残業時間とは?労働基準法の定義・上限規制・36協定と計算方法

update更新日:2026.09.11 published公開日:2024.04.05
残業時間とは?労働基準法の定義・上限規制・36協定と計算方法
目次

残業時間には、法定内残業と法定外残業があります。法律との関係で重要な残業時間は、労働基準法による法定労働時間を超える残業です。2019年には、労働者の健康を守るため、罰則付き残業時間の上限規制を導入する法改正も行われました。

本コラムでは、法律における残業時間の定義、法改正による上限規制と過労死ライン、特別条項付き36協定、残業時間の計算方法や違法な処理など、残業時間を扱う際の必須事項を解説します。

残業時間とは?労働基準法における定義と考え方

まずは、残業時間の定義と法律との関係を見ていきましょう。休憩時間や移動時間の扱い、管理職の残業時間についても解説します。

法定内残業と法定外残業の違い

残業には、法定内残業と法定外残業があります。「法定」とは、労働基準法に定められた「法定労働時間」である「1日8時間・週40時間」のこと。法定内残業と法定外残業を言い換えると、以下のようになります。

【法定内残業と法定外残業の区別】

法定内残業 雇用契約(労働契約)に記載されている1日の所定労働時間を超えているが、「1日8時間・週40時間」の法定労働時間内に収まる残業
法定外残業 「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超えた残業

法律との関係が重視される「残業」は、法定外残業です。「時間外労働」とも呼ばれます。

次の例で、法定内残業と法定外残業の違いを具体的に見てみましょう。

【法定内残業と法定外残業の例】*所定労働時間が7時間の場合

所定労働時間+残業時間 法定内残業の時間 法定外残業の時間
所定労働時間+1時間 1時間 なし
所定労働時間+3時間 1時間 2時間

法定外残業は原則として禁止されており、一定の条件をクリアした場合にのみ実施できます。また、法定外残業に当たる残業時間に対して、通常の賃金よりも高い賃金(割増賃金)が支払われます。

なお、労働時間は勤務開始から勤務終了まででカウントしますので、終業時刻後の残業だけでなく、始業時刻前の「早出出勤(早出残業)」も含めなければなりません。これが「1日8時間・週40時間」の範囲を超えていれば、超えている分の時間は法定外残業です。

以下、本コラムで「残業」というときは、全て法定外残業(時間外労働)を意味します。

残業時間に休憩時間・移動時間は含む?

残業時間の計算で注意が必要なのは、休憩時間や移動時間の扱いです。これらは、原則として残業時間には含まれません。

しかし、「休憩時間」「移動時間」と呼ばれる時間であっても、その実態によっては労働時間に含めなければならないことがあります。

【労働時間と考えられる休憩時間の例】

  • ランチミーティングに強制的/半強制的に参加させる場合
  • 休憩時間に職場で電話番や来客対応のための待機をさせる場合
  • 配達や来客待の待ち時間(手待ち時間)である場合
  • 呼び出しがあったら対応しなければならない休憩時間・仮眠時間である場合
  • 休憩時間中に従業員が自主的に労働していることを知りながら、会社側がそれを黙認し、適切な労務管理を行わない場合

【労働時間と考えられる移動時間の例】

  • 業務時間中に比較的近い場所にある出張先・訪問先に移動する場合
  • 新幹線や飛行機などで長距離の移動をする際、移動中に会社の業務を行う場合
  • 業務の一環として役員や上長などに同行して移動している場合
  • 他の従業員を乗せて車を運転している場合
  • 移動中に具体的な仕事はしていないものの、会社から指示があればすぐに対応する必要がある場合(手待ち時間)

労働時間(残業時間)に加えるべきか否かの分かれ目は、従業員が「使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否か」であるとされています。簡単に言えば、「業務指示が来たら、すぐに対応することが上司や会社から求められているかどうか」です。これにYESと答えられるのであれば、その休憩時間や移動時間は、労働時間に含めなければならないでしょう。

管理職の残業時間の考え方

管理職の残業時間については、労働基準法における「管理監督者」に当たるかどうかで扱いが変わります。管理監督者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」のこと。典型例は、部長以上の役職者です。

管理監督者に当たる場合、法定労働時間・休憩時間・休日に関する労働基準法の規定は適用されないとなっています(労働基準法第41条)。したがって、管理監督者には法定外残業という考え方が適用されません。

