PDCAとは?意味・回し方・成功のコツを具体例でわかりやすく解説

update更新日:2025.11.26 published公開日:2021.12.09
PDCAとは?意味・回し方・成功のコツを具体例でわかりやすく解説
目次

PDCAとは、Plan・Do・Check・Actionの4ステップから成る品質管理・業務改善のフレームワーク。有名な手法の1つですが、「PDCAサイクルをうまく回せない」という悩みは珍しくありません。

本コラムでは、PDCAの意味と目的を踏まえて、効果的な回し方、よくある失敗と対策、企業での成功事例やPDCAの進化版であるPDSA、PDCAとともにおさえておきたいフレームワークなどをわかりやすく解説します。

PDCAとは何か?意味と歴史、ISO 9001との関係

PDCAとは、計画から改善までのステップを4つに大別したフレームワークです。

はじめに、「P」「D」「C」「A」という4つのステップが何を意味するのか、ビジネスでPDCAサイクルを回す目的や活用の歴史、国際規格であるISO 9001との関係を解説します。

PDCAの意味・読み方

PDCAとは、Plan・Do・Check・Actionのそれぞれの頭文字をとって名づけられた、品質管理・業務改善のためのフレームワークです。読み方は「ピーディーシーエー」です。PlanからActionまでを1サイクルとして何度も繰り返すため、「PDCAサイクル」とも呼ばれます。

各ステップの意味は、下表の通りです。

【PDCA 4つのステップ】

ステップ 意味 概要
P(Plan) 計画 課題や目標を設定し、実行に向けた計画を立てる
D(Do) 実行 計画に基づいて実行する
C(Check) 確認 実行した内容・方法・成果を振り返り、成功要因と失敗要因を分析する
A(Action) 改善 より良い成果を出すために必要な改善策を検討する

PDCAは、組織レベルでも個人レベルでも活用できます。例えば、組織レベルでは生産性や品質、売上の向上、経営改革などに、個人レベルでは業務効率改善やスキルアップなどのセルフマネジメントに使うことが可能です。

ビジネスにおけるPDCAの運用目的

PDCAサイクルを回す目的は、企業の存続にあります。より具体的には、業績向上や品質改善です。

企業や組織には中長期経営計画があり、事業戦略があり、目指すべき目標があります。企業全体の目標を達成するには、各部署が担当領域の目標を達成していかなければなりません。期限までに一定の成果を出すには、仮説に基づく計画・実行、その分析・評価および改善を効率的に進める必要もあります。

こうしたプロセスは、まさにPDCAサイクルを回し続けることそのものです。

PDCAサイクルにおけるスパイラルアップの重要性

ここで重要なのが“ぐるぐる回しながら上昇していく”という、らせん階段のイメージです。PDCAサイクルを繰り返し回していくことは、らせん階段を登っていくようなもの。これを「スパイラルアップ」と呼びます。

近年は「PDCAは意味がない」「PDCAは時代遅れ」と言われますが、その要因の1つは、うまくスパイラルアップできず、問題が改善されないことにあるでしょう。

形骸化を防ぎ、PDCAサイクルをうまく回し続けるには、「スパイラルアップができているかどうか」をチェックする視点を持ち続けることが重要です。

PDCAサイクルとISO 9001の関係

PDCAサイクルは、ISO(国際標準化機構)の国際規格であるISO 9001の品質マネジメントシステムにも採用されています。

ISO 9001は1987年に制定され、その後、数回の改訂が行われました。2025年現在の最新版は、2015年改訂版です。同規格の「6.計画」以降で、PDCAサイクルの実践を具体的に求めています。

【PDCAサイクルとISO 9001の関係】*

PDCAの要素 ISO 9001における規定
P(計画) 6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
D(実行) 8. 運用
C(評価・分析) 9. パフォーマンス評価
A(改善) 10. 改善

ISO 9001は主に製造業などで用いられてきた規格です。しかし、2015年の改訂により、製造業以外の分野におけるサービスの品質改善にも活用しやすくなりました。

*参考:「品質マネジメントシステムに関する基礎知識」(一般社団法人日本能率協会 審査登録センター)

