モラルハラスメントとは?職場モラハラの恐ろしさと具体例、対策方法


モラルハラスメント(モラハラ)とは、主に言葉や態度などで他人に精神攻撃を行う嫌がらせを意味します。家庭生活や恋愛関係におけるモラルハラスメントがよく取り上げられますが、職場でも問題となるケースが見られます。
本コラムでは、職場におけるモラルハラスメントの定義、具体例、加害者の特徴や自分がモラルハラスメントを行わないために意識したいこと、会社としての対策を解説します。
モラルハラスメントとは?職場におけるモラハラの定義
日本大百科全書(ニッポニカ)によれば、モラルハラスメントの定義は次のようになります。
【モラルハラスメントの定義】*
ことばや態度などによって人の心を傷つける精神的な暴力、虐待、脅迫、嫌がらせの総称
簡単にいえば、身体的攻撃としての暴行とは異なり、言葉や振る舞いによって他の従業員を精神的に傷つける嫌がらせです。
モラルハラスメントを放置すれば、被害者である従業員が心身に不調をきたしたり、職場全体の雰囲気が悪くなったりする恐れがあります。何も対策をしなければ、事業活動に悪影響を及ぼすでしょう。
こうした事情から、会社によるモラルハラスメント防止の取り組みが求められています。
*出典:「モラルハラスメント」『日本大百科全書(ニッポニカ)』デジタル版、2025年4月22日閲覧
モラルハラスメントとパワーハラスメントの違い
2020年の労働施策総合推進法の改正により、企業には職場におけるパワーハラスメント防止措置が義務化されました(第30条の2)。では、モラルハラスメント対策も義務づけられているのでしょうか。これには、パワーハラスメントとモラルハラスメントの共通点および違いを確認するとよいでしょう。
モラルハラスメントという概念は、1998年にフランスの精神科医であるマリー・F・イルゴイエンヌ医師によって提唱されました。イルゴイエンヌ医師は、モラルハラスメントという精神的暴力は、身体的暴力とは異なり周囲に気づかれにくいことから、意識的な対応の必要性を訴えました。
他方、パワーハラスメントは日本で生まれた概念です。その定義は、3つの要件で構成されます。
【パワーハラスメントの定義(以下3つを全て満たす)】*
- (1)職場において、優越的な関係を背景とした言動である
- (2)その言動が、業務上必要かつ相当な範囲を超えている
- (3)その言動によって、労働者の就業環境が害される
モラルハラスメントとパワーハラスメントの違いは、「優越的な関係」の有無です。つまり、上の立場にある従業員が下の立場の従業員に行う嫌がらせがパワーハラスメントであり、立場の上下関係にかかわらず言葉や態度などで行われる嫌がらせがモラルハラスメントです。
これ以外の点については両者で共通部分が多く、モラルハラスメントはパワーハラスメントを含む、より広い概念といえるでしょう。加えて、イルゴイエンヌ医師は、モラルハラスメントの事例でセクシャルハラスメントも紹介しています。
結論としては、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントの防止措置を義務づけられたということは、モラルハラスメント防止に向けた取り組みが法的にも求められていると考えられます。
パワーハラスメントを含む様々なハラスメントについては、以下の関連コラムでご紹介しています。本コラムと併せて、ハラスメントの理解や対策にぜひご活用ください。
モラルハラスメントはどんな行為?具体例と発言例
モラルハラスメントを理解するには、具体例によってイメージをつかむとよいでしょう。モラルハラスメントと言われる発言や振る舞いの例をご紹介します。
相手にわざと恥をかかせる
1つ目の例は、相手にわざと恥をかかせるような振る舞いをすることです。
【具体例】
- 他の従業員や顧客が見ている前で、わざと叱る
- わざと本人や周囲に聞こえるように悪口を言う
【発言例】
- 「なぜこんなこともできないんだ、本当にダメなやつだな」
- 「Aさんってまた失敗したの?尻拭いをするこっちの身にもなってほしいよね」
ミスを指摘し、業務の進め方を改善するのであれば、こうしたやり方・言い方ではなく、1対1で丁寧に指導するほうが効果的です。それにもかかわらず、多くの人の前でその従業員が失敗したことを強調するような振る舞いをすれば、その行為はモラルハラスメントになってしまいます。
仕事を押し付ける・取り上げる
2つ目は、わざと大量に仕事を押し付けたり、反対に本来割り振られた業務を一方的に取り上げたりするような振る舞いです。
【具体例】
- 1人では処理しきれないような大量の業務を押し付け、自分は先に帰ってしまう
- もともと割り振られた業務を無視して相手から仕事を取り上げ、何もさせない
【発言例】
- 「Aさんは優秀だから、これくらい全部できるよね。あとはよろしく!」
