ワークライフバランスとは?目的とメリット、企業の取り組み事例

update更新日:2026.02.03 published公開日:2017.08.28
ワークライフバランスとは?目的とメリット、企業の取り組み事例
目次

少子高齢化による人材不足や価値観の多様化を背景に、国も企業もワークライフバランスを重視する時代へと変化しています。この取り組みは、個人の幸福度向上と企業の持続的成長の両立を可能にする重要課題といえるでしょう。

本コラムでは、ワークライフバランスの定義や歴史的背景から、企業が取り組むメリットや具体的な実践方法まで、幅広く解説します。

ワーク・ライフ・バランスとは

はじめに、ワークライフバランスの基本的な考え方と定義について詳しく見ていきましょう。そのうえで、日本における政策的な位置づけについても触れていきます。

ワークライフバランスの定義

ワークライフバランスとは、「仕事と生活の調和」を意味する概念です。内閣府が2007年に策定した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義されています。

ワークライフバランスとは、単に残業時間を減らしたりプライベートを優先したりするだけのものではありません。仕事と生活を対立関係ではなく、互いに高め合う関係として捉える考え方です。両方を充実させることで相乗効果を生み出し、個人の生産性向上と企業の成長の両方を実現することを目指しています。

国が目指すワークライフバランス社会の3要素

先に触れた「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、ワークライフバランスを実現するために目指すべき社会の姿として、以下の3つの要素を挙げています。

【仕事と生活の調和が実現した社会の姿とは】

要素 内容
①就労による経済的自立が可能な社会 特に若者が精力的に働くことで経済的自立を実現し、結婚や子育てなどの希望を叶えられる環境
②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会 働く人の心身の健康維持や家族との時間確保、自己成長のための時間を持てる社会
③多様な働き方・生き方が選択できる社会 年齢や性別にかかわらず、自分の能力を活かして様々な働き方にチャレンジでき、育児や介護などの状況に応じて柔軟な働き方ができる社会

これらの要素が相互に関連し合い、バランスよく実現されることで、個人の生活の質向上と社会全体の持続的な発展が両立できるとされています。

出典:「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(内閣府)

ワークライフバランスの歴史と発展

ワークライフバランスは今や広く浸透した概念ですが、どのような歴史的背景で生まれ、発展してきたのかを知ることで、その本質をより深く理解することができるでしょう。

ワークライフバランスの起源は、19世紀前半の英国産業革命時代にさかのぼります。当時の女性や子どもを過酷な労働から守るための、労働時間制限制度がきっかけといわれています。

現代的な意味でのワークライフバランスが形成されたのは、1980年代後半のアメリカです。IT技術の進歩と女性の社会進出に伴い、仕事と子育ての両立が社会課題となりました。当初は「ワーク・ファミリー・バランス」として働く女性への保育支援が中心でしたが、1990年代には子どものいない女性や男性にも対象が広がっていきました。

日本では1990年代以降、バブル経済崩壊後に注目されるようになります。それまでの「仕事人間」的な働き方から、雇用環境の悪化や少子高齢化、男女雇用機会均等法の浸透により、働き方の価値観が多様化したことが背景にありました。

2007年には「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定され、多様な生き方が選択・実現できる社会を目指す取り組みが本格化しました。

ワークライフバランスと関連する3つの概念

ワークライフバランスに関連する概念として、ワークライフインテグレーション、ワークライフマネジメント、ワークインライフという3つの考え方があります。これらはそれぞれ異なるアプローチを提案していますが、「仕事と生活の両方を充実させる」という共通の目標を持っています。

ここでは、これら3つの概念の意味と定義、そしてワークライフバランスとの違いについて詳しく見ていきましょう。

ワークライフインテグレーションとワークライフバランスの違い

ワークライフインテグレーションは、仕事と生活を統合的に捉え、両者の相乗効果を生み出す新しい働き方の概念です。

ワークライフバランスが仕事と私生活を区分して考え、両者の均衡を目指すのに対し、ワークライフインテグレーションはより包括的な視点を持ちます。個人や企業だけの取り組みでは限界がある部分を、政府や社会全体の支援で補完していく考え方ともいえるでしょう。これには、家庭生活や地域活動、個人の趣味、健康管理からキャリア形成まで、人の幸福感に関わるあらゆる要素が含まれます。