管理監督者に当たるか否かは、次のような観点から判断されます。

【管理監督者か否かの観点】

  • 経営者と一体的な立場としての職務権限がある
  • 厳密な時間管理を受けず、勤務時間について自由裁量がある
  • その地位にふさわしい待遇を受けている

これらの観点でNOと答える項目が多い“名ばかり管理職”であれば、管理監督者には当たりません。よって、「1日8時間・週40時間」の法定労働時間と時間外労働の扱いや、「労働時間6時間を超えたら休憩45分以上、労働時間8時間を超えたら休憩1時間以上を与えなければならない」といったルールが、他の従業員と同様に適用されます。

残業時間はどのくらい?世界ランキングと日本の年間・月平均時間の推移グラフ

ここで、世界の平均労働時間ランキングや、日本の年間・月平均残業時間を見てみましょう。

労働時間の世界ランキングと日本の年間平均労働時間

世界主要国の労働時間に関するデータでは、2024年のOECD各国に関する年間の平均労働時間ランキングがあります。同データによれば、OECDの平均労働時間は、年間1,736時間。仮に1年の所定労働日数を245日とすると、1日平均7.09時間で働いている計算です。

平均労働時間が多いTOP10は、以下のようになっています。

【年間平均労働時間 TOP10】*1

順位 国・地域名 平均労働時間/年 平均労働時間/日
1 メキシコ 2,193時間 8.95時間
2 コスタリカ 2,149時間 8.77時間
3 チリ 1,919時間 7.83時間
4 ギリシア 1,898時間 7.75時間
5 イスラエル 1,877時間 7.66時間
6 韓国 1,865時間 7.61時間
7 アメリカ 1,796時間 7.33時間
8 ポーランド 1,785時間 7.29時間
9 チェコ 1,771時間 7.23時間
10 ニュージーランド 1,741時間 7.11時間

日本はOECDで21位となっており、年間1,617時間、1日平均6.6時間でした。

ここで1つ注意点があります。OECDの労働時間に関するこのデータは、正社員よりも労働時間が短いパート・アルバイトの労働者も含む統計です。そのため、パート・アルバイトなどの割合が大きいほど、全体の平均労働時間も減る傾向にあります。

厚生労働省の資料によれば、2024年の日本におけるパート・アルバイトの割合は約26%。パート従業員は1,028万人、アルバイト従業員は474万人と、少なくない数を占めています。*2

*1 「Hours Worked」(OECD)から作成

*2 出典:「労働政策審議会 職業安定分科会 雇用環境・均等分科会 同一労働同一賃金部会 参考資料3(令和7年5月21日)」(厚生労働省)

日本の月平均残業時間の推移

では、日本でパート・アルバイト従業員を除く「一般社員」の残業時間はどのくらいあるのでしょうか。厚生労働省が公表する「毎月勤労統計調査」で全国調査の「年結果」を見ると、下のグラフのように推移しています。*

日本の月平均残業時間の推移

2020年から2025年の6年間では、平均残業時間は約16分〜23分で推移しています。近年は「ノー残業デー」のような残業時間削減の取り組みが進められていますが、劇的に減少したとは言い難いでしょう。むしろ、2020年から2023年は増加していました。

全体としては、平均で1日8時間20分ほど働く状況が基本のようです。

* 「毎月勤労統計調査(全国調査・年結果)」(厚生労働省)から作成

残業時間に関する法律改正で罰則付き上限規制が施行

労働基準法の規定により、残業は原則認められません。しかし、ビジネスの現場では残業が行われています。残業ができるのは、一定の手続きによって締結された労使協定という例外があるからです。

とはいえ、無制限に残業できるわけではなく、制限時間が定められている点には気をつけなければなりません。この制限は「残業時間の上限規制」と呼ばれます。

労働基準法改正で上限「月45時間・年間360時間」に

2018年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立し、2019年から改正労働基準法が順次施行されてきました。それまで法律で定められていなかった残業時間の上限が導入されたのです。

上限は2段階あり、1段階目は原則となる基本の上限、2段階目は一時的に労働時間を増やさなければならないケースでの上限となっています。

【残業時間の上限規制】

1段階目の上限(原則)
  • 月45時間・年間360時間以内
2段階目の上限(例外)
  • 月100時間未満・年720時間以内(休日労働を含む)
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 月45時間を超えて残業ができるのは年6カ月まで

