AI人材とは?必要なスキル、不足の現状、育成方法を解説
更新日:2025.11.27
公開日:2022.03.10

AI人材とは、人工知能(AI)に関する専門的な知識やスキルをもつ人材のことです。
経済産業省が育成のための検討会を発足し、企業の求人情報でも採用が増加するなど注目が高まっていますが、まだまだ日本ではAI人材が不足しているといわれています。
本コラムでは、AI人材の定義や職種、必要とされているスキル、AI人材を育てる方法について解説します。
AI人材とは
AI人材とは、人工知能(AI)に関する専門的な知識やスキルを持ち、AI技術を活用してビジネスや社会課題を解決する役割を担う人材です。
AIの進化に伴い、多くの業界で導入が進む中、AI人材の需要は急速に高まっています。AIの活用は企業の競争力を左右する重要な要素になっている一方で、正しく理解し使いこなす人材が不足しているからです。
ここでは、AI人材の定義、注目される背景、他の人材との違いについて解説します。
AI人材の定義
AI人材とは、機械学習やディープラーニング、データ分析などの技術を活用し、AIシステムの開発や運用を担う人材を指します。
AI技術は生成AIを含め高度に進化しており、これらのAIテクノロジーを活用できるかが、今後の企業の業務効率化や新たな価値創出に大きく影響します。
AI人材にはプログラミングやデータサイエンスのスキルだけでなく、機械学習や数学力など様々なスキルや知識が必要です。さらに、企業の中でAIを実装し広く活用していくためには、技術者の役割にとどまらず、プロジェクトマネージャーや企画担当者など幅広い役割が求められます。
また、AIの技術は日々進化しているため、AI人材は短期的な確保だけを目標にするのではなく、継続的に採用や育成を行う視点も大切です。
AI人材が注目される背景・AI人材育成白書
AI人材が注目される背景には、技術進化と人材不足があります。なぜなら、AIの活用が進む一方で、これを扱える人材が圧倒的に足りないからです。
文部科学省が後援し、Googleが主幹事となって国や地方自治体、企業など250以上の参画団体から構成する「日本リスキリングコンソーシアム」は、2024年に「AI人材育成白書」を発表しました。
「AI人材育成白書」によれば、世界18か国を対象にした「生成AIの企業における導入率調査」において日本は16位、18か国の平均40%に対して導入率24%と、非常に低い水準にとどまっています。
さらに、生成AIを活用・推進している、もしくは検討中の企業を対象とした調査では、課題として「必要なスキルを持った人材がいない」「ノウハウがなく進め方がわからない」を挙げた企業が50%超にのぼっており、AI人材の不足や育成が課題となっていることがわかります。*
ビックデータ解析やCRMを用いたマーケティングなどに、今やAIは欠かせません。そのほかにも、これまで人力で行ってきたカスタマー対応や生産管理なども、AIを用いて効率化する波が来ています。そうしたデジタル化は今後も一層加速すると考えられ、AI人材が求められているのです。
AI人材とIT人材・DX人材との違い
AI人材とIT人材、DX人材は混同されがちですが、それぞれ役割が異なります。
AI人材は、AI技術を活用して課題を解決したり、新たな価値を生み出したりすることに特化しています。
一方、IT人材は主にシステム開発やインフラ整備などの情報技術全般を担当し、DX人材はデジタル技術を活用してビジネスモデルの変革を推進する役割を担います。
IT人材、DX人材、AI人材はスキルや担当分野が重複する部分があるものの、基本的には別の役割をもつものです。違いを理解して、自社に必要なスキルや人材を見極めることが大切です。
AI人材に求められるスキルと知識
AI人材として活躍するためには、専門技術だけでなく幅広いスキルと知識が求められます。AIの開発や活用には技術的な理解はもちろん、データ解析能力、論理的思考力、そして社会的な視点が必要だからです。
企業や社会でAIを効果的に活用するには、以下のようなスキルをバランスよく身につけることが重要です。
- プログラミングスキル
- データサイエンススキル
- 機械学習・ディープラーニング
- 数学力
- 論理的思考力
- 法律や倫理に関する基礎知識
ここでは、各スキル・知識の概要や重要な理由などを解説します。
プログラミングやデータサイエンスのスキル
AI人材にとって、プログラミングスキルは基礎中の基礎です。なぜなら、AIのモデル構築やデータ分析はプログラムによって実装されるからです。特にPythonはAI開発で最も使われる言語であり、習得が必須とされています。