ワークライフインテグレーションの利点は、従来の固定的な勤務形態では難しかった「個人のニーズに合わせた柔軟な働き方」が実現可能なことです。

ワークライフマネジメントとワークライフバランスとの違い

ワークライフマネジメントは、仕事と私生活を自分自身で主体的に管理し、両方を充実させていくという考え方が基本となります。

ワークライフバランスが企業主導の制度や環境整備に重点を置くのに対し、ワークライフマネジメントでは個人が主体的に時間や業務を管理し、メリハリのある働き方を実践することが求められます。

企業の先進事例を見ると、ワークライフマネジメントでは主に「事業の成長」を前提とするのに対し、ワークライフマネジメントは社員が付加価値の高い仕事と長期的な活躍の実現が重視される傾向にあるようです。効率的な働き方で生み出された時間を活用して生活の充実にあて、そこで得た経験や視野の広がりが仕事の質を高めるという好循環を目指すのが特徴です。

ワークインライフとワークライフバランスの違い

ワークインライフは、仕事を人生全体の中の一つの要素として位置づける考え方です。「ライフ」の中に「ワーク」があるという発想で、人生という大きな枠組みの中で仕事を捉えます。

ワークライフバランスは仕事と生活をトレードオフの関係として捉える傾向にありますが、ワークインライフでは仕事を含めた様々な活動が互いに補完し合い、より豊かな人生を形作るという視点を持ちます。

自分の価値観に基づいて「どう生きたいか」を明確にし、その理想の人生を実現するための一要素として仕事を位置づけるのがワークインライフの特徴です。仕事と生活が対立するのではなく、自分らしい生き方の中に仕事が自然に溶け込んでいる状態を目指します。

ワークライフバランスの現状

近年、日本では少子高齢化による人手不足や価値観の多様化を背景に、ワークライフバランスの重要性が高まっています。

2018年に「働き方改革関連法」が交付され、多様な働き方ができる社会の実現が国を挙げて推進されることになりました。また、2020年からの新型コロナウイルスの影響で、テレワークなど従来の働き方が大きく変化したことも、ワークライフバランスへの注目を加速させました。

厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によると、2023年度の男性の育児休業取得率は30.1%となり、前年度の17.13%から13.0ポイント上昇して過去最高を記録しています。*1

この上昇は、2022年4月から育児・介護休業法の改正により、出産・妊娠を申し出た従業員に対して育休制度の周知や利用意向の確認が企業に義務づけられたことが大きな要因とされています。とはいえ、政府が掲げる「2025年度に50%、2030年度に85%」という目標までには依然として開きがある状況です。*2

ランスタッド株式会社が2025年2月に発表した「ワークモニター2025」の調査結果によると、日本の働き手もはじめて就業先選定において「ワークライフバランス」(65%)が「給与」(62%)を上回りました。この結果は、働く人々の価値観が大きく変化していることを示しています。*3

このように、企業にとっても柔軟な働き方の提供をはじめとする社員のワークライフバランス実現の施策が人材確保や定着の重要な要素となってきており、今後さらなる取り組みの加速が求められています。

*1 出典:「令和5年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)

*2 出典:「こども未来戦略方針」(内閣官房ホームページ)

*3 出典:ランスタッド株式会社ホームページ

ワークライフバランスに取り組む3つのメリット

ワークライフバランスへの取り組みは企業の責任であると同時に、業績向上にもつながる重要な経営戦略です。ここでは、企業が積極的に取り組むべき理由を、具体例を交えた3つの主なメリットからご紹介します。

