ゆとり世代の年齢や特徴は?円滑に仕事をするコツを解説



ゆとり世代とは、ゆとり教育を受けた世代のことです。主な特徴として、ワークライフバランスを重視する仕事感、多様性の尊重、ストレス耐性の低さなどが指摘されています。
本コラムでは、ゆとり世代の特徴や円滑に仕事をする方法について詳しく紹介します。世代としての傾向をつかみ、効果的な人材育成にお役立てください。
ゆとり世代とは
「ゆとり世代」に明確な定義はありませんが、一般的に1987年4月2日から2004年4月1日生まれで、ゆとり教育を受けた世代を指すことが多いです。年齢は20歳から37歳(2024年時点)にあたります。
フルゆとり世代/スーパーゆとり世代とは
ゆとり教育を義務教育から高校まで受けた世代を「フルゆとり世代」「スーパーゆとり世代」と呼ぶことがあります。具体的には1995年度生まれで、2002年に小学校へ入学した世代です。
ゆとり教育の背景と特徴
ゆとり教育は1998年の学習指導要領改訂を受け、2002年から約10年間続きました。詰め込み型の学習からゆとりある学習へ転換し、個性を大切にしながら豊かな人間性や「生きる力」を育むことを目的として実施されました。代表的な取り組みは、以下のようなものがあります。
- 完全週休5日制の導入
- 授業時間の削減
- 成績評価を相対評価から絶対評価へ変更
- 暗記型の台形の面積公式などを教科書から削除
- 中学英語の学習単語数を削減
ゆとり教育は、従来の詰め込み型教育からの脱却を目指しましたが、学習内容や授業時間の削減による学力低下の懸念などが浮上。そのため、2008年に学習指導要領が改訂され、2011年度から小学校で、2012年度から中学校で「脱ゆとり教育」が全面実施されました。
ゆとり世代の特徴
「ゆとり世代」は個性を尊重する傾向があります。必ずしも全員に当てはまるわけではありませんが、世代としての大まかな傾向を把握することで、コミュニケーションや指導がより円滑になるでしょう。ここでは、ゆとり世代の強みとなる特徴を解説します。
ワークライフバランスを重視する
ゆとり世代は、ワークライフバランスを重視します。その背景には、子ども時代に学校週5日制が導入され、学校以外の時間を多く得られたことが挙げられます。自由な時間を使って、趣味や興味のあることを追求できた経験から、社会人になっても「仕事一筋」にはならず、プライベートの充実も大切にする傾向がみられます。
多様性を尊重する
個性を大切にされて育ってきたゆとり世代は、他人の個性についても敬意を払う傾向があります。近年重要視されているダイバーシティ&インクルージョンにも関心があり、自分と異なる価値観を持つ人たちにも寛容です。
マイノリティや異文化の背景を持つ人などを排除せず、理解し、共存を図ろうとする姿勢は、多様化が進む社会において非常に重要といえるでしょう。
人間関係を重視する
ゆとり世代は、それぞれの個性を尊重しながら関係性を築く教育を受けてきました。社会全体の変化としては、核家族化や共働き家庭が増えた時代でもあり、他者と競争して勝つことよりも、それぞれの個性を大切にしながら関係性を築くことを好む傾向があります。
一方で、インターネットが普及した環境で育ったため、子どもの頃からオンラインでの友達づくりに慣れている点も特徴の1つです。
ITスキルが高い
子ども時代にインターネットが普及したゆとり世代には、デジタル技術の活用が得意です。わからないことや知りたいことがあると、インターネット検索を使いこなし、素早く情報を収集します。
また、新しいデジタルツールの習得も早く、業務効率化やデジタル化の推進において力を発揮します。こうしたITスキルは、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代の職場において、大きな強みとなります。
独創的なアイデアがある
個性を育む教育を受けてきたゆとり世代は、既存の枠組みにとらわれず、新しい発想や解決策を考えることが得意です。自分の意見を大切にし、独創的なアイデアを持っています。暗記型の画一的な勉強法から、それぞれの能力や個性に合わせた学習への転換は、既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想の土台となりました。
ゆとり世代は、従来「当たり前」と考えられてきたやり方に縛られず、自分で新しいアイデアを生み出そうとします。こうした創造性は、多様化する価値観やライフスタイルに応じた商品・サービスの開発においても大きな強みとなります。
ゆとり世代の課題
ゆとり世代には、育ってきた環境や受けてきた教育の影響から、職場での課題となりやすい側面もみられます。ただし、これらを理解し、適切なサポートを行うことで、十分に対応することができます。主な課題を見ていきましょう。
繊細でストレス耐性が低い
個性を尊重され競争を避ける教育により、ゆとり世代の人々には繊細さやストレス耐性の低さがみられます。特に、褒められることに慣れている一方、叱られることへの耐性は低いようです。