ここで、2段階目の上限である「複数月平均」とは、2カ月平均・3カ月平均・4カ月平均・5カ月平均・6カ月平均のことです。各平均を都度算出し、それぞれの計算結果が月80時間を超えないようにしなければなりません。

違反で罰則適用の可能性

残業時間の上限規制に違反すると、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される恐れがあります(労働基準法第119条)。

さらに、違法な残業を指示した管理監督者だけでなく、そうした指示を黙認して是正措置を取らなかった場合、その会社の代表者も罰則が適用されます(両罰規定、労働基準法第121条)。

残業時間の上限規制と過労死ラインの関係

こうした残業時間の上限規制には、「過労死ライン」と呼ばれる残業時間数が大きく関係しています。罰則付き上限規制の意義を理解するには、過労死ラインの理解が欠かせません。

過労死ラインは残業時間が月80時間〜月100時間

過労死ラインとは、わかりやすく言えば「これ以上働くと命の危険がある残業時間」です。単月の残業時間では月100時間、複数月平均では月80時間とされています。

労働時間が週40時間を超え、かつ月の残業時間が45時間を超えると、その後の労働時間が長くなればなるほど過労死との関連性が強まります。具体的には、脳・心臓疾患の発症リスクが高まるのです。

特に、労働時間が週40時間を超え、かつ月の残業時間が100時間を超えるケースや複数月平均で80時間を超えるケースでは、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと指摘されました。*

この残業時間の基準である「月45時間」「月100時間」「複数月平均80時間」が、上限規制の基準となっています。「月45時間」は、残業時間の1段階目の上限(原則)、「月100時間」「複数月平均80時間」は2段階目の上限です。

残業時間の上限規制は“従業員の命を守るための基準”なのです。

*参考:「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」(厚生労働省)p.8

残業時間・休日労働が月80時間を超えたら産業医面談へ

残業時間の長さと脳・心臓疾患の発症リスクとの関係から、法律では、長時間労働を行う従業員に対する医師の面接指導を義務づけています(労働安全衛生法第66条の8)。

ここで言う長時間労働とは、残業時間と休日労働の合計時間が80時間を超える労働のこと。以下の3つの要件を満たす場合、会社側には医師による面談指導実施の義務があります。

【医師の面談指導実施が義務づけられているケース(1)】

  • 従業員が月80時間超の残業・休日労働を行った
  • 従業員に疲労の蓄積が見られる
  • 従業員から医師による面談指導を受けたいという申し出があった

【医師の面談指導実施が義務づけられているケース(2)】

  • 研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度適用者で、月100時間超の残業・休日労働を行った従業員

残業時間が月45時間超〜80時間以内の従業員についても、健康への配慮が必要と認めた従業員については、医師による面接指導などの実施が望ましいとされています。

そもそも残業をさせてはいけないケース・従業員

なお、そもそも残業をさせてはいけない従業員もいます。例えば、

  • 妊産婦である従業員で、残業しないことを請求した者(労働基準法第66条第1項)
  • 小学校入学前の子どもを養育している従業員で、残業しないことを請求した者(育児・介護休業法第16条の8第1項)
  • 年少者(満18歳未満)である従業員(労働基準法第60条)

です。

従業員自身の健康・安全や、子どもの健全な成長を目的とする規定です。

残業時間・休日労働に関する36協定(サブロク協定)と特別条項とは

残業に関する有効な労使協定がない場合、会社側は従業員に残業させることはできません。この労使協定は、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれます。有効な36協定の締結で認められる残業時間の上限は、1段階目の「月45時間・年360時間」まで。それ以上の残業時間が必要なら、「特別条項」が付いた36協定を締結しなければなりません。

36協定(サブロク協定)とは

36協定とは、「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超えて労働させる場合に締結・届出をしなければならない労使協定です。労働基準法第36条に基づく労使協定であるため、通称「36協定」と呼ばれます。36協定を締結・届出せずに法定労働時間を超えて残業させることは、違法です。

36協定の締結は、使用者(会社側)と従業員の代表者で行います。従業員の代表者には、2つのパターンがあります。

【従業員の代表者とは】

パターン1
  • 従業員の過半数で組織する労働組合(過半数組合)
パターン2
  • (過半数組合がない場合)従業員の過半数を代表する従業員のこと
  • 管理監督者でなく、投票や挙手、労働者の話し合い、持ち回り決議など
  • 民主的な手続きで選出された労働者(会社側による指名は無効)