- 「Aさん、どうせミスするんだから何もしないで!」
職場では、従業員同士が協力して業務を進める必要があります。特定の従業員にばかり負担がかかったり、反対に仕事を何もさせなかったりすると、その従業員は本来の能力を発揮できず、成長機会も奪われてしまうでしょう。これがエスカレートすれば、働きにくさから休職や退職に追い込んでしまう恐れもあります。
こうした悪影響から、仕事の押し付けや取り上げもモラルハラスメントに該当する場合があります。
人間関係から切り離す・無視する
3つ目は、わざと人間関係を悪化させるような振る舞いです。一言で言えば「仲間はずれ」です。
【具体例】
- 歓迎会や飲み会などの社内イベントがあることを知らせない
- あいさつやメールを無視する
- 仕事上の質問などで呼びかけても聞こえないふりをする
ビジネスを円滑に進めるには、人間関係の構築やコミュニケーションが欠かせません。これを正当な理由もなく拒否することは、業務遂行の妨げになるとともに、職場の雰囲気を悪化させます。
「あいさつをしても無視をされる」「業務上必要なメールなのに、なかったことにされる」ということが続けば、そのような振る舞いを受けた側は、職場にいること自体が嫌になってしまうでしょう。
相手の尊厳を傷つけ、職場の雰囲気を悪くしたり退職に追い込んだりすることにつながります。よって、無視もモラルハラスメントに該当するといえます。
プライベートに干渉しすぎる
そして4つ目は、プライベートへの過干渉です。例えば、家族構成や家族関係、一般的なコミュニケーションの範囲を逸した詮索などです。
【具体例】
- 家族構成や家族関係をしつこく尋ねる
- 夫婦・親子関係などについて、求められていないにもかかわらず執拗に助言を繰り返す
- ライフスタイルなど本人の価値観を非難し、特定の価値観を持つよう求める
- プライベートな話を他の従業員に言いふらす
【発言例】
- 「まだ奥さんは働いてるの?育児に専念してもらうよう言ったほうがいい」
- 「Aさん、浮気されてたんだって。相手はどんな人だろうね」
円滑な業務遂行にコミュニケーションは不可欠ですが、「何を話すか」という点には注意が必要です。尋ねている側、噂している側は「ちょっとした雑談」のつもりでも、言われている側にとっては「干渉されたくない」「大きなお世話」ということもあります。
特に、他人の生き方や暮らし方について特定の価値観を押し付けることは、相手の思想・信条の自由を害することになりかねません。そうなれば、職場の心理的安全性が損なわれ、働きにくくなってしまいます。
モラルハラスメントを受けるとどうなる?職場モラハラの恐ろしさ
モラルハラスメントは、加害者と被害者以外の人から気づかれにくく、問題が放置されやすいという特徴があります。中には、加害者自身もモラルハラスメントを行っている自覚がないケースも。上司が指摘しても本人が受け入れられず、なかなか解決に至らないことも珍しくありません。
しかし、モラルハラスメント対策を講じなければ、重大な悪影響が組織に広まってしまいます。どのような悪影響があるのか、今回は4つの観点からご紹介します。
従業員のメンタルヘルス不調、モチベーションが低下につながる
モラルハラスメントが放置されれば、被害を受けている従業員は日常的に尊厳を傷つけられてしまいます。そのストレスは大きく、心身の不調が現れるでしょう。
先述したイルゴイエンヌ医師は、モラルハラスメント被害者が陥る不調について、以下をあげています。
【モラルハラスメント被害者に生じ得る不調】*
- 思考力の低下
- 自律神経失調症
- 抑うつ状態
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
近年では「適応障害」と表現される場合も多いでしょう。
こうした不調にある従業員は、本来のパフォーマンスを発揮できません。業務遂行能力があるにもかかわらず、環境悪化によってミスが生まれ、成功体験を重ねにくくなってしまうのです。自身の安全性が脅かされていることについて、手を打ってくれない組織に不信感を持つようにもなるでしょう。
結果として仕事へのモチベーションが低下し、思うように仕事を進められなくなってしまいます。
*参考:マリー・フランス・イルゴイエンヌ(高野優 訳)『モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない』紀伊國屋書店、1999年、pp.251-271
職場環境が悪化する
モラルハラスメントを放置すれば、職場の雰囲気が悪くなります。ハラスメントを受けた被害者が休職や退職に至るだけでなく、他の従業員も「自分は嫌がらせをされないだろうか」などの疑心暗鬼に陥りやすくなるでしょう。
