パタニティハラスメント(パタハラ)とは何か?定義・法律と防止措置

published公開日:2025.06.24
パタニティハラスメント(パタハラ)とは何か?定義・法律と防止措置
目次

パタニティハラスメントとは、育児休業などを利用する男性従業員に対する上司・同僚からの嫌がらせのこと。いわばマタニティハラスメントの男性版です。かつては「男は仕事」と言われましたが、現在は男性の育児参加が推進されています。

本コラムでは、パタニティハラスメントとは何か、その事例や実態調査結果、防止措置など、パタニティハラスメントの基礎から対策まで、一気に解説します。

パタニティハラスメントの定義・種類と法律

はじめに、「パタニティハラスメント」という言葉の意味と厚生労働省における定義・種類、関連する法律などをご説明します。

パタニティハラスメントの定義と種類、マタハラとの違い

パタニティハラスメントという言葉は、「男性の父性」を意味するパタニティと「嫌がらせ」を意味するハラスメントが組み合わされた言葉で、「父性に対する嫌がらせ」を意味します。通称「パタハラ」と呼ばれます。

厚生労働省の定義では、職場における「妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの定義」として以下のように示されました。

【妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの定義】*

「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されること

この中で、特に育児をする男性労働者に対して行われるのが、パタハラです。これに対し、妊娠・出産・育児中の女性に対して行われる同様のハラスメントは、「マタニティハラスメント(マタハラ)と呼ばれています。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントについては、2つの種類が定義されています。「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」です。マタハラの場合は、この両方に該当しますが、パタハラは「制度等の利用への嫌がらせ型」が基本です。

【妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの種類】

類型 概要
制度等の利用への嫌がらせ型 育児休業や子の看護休業、労働時間の制限、育児のための短時間勤務、始業時間の変更などの制度の利用を希望したり、申請したりすることを理由として、上司・同僚から行われる嫌がらせにより、就業環境が害されること
状態への嫌がらせ型 女性労働者が妊娠・出産したことを理由として上司・同僚から行われる嫌がらせにより、就業環境が害されること

パタハラの言動の具体例には、

  • 育児休業を取得したいと上司に相談したら「休んでいる社員に払えるお金はない。辞めてもらうしかない」などと言われる
  • 育児のため、時間外労働を免除してくれるよう上司に相談したら、「これで昇進はなくなったな」などと言われる
  • 育児休業の取得を申請したいと上司に相談したら、上司から「申請は認めない」などと言われる
  • 育児休業の申請をしたいと同僚に伝えたら、同僚から繰り返し(または継続的に)「申請しないで」と言われる

などがあります。

*出典:「ハラスメントの定義」(あかるい職場応援団 厚生労働省)

パタニティハラスメントと不利益取扱いの違い

一般的な言葉遣いでは、社長や人事担当者からの嫌がらせもパタハラに含めることが多いでしょう。しかし、法律では、社長などの事業主から行われるものは「不利益取扱い」としており、パタハラと区別されています。

両者が区別されている一番の理由は、もともと育児休業などの取得を理由として解雇や降格、減給などを行うことが「不利益取扱い」として禁止されてきたものだからです。一方で、近年の価値観の変化や、男女ともに仕事と家庭生活の両立を目指す取り組みの重要性から、育児・介護休業法などの改正が行われました。従来の不利益取扱いに加えて、パタハラの防止措置が義務づけられたのです。

育児休業にかかる男性労働者への不利益取扱いとパタハラの違いのポイントは、「誰が行うか」です。不利益取扱いは会社の役員や人事担当者など「事業主」に当たる人から行われるものをいい、パタハラはそれ以外の「上司」や「同僚」(ときに部下)から行われるものをいうと理解するとよいでしょう。