36協定の具体的な内容には、次のような項目があります。

【36協定に必要な合意内容の例】

  • 残業をさせる必要がある具体的な理由(臨時の受注、納期変更、月末の予算事務など)
  • 残業をさせる業務の種類(検査、機械組立、経理など)
  • 残業をさせる労働者数
  • 所定労働時間(残業しない場合の労働時間)
  • 延長することができる時間(1日当たりの残業時間、1カ月や1年当たりにおける残業時間)
  • 残業をさせる期間

残業に関する以上のようなルールを定めたら、所定の様式で書類を作成し、労働基準監督署に届出を行いましょう。届出を行うことで、その36協定が有効となります。

*参考:「36(サブロク)協定とは」(確かめよう労働条件、厚生労働省)

36協定の特別条項とは?締結すると上限時間は「月100時間・年間720時間」に

通常の36協定を締結しても、残業させられる時間の上限は「月45時間・年360時間」です。この1段階目の上限を超えて残業をさせるには、「特別条項」付きの36協定の締結・届出をしなければなりません。有効な特別条項付き36協定があれば、残業時間の上限が2段階目まで引き上げられ、「月100時間・年720時間」までの残業が可能となります。

特別条項では、主に以下の内容について使用者と従業員の代表で合意し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

【特別条項付き36協定に必要な合意内容の例】

  • 臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合(突発的な仕様変更、大規模なクレームへの対応など)
  • 残業させる業務の種類
  • 残業させる労働者数
  • 1日当たりの延長することができる時間数
  • 1カ月当たりの、限度時間を超えて労働させることができる回数・時間数・割増賃金率
  • 1年当たりの延長することができる時間数・割増賃金率

先述の通り、特別条項付き36協定を結んでも、「複数月平均80時間」や「月45時間を超えて残業ができるのは年6カ月まで」といった制限があることを忘れてはなりません。

【特別条項付き36協定を締結・届出した場合の残業時間の上限】

  • 月100時間未満・年720時間以内(休日労働を含む)
  • 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 月45時間を超えて残業ができるのは年6カ月まで

特別条項を適用する場合、上限の原則である「月45時間・年360時間」よりも労務管理の手間が増えます。違法とならないよう、正確な記録・管理が求められます。

36協定に関する違反への罰則

36協定や特別条項付き36協定を締結・届出せずに残業をさせることは、労働基準法第32条違反です。

違反した場合、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されることになります。また、違法となる残業をさせた従業員だけでなく、会社の代表者にも罰則が適用される恐れもあります。

「業務が終わらないので、その場の判断でルールを超える残業をさせた」ということのないよう、ルールの周知徹底と労働時間の記録・管理を行いましょう。

残業時間の計算情報と違法な処理

労働時間の記録・管理に当たっては、適切な残業時間の計算を行う必要があります。特に、フレックスタイム制や変形労働時間制などでは、通常よりも複雑な計算を行わなければなりません。

裁量労働制(みなし労働制)および固定残業制(みなし残業制)の場合も、通常より簡略化される部分はあるものの、正確な労働時間の記録と残業時間の算出が不可欠です。

残業時間は1分単位で計算!15分単位などの丸め処理・調整は原則違法

まず、残業時間の計算は1分単位で行わなければなりません。労働基準法第24条第1項では、従業員が働いた時間について、その全額を賃金として支払うことが定められているからです。たとえ1分であっても、企業はその時間に応じた賃金を支払うということです。

残業時間を算出する基本的な計算式は、以下のものです。

【残業時間の基本の計算式】

残業時間=その日の労働時間の合計 − 法定労働時間8時間

遅刻・早退・休憩時間は労働時間の合計から除外する

実際には、残業時間を30分単位で計算する企業もあるかもしれません。例えば、15分単位で計算している会社の場合、従業員が1時間12分の残業をしたら「端数を切り捨てて、残業時間を1時間とする」というような処理です。

この切り捨て処理は「丸め処理」と呼ばれますが、原則として違法です。働いた12分間の賃金を従業員が受け取れないという不利益が生じるからです。逆に、「端数を切り上げ、残業時間を1時間15分として処理する」という調整であれば、従業員の不利益にならず、違法ではありません。

