サービス残業は自主的行為でも違法!企業の法的責任と防止策

update更新日:2026.04.06 published公開日:2023.11.28
サービス残業は自主的行為でも違法!企業の法的責任と防止策
目次

サービス残業は、従業員が自主的に行った場合でも、法的には違法とされます。

企業が黙認していた場合、労働基準監督署の是正指導の対象となり、労働基準法違反として罰則が科される可能性があります。

本コラムでは、企業が知っておくべきサービス残業の基礎知識と具体的な防止策を解説します。

サービス残業とは?自主的かどうかに関係なく知るべき基礎知識

サービス残業とは、労働者が所定労働時間を超えて働いているにもかかわらず、その分の賃金が支払われていない状態を指します。

残業の申請をしていない場合や、自主的に業務を進めている場合でも、実際に働いていれば企業には賃金を支払う義務があります。

企業として従業員のサービス残業を防止するために、まずはどのような働き方がサービス残業に当たるのかを正しく把握しましょう。

サービス残業の定義と「どこまで」が対象になるのか

サービス残業とは、法定労働時間を超えて労働をさせながら、本来支払われるべき賃金が支払われていない状態です。

「賃金不払残業」とも呼ばれ、時間外労働だけでなく、深夜労働や休日労働に対して適正な賃金が支払われないことも含まれます。

たとえ「従業員が自主的に残業している」「会社からの明示的な指示がない」といったケースでも、企業が残業を明確に禁止していない限り、残業代の支払い義務が生じる可能性があります。

法律で定められた「法定労働時間」は、休憩時間を除いて「1日8時間、1週間で40時間」です。*1

これを超える労働に対しては、原則として残業代を支払わなければなりません。

平成29年1月20日、厚生労働省(以下、厚労省)は労働時間を適正に把握することを目的として、企業向けのガイドラインを策定しました。*2

企業には、従業員の時間外労働の実態を正確に把握し、サービス残業を未然に防止する体制を構築することが求められます。

*1 厚労省「労働時間・休日」

*2 厚労省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

自主的なサービス残業と“本人の意思”の誤解

サービス残業において特に誤解されやすいのが、「従業員が自主的に残業している場合は、残業代の支払い義務は生じないのではないか」という認識です。

しかし、労働基準法では本人の意思は判断基準ではなく、企業側が労働時間の把握と管理を行う義務を負っています。

たとえ労働者が「自分の能力不足を補うために残っています」「申請すると迷惑がかかると思いました」と考えていたとしても、実際に業務を行っていれば残業代の支払い対象となります。

時間外労働がサービス残業に該当しないケース

ただし、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働であっても、特定の制度が適用される場合には、割増賃金の支払い義務が生じないこともあります。

代表的なものとして、管理監督者(部長や工場長など)や、事業場外労働のみなし労働時間制、裁量労働制が適用される従業員などが該当します。

①事業場外労働のみなし労働時間制と裁量労働制

営業職や専門職、企画職などでは、事業場外労働のみなし労働時間制や裁量労働制が適用されることがあります。

事業場外労働のみなし労働時間制は、外回りが多く実労働時間の把握が難しい場合に、一定時間を労働したものとみなす制度です。

裁量労働制は、仕事の進め方や時間配分を従業員の裁量に委ねる制度です。専門業務型と企画業務型があり、適用できる業務は法令で限定されています。

これらの制度では、みなし労働時間が法定労働時間内であれば残業代は発生しません。

ただし、休日労働や深夜労働については、実労働時間に応じた割増賃金の支払いが必要です。

参考:厚生労働省 兵庫労働局|裁量労働等(みなし労働時間)

②固定残業代制度の場合

雇用契約で「月20時間分の残業代を含む」などと定める固定残業代制度でも、一定時間までは別途残業代は発生しません。

ただし、定められた時間を超えて残業した場合は、超過分の残業代を支払う必要があります。

固定残業代を理由に残業代を一切支払わないのは違法です。

参考:厚生労働省リーフレット「固定残業代 を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」

「サービス残業」の英語や言い換え表現はある?

「サービス残業」は日本独自の言い回しであり、英語に完全に一致する単語はありません。

海外ではサービス残業という概念自体が問題視されるため、一般的には“unpaid overtime”(無給の残業)という表現が使われます。*

一方、日本語での言い換えとしては「未払い残業」「無給残業」「賃金不払残業」などが代表的です。

*参考:英辞郎 on the WEB|「サービス残業」の英訳・英語表現

サービス残業は日本だけ?日本における実態と発生する要因

サービス残業は多くの職場で問題になっていますが、その実態を正しく把握することは防止策を考えるうえで欠かせません。

日本では、労働者の相当数がサービス残業を経験しており、その背景には業務量の過多や組織文化の問題が関係しています。

ここでは、調査結果に基づく現状と、サービス残業が起こりやすい要因、さらに海外との比較を通じて日本特有の課題を整理します。

連合と厚生労働省による最新の調査結果

連合が2024年に実施した「『働き方改革』(労働時間関係)の定着状況に関する調査」によると、労働者の28.4%がサービス残業を行っており、1カ月当たりの平均時間は16.9時間に上ります。*1