参考:『職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!』(厚生労働省)、pp.1-4

パタニティハラスメントに関する主な法律

パタハラに関してよく言及される法律は、育児・介護休業法です。特に第10条、第25条、第25条の2が大切です。

【パタハラに関する法律:育児・介護休業法】

条文の概要

第10条

(不利益取扱いの禁止)

事業主は、労働者が育児休業や出生時育児休業の申し出をしたり、そうした休業をしたりしたことなどを理由に、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない

第25条 第1項

(雇用主の管理上の措置等)

事業主は、従業員が育児や介護などで休業したり制度や措置を利用したりすることに関する職場での言動によって、制度などを利用する労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければならない

第25条の2

(国・事業主・労働者の責務)

【事業主の責務】(第2項・第3項)

育児休業などに関する言動の問題に対して、従業員および自らの関心と理解を深めるとともに、従業員が他の従業員に対する言動に必要な注意を払うよう、必要な研修や配慮、措置を実施し、国の施策に協力するよう努めなければならない

【労働者の責務】(第4項)

労働者は、育児休業などに関する言動の問題に対して関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払い、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければならない

簡単にいえば、事業主は男性労働者が育児休業や育児を理由とする働き方の制限などを申し出てきた際に、解雇・降格・減給などの不利益な取扱いをしてはならず、従業員同士でもこれらの制度を利用とする従業員に対してパタハラを行わないよう雇用管理上の義務(防止措置義務)を負うということです。

もちろん、パタハラを受けるか否かにかかわらず、従業員同士でもそうしたハラスメントに該当する言動を行ってはいけませんし、事業主が示すハラスメント防止に向けた指針や体制づくりにも協力しなければなりません。

なお、育児中の労働者が働きやすい環境づくりに関しては、近年多くの法改正が見られます。

【近年法改正された育児中労働者の働き方に関する内容の例】

育児・介護休業法(2025年4月1日施行分から)
第16条の2 第1項

「子の看護休暇」で対象となる子の年齢の改正

改正前:小学校入学までの子

改正後:小学校3年生修了まで

第16条の2 第1項

「子の看護休暇」の取得事由の追加

改正前:負傷もしくは病気になった子の世話、子の予防接種や健康診断

改正後:改正前の事由に加えて、感染症に伴う学級閉鎖になった子の世話や、子の入園式(入学式)・卒園式への参加もOKに

第16条の3 第2項

労使協定により「子の看護休暇」の適用から除外できる者の制限

改正前:入社後6カ月未満の者、週の所定労働日数が2日以下の者

改正後:週の所定労働日数が2日以下の者のみ

第16条の8 第1項

所定外労働の制限(残業免除)の対象の拡大

改正前:3歳に満たない子を養育する労働者

改正後:小学校就学前の子を養育する労働者

第24条 第2項 3歳に満たない子を養育する労働者について、テレワークを選択できるような措置の努力義務化

こうした法律の変化を踏まえて、適切な働き方ができるよう話し合いと体制整備を進めましょう。パタハラにつながりやすい知識不足の解消や相談しやすい雰囲気づくりには、地道な環境改善が欠かせません。

パタニティハラスメントの事例・裁判例は?対策を怠ることで企業側が負うリスク

職場のパタハラをより具体的にイメージするには、いくつかの事例や厚生労働省による実態調査結果を見るとよいでしょう。

近年“パタハラ”としてニュースになった事例

パタハラ事例として近年ニュースとなったものに、男性の育児休業に当たって降格や子会社への転籍を命じたケースがあります。

1つは、育児のために深夜業の制限を希望する男性従業員が、会社のルールに基づいて勤務制限を申請したところ、翌月に上司から電話で降格処分を伝えられ、社長からは「育児したいのなら退職すればいい」と言われたという事案です。会社側は“事前の相談がなかったことで混乱を引き起こした”として、男性従業員に始末書を提出させるとともに、子会社への転籍を命じられました。男性は一連の対応をパタハラであるとして提訴しています。