生成AIの発達によって、プログラミングのスキルは不要になるのでは、という説もありますが、AIが生成したコードをチェックしたり、実行に移したりするために、やはりプログラミングのスキルと知識は必要です。
また、統計学、情報工学、アルゴリズムなどの手法を横断的に用いて、収集した多様なデータから新たな知見やビジネスに有意義な情報を引き出す、データサイエンスのスキルも重要です。
近年は、AIによるビックデータ解析も行われていることから、データサイエンティストとAIのスキルの両方が求められるようになってきています。
DXの進展により、情報やデータを集めるのは容易になりましたが、実際それらの膨大な情報やデータを活用しきれていな企業が多いのも実状です。
社内での業務効率化なのか、新しいサービスや商品の開発なのか、さらに精度を高めていくのか、など自社にあった活用法を提案できる人材の確保が求められています。
機械学習・ディープラーニング
機械学習とディープラーニングは、AIの代表的な技術領域です。機械学習は、AIにデータを読ませてパターンや法則を見つけ出すことをいいます。膨大なデータからパターンを見つけ出すもの、同じ要素を含むデータを読ませて、同一性を認識させるものなどがあります。
ディープラーニングは、機械学習をコンピューターが自ら行うものとイメージするとよいでしょう。機械学習では、何を指標とするかを人間が決めて学習させていきますが、ディープラーニングはそうした指標を人が指定をせずにコンピューターが自己判断してデータの解析を行います。
機械学習とディープラーニングは、AIの予測や自動化機能を支える基盤であり、これらのスキルには、理論だけでなく実装経験も重要です。
数学力と論理的思考力
AI技術を理解し活用するためには、数学力と論理的思考力が欠かせません。
例えば、機械学習アルゴリズムでは統計学や線形代数、確率論などの知識が必要です。これらの基礎が理解できれば、モデルの仕組みやデータの動きを正しく分析できます。
また、AIの機械学習では、何を指標として学習するのかを決めるのは人間が行うため、論理的な考えのもとその指標を導き出す必要があります。AIに正しく作業をさせたり、課題を分析したりするためにも、AI人材によって高い論理的思考力は必須といえるでしょう。
法律や倫理に関する基礎知識
AI技術の発展に伴い、法律や倫理の知識が重要になっています。なぜならAIは個人情報の扱いや判断の公平性など、多くの社会的課題と関わっており、適切な運用が求められるからです。
例えば、顔認証技術にはプライバシー保護の視点が欠かせませんし、ネット上にある膨大なデータや情報を処理・加工する中で著作権などの問題も重要となります。
AI人材はこうしたリスクを理解し、倫理的に正しい判断ができる力を備える必要があります。法律と倫理に関する基礎知識を身につけ、正しい判断力を持つことで、社会に信頼されるAI活用を行う必要があるのです。
AI人材の代表的な職種とキャリアパス
AI人材には様々な職種があり、それぞれが異なる専門性や役割を持っています。
AI技術の発展に伴い、研究・開発だけでなく、企画・活用・マネジメントなど幅広い分野で人材が必要とされており、AI人材としては以下のような職種が挙げられます。
- AI研究者
- AIエンジニア・プログラマー
- データサイエンティスト
- AIプランナー
- マネジメント・プロダクトマネージャー
これらの職種について、それぞれの役割と求められるスキルなどを詳しく解説していきます。
AI研究者
AI研究者は、人工知能の理論やアルゴリズムを研究し、新たな技術を生み出す役割を担います。
例えば、自然言語処理や画像認識の精度を高める研究を行うことで、翻訳サービスや自動運転技術の進化につながります。
AIの精度や応用範囲を広げるには、日々の技術革新が必要です。そのため、AI研究者には、高度な数学的知識とプログラミングスキルに加え、論理的思考力や継続的な探究心が求められます。
AIの基礎となる数理モデルや新しいAI技術をもとに、既存モデルを改良したり、新しい技術を様々な分野に応用したりするのがAI研究者の仕事です。
AIエンジニア・プログラマー
AIエンジニア・プログラマーは、AIのアルゴリズムやモデルを実際のシステムに組み込んで動作させる役割を担います。
例えば、製造ラインの異常検知システムや、チャットボットによる自動応答システムの構築などです。