もっといえば、業務上必要なコミュニケーションすらままならず、ミスや行き違いが重なったり、良いアイデアがあっても言い出せないまま終わってしまったりしかねません。本来なら業務遂行に活用できるはずの時間や労力を、人間関係の調整に大きく割かざるを得なくなってしまうのです。
“組織全体の業務効率が落ちて従業員のストレスが加速される”という悪循環を招く恐れさえあります。
離職者の増加と人手不足につながる
これまで述べてきたように、モラルハラスメントの被害者は、嫌がらせによって心身に不調をきたし、職場を離れる可能性があります。これは、直接被害をうけた従業員だけの問題ではありません。
モラルハラスメントに対して何も解決策が取られない職場では、
「嫌がらせをされた仕返しに嫌がらせをする」
「注意も指導もされないのだから、自分の嫌いな従業員は無視する」
といった振る舞いが常態化するでしょう。「改善してほしいけれど、どうせ上に言っても何もしてくれない」という空気も強くなります。
人材の流動化が加速する昨今、こうした雰囲気の悪い職場で働き続けるよりも、人間関係が良く働きやすい会社に移りたいと考える人は珍しくありません。離職者が増加するリスクがあるということです。
離職者が増えれば、現場は人手不足になります。残された従業員は負担の増大に疲弊し、体調不良による欠勤・休職・退職となる可能性も。ここでも悪循環が発生し、慢性的な人手不足を招いてしまうでしょう。
安全配慮義務違反で訴えられる可能性がある
従業員が健康を損なうほどのハラスメントがあるにもかかわらず、これを放置し続ければ、「企業側が安全配慮義務を怠った」と判断されかねません。
ハラスメント防止措置を講じないこと自体への罰則はありませんが、民事訴訟により損害賠償責任を問われる可能性があります。会社側の責任を認められれば、被害者の通院費用や休職中の収入面における損害などについて賠償しなければなりません。
また、そうした事案がニュースやSNS、口コミサイトなどで拡散され、自社の社会的評価が大きく低下する可能性もあります。
モラルハラスメントの放置には、様々な面での悪影響が長期にわたって継続するという無視できないリスクがあるのです。
モラルハラスメント加害者の特徴と、自分がモラハラだと気づいたときの対処法
ここまでご紹介してきた具体例から、「もしかして、あれはモラルハラスメントだったのでは?」と感じる方もいるかもしれません。特に、「自分がモラルハラスメントをしているかもしれない」と感じる場合、自身の振る舞いを直す必要があります。
ポイントは、以下の3点です。
- 加害者に見られる特徴・傾向をおさえて、原因を認識する
- 職場の多様性を受け入れ、お互いを尊重できる関係性を意識する
- 傾聴の姿勢とアンガーマネジメント能力を身につける
加害者に見られる特徴・傾向をおさえて、原因を認識する
モラルハラスメントを提唱したイルゴイエンヌ医師の著書『モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない』では、加害者の特徴として非常に強い自己愛的な人格であることをあげています。
もともと人には自己愛的な部分が多少はあるものです。しかし、モラルハラスメントにまで至ってしまう人物の場合、それが「変質的」なレベルにまで高まってしまっているのだとイルゴイエンヌ医師は語ります。
では、変質的なレベルの自己愛はどのような振る舞いを引き起こすのでしょうか。同書の記述をもとにまとめた特徴は、以下の通りです。
【モラルハラスメント加害者の特徴・傾向】*
特徴 | 概要 |
---|---|
自己を過大評価している |
|
“精神の吸血鬼”である |
|
無責任である |
|
規則の網をくぐり抜けようとする |
|
モラルハラスメント加害者の考え方には、他者を対等と見なせない心理があるようです。そして、自身の有能感を守ろうとすることが、それを脅かす現実の否認や相手への攻撃につながるとされています。
モラルハラスメントがエスカレートする場合、加害者はこうしたことに無自覚であると言われます。もし途中で気づくことができれば、罪悪感を覚えて不適切な振る舞いをやめられるでしょう。
「自分はモラルハラスメントをしているのではないだろうか?」と感じたら、上の表のような加害者の特徴を確認し、自身に当てはまりそうな課題を認識することから始めてみてください。
*参考:マリー・フランス・イルゴイエンヌ(高野優 訳)『モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない』紀伊國屋書店、1999年、pp.210-228
職場の多様性を受け入れ、お互いを尊重できる関係性を意識する
「他人を利用価値の有無だけで判断する」という姿勢は、職場のメンバーを対等な人間として見ていないことを意味します。モラルハラスメントをやめるには、この考え方自体を改めなければなりません。