もう1つの事例も、男性従業員の育児休業明けに子会社への出向が命じられた事案です。男性はマーケティングなどを担当してきましたが、育児休業明けは出向を命じられ、未経験の倉庫業務を行うことになりました。出向が終わっても、1人で社則の英訳作業をするなど、マーケティングなどの仕事とは関係のない業務を割り当てられています。男性側がこれをパタハラであると主張する一方で、会社側は真摯に話し合ったと主張。最終的には和解が成立し、会社側が育児休業を取得しやすい環境づくりに取り組むと表明しました。

厚生労働省によるパタニティハラスメントの実態調査(令和5年)

厚生労働省が実施している「職場のハラスメントに関する実態調査」の令和5年版では、職場での様々なハラスメントについて企業と労働者の両方に調査を実施しています。調査結果の中からパタハラに関する項目をいくつか見ていきましょう。

まず、「過去5年間に育児に関わる制度を利用とした男性労働者」の中で、パタハラを受けたと回答した人の割合を見ると、24.1%となっています。会社の従業員規模別では、99人以下の企業で約4人に1人、100人以上299人以下の企業で約3人に1人、300人以上の企業で約5人に1人が「経験した」と回答しました。*1

そのパタハラの内容について複数回答で尋ねると、上位5つは下表のようになりました。

【主なパタハラ・不利益取扱いの内容】*2

内容 選んだ人の割合
1位 上司による、制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動 24.2%
1位 同僚による、繰り返しまたは継続的に制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動 24.2%
3位

繰り返しまたは継続的な嫌がらせ等

(嫌がらせ的な言動、業務に従事させない、もっぱら雑務に従事させる)

20.8%
4位 不利益な配置変更 19.2%
5位 労働者が希望する期間を超えた、意に反する所定労働時間の制限、時間外労働の制限等の適用 18.3%
5位 減給または賞与等における不利益な算定 18.3%

簡単にいえば、「育児休業なんて取るな」「育児休業を取るなんて、周りの迷惑を考えていない」など、制度を利用しようとしたり実際に利用したりすることについての嫌がらせが多く、キャリアや給与に関係する不利益な取扱いも発生している現状です。

こうしたパタハラを受けた人は、仕事への意欲が低下し、職場での人間関係、家での休養にも支障をきたしている場合があります。パタハラを受けたと回答した人の約3人に1人が、下表のような心身への影響があったとしました。

【パタハラによる心身への影響】*3

心身への影響 選んだ人の割合
1位 仕事に対する意欲が減退した 35.8%
2位 職場でのコミュニケーションが減った 35.0%
3位 怒りや不満、不安を感じた 32.5%
4位 眠れなくなった 30.8%

なお、パタハラの行為者については、「上司(役員以外)」が圧倒的に多く、回答者の57.5%がこれを選んでいます。ほかに多いのは、「会社の幹部(役員)」の23.3%、「同僚」の20.8%でした。「部下」からパタハラを受けたと回答した人は、13.3%でした。

これらを総合して考えると、管理職や役員へのパタハラ研修は急務といえます。パタハラを放置することのリスクが、非常に大きいからです。

具体的にいえば、従業員の仕事へのやる気が失われ、組織としても業務の円滑な遂行に支障が出ると推察されます。当然ながら、パタハラを受けた従業員自身は会社へのコミットメントが減り、他の従業員もパタハラを放置していることに疑問を感じ、同様の不信感を抱いてしまうでしょう。

ハラスメントが行われる職場環境を放置し、それが原因となって従業員が精神疾患の発症やケガなどをすることになれば、安全配慮義務違反も問われかねません。まして合理的な理由のない降格や退職勧奨は、不利益取扱いとして直接法令に反することになります。

これらに適切な対応をしなければ、先にご紹介したような裁判に発展することさえあるでしょう。

*1 出典:「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(PwC コンサルティング合同会社)」(厚生労働省)、p.218(図表257)