PDCAサイクルを回す5つのメリット・効果

PDCAサイクルを回すメリットをもう少し具体的に見ていきましょう。5つあります。

  1. (1)目標が明確になる
  2. (2)業務改善に向けた見える化ができる
  3. (3)情報共有・コミュニケーションが促進される
  4. (4)個人の目標達成力が向上する
  5. (5)仕事のモチベーション向上につながる

順番に解説します。

(1)目標が明確になる

1つ目のメリットは、目標が明確になることです。PDCAサイクルのPlanで課題と目標を明らかにし、「どこに向かって進むか」「どうやって・どのくらい進めばいいのか」を決めるからです。

変化の激しい領域や新規事業開拓では、考慮すべき要素が多く、なかなか計画を策定できないかもしれません。それでも、暫定的に「何を解決したいのか」「どうなりたいのか」を定めて一歩ずつ前に進むことが、次につながります。

PDCAサイクルを何度も回すことで、曖昧だった問題や目標を次第に明確化できるでしょう。

(2)業務改善に向けた見える化ができる

2つ目のメリットは、業務改善に向けた見える化ができることです。

そもそも、PDCAサイクルは品質改善・業務改善を目的とするフレームワーク。組織としてPDCAサイクルを回すことは、業務改善の流れを誰もが把握できることを意味します。

ビジネス環境が激しく変化する今、「自身の組織が何をしているのか」「なぜその取り組みを進めているのか」を明らかにすることが、成功への鍵となります。変化への対応を多くの目でチェックし、より柔軟で適切な対応につなげられるからです。

予測していなかった変化に直面しても、冷静に問題の本質や解決に向けた行動・手段を検討しやすいでしょう。

(3)情報共有・コミュニケーションが促進される

3つ目のメリットは、情報共有とコミュニケーションの促進です。

各メンバーがPDCAサイクルの目標・計画を理解して実行するには、経営層や管理職、リーダーによる丁寧な説明が欠かせません。Actionの前提となるCheckでも、Doにおける実行内容・方法・結果を部下から上長へ共有する必要があります。

Doの進行中にタスクをため込んでいるメンバーが見られるなら、大きな計画を崩さない範囲で、業務の再配分やほかのメンバーによるサポートも行うことになるでしょう。

PDCAサイクルを回すために、こうした情報共有やコミュニケーションが自然に行われます。

(4)個人の目標達成力が向上する

4つ目のメリットは、社員それぞれの目標達成力の向上です。

ビジネスパーソンの成長の大部分は、仕事における日々の経験に支えられています。そして、経験による学習では、「何をどのように遂行したら、どうなったのか」という記録・振り返り・改善行動が欠かせません。このプロセスは、PDCAサイクルそのもの。社員教育の段階でPDCAを定着させることが、社員それぞれの成長を促し、目標達成力を向上させるのです。

例えば、OJTでPDCAを実践できるようになれば、その後も、個人目標の達成に向けて自分でサイクルを回せるようになります。個人目標を達成できるようになれば、チーム目標の達成にも、より貢献できるようになるでしょう。

(5)仕事のモチベーション向上につながる

PDCAサイクルを回すことは、仕事におけるモチベーションの維持・向上にもつながります。これが、5つ目のメリットです。

PDCAは、目標達成に向けて改善を続けるサイクル。1回目のPDCAで達成できなくても、2回目ではより良い成果を得られるでしょう。結果や要因を分析して「良いことを継続し、悪い部分を改善する」という行動が習慣となります。

また、PDCAによって課題分析の視点が「人から問題」になることで、個人の性格・能力に全ての原因を求める発想を減らせます。上司は部下を感情的に叱る必要がなくなり、部下も「自分はダメな人間だ」といった人格否定をせずに済むでしょう。職場の心理的安全性も改善されます。

PDCAによる成功体験の蓄積と建設的な課題解決が、「次はこうしよう」という仕事へのモチベーション向上につながるのです。

PDCAサイクルの回し方と成功のコツ

PDCAサイクルを上手に回すには、各ステップの役割および次のステップとの関係性を理解しなければなりません。Plan・Do・Check・Actionのそれぞれで意識すべきポイントと成功のコツを見ていきましょう。

Plan(計画)では無理のない数値目標を設定する

PDCAサイクルは、原則としてPlanから始めます。

Planの最も重要なポイントは、上位計画と下位計画を連動させること。つまり、会社全体の計画と各部署の計画、部署内のチームの計画を連動させるということです。

そして、Planの目標設定では、具体的な数値で定められる指標を用います。達成期限も必ず定め、期限までに目標数値を上回ることができるように行動計画を策定してください。