ただし、例外もあります。1カ月単位で残業時間を合計して処理するケースです。厚生労働省通達(昭和63年3月14日基発150号)により、事務の簡便化を目的として30分単位の切り捨て・切り上げが認められました。

例えば、下表のような処理です。

【1カ月単位で残業時間を合計して処理する場合の計算例】

実際の残業時間 端数処理した残業時間 端数処理の方法
1時間12分 1時間 30分未満の切り捨て
1時間47分 2時間 30分以上の切り上げ

丸め処理を行う場合、「30分未満の切り捨て」および「30分以上の切り上げ」を必ず併用しなければなりません。30分未満の切り捨て処理のみで残業時間を計算することは、従業員にとって不利益となるからです。

フレックスタイム制での計算方法

フレックスタイム制は、事前に一定の期間(清算期間)における所定労働時間の合計を定め、各日の始業時刻・終業時刻・労働時間を従業員自身の裁量に委ねる制度です。清算期間は最大3カ月までで設定できます。

フレックスタイム制における残業時間の計算は、清算期間が1カ月以内か1カ月超かで異なります。

フレックスタイム制の清算期間が1カ月以内の場合

清算期間が1カ月以内の場合、「清算期間における法定労働時間の総枠」を超えた時間数が残業時間です。清算期間における法定労働時間の総枠は、1週間の法定労働時間である40時間を基準に、清算期間の暦日数から小数点第1位までで算出します。

【清算期間が1カ月以内の場合の残業時間の計算式】

清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間40時間×清算期間の暦日数÷7日

残業時間=清算期間の実労働時間の合計 – 清算期間の法定労働時間の総枠

暦日数とは、例えば4月であれば30日、7月であれば31日です。2段階での計算が必要ですので、ご注意ください。

フレックスタイム制の清算期間が1カ月を超える場合

清算期間が1カ月を超える場合は、残業時間の計算がやや複雑になります。たとえ清算期間全体の実労働時間の合計が法定労働時間の総枠の範囲内であっても、一定の時間数を超えれば残業時間に当たるとされるからです。

具体的には、各月の残業時間と清算期間全体を通じた残業時間の2種類を計算しなければなりません。いずれの残業時間も割増賃金の支払い対象となります。

以下で、清算期間が3カ月のケースにおける残業時間の算出方法をご紹介します。

【清算期間3カ月の場合における残業時間の計算式】

データ・計算式
必要なデータ ①清算期間中の各月の実労働時間
②清算期間中の各月の暦日数
③清算期間中の各月における週平均50時間となる1カ月ごとの労働時間(=50時間×1カ月の暦日数(②)÷7)
④清算期間における法定労働時間の総枠(=1週間の法定労働時間40時間×清算期間の暦日数÷7日)
1カ月目の残業時間(⑤) 1カ月目の残業時間=1カ月目の実労働時間(①) – 1カ月目の週平均50時間となる労働時間(③)
2カ月目の残業時間(⑥) 2カ月目の残業時間=2カ月目の実労働時間(①) – 2カ月目の週平均50時間となる労働時間(③)
3カ月目の残業時間(⑦) 3カ月目の残業時間=3カ月目の実労働時間(①) – 3カ月目の週平均50時間となる労働時間(③)
清算期間全体の残業時間 清算期間全体の残業時間=清算期間全体の実労働時間の合計 − ⑤ − ⑥ − ⑦ − ④

計算結果がマイナスになる場合、残業時間は発生していません。

フレックスタイム制の基本は、以下の関連コラムで解説しています。併せてご確認ください。

コラム「フレックスタイム制とは?コアタイム・残業・メリット・デメリット」はこちら

変形労働時間制での計算方法

繁忙期などに合わせて所定労働時間が変化する変形労働時間制の場合、対象期間が1カ月単位または1年単位か否かで計算方法が異なります。

1カ月未満の単位で実施される変形労働時間制では、法定労働時間を基準に残業時間を計算します。一方、1カ月単位または1年単位で実施される変形労働時間制では1日単位・1週間単位・対象期間全体での3段階に分けて計算しなければなりません。

