休職とは?種類や条件、給与や手当について徹底解説

published公開日:2024.01.26
目次
休職とは、労働者が自己都合によって長期間仕事を休むことです。主にケガや病気などの理由で働くことが困難になった場合に適用され、雇用関係を維持したまま就業が免除される制度です。
本コラムでは、休職の概要や種類、条件、手続きなどについて解説します。

休職とは

休職とは、企業の従業員や公務員が、雇用契約を維持したまま、自己都合により一定期間仕事を休むことです。ここでは、休職制度や、欠勤・休業との違いについて説明します。

休職制度について

休職は法律上の定義はなく、あくまでも企業ごとの就業規則等で定める制度です。休職が認められるか否かは企業の判断であり、その要件や期間、申請の方法なども異なります。

企業にとって休職を認めることは義務ではないものの、近年、うつ病などのメンタルヘルス問題の深刻化や、スキルアップ、リフレッシュなど、さまざまな事由に対応するため、導入する企業が増えています。

休職と欠勤の違い

欠勤とは、出勤すべき日(所定労働日)に働かないことを指します。従業員が無断で出勤しないことや、有給休暇をすべて消化したあとに休む場合などが、欠勤にあたります。

休職と欠勤の大きな違いは、事前申請の有無です。休職は、従業員と企業が事前に合意したうえで、計画的に行われます。それに対し、欠勤は突発的で、予期せず起こることが一般的です。

そのため、企業側の同意なく欠勤が続く場合には、労働契約の不履行と見なされ、解雇事由になる可能性があります。

休職と休業の違い

休職が労働者の都合による休みであるのに対し、休業は会社都合(労働基準法26条「使用者の責に帰すべき事由」)、もしくは法律に基づいた制度上の休みを指します。

会社都合の休業とは、会社側に責任があるケースのことです。具体的には以下のような例があげられます。

  • ・原材料などの供給不足による休業
  • ・設備の点検や故障などによる休業
  • ・経営不振などによる休業
  • ・監督官庁の要請などによる休業

また、制度上の休業としては、以下のようなものがあります。

  • ・育児休業
  • ・介護休業
  • ・労働災害による休業

休職は会社ごとの規定により異なりますが、休業は法律で定められたものです。そのため会社側は、取得条件を満たす労働者から、休業の申し出があった場合、拒否できません。また、会社都合の休業に手当が発生する点や、制度上の休業に対して給付金が支給される点などは、休職と大きく異なる部分です。

主な休職の種類

会社ごとに定められる休職ですが、その種類はさまざまです。ここでは代表的な6種類の休職について説明します。

私傷病休職

私傷病休職(病気休職)は、業務外の事由による病気やケガの療養のために休職する制度です。長期にわたり入院する際や、就労ができない場合などに適応されます。

私傷病休職制度の設置は、企業の義務ではありません。しかし、労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、多くの企業が私傷病休職制度を就業規則に定めています。期間は企業によって異なりますが、最も多かったのは「6か月超から1年」、次いで「1年超から1年6か月」でした。

また、私傷病と区別すべきものに労働災害による病気やケガがあります。労働災害の場合は、労災保険が適応され、保障が異なるため、見極めには注意が必要です。

※参考:労働政策研究・研修機構(JILPT):「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

事故欠勤休職

事故欠勤休職とは、傷病以外の労働者都合による欠勤が一定期間に及んだ場合に適用される休職措置です。具体的には、従業員の逮捕や拘留などのケースがあげられます。

自己都合休職

自己都合休職は、ボランティア活動や留学など、従業員の都合による休職です。

この休職を認めるかどうかは、企業によって異なります。しかし、一部の企業では、長期的な活動が個人や組織にはメリットをもたらすと考え、自己都合休職を積極的に採用しています。休職の理由を問わない、「サバティカル休暇」を導入する企業も出てきました。

公務員向けには、「自己啓発等休業」という制度も。大学での修学や国際貢献活動を希望する場合に利用できます。

調整休職

調整休職とは、出向先企業や労働組合との兼ね合いによって、一時的に休むことです。調整休職には、「出向休職」や「組合従属休職」などの種類があります。

出向休職は、従業員がグループ会社や関連企業に出向する際、所属元の企業を休職扱いにすることです。一般的には休職期間中の給与や勤続年数は、従業員の不利益にならないよう取り扱います。