AI技術を実社会に活用するには、現場で使える形に設計・実装する必要があります。Pythonなどの言語やフレームワークに関する知識と開発経験をもとに、実際の業務やサービスにおいてAIを活用する方法を考案するのがAIエンジニア・プログラマーの仕事です。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、大量のデータを分析して課題解決や意思決定に役立つ知見を導き出す専門職です。
例えば、顧客の購買履歴を分析してマーケティング戦略を立てたり、売上予測モデルを構築したりする業務があります。
データサイエンティストは、統計学、プログラミング、機械学習のスキルを組み合わせ、企業のデータを活用することで競争力を高める役割を担います。
AIプランナー
AIプランナーは、AIを活用したサービスや製品の企画・導入を行い、ビジネスに成果をもたらす役割を担います。例えば、業務自動化によるコスト削減や、AIチャットを使った顧客対応改善などを企画するのがAIプランナーの仕事です。
AIプランナーは、ビジネス戦略や市場動向、顧客ニーズを理解し、AIをどのように活用すれば課題解決や事業成長につながるかを企画・実行します。そのため、AI技術の基礎理解に加え、ビジネス戦略やプロジェクト管理のスキルも必要です。
マネジメント・プロダクトマネージャー
AI分野におけるマネジメント職やプロダクトマネージャーは、プロジェクト全体を統括し、技術者や関係部署をつなぐ役割を担うのが仕事です。
例えば、開発スケジュールの管理や成果物の品質管理、社内外との調整を行います。
AIの技術理解に加えて、リーダーシップやコミュニケーション能力も重視されるポジションです。
AI人材の不足状況と需要の高まり
AI技術の進化に伴い、AI人材の需要は急激に増えています。しかし、その一方でAI人材は深刻な不足状態にあります。
ここでは、日本におけるAI人材不足の現状と背景、政府の育成プログラム、将来性について詳しく解説します。
日本におけるAI人材不足の現状
日本ではAI人材が深刻に不足しており、多くの企業が採用に苦戦しています。
独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)の調査によると、半数を超える企業が以下のようなAI人材を「不足している」と感じています。*
- AIを活用した製品・サービスを企画できるAI事業企画
- AIを活用したソフトウェアやシステムを実装できるAI開発者
- AIツールでデータ分析を行い、自社の事業に活かせる従業員
- 現場の知見と基礎的AIの知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員
米国とドイツでは全てのAI人材において「十分にいる」「まあまあいる」の割合の合計が過半数を超えており、日本では際立ってAI人材が不足していることがわかります。
不足の背景と要因
日本においてAI人材が不足している背景には、以下のような要因が考えられます。
- 教育機関や企業の育成体制の遅れ
- 経営層の理解不足
- 高度な専門職を採用しにくい日本の雇用環境
AI技術は進化が早く、常に最新の知識を学ぶ必要があるため、教育現場が追いつけていないのが現実です。
また、AIを学ぶには数学、統計学、プログラミングなどの複合的なスキルが必要で、習得には時間と労力がかかります。AI人材を育成しようにも、適切な教育機関や企業内で育成できるリソース自体が不足しているのです。
2つ目の要因として、日本では経営者層の理解不足がAI人材育成への積極的な投資や取り組みを阻害しているという点が挙げられます。
IPA「DX動向2025」によれば、国別のIT分野に見識がある役員の割合は以下の通りでした。
「3割以上5割未満」「5割以上」の割合の合計は日本で19.9%、米国で43.4%、ドイツで36.7%となっており、米国とドイツと比べて日本は低くなっているのがわかります。また、「いない」の割合は日本が28.2%で、役員・経営者層でIT分野に詳しい人材が足りていません。*
3つ目に、日本でAI人材が不足している要因の1つとして、高度な専門職を採用しにくい雇用環境が挙げられます。
IPA「DX動向2025」でDXを推進する人材の獲得・確保の課題についての回答結果では、「魅力的な処遇が提示できない」「募集しても応募が少ない」という割合が日本では高い傾向にありました。
メンバーシップ型雇用が主流の日本では、ジョブ型雇用が主流の欧米と比べて、本業とは別でDXやAIなどの高度な専門職を雇う文化が根付いていないため、AI人材の採用や育成が遅れていると考えられます。
経済産業省のAI人材育成プログラムとは?