計画立案で便利なフレームワークには、5W1Hや5W2Hなどがあります。以下の関連コラムで詳しく解説していますので、併せてご活用ください。

コラム「5W1Hとは?わかりやすい意味と例文、フレームワークの使い方」はこちら

コラム「5W2Hとは?ビジネスコミュニケーションにおける活用ポイントと例文」はこちら

Do(実行)を計画通りに進めて記録を取る

続くDoでは、Planで策定した目標・計画に基づいて業務を進めます。ポイントは、Planの計画を守ることと、必ず記録を取ることです。

実際に業務を進めていくと思わぬトラブルが発生し、当初の計画にはない行動が必要な場合もあるでしょう。それでも、致命的なトラブルでない限りはPlanの計画と大きな矛盾が生じないようにすることが大切です。

Doの記録については、次のような項目を記録するとCheckで活用しやすくなります。

【Doで記録を取るべき項目】

  • いつ・誰が・何をしたのか
  • どのように進めたのか
  • どの結果、どうなったのか
  • KPIやKGIの達成度はどのくらいか
  • 困りごとや新たに気づいた課題はあったか

記録には、事前にテンプレートを作成し、共有しておくと便利です。使用中にフォーマットの改善が必要と感じた場合は、記録しやすい様式に更新しましょう。

そして、記録のルールとして

  • 嘘を書かない
  • 曖昧な表現で誤魔化さない

といったことも徹底してください。不正確なデータは適切な改善を妨げてしまうからです。

Check(評価・分析)を定期的に行う

Checkは、実施するタイミングにコツがあります。最も大きなCheckはDoのあとに実施しますが、Doの進行中も定期的にCheckを行うことが理想です。

DoのあとのCheckで行うのは、KGIの達成度と全体的成果のレビュー、課題分析。全体の成果を踏まえて、成功要因や失敗要因を振り返りましょう。

一方、Do進行中に行うのは、KPI達成状況の確認と小さなトラブル・課題への対処です。業務担当者への適切なフィードバックにより、計画全体へのネガティブな影響を軽減できます。

Checkでは、ぜひKPT法も活用してみてください。

【KPT法の内容とポイント】

項目 意味 ポイント
K(Keep) 維持すべきこと

目標達成の成功要因を分析

(例)

  • どのように進めたか?
  • 業務遂行に役立った知識・やり方は何か?
  • 各工程にどのくらいの時間をかけたか?
P(Problem) 改善すべきこと

目標未達成の失敗要因を分析

(例)

  • 数値目標の設定は適切だったか?
  • 目標設定に使った指標は適切だったか?
  • 業務の割り振りは適切だったか?
T(Try) 次に試すこと 改善策を検討

KeepとProblemをしっかり実施することで、Tryの効果が高まります。

Action(改善)は記録と評価・分析に基づいて行う

DoとCheckのあとは、Actionに入りましょう。重要なのは、Checkの評価・分析に基づく改善策を講じること。要因と改善策を結びつけることが、KPTにおける効果的な「T」になるからです。

成功要因としてあげられた項目は社内で共有するとともに、業務の標準化につなげましょう。失敗要因については、軽減・解消する方法を考えます。もし目標数値や指標が不適切と評価されたのであれば、PDCAを回す目的を踏まえ、改めてKGIやKPIを見直さなければなりません。

こうした改善策を具体的な行動計画に落とし込んだものが、次のPDCAサイクルにおけるPlanとなります。

PDCAサイクルは古い?うまく回せない要因・デメリットと対策

PDCAサイクルは汎用性の高いフレームワークですが、「うまく回せない」という声も珍しくありません。それを理由に「PDCAはもう古い」「時代遅れだ」とする見解も見られます。

しかし、PDCAサイクルをうまく回せない要因として、各段階で適切な取り組みを行っていないことも考えられます。PDCAを捨てる前に、以下のケースをチェックしてみてください。