組合従属休職は、従業員が会社の業務を行わず、労働組合に専念するための制度です。会社との雇用関係を維持しながら、労働組合の業務だけを行う際に適用されます。

公職就任休職

公職就任休職とは、従業員が議員・知事・市町村長などの公職に就き、業務と両立ができない場合に適応される制度です。

労働基準法(第7条)では、労働者が公務を行うために必要な時間を会社に請求した場合、会社は拒むことができないと定められています(公民権行使の保障)。公職中は自社の仕事を十分に行えないため、休職扱いとするケースが一般的です。

※参考:労働基準法(第7条)「公民権行使の保障」

起訴休職

起訴休職とは、刑事事件で起訴された従業員を休職扱いにする制度です。公務員は、国家公務員法(79条2号)、または地方公務員法(28条2項2号)により、起訴された場合に休職を命じられる旨が定められています。

一方で、労働基準法では具体的な定めはなく、一般企業が起訴休職を設ける場合は、就業規則などに定めます。ただし、起訴されたという理由だけでは休職命令が認められないことがあるので、注意が必要です。

身柄拘束により、労務の提供に支障が出る点や、企業の社会的信用が著しく損なわれる点など、休職命令が必要となる合理的な理由が企業に求められます。

※参考:国家公務員法
※参考:地方公務員法

休職の条件と手続きのポイント

では、実際に従業員が休職する場合、チェックすべき条件や留意すべき手続きポイントを見ていきましょう。

休職の条件

休職は法律で定められているものではなく、あくまでも、会社ごとの制度です。企業によっては、休職制度自体が存在しないケースや、雇用形態や勤続年数など、適用範囲に一定の条件を設けている場合があります。

休職を考えている、もしくは仕事を長期間休まざるを得ない状況になった場合、どのような休職制度が設けられていて、適用条件は何かを把握する必要があります。いざというときに備えて、就業規則をよく確認しておきましょう。

私傷病休職の手続きとポイント

では、実際に休職者が出た場合、どのような流れで手続きを行えばよいのでしょう。私傷病休職のケースを例に説明します。

(1)医師の診断書を取り寄せる

従業員が私傷病による休職を希望している場合、医師の診断書を取り寄せます。近年増えている、うつ病などのメンタルヘルスに起因する疾患の場合は、見た目での状況把握が難しいため、診断書は客観的な判断材料となります。

受診や診断書の提出をスムーズに行うため、これらの事項を就業規則等で定めてもよいでしょう。

(2)会社と従業員で認識をすり合わせる

会社と従業員で話し合いを行い、休職のスケジュールや休職期間中の待遇、賃金、賞与などについて具体的に確認します。就業規則がある場合は、読み合わせを行うなどして、従業員と休職制度について認識をすり合わせます。

傷病手当金の給付有無や、社会保険料や住民税の支払い方法、休職中の連絡方法についても同時に確認しましょう。

(3)休職期間の開始

休職に関して認識のすり合わせができたら、従業員が休職届を出すか、会社から休職を命じる辞令交付を行い、休職期間がスタートします。トラブルを避けるためにも、これらは書面に残しておきましょう。

休職期間中の給与と支出

休職期間中の給与や健康保険などは気になる要素です。ここでは、休職期間中の給与と支出について解説します。

休職期間中は原則として無給

仕事を長期間休む際に気になるのは給与ですが、会社は休職期間中の従業員に、給与を支払う義務はありません。これは、「働いたら支払う」「働かなかったら支払わない」という賃金支払いの原則、「ノーワーク・ノーペイの原則」によるものです。そのため、休職中は原則として無給となります。

労働政策研究・研修機構(JILPT)の「病気休職期間中の月例賃金支給状況」調査によると、18.1%と一定数の企業は、「支給する」と回答したものの、「支給されない」とする企業が74.8%と多数を占めました。

※参考(「ノーワーク・ノーペイの原則」の根拠):民法624条
※参考:労働政策研究・研修機構(JILPT):「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

