築き、効果的にコミュニケーションを図るために重要な「相槌」や「質問」について解説します。

相槌を打つ

傾聴を実践するうえで、適度なタイミングで相槌を打つことは非常に大切です。話し手の動作や感情の変化に合わせて相槌を打つことで、話の内容に共感していることを示せます。

しかし、相槌を打ちすぎると「真剣に話を聴いてもらえていない」と逆効果となることがあります。傾聴の目的は相手の気持ちを深く理解することです。形だけの相槌と受け取られないよう、相手に寄り添って行うことが重要です。

質問をする

傾聴では相手の話を受け止めるだけではなく、相手の発言から真意を引き出すことが重要です。そのために、効果的に質問を挟む必要があります。

質問にはYes/Noで答えられるクローズドクエスチョンと、それ以外のオープンクエスチョンがあります。クローズドクエスチョンは回答者の負担が少なく気軽に答えられますが、多用すると誘導的になりがちです。

オープンクエスチョンは回答者の負担が大きくなることがありますが、会話を広げやすいという特徴があります。オープンクエスチョンで相手の意図を引き出すことで、より深い理解を得られるでしょう。

傾聴力を身につけるロールプレイングの方法

傾聴スキルを実践的に学び、身につけるためには、ロールプレイングでの練習がおすすめです。ここでは傾聴力を身につけるためのロールプレイングの方法を紹介します。

ロールプレイングでは、以下の4つの役割を分担します。

  • 聴き手
  • 話し手
  • 採点者
  • タイムキーパー

話し手が話のテーマを決め、聴き手は傾聴を実践しましょう。制限時間を設けてタイムキーパーが管理し、聴き手がリードして、話し手と会話をします。制限時間を超えたら、話し手が会話の8割を話していたかを確認し、話し手と採点者は傾聴のポイントが掴めていたかを聴き手にフィードバックしましょう。

傾聴は一朝一夕で身につくスキルではありません。普段から意識し、練習を重ねることが重要です。

ビジネスで傾聴が求められる場面と具体例

傾聴はビジネスを円滑に進めるために非常に有効なコミュニケーション技法です。ここではビジネスで傾聴力が求められる場面や、実際の活用例について紹介します。

ビジネスで傾聴力が求められる場面

ビジネスにおける傾聴は、職場内での信頼関係を築くだけでなく、クライアントとの関係にも大きな影響を与えます。傾聴を通じて、メンバーやクライアントが何を必要としているのかを正確に把握することで、適切な対応ができるでしょう。以下では、特に傾聴力が重要な2つの場面を紹介します。

職場の人間関係を構築するとき

傾聴が身につくと、職場で円滑な人間関係を構築しやすくなります。現代社会で感じるストレスの多くは、人間関係によるものといわれています。この要因の1つとして、コミュニケーション不足が挙げられます。

傾聴を実践することで、チーム内での信頼感が強まり、良好な人間関係が構築できるでしょう。上司・部下などの立場に関係なく活用できるため、職場でのストレス軽減や団結力の強化などに役立ちます。

クライアントや消費者との信頼関係を構築するとき

社内だけでなく、社外であるクライアントや消費者との信頼関係構築においても、傾聴は役立ちます。例えば、クライアントとの商談において相手が何を求めているのかを傾聴することで、より的確な提案が可能となり、担当者や自社への信頼が向上します。

また、消費者と直接やり取りする場面でも、傾聴により言葉の裏にあるニーズを理解しやすくなります。ニーズに合ったサービスや製品を提供することで、お客さまから「気持ちをわかってもらえた!」と信頼を得られるでしょう。

クレーム対応でも同様です。相手の話を聞いて、要望を汲み取ることで、「真摯に聞いてもらえた」と怒りを和らげ、関係を修復できます。さらに、傾聴を通じて新たなビジネスチャンスが見つかることもあるでしょう。

活用の具体例

傾聴は人間関係の改善や問題解決に非常に有効です。ここでは、傾聴を実践することで実際に効果があった具体的な事例を紹介します。

こじれてしまった同僚との人間関係を改善したケース

ある女性は仲が良かった同僚に対して発した一言により、人間関係がこじれてしまいました。誤解が生じたのは、発言に対するお互いの認識のズレが原因でした。

このままではいけないと思った女性は、相手の話を徹底的に聴く傾聴を実践します。相手の本音に耳を傾け、感情を理解しながらコミュニケーションを取った結果、お互いの誤解や勘違いが解けました。2人の関係は修復され、信頼がさらに深まったのです。10年以上経っても定期的に連絡を取り合い、良好な関係を続けています。

傾聴がクライアントの成長に良い結果をもたらしたケース

傾聴はカウンセラーやコーチも活用するコミュニケーション技法です。あるコーチは、クライアントを効果的にサポートする方法を模索しており、傾聴に出会いました。

コーチングに傾聴を取り入れると、クライアントはこれまで以上に悩みを打ち明けやすくなり、課題を明確にすることができました。その結果、コーチングの成果が向上し、クライアントの成長につながったのです。

傾聴力はビジネスパーソンに必須のスキル

傾聴は相手の真意を引き出すことを目的としたコミュニケーション技法です。ビジネスパーソンにとって、相手の話を聴き、ニーズを引き出すことは非常に重要なスキルです。傾聴スキルを身につけることで、日常生活からビジネスシーンまで幅広く役立つでしょう。

傾聴は先天的なスキルではなく、訓練によって習得可能です。傾聴の知識を身につけることで、良好な人間関係の構築や、仕事での円滑なコミュニケーションに活用できます。

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