仕事で上司や取引先から叱られた場合、怒っている相手にどのように対応すればいいのか、叱られた際の自分の感情のコントロールをどうすればいいのか、といった点でつまずきやすい傾向があります。そのため、仕事や人間関係におけるストレスにうまく対処できず、休職や離職につながることもあるため、企業側は適切なサポート体制を整えることが重要です。
協調性や自主性が乏しい
ゆとり世代は、個人を尊重する教育を受けてきたので、周囲に合わせず、自分の価値観を大切にする傾向があります。会社の付き合いよりも自分が好きなことや興味あることを優先するため、協調性が低いとみられることも。仕事を優先してきた世代と比べると、最低限の仕事はするものの自主的には動かず、「指示待ちが多い」と思われることもあるでしょう。
転職しやすい
ゆとり世代は転職に抵抗がなく、自分らしく働きたいという思いが強い傾向があります。不況の中に生まれ、社会に出る前にバブル崩壊やリーマンショックなどを目の当たりにし、終身雇用制度や年功序列が崩壊する中で生きてきました。
こうした背景から、ゆとり世代は一生同じ会社で働くという前提を持たず、自分の能力に合った仕事や生活が安定しやすい職場へ移りながら、キャリアプランの実現を目指しています。
上昇志向が低め
ゆとり世代は、競争で優位に立つよりも、自分の個性や能力に合わせて学ぶことを優先した環境で育ってきました。そのため、積極的に上を目指すという上昇志向はあまりみられず、自分の「身の丈に合った」もので満足する傾向があるようです。
ゆとり世代と他の世代との違い
世代の呼び方には、ゆとり世代だけでなく、「さとり世代」「ミレニアル世代」「Z世代」などの名称もあります。世代間の違いをおさえることは、職場でのコミュニケーションや指導の大きなヒントになります。ここからは、ゆとり世代と他の世代との違いを解説します。
ゆとり世代と「さとり世代」の違い
さとり世代の定義はあいまいですが、1990年代に生まれた世代を指すことが多く、ゆとり世代とも重なっています。さとり世代は、ゆとり世代と同じようにバブル崩壊や世界的な不況、大きな災害などを経験し、厳しい現実に直面してきました。経済の低迷や社会の不安定さから悟ったような態度を取るようになり、「さとり世代」という呼び方が生まれたようです。
ブランドや名声に興味がなく、自分のキャパシティ内で物事を楽しむ傾向がある点は、ゆとり世代と似ていますが、さらに自分に必要なものや情報を見極めている点に違いがみられます。
ゆとり世代と「ミレニアル世代」の違い
ミレニアル世代はゆとり世代と時期が重なり、1980年から1995年頃に生まれ、2000年代に成人した人たちのことです。海外で生まれた言葉で、Y世代(ジェネレーションY)と呼ばれることもあります。世代としての特徴をみると、ゆとり世代と同じく、デジタル技術に触れ始めた世代で、個性の尊重やライフワークバランスを重視する傾向があります。
ゆとり世代と「Z世代」の違い
Z世代は、1990年代中盤以降に生まれた世代です。Y世代(1980年~1995年生まれ)の次の世代として、Z世代と呼ばれています。Z世代は非ブランド志向、ITリテラシーが高い、個性や多様性を尊重するという点でゆとり世代と似ています。
また、インターネットで得られる世界の情報から、社会問題への関心が高く、ダイバーシティ&インクルージョンの実践にも理解があります。合理性や平等性を求め、自分らしくあることに価値を見い出しているのも特徴です。
他方、Z世代は「デジタルネイティブ」ともいわれるように、インターネットの利用に関するスキルがより高い傾向があります。SNSなどで情報収集を積極的に行う一方、プライバシーに関する情報を流出させないよう気をつけています。
様々な世代の特徴
時代背景や社会状況などを反映して、それぞれの世代には特徴的な呼び方があります。経営層やシニア雇用に多い団塊世代から、最も新しいアルファ世代まで、主な世代区分は以下の通りです。
世代の区分 | 生まれた時期 | 特徴 |
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団塊世代 | 1947年~1949年頃 |
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しらけ世代 | 1950年〜1964年頃 |
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バブル世代 | 1965年~1969年頃 |
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X世代(ジェネレーションX) | 1960年〜1970年代 |
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氷河期世代(就職氷河期世代) | 1970年~1982年頃 |
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プレッシャー世代 | 1982年~1987年頃 |