*2 出典:同上、p.222(図表263)

*3 出典:同上、p.224(図表266)

パタニティハラスメントはなぜ起きる?実態調査に見る原因と職場の特徴、解決に向けた行動

パタハラ防止措置を講じるには、パタハラが発生するきっかけや理由を知らなければなりません。これについて参考になるのは、前項で見た実態調査における「育児休業等ハラスメントを受ける要因となった理由・制度」と「職場の特徴」に関する回答です。

パタハラの要因となった理由・制度として多く選ばれたのは、労働時間の短縮や休業、残業免除の申し出や適用でした。

【パタハラの要因となった理由・制度】*1

理由・制度 選んだ人の割合
1位 育児のための短時間勤務制度、始業時刻変更等の申出・適用 28.3%
2位 育児休業の申出・取得 25.8%
3位 育児のための残業免除、時間外労働制限、深夜業の制限の申出・適用 25.0%

「職場の特徴」では、パタハラ・不利益取扱いを受けた男性従業員が選んだ項目の中で、残業の多さや休暇の取りにくさ、人手不足、コミュニケーションの少なさが上位に入っています。さらに、「社内ルールが厳しい」とする人と「ハラスメント防止規程が制定されていない」とする人の割合が同じという結果になりました。

パタハラ・不利益取扱いを受けなかったとした男性従業員との差を見ると、ハラスメント規定の有無、残業の多さや休暇の取りにくさ、社内ルールの厳しさで大きくなっています。

【パタハラ・不利益取扱いを受けた人の職場の特徴】*2

項目 受けた人が選んだ割合 受けなかった人との差
残業が多い/休暇を取りづらい 35.0% 18.7pt
人手が常に不足している 35.0% 6.6pt
上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない 28.3% 12.2pt
ハラスメント防止規程が制定されていない 25.0% 19.2pt
遵守しなければならない規制が多い/高い規律が求められる 25.0% 16.1pt
従業員の年代に偏りがある 25.0% 10.0pt

全体として見ると、職場のコミュニケーションが円滑でなく、かつ休みを取りにくい環境であるということが、パタハラにつながる要因となっています。そして、守るべき社内ルールが多かったり厳守しなければならないような厳しさがあったりするにもかかわらず「ハラスメント防止措置に必要なルールは定められていない」という、ハラスメント対策の軽視もあるようです。

よって、職場でのパタハラ防止に向けた取り組みでは、残業を減らし休暇を取りやすくするなどの業務効率化とコミュニケーションの活性化、ハラスメント防止規程の制定が先決となるでしょう。

なお、パタハラ・不利益取扱いを受けた男性従業員には、解決に向けた行動として他者への相談を行っている人が多く見られました。具体的な相談先は、

  • 会社とは無関係の弁護士や社会保険労務士(20.8%)
  • 労基署や都道府県労働局などの公的機関(19.2%)
  • 社内の上司(18.3%)
  • 社内の産業保健スタッフ(17.5%)
  • 社内の同僚(16.7%)

となっています。

社内の相談窓口や会社が設置している社外の相談窓口に相談した人は、それぞれ9.2%となっており、10人に1人未満でした。*3

社内外のハラスメント相談窓口の設置は、事業者が行うべきハラスメント防止措置の1つ。これをしっかりと機能させ、従業員が安心して利用できるような体制づくりと社内周知も積極的に進めていきましょう。

*1 出典:「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(PwC コンサルティング合同会社)」(厚生労働省)、p.223(図表265)

*2 出典:同上、p.230(図表274)

*3 出典:同上、p.225(図表268)

パタニティハラスメント防止措置で講じるべき施策

では、具体的な防止措置としての施策には、どのようなものがあるのでしょうか。

パタハラ防止措置の基本は、他の種類のハラスメントと概ね同じです。大きく分けて次の4つのステップがあります。

  1. (1)会社としての方針の明確化・周知・啓発
  2. (2)適切な相談対応のための体制整備
  3. (3)ハラスメント発生後の迅速かつ適切な対応
  4. (4)再発防止策の検討・実施・検証