PDCAのP(計画)ができないケース

Planで行き詰るケースでは、

  • 上位計画で無謀な目標・計画を立てている
  • そもそも目標が抽象的である
  • 計画の策定にばかり時間をかけている

といったパターンが見られます。

上位計画に非現実的な条件設定があると、下位計画は無理な目標・計画にならざるを得ず、強引な実行と多すぎる改善点のせいで、次のPlanが難航します。また、「売上を向上させる」「社風を良くする」といった抽象的な目標の場合、Checkの基準が曖昧になり、Actionと次のPlanを進めにくくなります。とはいえ、Planに時間をかけすぎれば、PDCAサイクル自体を回せません。

こうしたPlanの問題を回避するには、

  • 現実的なリソースや外部環境を踏まえた無理のない計画であるかどうかを確認する
  • 数値で目標を決める
  • 「完璧な計画」を目指すより、スパイラルアップで少しずつ改善する

という原則を守ることが大切です。

PDCAのD(実行)ができないケース

Doで生じやすいのは、

  • Planの計画通りに実行しなくなる
  • Doで各メンバーが実施している内容を把握できない

といったケースです。

計画を無視した業務の遂行を放置すれば、Check段階での評価・分析ができません。Actionで「何を改善すべきか」もわからなくなってしまいます。Doの中で発生する細かいトラブルへの対応は必要ですが、全体としてPlanから大きく逸れないようにしましょう。

計画からの大きな逸脱を防ぐには、一定のフォーマットでDoの記録を取り続けることがポイントです。もし「記録しにくい」「記録項目が多い」といった声が聞かれるなら、フォーマットの改善も検討してください。

【Do記録フォーマットの改善例】

問題 改善例
自由記述式は記録に時間がかかる
  • 〇をつけるだけの選択式にする
選択式ばかりで、伝えたいことを伝えられない
  • 自由記述欄を設ける
記録する項目が多すぎる
  • 優先順位をつけて絞り込む
  • 選択式にする
  • 特定項目については記録頻度を下げる(週1回など)

目標達成と改善につながる項目を優先してDoの記録を取り、実行内容が計画と矛盾していないかどうかを常に確認しましょう。

PDCAのC(評価・分析)ができないケース

Checkでは、以下の2つのパターンに気をつけてください。

  • Planから逸脱したDoによってCheckができなくなる
  • 前例主義になってしまう

前者については先ほど述べました。

後者については、「もともとPDCAサイクルは最初に設定した目標・計画の大きな方向性を踏襲しながら改善を続けるフレームワークである」という点が影響しています。大きな視点の転換が難しく、これを自覚しないままPDCAサイクルを回し続ければ「前例主義」になってしまうでしょう。

【前例主義の例】

  • 既に需要自体が大きく減少している商品・サービスの品質改善を続けている
  • 既にテレワークや非対面コミュニケーションが中心となっているにもかかわらず、対面方式の営業施策ばかり重視している

前例主義を回避するには、CheckにおいてPlanで策定した目標・計画自体の評価も行いましょう。市場の状況や社会全体の変化を考慮し、より時代にふさわしい目標・計画は何かも検討してみてください。

PDCAのA(改善)ができないケース

Actionがうまく機能しない場合、

  • Checkが十分に行われていない
  • Checkの内容と整合性のないアイデアを採用している

といったケースが考えられます。

前者については、既に述べた通り、Planの目標・計画に沿ったDoの遂行と記録、その記録と外部環境を考慮した分析を行うことが重要。後者については、Checkの内容に基づく改善策の立案が必要です。

後者について、少し具体的に見てみましょう。例えば、Checkで「営業部のDoにおいて人員不足が原因で対応が後手になり、成約のチャンスを逃した」ことがわかったとします。このとき、Actionで以下の3つが提案されました。どれがCheckの内容と整合的な案でしょうか。

  • 案1:成約につなげられる効果的な資料を作成しよう
  • 案2:営業部の人員を増やそう
  • 案3:業務の負担軽減になるDXを進めよう

答えは、案2と案3です。案2は人員を増やすという直接的解決策であり、案3は人員を増やせない代わりに業務負担を減らして対応の迅速化を図る解決策だからです。

一方、案1は残念ながら問題の解決に寄与するとは言い難いでしょう。資料作成の業務負担が増えるうえ、迅速な対応が実現されるとも限らないからです。

Actionでは、問題を本質的に改善する施策を採用しなければなりません。PDCAサイクルを形骸化させないためにも、Checkと連動したActionを意識しましょう。