傷病手当金が支給される場合も

上述の通り、休職期間中は原則として無給であることが多いですが、私傷病による休職の場合は「傷病手当金」の給付を受けられるケースがあります。

傷病手当金は健康保険に加入している従業員の、生活を保障するための制度です。私傷病休職の期間中、会社から十分な給与が支払われない場合に支給されます。傷病により会社を休んだ日が連続して3日以上の場合、4日目以降から開始され、休んだ日数に応じて最長1年6か月まで受給可能です。

傷病手当金の日額は、「直近12か月の標準報酬月額の平均額を30で割ったものの3分の2」と定められています。

休職中の社会保険料・住民税の支払い義務

休職中でも雇用関係は続くため、社会保険料と住民税は免除されません。社会保険料は事業者負担分と従業員負担分の両方が発生します。

また、住民税は前年の所得ベースで算定されるため、休職を開始した年に一定以上の所得がある場合は、翌年も課税されます。

社会保険料や住民税は、通常は給与から天引きして支払われますが、休職中は通常とは異なる手段で徴収する必要があります。

徴収手段としては、「休職中の従業員が毎月振り込む」「傷病手当金から相殺する」といった方法が考えられます。

会社が立て替えて、復職後に休職者に請求する方法もありますが、そのまま退職となる可能性があるため、注意が必要です。徴収方法については、あらかじめ就業規則等に定めておくと、トラブル防止につながります。

従業員が休職する際の対応と注意点

最後に、従業員が私傷病休職する際、会社側が注意すべきポイントを紹介します。休職前、休職期間中、復職時に必要な対応を確認しておきましょう。

休職前に必要な対応

従業員が私傷病休職する際は、客観的な判断が必要となります。会社側から休職を促す場合と、従業員から申し出があった場合の対応についてまとめました。

会社側から従業員に休職を促す場合

従業員がメンタルヘルスに不調を抱えていると推測できる場合は、会社から休職を促すことがあります。

遅刻や欠勤を繰り返したり、ミスを頻発したりして仕事のパフォーマンスがふるわない、またはネガティブな言動が目立つなど、精神的な不調が見て取れる場合は、直属の上司が声をかけ、状況を確認しましょう。

不調の程度によっては、業務量の調整や配置転換などで改善されることがあります。しかし、状況が変わらず医療機関の受診が必要と判断した場合は、受診を勧めます。就業規則に受診義務について定められていれば、業務命令権の執行にあたり、従業員は拒否できません。また、就業規則に定めがない場合も、合理的かつ相当な措置であれば、受診命令が可能です。

受診後は、医師の診断結果に従って、必要があれば休職を命じます。先述の通り、診断書があると客観的な判断ができます。

従業員から休職の申し出があった場合

従業員から「休職したい」と申し出があった場合、理由について話を聞きます。

私傷病が理由の場合は、休職を命じるか否かは医師の診断書から判断しましょう。就業規則等に定めがあれば、受診する医師や医療機関を会社側が指定することも可能です。

受診後は、医師の診断結果に従って、必要があれば休職の届出を受理します。

休職期間中の連絡について

休職中の従業員は就業を免除されていますが、雇用関係は存在しているため、会社としては状況を把握する必要があります。しかし、休職者に労働提供義務を理由とした報告を課すことはできず、頻繁な連絡も負担になることがあります。

休職中の連絡方法については、なるべく本人の負担にならず、連絡を取りやすい手段について、あらかじめ話し合っておきましょう。連絡内容は後から確認できるよう、記録を残すことが重要です。

復職後のフォロー

復職にあたっては、職場復帰の判断や業務上の配慮などが記された、診断書の提出を求めます。主治医からの意見や従業員の状態を確認し、職場復帰可能と判断した場合は、復帰に向けた支援策を整えます。復帰日・業務内容・ポジションなどを検討し、従業員が安心して復職できるようサポートしましょう。必要に応じて、上司との面談や配置転換なども検討します。

また、休職に至った事由によっては、会社が積極的に再発防止をすることが大切です。

参考:厚生労働省 中央労働災害防止協会[改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き]