現在、ビジネスのグローバル化や価値観の多様化が進み、これまで以上に様々な考え方を持つ人々と一緒に働く機会が増えました。言語や文化、ライフスタイルなどの違いから、意見の対立が生じることもあります。ここで見落としてはならないのが、「絶対的な正解はない」ということです。
職場は、多様な人材が集まり、一丸となってビジネスを進めるための場所です。メンバーが一丸となって働くには、それぞれが自身の能力を発揮し、活躍できなければなりません。一緒に働くうえでのルールは必要ですが、プライベートな関係性やライフスタイル、仕事に直接関係しない価値観まで統一する必要はないのです。
「お互いに多様性を受け入れて尊重し合える職場づくりに貢献しよう」と意識するだけでも、加害者に見られる自己の過大評価から逃れられるでしょう。
傾聴の姿勢とアンガーマネジメント能力を身につける
もし職場で対立が発生した場合は、「相手を攻撃するのではなく、傾聴する」という意識を持つことも大切です。
対立が起こると、つい「自分のほうが正しいのに」とイライラしてしまうもの。しかし、相手が発した言葉が本当に自分が受け止めた通りの意味であるとは限りません。自分が誤解をしているかもしれない可能性も、相手がうまく言語化できていない可能性もあるからです。
だからこそ、まずは相手の真意をくみ取るために傾聴の姿勢が求められます。
- 相手は、何を問題と感じているのか
- 相手は、なぜそれを問題だと考えているのか
- 相手は、問題の解決法として何を提案しているのか
- 相手が提案しているアイデアは、どのような根拠に基づいているのか
こうした項目を丁寧に確認してから、相手の意見を評価するとよいでしょう。
それでも怒りの感情が収まらない場合は、アンガーマネジメントの手法を試してみてください。自身の怒りの原因に目を向け、相手を攻撃するのではなく、建設的な解決策の模索に努めましょう。
モラルハラスメント対策として職場で取り組むべきこと
では、職場としてのモラルハラスメント対策では、何ができるのでしょうか。
端的に言えば、パワーハラスメント対策と基本的に同じです。パワーハラスメントと異なるのは、加害者と被害者に必ずしも上下関係があるわけではないこと。そのため、経営層や管理職だけでなく、一般社員や非正規社員も対象として、防止措置を講じる必要があります。
以下で、具体的に見ていきましょう。
ハラスメント相談窓口を設置し、周知する
モラルハラスメント対策としてまず行うべき施策は、ハラスメント相談窓口の設置です。
改正労働施策総合推進法により、ハラスメント防止措置の一環として窓口設置が義務づけられました。そのため、多くの企業では既に窓口を設置済みでしょう。この相談窓口は、もともとパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、妊娠・出産・育児や介護による休業に関するハラスメントなどが対象です。この窓口で、モラルハラスメントの相談にも対応するのです。
社内に相談窓口の担当者を置かない場合は、外部相談窓口を委託する方法もあります。
さらに公的な相談窓口も案内すると、従業員がより安心して働くことができます。代表的な公的窓口は、以下の2つです。
【ハラスメントに関する公的な相談窓口】
窓口の名称など | 特徴 | URL |
---|---|---|
総合労働相談コーナー |
|
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html |
こころの耳相談 |
|
気軽に相談できる体制を整備することで、モラルハラスメントを予防したり、万が一発生しても早期解決を図ることができます。
定期的なハラスメント研修を実施する
相談窓口の設置と同じく、ハラスメント防止措置として研修の実施も必要です。パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど、他のハラスメント防止研修と併せて実施するとよいでしょう。
研修では、モラルハラスメントの定義、他の従業員や職場への悪影響を伝えるとともに、「ハラスメントは許さない」という強いメッセージを発信することが大切です。
経営層も従業員も“自分事”として捉えられる研修にするには、事例を用いたグループワークもおすすめです。例えば、以下のようなものです。
【ハラスメント防止研修のグループワークの例】*
具体例を示し、次の観点で意見交換を行う。
- どのような振る舞いが問題なのか
- その振る舞いは、なぜ問題なのか
- 適切な振る舞いは、何か
- なぜ、不適切な振る舞いになってしまったのか
こうした研修は部門横断的に実施すると、より効果的です。部署ごとの閉鎖性を防ぐとともに、従業員の横のつながりをつくることで、全社的な取り組みを加速させられるからです。