また、厚労省公表の2024年度の監督指導結果では、2万2,354件もの賃金不払事案が報告されています。*2

*1 参考:連合「『働き方改革』(労働時間関係)の定着状況に関する調査2024」

*2 参考:厚労省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)」

サービス残業が発生する3つの要因

サービス残業は、企業による人件費抑制の方針、労働時間管理体制の不備、そして残業を容認しない職場文化という3つの要因が複合的に関与して発生します。

【サービス残業が起こる要因】

要因 具体的な問題
企業側の人件費抑制

業務量に対して従業員数が不足している

残業代の支払いを意図的に抑制している

不適切な労働時間管理

勤怠システムによる実態把握が十分でない

テレワークでの労働時間の線引きが曖昧になっている

管理職による労働時間の確認不足

残業申請を阻む職場環境

「残業は能力不足の証」という風潮

上司や先輩が残業していて帰りづらい雰囲気

業務量に見合わない残業時間の制限

このような状況を改善するには、適切な労働時間管理システムの導入や管理職への教育、そして企業文化の改革が不可欠です。

特に、残業を前提としない業務配分や、従業員が安心して残業申請できる環境づくりが重要となります。

サービス残業は日本だけなのか?海外の事情

サービス残業は日本特有の問題と思われがちですが、海外でも一定程度存在します。

国際比較を行った研究では、イギリス・ドイツ・オーストラリアなどの先進国であっても、管理職やホワイトカラーの労働者を中心に無給での時間外労働が確認されています。

ただし、日本におけるサービス残業の実態には、以下のような独自の傾向が見られます。

  • 非管理職であっても残業率が高く、一般社員まで長時間の無給労働が広がっている
  • 管理職のサービス残業率が際立って高い
  • サービス残業に費やす時間そのものが長く、慢性的な長時間労働につながりやすい

このように、サービス残業は海外にも存在するものの、日本では、より幅広い層において深刻化しやすい傾向があり、労働環境の抜本的な改善が急務とされています。

参考:日本労働研究雑誌 特集●違法労働 「違法労働」の国際比較

サービス残業の法的責任と罰則

サービス残業は労働基準法に違反する行為であり、企業には法的責任や罰則が科される可能性があります。

ここでは、企業の法的責任と罰則について解説します。

法的根拠と罰則

サービス残業をした企業は、労働基準監督署による調査や指導を受け、未払い賃金の支払いを命じられることがあります。

また、調査への非協力や労働時間の記録・保存の不備が確認された場合も、法令違反として行政指導や罰則の対象となりますので注意が必要です。

労働基準法では、以下の条文に基づき、サービス残業を明確に違法と規定しています。

【労働基準法が定めるサービス残業に関する罰則】

労基法の条文 内容
第32条 法定労働時間は休憩時間を除き1日8時間、1週間40時間まで
第37条 法定労働時間を超える労働、深夜労働、休日労働には割増賃金の支払いを義務付け
第119条1号 違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

労基法では労働時間と割増賃金について厳格に規定されており、違反した場合の罰則も明確に定められています。

企業に求められる対応

労働基準監督署の調査で不払い残業が発覚した場合、企業は次のような対応が求められます。

【企業が実施すべきサービス残業への対応】

対応項目 具体的な内容
未払い賃金の支払い 不払い残業分の賃金を速やかに精算
再発防止策の策定 具体的な防止策の立案と実施
労働時間管理の適正化 勤怠管理システムの導入や運用改善