1つずつご説明します。

(1)会社としての方針の明確化・周知・啓発

はじめに行うべきことは、パタハラに対する会社としての方針の明確化です。端的にいえば、「パタニティハラスメントは許さない」という強いメッセージを打ち出すことです。

これには、「なぜ許さないのか」という点を従業員に説明できなければなりません。第一には「法律で防止措置を義務づけられているから」と考えられるかもしれませんが、従業員を納得させるには、より主体的な理由が必要です。

「我が社は、社会に生きる様々な人の安心を支えることをミッションとしている。これを実現するには、まず従業員である皆さんが安心して働ける会社でなければならない」といったように、自社のミッション・ビジョンと関連づけながら方針を決めていくとよいでしょう。

このとき、ハラスメント行為者に対する対処の方法・内容なども就業規則やハラスメント防止規程に定めます。

  • どのような行為がパタハラに該当するのか
  • パタハラを含むハラスメントの行為者に対して、どのような処分を行うのか

といった判断基準を事前に定めることで、そのルールが抑止力になるとともに、実際に発生してしまった際の公正な判断基準となるからです。

方針の明確化とルールの制定ができたら、それを全ての従業員に伝えます。このとき、できれば経営層のトップからメッセージを発信してください。トップ自らがハラスメント防止にコミットすることで、全社的な取り組みが加速するでしょう。

周知・啓発に当たっては、メッセージとともに、

  • 具体的にどのような制度を利用できるのか
  • 育児休業や短時間勤務制度を利用したい場合は誰に話すとよいのか

など、手続きについて説明することも大切です。

(2)適切な相談対応のための体制整備

方針やルールの明確化と同時に進める取り組みは、ハラスメント相談窓口の設置です。方針やルールを社内に周知する段階で、既にパタハラに苦しんでいる従業員がいるかもしれません。いつでも相談を受けられるよう、早期に設置し、相談窓口担当者の対応ルールなどを定めておきましょう。

相談窓口は、社内あるいは社外のどちらか一方のみの設置でも構いませんし、両方でも構いません。パタハラ専用窓口である必要もありません。むしろ、パワハラやセクハラといった他のハラスメントと組み合わされた状態で被害を受ける可能性もあるため、総合的に確認判断できるよう窓口を一元化することにメリットがあります。

窓口で受ける可能性がある相談内容は、

  • これはパタハラなのではないか?
  • 今の職場の雰囲気がパタハラにつながりそうだが、どうにかできないか?
  • 自分がパタハラを受けている
  • 同僚がパタハラを受けている

といったように、発生を防止する目的のものから実際に発生したあとの対応を求めるものまで考えられます。これらのパターンを想定し、相談者のプライバシーに配慮しながら丁寧なヒアリングができるよう、担当者に対応のための研修を実施するとよいでしょう。

ハラスメント相談窓口など、様々なハラスメントに対応するには、パワハラやセクハラ、マタハラといった代表的なハラスメントに関する知識が必要です。これらのハラスメントにつて以下の関連コラムで解説していますので、ぜひご一読ください。

コラム「ハラスメントとは?定義・種類・原因・対策を簡単にわかりやすく解説」はこちら

(3)ハラスメント発生後の迅速かつ適切な対応

現場の上司や相談窓口の担当者がパタハラの相談を受けたら、相談者の気持ちに配慮した対応と迅速な事実確認を行いましょう。

相談者は、パタハラが発生する可能性を感じたり被害を受けたりして不安を抱えています。安心して話せるよう、まずは当事者のプライバシーを保護できる場所で相談に応じながら、傾聴の姿勢で急かさず丁寧に話を聴きましょう。