PDCAサイクルシートの書き方・使い方(図解あり)

PDCAサイクルをうまく回すには、日報など日々記録するツールにPDCAを組み込んでみましょう。チーム単位でフォーマットを共有する形でも、個人的に記録シートを用意する形でも構いません。

今回は、以下のようなシートを例に、PDCAサイクルシートの書き方・使い方をご紹介します。

PDCAサイクルシートの書き方・使い方

各記入欄について具体的に見ていきましょう。

「今日の目標」を書く(Plan)

PDCAサイクルシートは、1日の始めに「今日の目標」を書くところから始まります。目標自体は前日の終わりに決めておいてもよいでしょう。

例えば、以下のような目標です。もし可能であれば、数値目標を記載しましょう。

【今日の目標(例)】

  • A社およびB社の営業資料を作成する

仕事開始時に目標を書いて確認することで、PDCAサイクルを意識した仕事をしやすくなります。

「今日の業務内容」を書く(Do)

次に、業務時間中や業務終了時に「今日の業務内容」を記入します。

業務内容ごとに開始時刻と終了時刻を記載しておくと、その業務にかけた時間をチェックしやすいでしょう。

【今日の業務内容(例)】

  • 午前9時30分〜午後3時:A社の営業資料作成(昼休憩あり)
  • 午後3時〜午後6時30分:B社の営業資料作成

ほかのメンバーに協力してもらった場合は、メンバーの名前や任せた業務などを記録しておくと、その後の行動計画に役立ちます。

「良かった点」「課題」を書く(Check)

終業時刻が近づいたら、1日の振り返りを行います。PDCAサイクルのCheckにあたるステップです。

振り返りでぜひ実践したいのは、「課題」だけでなく「良かった点」も記入すること。業務では、ミスやトラブル、思うように進まなかったことなどが頭に残りやすいものです。しかし、成功体験も成長や業務改善には欠かせません。両方を記録することが、バランスのとれた評価には必要です。これを意識づけるために、あえて2つの欄に分けるとよいでしょう。

例えば、次のような書き方ができます。

【今日の業務内容(例)】

  • 良かった点

    • A社・B社の営業資料を作成し、今日の目標を達成できた
    • 資料の中のグラフが見やすいというフィードバックを受けた
  • 課題

    • A社の営業資料作成で、ターゲットに関する情報収集に時間がかかった
    • A社とB社が全く異なる業界だったため、資料の流用ができなかった

CheckにおいてKPT法を活用する場合、「良かった点」はKeepに、「課題」はProblemに対応させます。

「改善点」と「明日の目標」を書く(Action・Plan)

Checkの記入が終わったら、課題に対する改善策を考えます。これがPDCAサイクルのActionです。KPT法ではTryにあたる部分です。

【改善点(例)】

  • A社の業界について知識を深める
  • 同じ業界に向けた営業資料をなるべくまとめて作成する

ここで記入した改善策は、翌日以降の業務で実施していくことになります。

そして最後に、改善策を踏まえた「明日の目標」を記入しましょう。翌日の業務内容と進め方を決める段階です。

【明日の目標(例)】

  • A社・B社の営業資料をフィードバックに基づいて改善する
  • B社と同じ業界であるC社の営業資料を作成する

これが翌日に回すPDCAサイクルのPlanとなります。

上司・OJTトレーナーの「フィードバック欄」

新入社員や若手社員の教育の一環でPDCAサイクルを実施する場合や、組織全体でPDCAサイクルを定着させる場合などは、シートに上司・OJTトレーナーがフィードバックを記入する欄も設けましょう。

文書として日々のフィードバックが残ることで、いつでも振り返りを改善に役立てることができます。さらに、多面的な見方を学んで自身のCheck・Actionの質を高めることにも役立ちます。

【フィードバック欄(記入例)】

  • A社の業界についてはPさんが詳しいので、話を聞いてみるといいかもしれません。また、業界別のポイントを明日共有します。

「確認しました」「お疲れ様でした」というコメントだけでなく、ぜひ具体的なアドバイスを与えましょう。

PDCAサイクル活用の具体例

ここで、PDCAを活用する企業事例を2つご紹介します。1つは、トヨタ生産方式で有名なトヨタ自動車株式会社、もう1つは大きな業績悪化から経営改革を成功させた株式会社良品計画です。