経済産業省では、AI人材の不足を解消するためにAI人材育成プログラム「課題解決型AI人材育成事業(AI Quest)」を実施しています。
AI Questは、講師を置かず参加者同士の学び合いによりAI人材を育成する課題解決型育成プログラムです。企業のAI活用におけるニーズを調査し優先的に導入を進めるべき業種・工程を明らかにし、それらの優先領域のテーマを中心に、実践的なデータ付き教材を作成・配布しています。
2021年度のプログラムには899名がオンライン参加し、AI導入とシステムの実装、プロダクトマネジメントなどの教材を利用しました。
参考:実践的なAI人材育成のためのデータ付き教材の提供を開始します。 (METI/経済産業省)
AI人材はいらない?今後の需要予測と将来性
一部では「AI人材はいらない」との声もありますが、それは誤解です。
世界的AIブームが起こったのは2022年の頃なので、比較的新しいムーブメントだと思っている人もいるかもしれません。しかし、実は現在の生成AI普及によるブームはAIとしては第四次ブームといわれており、既にAIの技術はプログラミングだけでなく、広告やマーケティング、自動運転、医療診断、金融のリスク管理など、多くの分野で活用されています。
ボストンコンサルティンググループの調査によれば、生成AI市場は2022年の約90億ドルから2027年には1200億ドル規模になると予想されているのです。*
つまり、AI人材は「いらない」どころか、今後はさらに需要は高まり、より多様なスキルセットが求められると考えられます。
AI人材の育成方法と取り組み
既に解説してきたように、専門的なAI人材を育成するのは容易なことではありません。
最後に、AI人材を育てるための方法について、企業の経営・人事サイドの考え方、各方法のメリット・デメリットなどについて解説します。
社内育成と教育プログラム
社内にAIスキルを持つ人がいる場合、教育係として研修やOJTを実施してもらうのが有効な手段です。育成したい人物のメンターとしてついてもらうのもよいでしょう。うまくいけば社内で新たにAI人材を誕生させられます。
しかし、育成のメンターとなった場合は、メンティへの指導に時間が取られるため、本来の業務に支障がでる恐れがあります。また、研修に慣れていなければ体系的に内容をまとめるのも難しく、実施できたとしても思ったような効果が得られない可能性もあります。
社内のリソースを使うため、低コストで人材育成が行えるのがメリットですが、思った効果が得られない・業務を圧迫する可能性があるのがデメリットです。
社内教育の実施前に、メリット・デメリットを出してから判断するとよいでしょう。
無料コンテンツやオンライン講座の活用
AI人材を育てるために、社員に無料コンテンツを活用した学習を働きかける方法があります。
金銭的負担がないので始めやすいのがメリットです。一人ではあまり積極的に動いてくれないときは、チーム単位で勉強するようにしてもよいでしょう。
費用がかからないメリットがある反面、体系立てられていない・情報に誤りや不足がある、情報が古いといったコンテンツもあります。そうしたコンテンツを参考にしてしまうと、知識の習得に時間がかかる・知識が偏るといったデメリットが生じてしまいます。
事前に人事部などで、無料コンテンツの内容をよく確認し、厳選した内容で社員に取り組んでもらうのが望ましい対応です。
外部のAI研修を取り入れる
社内にAI人材育成できるリソースがないまたは足りない場合には、外部のAI研修を取り入れるのが一番です。
社外の研修に従業員を参加させる、または社内に外部講師を派遣して研修を実施する方法などが考えられます。
研修を行うプロが対応してくれるので、体系立てて教えてくれるのはもちろん、社員からの質問などにも研修の場で対応してくれるでしょう。
既に大手企業をはじめ、多くの企業がDX推進、AI人材の育成に取りかかっています。将来的に自社が遅れを取ることがないようにするために、外部のプロの活用も検討してみてはいかがでしょうか。