具体的な計算式は、以下のようになります。

【変形労働時間制(1週間単位)における残業時間の計算式】

残業時間=週の実労働時間 – 40時間

【変形労働時間制(1カ月単位または1年単位)における残業時間の計算式】

データ・計算式
必要なデータ ①各日の実労働時間
②各週の実労働時間
③各日の所定労働時間(所定労働時間が1日8時間超の場合)
④各週の所定労働時間(所定労働時間が週40時間超の場合)
⑤対象期間の法定労働時間の総枠(=40時間×対象期間の暦日数÷7日)
1日単位の残業時間(⑥) 所定労働時間が週40時間以内の場合
残業時間=各日の実労働時間(①)-8時間

所定労働時間が週40時間超の場合
残業時間=各日の実労働時間(①)-1日の所定労働時間(③)
1週間単位の残業時間(⑦) 所定労働時間が週40時間以内の場合
残業時間=週の実労働時間(②)-⑥の合計-40時間

所定労働時間が週40時間超の場合
残業時間=週の実労働時間(②)-⑥の合計-週の所定労働時間(④)
全体の残業時間 全体の残業時間=対象期間全体の実労働時間の合計-⑦の合計-⑤

日々の労働時間の記録を行い、正確に残業時間を算出しましょう。

裁量労働制(みなし労働制)での計算方法

裁量労働制(みなし労働制)では、実際の労働時間にかかわらず、事前に定めた1日の労働時間(みなし労働時間)で労働したものと見なします。そのため、みなし労働時間が法定労働時間である1日8時間を超えない限り、実際の労働時間がたとえ8時間を超えていても、残業時間が発生したとは見なされません。

他方、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、その超えた時間数が残業時間に該当します。

【裁量労働制における残業時間の計算方法】

残業時間=1日のみなし労働時間 – 1日の法定労働時間8時間

裁量労働制が適用されるには、法令で定められた職種に該当し、従業員と会社側で合意しなければなりません。

固定残業制(みなし残業制)での計算方法

一定の残業時間が見込まれる職種の場合、あらかじめ残業時間を考慮した賃金制度とするケースがあります。これが固定残業制です。実際の残業時間にかかわらず、毎月一定の時間を残業したものとみなす仕組みです。

残業時間の基本の計算式は、以下の通りです。

【固定残業制における残業時間の計算式】

ケース 計算式
みなし残業時間を超えない場合 残業時間=みなし残業時間
みなし残業時間を超えた場合 残業時間=みなし残業時間+みなし残業時間を超えた労働時間

1カ月のみなし残業時間が20時間である場合を例に、残業時間・残業代の具体的な取扱いを確認しておきましょう。

【固定残業制における残業時間の計算】*みなし残業時間が月20時間の場合

実際の残業時間/月 残業時間としてカウントされる時間数/月と賃金
8時間の場合 みなし残業時間20時間で残業代が支払われる
30時間の場合 みなし残業時間20時間に加え、10時間分の残業代も支払われる

みなし残業時間を超えた時間数がある場合は、残業時間に追加されます。そのため、固定残業制であっても、日々の労働時間を正確に記録しておくことが大変重要です。

残業時間のルールへの対策ポイント

最後に、残業時間の計算や取扱いが違法とならないよう、しっかり管理するためのポイント5つを確認していきましょう。

36協定を締結しているか?

従業員が残業するには、36協定の締結・届出が必須です。36協定なしに残業をさせると、原則である法定労働時間「1日8時間・週40時間」を超えて労働させたことが違法となり、罰則が適用される恐れがあります。

「36協定は締結している」という場合でも、労働基準監督署に届出を行っているか改めて確認しましょう。届出を行っていない36協定は無効であり、そのまま残業をさせていれば違法です。

また、残業時間の2段階目の上限「月100時間・年間720時間」を適用したい場合は、特別条項についても締結・届出をしなければなりません。

適正な労働時間把握・管理体制があるか?

残業時間の計算は、清算期間が1カ月超のフレックスタイム制や対象期間が1カ月や1年である変形労働時間制などで複雑になります。特別条項付き36協定を締結している場合も、複数月平均の残業時間を確認しなければなりません。これらの計算・確認を手作業でこなすのは、大変な労力です。

そこで活用したいのが、適正な労働時間の把握・管理に役立つシステムです。ビジネスの現場でよく使われる表計算ソフトを用いても構いませんし、専用の管理システムを導入してもよいでしょう。

これらのシステムを用いれば、日々の労働時間を入力するだけで、1日の残業時間から月ごとの残業時間、複数月平均、年間の残業時間などを算出し、見える化することができます。

残業をさせてはいけない従業員が残業していないか?