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つくし世代 | 1985年〜1991年頃 |
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ミレニアル世代(Y世代) | 1980年~1995年頃 |
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ゆとり世代 | 1987年~2004年頃 |
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さとり世代 | 1990年代 |
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Z世代 | 1997〜2012年頃 |
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α(アルファ)世代 | 2013年~ |
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ゆとり世代と円滑に仕事をするための5つのポイント
ゆとり世代の価値観や特徴を理解することは、円滑に仕事を進めるうえで非常に重要です。ここでは、ゆとり世代と向き合い、一緒に仕事をする際におさえておきたい5つのポイントをご紹介します。日常業務から育成や指導まで、様々な場面でお役立てください。
(1)キャリア形成を支援する
個性を大切にしながら育ってきたゆとり世代には、一人ひとりのキャリアに対する考え方に寄り添い、目標達成を促すアプローチが必要です。
ALL DIFFERENTが毎年実施している新入社員アンケートによると、ゆとり世代は管理職になりたいと考える人の割合が減少傾向にあり、専門家を目指す人が増えています。ただし、必ずしも多数を占めているわけではありません。
また、キャリアについて特別な志向は持たず、「楽しく仕事をしていたい」と考える人や「まだはっきりしていない」と答える人も、それぞれ2割程度存在します。これらの傾向から、同じゆとり世代でもキャリアに対する考え方は多様であり、個人の志向を理解して支援することが重要です。
ゆとり世代はITリテラシーに強みがあるため、ICTを活用した育成やキャリア支援を行うことが効果的です。個性を活かしつつ、効果的なキャリア形成をサポートできるでしょう。
(2)具体的に指示を出す
効率を重視するゆとり世代には、具体的な指示が効果的です。曖昧な指示は非合理的に感じられ、モチベーションを下げてしまう可能性があります。仕事の指示を出す際は、目的や手順、納期などを明確に示し、何をすべきかを具体的に伝えることが重要です。
(3)プロセスを評価する
具体的な指示を出したら、進捗状況に対してフィードバックを行いましょう。個人を尊重するゆとり世代は、褒められることや評価されることで、やりがいを感じて意欲的に仕事に取り組みます。
定期的な声かけにより「見守られている」という安心感を与えることができ、困った際に相談しやすい関係性を築けます。プロセスを細かく評価・助言していくことで、モチベーションの維持や向上につなげられるでしょう。
(4)感情的な伝え方は避ける
ゆとり世代を注意する際は、「叱る」のではなく「アドバイスを意識する」ことが大切です。繊細でストレス耐性が低い傾向があるため、感情的な伝え方をしてしまうと、萎縮して問題解決への意欲を失ってしまう恐れがあります。ミスやルール違反に対して、なぜ問題なのか、どのように改善すべきかなどを、落ち着いて論理的に伝えましょう。
(5)プライベートな話題には踏み込まない
効果的な指導には、心理的安全性の確保が不可欠です。ゆとり世代は「仕事とプライベートは別」と考える傾向があり、直属の上司であっても私生活のことはあまり話さない傾向があります。
良好な関係を築くには、プライベートな領域で距離を縮めるのではなく、仕事の姿勢や成果を細やかに評価しながら、1人の人間として尊重する姿勢が欠かせません。無理にプライベートに入り込もうとせず、一緒に仕事をする人間として信頼関係を構築することで、自然とコミュニケーションがとりやすくなるでしょう。
ゆとり世代の強みを活かそう
ゆとり世代には、デジタル技術の活用力や多様性の尊重、独創的な発想力など、現代のビジネス環境で求められる強みがあります。一方で、ストレス耐性の低さなど、職場での課題となる面もみられます。
これらの特徴は、適切なサポートと本人の意識次第で、十分に活かすことができます。特に、個性を重視し、新しい発想を生み出せる点は、変化の激しい現代において大きな価値となるでしょう。
自分の強みを理解し、それを活かせる環境で成長していくことが、ゆとり世代の活躍において重要です。ALL DIFFERENTでは、ゆとり世代一人ひとりの特性に合わせた成長支援プログラムをご用意しています。詳しくは以下のリンクからご確認ください。