(1)社員のパフォーマンスが維持・向上する

ワークライフバランスを実現することで、社員は仕事とプライベートにメリハリをつけた生活を送ることができます。メリハリをつけた働き方は、社員のパフォーマンス向上に直結します。

睡眠不足が仕事の効率や生産性を著しく低下させることは広く知られていますが、OECDの調査によると日本人の睡眠時間は世界的にも短い傾向にあります。残業を減らして適切な睡眠・休息時間を確保することで、パフォーマンスの維持・向上が期待できるでしょう。

また、プライベート時間の充実は生活全般の満足度向上につながるという分析結果も出ています。興味深いことに、生活満足度の高い国はGDP、つまり生産性も高い傾向にあります。このことからも、ワークライフバランスの実現は仕事のパフォーマンス向上に寄与するといえるでしょう。

(2)業務の効率化・見直しが促進される

ワークライフバランスを重視することは、業務の効率化・見直しにつながります。限られた時間内で成果を出すために、不要な業務の廃止や効率的な進め方の模索が求められるからです。

業務効率化とは「同じ成果をより少ない労力で達成すること」です。残業時間を制限してプライベート時間を確保しながら、限られた業務時間内で生産性を維持・向上させるには、業務の進め方自体を見直す必要があります。

この見直しのプロセスで、仕事の優先順位づけや業務プロセスの再構築が行われ、結果として組織全体の生産性向上につながります。さらに、業務の可視化や標準化が進むことで、チーム内の協力体制強化も期待できるでしょう。

(3)会社の風土・雰囲気が改善される

ワークライフバランスの実現がもたらすメリットは、個人の自由時間確保だけではありません。業務効率化によって社員の時間管理能力が向上し、心にゆとりが生まれます。その結果、同僚を助ける余裕が生まれたり、職場のコミュニケーションが活性化したりと、組織全体の風土改善につながります。

また、充実したプライベート時間は様々な形で仕事にも好影響を与えます。読書や自己学習で得た知識を業務に活かせば、個人の成長実感が高まり、さらなる学びへの意欲も向上するでしょう。趣味を通じた社外の人との交流は、新たな視点や人脈をもたらし、仕事の幅を広げる可能性も秘めています。

こうした好循環が生まれている企業では、社員の満足度が高く、離職率の低下にもつながることが多くの調査で示されています。

ワークライフバランス実現に向けた取り組み例

ワークライフバランスの実現に向けて、企業が取り組むべき施策は多岐にわたります。ここでは、効果的な6つの取り組みをご紹介します。

(1)柔軟な勤務形態の導入

ワークライフバランスの実現に向けて、まずはテレワークなどの多様な働き方を可能にする勤務形態の見直しが重要です。

社員の中には、介護や育児など家族の事情でオフィスに出社してフルタイムで働き続けることが難しい社員もいます。これまで、ワークライフバランスの「ライフ」は個人の趣味など「仕事に比較すると優先順位の低いもの」として捉えられがちでした。しかし、今後は育児や介護など「決しておざなりにできない」ライフを抱えながら仕事をする人も増えることが想定されます。

「100%仕事に時間を投入できないが優秀な人材」が働き続けるために、柔軟な勤務形態の導入が求められます。

もし、既にテレワークを実施しているなら、管理職が積極的に活用しましょう。管理職が実践しないと一般社員には浸透しません。

(2)会議体の見直しなど業務の優先順位づけ

会議は業務時間の大きな部分を占めます。不要な会議を減らし、効率的な運営を心がけることで、貴重な時間を有効活用できます。

直接会って話す必要がない場合は、メールやチャットツールなどの代替手段を検討しましょう。必要と判断された会議でも、明確なゴール設定やファシリテーションスキルの向上を図るなど、参加者が一丸となって生産性を高める工夫が欠かせません。