本来残業をさせてはいけない従業員に残業をさせると、それだけで違法となってしまいます。

以下に、残業をさせてはいけない従業員の例を再掲します。

【残業をさせてはいけない従業員の例】

  • 妊産婦である従業員で、残業しないことを請求した者(労働基準法第66条第1項)
  • 小学校入学前の子どもを養育している従業員で、残業しないことを請求した者(育児・介護休業法第16条の8第1項)
  • 年少者(満18歳未満)である従業員(労働基準法第60条)

自社で違法な残業の実態がないか、定期的にチェックしましょう。

残業時間削減に向けた仕組みがあるか?

残業時間が多すぎると、上限規制に違反するリスクが高くなります。リスクを下げるには、残業時間の削減に取り組まなければなりません。まだ削減施策を講じていないなら、他社事例を参照しつつ、自社に合う取り組みを始めてみましょう。

残業時間削減施策として実際に企業で見られる取り組みには、次のようなものがあります。

【残業削減に向けた取り組み例】

  • 残業の事前申請
  • ノー残業デーの設定
  • 年次有給休暇取得の促進
  • 人事評価制度との連動
  • 労働時間適正化に向けた研修の実施
  • 顧客への働きかけ

例えば、人事評価制度との連動では、管理職の評価項目に部下の残業時間を組み込み、正確な残業時間の管理につなげた事例があります。顧客への働きかけでは、自社と顧客で使用する書類の様式を統一することで事務的な業務にかかる時間を削減する例がありました。*1

厚生労働省の働き方改革特設サイトでも、中小企業による残業時間削減の取り組みを知ることができます。例えば、

  • スーパーフレックスタイム制の導入*2
  • 賞与に反映されるポイント制で残業時間を抑制する仕組みの導入*3

といった事例です。

*1 参考:「時間外労働削減の好事例集【PDF】」(厚生労働省)

*2 参考:「スーパーフレックスタイム制導入によって時間外労働削減を達成(株式会社重藤組)」(厚生労働省 働き方改革特設サイト CASE STUDY)

*3 参考:「ポイント制導入、多能工化で残業時間を削減(ライオンパワー株式会社)」(厚生労働省 働き方改革特設サイト CASE STUDY)

業務の効率化・生産性向上に取り組んでいるか?

会社の勤務体制や評価制度とともに、各職場での業務効率化も重要です。

残業時間数をただ減らすだけでは業務が滞ってしまい、申請せずにこっそり“サービス残業”をする雰囲気になりかねません。「こっそり残業をしなくても、仕事がまわる」状態を目指すためにも、より実効性の高い施策を講じましょう。

業務効率化による生産性向上を図る例では、主に以下のような取り組みがあります。

【業務効率化・生産性向上の取り組み例】

  • 業務の標準化を進め、属人的な業務を減らす
  • ITツールなどを導入してDXを推進する
  • 無駄な会議や形式的なミーティングを減らす
  • 従業員一人ひとりの能力向上を図る
  • 業務プロセス改善の好事例を社内共有する

DX推進は近年特に取り組まれている施策です。

  • 書類を電子化して共有フォルダで管理する
  • 業務連絡をビジネスチャットで行う
  • 勤怠や営業活動の進捗といった個別の事案に特化したシステムを活用する
  • 業務マニュアルを整備する

といった取り組みを進めることにより、書類探しや許可取りにかかる時間の削減や、「Aさんがいないから仕事が進まない」といった事態の軽減が可能です。

業務効率化には多様な工夫があります。厚生労働省が公開する事例集などを活用しながら、積極的に試していきましょう。

残業時間の管理は労務管理の知識・スキルの確認から

残業時間の計算には、法律に基づくルールを守った厳密な記録・管理が不可欠です。しっかりと労務管理が行われていなければ、違法行為となる残業時間の取扱いになってしまうかもしれません。

多くの企業で管理職や人事担当者の方のスキルアップをご支援してきたALL DIFFERENTでは、適切な労務管理に必須の知識・スキルや残業時間削減につながる業務効率化の方法を学べる研修を数多くご提供しています。講師派遣型研修でも組織の方針に応じた研修を企画・運営いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。