両社とも、問題の性質や緊急性に応じて柔軟にPDCAサイクルをアレンジしつつ、改善につなげています。

【製造業】トヨタ自動車における工場で回すPDCA事例

トヨタ自動車が誇るトヨタ生産方式(以下、TPS)は、「良い品質で、安く、タイムリーに」商品を届けることを目的とし、徹底的にムダを省き、現場の生産効率や安全性を向上させる手法です。TPSは仕入れ先企業への展開も進んでいます。

その一例が、自動車内に敷くフロアマットの巨大な原反を扱う二次仕入れ先の企業での取り組みです。

原反は大きなものでは90kgもの重量となり、従業員の身体に大きな負荷がかかります。寝かせた原反の上に登るという危険な作業もありました。そこで、原反を立てたまま作業を進められる運搬用台車「からくり」を製作。はじめは二次仕入れ先企業で試作し、実際に使う中で課題を抽出して、トヨタと一次仕入れ先とも連携しつつ完成させました。

さらに、現場の業務についても高速でPDCAサイクルを回し、作業時間の計測、映像記録を使った解析、TPSでおなじみの「かんばん」の導入など、多角的な改善を進めました。

その結果、従業員にかかる負担は大きく軽減するとともに、安全に作業できる環境を整備。作業時間も短縮され、無理だと思われていた残業時間さえゼロになったとのことです。

参考:トヨタイムズ|「トヨタさんが来る...」 仕入先現場の改善 不安が自信に変わるまで

【小売業】良品計画における経営改革のPDCA成功事例

「無印良品」を展開する良品計画では、業績が大きく落ち込んだ2001年からPDCAを徹底した経営改革を行いました。当時社長に就任した松井忠三氏は、その様子を著書『無印良品のPDCA~一冊の手帳で常勝経営を仕組み化する!』(毎日新聞出版)で語っています。

松井氏が行ったのは、Doから始めるPDCAサイクル、すなわちDCAPサイクルです。計画から始める余裕さえない状況であることが、理由でした。

松井氏がDoで最初に行ったのは、全国の店長と面談を行い、現場視察とリアルな声をもとに課題を抽出する「全国行脚」。ほかにも、

  • 店長会議に社長自らが出席して、会社の状況と対応などを直接伝える
  • 現場の意見はブロックを管理するマネジャーではなく、監査室の担当者に報告してもらう
  • 38億円分の不良在庫を焼却処分する

といった大胆な施策を実行しています。

こうした一連の施策は大きなDCAPのDoに当たりますが、「実行する→課題を分析・評価する→改善する」という流れで見れば、小さなDCAPのActionでもあります。大小様々なサイクルを同時に回しながら改善していきました。

経営改革のPDCAサイクルは、開始から3年ほど継続。回し続けることができたポイントは「毎週、同じ曜日・同じ時間に定例会議を設ける」ことです。必ずCheck・Actionを実施できる仕組みです。1回目のCheck・Actionで見いだせなかった問題の本質も、2回、3回とサイクルを回すうちに気づけるようになり、改善につながると松井氏は語っています。

参考:松井忠三『無印良品のPDCA 一冊の手帳で常勝経営を仕組み化する!』毎日新聞出版、2017年

PDCAからPDSAへの進化

ただ、外部環境の激しい変化に対応するには、PDCAサイクルの問題点を積極的に克服するための発想が必要です。

ここで参考になるのは、PDCAから直接進化したフレームワーク「PDSA」。PDCAサイクルが日本で普及するきっかけをつくったアメリカのデミング博士によって提唱されたもので、従来Checkと呼ばれていた部分が「Study(研究)」に置き換えられました。

Studyは、取り組みの結果を評価するという点ではCheckと同様です。しかし、

  • 取り組みによってどのような変化があったか
  • 失敗した場合、その原因は何か
  • 成功した場合、どのような要因が決め手となったか

といった考察がより強く意識されています。考察のために、新たに情報収集を行ったり、専門家にヒアリングしたりすることも選択肢の1つでしょう。

「PDCAサイクルがうまく回せない」「スパイラルアップできない」という課題に直面したときは、ぜひPDSAに切り替え、実施後の分析・考察を重視してみてください。

PDCAに代わるものとして注目されるOODAループ・PDR・STPD・SDCA

外部環境の激しい変化への対応として、PDCA以外のフレームワークを使う動きもあります。特に、計画立案が前提されるPDCAは、迅速な対応が求められる近年のビジネスには不向きであるとする見方が優勢です。