さらに、業務全体の見直しも重要です。以下の手順を参考に、従来の業務を整理しましょう。

【業務見直しの4ステップ】

ステップ 内容
やめる仕事を決める 本当に必要な仕事かを見極め、惰性や前例踏襲で続けている業務を思い切って廃止する
任せる仕事を決める 必要な業務のうち、外部委託やシステム化できるものを選別する
やり方を見直す仕事を決める 継続すべき業務の中で、より効率的な進め方ができるものを特定する
継続する仕事を決める 現状のやり方や時間配分を維持すべき業務を確定する

(3)ITツールの積極的活用

業務効率化を実現する有効な手段として、ITツールの導入があります。特に人事労務管理の分野では、多くの企業で紙ベースの処理が残っている状況です。これをデジタル化すれば、業務プロセスの効率化だけでなく、正確なデータ収集による労働時間管理の適正化、紙資源や印刷コストの削減、さらには保管スペースの有効活用まで、様々な効果が期待できるでしょう。

例えば、勤怠管理システムを導入すれば、これまで手書きやエクセルで行っていた出退勤管理が自動化され、集計作業の手間が大幅に削減されます。また、経費申請システムを使えば、紙の領収書の管理や承認プロセスがスムーズになり、処理時間の短縮と正確性の向上につながります。

近年は、社員の研修受講状況や研修アンケート結果を一元管理し、社員の能力開発を効率的に進めることできる「LMS(ラーニングマネジメントシステム)」の利用も拡大しています。

(4)社員以外のリソース活用

長時間労働が常態化している場合、社外のリソース活用という解決策も考えられます。まずは各メンバーの業務を洗い出し、「この業務は本当にこの社員がやるべきか?」と問い直すことが重要です。

最近は専門性の高いクラウドワーカーを紹介するサービスも増えています。こうしたサービスの活用も、業務効率化の選択肢の一つとなるでしょう。

(5)社員の能力開発

社員それぞれの生産性を高めるために訓練・能力開発を行うことも、ワークライフバランス実現に向けた重要な取り組みです。

生産性の継続的な向上は、社員自らが継続して学習することによってもたらされます。そうした社員の継続学習を助けるには、外部研修への参加、プライベートでのインプット、自己学習の時間などがあります。

さらに、業務経験だけでは得られない気づきや、体系化された知識を獲得する機会を提供する必要があるでしょう。中には、書籍購入に関する手当を支給している企業もあります。こうした取り組みによって、社員の自発的な学習意欲を高める効果も期待できます。

(6)積極的なコミュニケーションと相互理解の促進

普段から定時退社する社員の中には、家族の事情で心苦しく思いながら帰宅する社員もいるでしょう。反対に、定時に帰宅する必要があるのに、周囲に助けを求められず、我慢し続けている社員もいるかもしれません。

互いの事情に配慮し、助け合う体制をつくるには、社員一人ひとりが開示できる範囲のプライベートな事情や業務状況を共有しておく必要があります。具体的な事例としては、社員がお互いの家族への理解を深め、協力体制を構築するための「職業参観日」があります。

様々な企業の取り組み事例については、内閣府による好事例集も参考になるでしょう。

参照:「社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集」(内閣府)

ワークライフバランスの相乗効果を最大化するには

本コラムでは、ワークライフバランスを実現によってもたらされる社員個人と企業双方のメリット、その相互関係、そして具体的な取り組み方について解説してきました。

ワークライフバランスの真の効果を得るには、ただ「早く帰る」ことを奨励するのではなく、「賢く働く」方法を社員に与える・伝えることが重要です。ITツールの活用やシステムの見直しなど投資が必要な場合もありますが、小さな制度変更や意識改革だけで大きな変化を生み出せることも少なくありません。

効果的に取り組むポイントとしては、組織全体で実践することです。一部の社員だけの個人的な努力では、組織としての成果は限定的です。研修も「一度きり」ではなく、継続的に実施し、「階層ぐるみ」で取り組むことで相乗効果が生まれます。

当社では、ワークライフバランスの推進や業務効率化に関する企業内研修を多数提供しています。ご興味ある方はぜひお問い合わせください。会場/オンラインのどちらにも対応しております。

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