もし、体調不良や「気分が落ち込んで苦しい」「眠れない」といった内容を訴えるようであれば、産業医や産業カウンセラーなどのスタッフへつないでください。

パタハラに関する事実確認では、

  • パタハラがあった日時・場所・状況
  • パタハラの内容
  • パタハラを受けた従業員の氏名・所属・職位
  • パタハラを行った従業員の氏名・所属・職位

を中心に聞き取りを行いましょう。相談者と行為者、もし目撃者がいるのであれば現場を目撃した人にも確認してください。

ただし、行為者や目撃者への確認は、「その行為を受けた従業員(または同僚)がハラスメントを疑って相談した」という事実を知らせることにもなります。勝手に進めれば事態が悪化してしまうかもしれません。そのため、まずは行為者や目撃者に事実確認を進めることについて、相談者の承諾を得る必要があります。

また、パタハラについて相談したこと、事実確認に協力したことを理由に、解雇・降格・減給・不利な配置転換といった不利益取扱いをすることは違法です。決して不利益な取扱いをしないことを相談者や協力者にも伝えましょう。

以上の流れでパタハラの発生を確認できたら、行為者に対してハラスメント防止にかかるルールを説明し、そのルールに基づく処分を行います。相談者にも処分の内容を説明してください。

(4)再発防止策の検討・実施・検証

パタハラの再発防止策では、実際に社内で発生した事案について分析し、その原因となる環境や風土、制度の改善を進めます。パタハラをしてしまった従業員には、パタハラ防止研修を受講させることも有効です。

同時に、トップから改めてパタハラ防止メッセージを発信し、ルールを再周知しましょう。当事者のプライバシーを保護したうえで事案を匿名化し、研修でケーススタディに活用する方法もあります。

もし残業時間の削減や休暇の取りにくさの改善といったことが原因なら、業務をただ周囲のメンバーに割り当てるのではなく、業務フローや内容自体の再点検と効率化が必要です。状況によっては、契約社員や派遣社員などの一時的な人員確保も検討しなければなりません。

男性の育児参加に否定的な雰囲気がある場合は、育児休業を取得した男性従業員や、育児中の男性管理職の経験を全社的に共有することも効果的です。ロールモデルが社内にいれば育児中の働き方について具体的なイメージを持てますし、現場の混乱も軽減できるでしょう。

こうした再発防止策を講じたあとは、定期的にその効果を検証してください。例えば、従業員アンケートや面談に、

  • ハラスメントを受けていないか
  • ハラスメントを見聞きしたことはあるか
  • ハラスメントはどのようなものだったか
  • 誰から誰へ行われていたか(上司から部下など)
  • どのくらいの期間・頻度で行われていたか

といった設問を組み込むことが可能です。具体的な質問項目は、厚生労働省のハラスメント実態調査が参考になります。アンケートの場合、従業員が考えていることを記入できる自由記述欄もあると、より詳しい状況がわかるでしょう。

パタニティハラスメント防止は職場改善に向けた研修やルールの明確化から

パタハラは、職場のハラスメントの中でも比較的新しいハラスメントです。パタハラが登場した背景には、女性の活躍と男性の育児参加といった価値観・働き方の変化があります。「男性は育児よりも仕事が先」という考え方からの転換が迫られており、法令でも男性の育児休業の取得を促進する方向で改正されてきました。

こうした時代の変化に対応するには、まず経営層や管理職から男性の育児参加の意義を理解し、育児休業を取得しやすい雰囲気づくりを進めなければなりません。それには、目の前の業務を効率的に遂行する方法や業務標準化に向けた取り組みも不可欠です。

多くの企業でハラスメント防止に向けた研修や人材育成をご支援してきたALL DIFFERENTでは、ハラスメントの理解と防止、部下のメンタルヘルス不調への対応などを学べる労務管理研修や、業務の属人化から脱する業務標準化研修をご提供しています。残業時間を減らし休みを取りやすい体制づくりに、ぜひご活用ください。

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