PDCAに変わるものとして注目される代表的な手法は、「OODAループ」や「PDR」など。本コラムの最後に、これらのフレームワークを簡単にご紹介します。

「Plan」を省くOODAループやPDR

OODAループ(ウーダループ)とは、Observe・Orient・Decide・Actの4ステップで構成される業務改善フレームワークです。各ステップの意味は、下表のようになります。

【OODAループ 4ステップの意味】

ステップ 意味 概要
O(Observe) 観察 現状を観察し、情報を集める
O(Orient) 情報の整理 集めた情報や問題を整理・評価する
D(Decide) 意思決定 評価をもとに、どう行動するかの意思決定を行う
A(Act) 行動 決定した内容を実行する

OODAループの特徴は、PDCAよりも現場の状況を踏まえた判断に重きを置いている点。PDCAとは異なり、計画の承認がありません。現場に権限委譲して対応を迅速化する手法です。

PDRもOODAループと同様にPDCAのPlanを省いたフレームワークです。それぞれのアルファベットは、Prep・Do・Reviewを意味します。

【PDR 3ステップの意味】

ステップ 意味 概要
P(Prep) 準備 「これから何をするか」「それはなぜか」を明確にする
D(Do) 実行 決定した内容を実行する
R(Review) 評価 準備内容・実行内容・成果を分析し、学びや改善点を見いだす

PDRは、計画よりも「実行のための準備」を重視する発想です。Reviewからすぐに次のサイクルのPrepへ進むため、1サイクルに要する時間が短縮されます。上手に活用できれば、失敗を活かした素早い改善行動が可能になります。

「Plan」の位置や内容を変えたSTPD、SDCA

ほかにも、STPDやSDCAというフレームワークがあります。

STPDは、See・Think・Plan・Doの略。現状把握と分析を重視して計画を練る点が特徴です。

【STPD 4ステップの意味】

ステップ 意味 概要
S(See) 現状把握 現場の確認や従業員アンケートなどで現状を把握する
T(Think) 分析 集めた情報を分析し、取り組むべき問題を把握する
P(Plan) 計画 解決に向けた具体的な行動プランを策定する
D(Do) 実行 行動プランに基づき、実行する

STPDのメリットは、机上の空論や思い込みによる現場の空転を防ぎ、より現実的な改善サイクルへつなげられることです。

PDCAのPlanをStandardize(標準化)に置きかえたSDCAは、基本ルールを定めて業務を進め、課題解決のためにルールを更新するという手法です。現場の実行力向上を目的に活用されます。

【SDCA 4ステップの意味】

ステップ 意味 概要
S(Standardize) 標準化 業務に関する暗黙知を手順書やマニュアルなどに明記したり研修などで周知したりして、誰もができるように標準化する
D(Do) 実行 標準化したルール・手順に従って業務を進める
C(Check) 分析・評価 実施した結果を分析・評価し、課題を洗い出す
A(Action) 更新 課題解決に必要な対応策を策定する

SDCAは、工場などで業務を安全に進めるために使われる場合もあれば、サービス向上のために活用される場合もあります。

PDCAサイクルによる効果的な業務改善・マネジメントの実践へ

PDCAサイクルは各ステップの目的や役割を理解して、適切に回し続けることで改善につなげるフレームワークです。サイクルを回し始めた当初はうまくいかないことでも、回し続けるうちに課題が明確化され、より効果的な改善策を実行できるでしょう。

会社全体でPDCAサイクルを回すなら経営層が、組織で回すなら管理職が、そして個人で回すなら一人ひとりの社員が、計画立案や効果的な振り返りの方法を習得しなければなりません。

多くの企業で人材育成をご支援してきたALL DIFFERENTでは、PDCAの実践に役立つ多数の研修・セミナーをご提供しています。具体的なお悩みに基づいてカスタマイズした研修の実施も可能ですので、主体的な業務改善ができる人材の育成にぜひご活用ください。