経営層や管理職を対象とするハラスメント研修では、自身の優位な立場を利用したパワーハラスメントを行わないよう注意喚起するとともに、部下がモラルハラスメントに至らないよう現場を見守ること、モラルハラスメントが疑われる事案に気づいた場合は適切な振る舞い方を指導し、被害者のメンタルケアをサポートすることなどを伝えましょう。
従業員の定期的なメンタルヘルスチェックを実施する
モラルハラスメントは、気づかれないまま放置されやすいハラスメントです。早期発見には、日頃から従業員の様子を気にかけておかなければなりません。そこで役に立つのが、従業員のメンタルヘルスチェックです。
メンタルヘルスチェック実施に当たっては、労働安全衛生法により義務化されたストレスチェック制度の活用が考えられます。
従業員50人以上の企業には年1回以上の実施が義務づけられているため、従来の施策にモラルハラスメント被害の観点を加えることで、防止につなげられるでしょう。
50人未満の企業については、年1回以上のストレスチェックは努力義務にすぎません。実施している企業もまだ34.6%と少ない状況です。*
だからこそ、ハラスメント防止措置の一環として、新たにストレスチェック制度を導入する意義があります。
厚生労働省の「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」の中間取りまとめによれば、「ストレスチェックの実施を外部機関に委託している事業場は7割を超えて」いるとのこと。*
その4割弱が健診実施機関であると報告しています。
外部機関を上手に活用しながら、従業員のメンタルヘルス不調の兆候がないか確認し、もし不調が見られる場合は専門家への相談を促しましょう。
なお、職場のメンタルヘルスについて改めて確認したいという管理職や人事担当者の方には、ALL DIFFERENTがご提供する以下のメンタルヘルス研修が便利です。対応策の検討にお役立てください。
「メンタルへルス研修~メンタルへルスの基礎知識編~」の詳細はこちら
*出典:「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ」(厚生労働省)pp.3-4
モラルハラスメント発生時の対応フローを明確化し、周知する
モラルハラスメントが発生した場合は、迅速に適切な対応をすることで、被害者が受けるダメージを軽減したり職場環境の悪化を防いだりできます。その対応の流れを事前に明確化し、相談窓口の担当者や労務管理担当者、現場の管理職などに共有しましょう。
モラルハラスメントの相談を受けた場合の対応フローも、他のハラスメント発生時と概ね同じです。ただし、そのハラスメントにセクシャルハラスメントや出産・妊娠に関するハラスメントなどが含まれる場合、対応者はなるべく同性のほうがよいでしょう。相談者に対してアンコンシャス・バイアスによる攻撃が発生しないよう、十分に注意してください。
基本的な対応フローの例としては、次のような流れが考えられます。
【モラルハラスメント発生時の対応フロー(例)】
項目 | 概要 |
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事実確認をする |
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相談者への配慮 |
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加害者への対応 |
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事例分析 防止策の見直し |
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メッセージの発信 |
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より細かい施策は、企業ごとに異なります。自社における働き方や業務の特性を考慮しながら、より相談しやすく、働きやすい環境づくりを進めましょう。
ハラスメントの共通対策を研修で学ぶ
心理的安全性の高い職場づくりには、お互いを対等なメンバーと認め、尊重する企業風土の醸成が有効です。それぞれの得意分野を活かして“チームで成果を出す”体制づくりを進めましょう。
第一歩としておすすめの対策は、対処法でもご紹介した傾聴力とアンガーマネジメントの習得です。自身のネガティブな感情を自覚し、不適切な振る舞いを避けて必要なコミュニケーションをとる方法がわかれば、ミスや課題に気づいた際により適切な行動をとれるようになります。
多くの企業で人材育成に伴走してきたALL DIFFERENTでは、ハラスメント防止やアンガーマネジメント、そのほかコミュニケーションに関する研修を多数ご用意しています。様々な人材が活躍できる職場づくりに、ぜひご活用ください。