残業は、労働基準法に基づいた適切な手続きを踏むことで、合法的に実施することが可能です。

ただし、従業員に残業をさせる場合は、時間外労働協定(36協定)の締結と届出が必要です。

そのうえで、協定で定めた範囲内に収まるよう、業務効率化や職場環境の整備に取り組まなければなりません。

残業時間の定義や36協定の詳細については、以下のコラムで詳しく解説しています。

コラム「残業時間の定義は?36協定・過労死ライン・削減アイデア」はこちら

サービス残業が当たり前の職場は危険!常態化しやすい状況をチェック

サービス残業による賃金未払いは、会社内外の信頼関係を損なう重大な問題です。

特に常態化すると、従業員の健康被害や企業の法的リスクにつながります。

以下の4つの観点から、自社の状況を定期的にチェックしましょう。

(1)残業を断りにくい雰囲気はないか

会社全体の方針や上司の命令で残業を前提とした働き方が常態化している場合、残業指示を受けた従業員は残業を断りにくくなってしまいます。

指示する側が、従業員の働き方を都合よく解釈し、自身の指示を「リーダーシップの発揮」と誤認しているケースも少なくありません。

適正な労働時間の管理を妨げるこれらの要因は、速やかに是正する必要があります。

(2)労働時間の管理がずさんになっていないか

企業側が労働時間の管理を怠っている環境も、サービス残業を助長します。

例えば、出退勤や残業時間を自己申告制のみで管理し、勤怠管理システムを導入していない場合、正確な労働時間の把握が困難になります。

自己申告制は、従業員による過少申告を助長するリスクがあります。

「残業時間が長いと能力不足と見なされる」「上司から残業を命じられても、一定時間以上の申告をすると怒られる」といった内外の圧力が発生するからです。

(3)残業を申請しづらい風土が定着していないか

「残業をするのは能力不足の証」「業務時間で終わらないなら、サービス残業するのは当たり前」といった風潮が、適切な残業申請を妨げる原因となります。

残業許可制を導入している企業でも、

「上司が残業時間を過少申告させる」

「残業しなければ終わらない業務量なのに、上司が残業を許可しない」

こうした事態が発生していないか、十分に確認してください。

(4)経営層のコンプライアンス意識は適切か

経営層の労働基準法に対する理解不足も大きな問題です。

法令を回避しようとする姿勢や、みなし残業代制度の誤解により、労働基準監督署からの指導を受けるケースが多発しています。

特に固定残業代を含む給与体系では、超過分の未払いに注意が必要です。

業界別に見るサービス残業の実態|サービス残業が当たり前になりやすい職種とは

サービス残業は、特定の企業だけで起きる問題ではありません。

業界ごとに業務量や勤務形態の特徴があり、その結果、無給の時間外労働が常態化しやすい職種も見受けられます。

ここでは、サービス残業が発生しやすい代表的な業界と、その背景にある要因を取り上げます。

飲食業

飲食業は、サービス残業が特に多い業界として知られています。

客の来店状況によって業務量が大きく変動するため、休憩が取れなかったり、閉店後の片付けや仕込み作業が長引いたりしやすく、定時で業務を終えることが難しい職場環境が根本にあります。

とりわけ、店長や管理職層においてはサービス残業の負担が一層重くなる傾向が見られます。

ドライバー

ドライバー職は、もともと長時間労働が多い業界として知られており、サービス残業も発生しやすい職種です。

業務が交通状況、荷待ち時間、再配達などの外部要因に強く左右されるため、計画どおりに業務が進まず、勤務時間が延びてしまうケースが多くあります。

構造的な長時間労働が背景となり、ドライバーの健康被害や物流業界の持続可能性が問題視され、労働時間を規制する働き方改革法案が生まれました。

一方で、規制導入によりドライバーの収入減少や人手不足の深刻化といった「2024年問題」が新たな課題として顕在化しています。

慢性的な人手不足のため、1人当たりの配送量が増えることで、依然として時間内に仕事を終えにくい状況も残っています。

参考:東北運輸局|物流の「2024年問題」とは

保育・介護職

保育・介護職は、業務の性質上「予定通りに終われない」という特徴があり、サービス残業が発生しやすい職種です。

保育現場では、保護者の迎えが遅れた場合に延長対応が必要となり、結果として勤務終了時刻が後ろ倒しになるケースが発生します。

介護の現場では、利用者の体調やケアの内容によってスケジュールが変動し、時間通りに業務を切れないことが多くあります。

排せつ介助や移動補助が重なるとシフトを大幅に超えてしまうことも珍しくありません。

また、どちらの業界も慢性的な人材不足が深刻で、1人にかかる負担が大きくなっています。

過去のサービス残業の残業代を請求されたら?

企業が従業員から過去のサービス残業に対する未払い残業代を請求された場合、適切な対応を行うことが重要です。

ここでは、サービス残業の残業代の考え方、強要か自主的かの判断ポイント、そして労基署が関与する際の流れについて詳しく解説します。

サービス残業の残業代とは

サービス残業の残業代とは、実際に働いたにもかかわらず支払われていなかった時間外労働分の賃金を指します。

残業代を計算する際は、所定労働時間を超えた分の賃金だけでなく、深夜割増や休日割増が適用される場合も含まれます。

さらに、残業代の請求は原則3年遡ることが可能で、複数年にわたる場合は企業側の負担が大きくなることがあります。

そのため、請求を受けた際には、まず事実関係と労働時間の確認を行い、未払いが明らかであれば速やかに支払う姿勢が求められます。

企業としては、証拠をもとに正確に計算し、適切に対応することが重要です。

サービス残業は強要か自主的か?判断と考え方のポイント

サービス残業が企業の強要によるものか、労働者の自主的な行動なのかは、企業にとって重要な争点になります。

ただし、労働基準法においては、「自主的に行った残業」であっても賃金支払い義務が免除されることはありません。

ポイントは、企業が労働時間を適切に管理していたかどうかにあります。

たとえ労働者が「自分の判断で残った」「申請する雰囲気ではなかった」と述べていても、業務量が過大であったり、上司が暗黙に残業を期待していたりすれば、実質的には企業の管理不足と見なされます。

つまり、「強制されたかどうか」ではなく「働いた事実」と「企業の管理体制」が判断の基準となるため、企業は日頃から業務量の調整と勤怠管理を徹底する必要があります。

労基署の役割と企業の対応

サービス残業に関する問題が労働者と企業の間で解決できない場合、労働基準監督署(労基署)が重要な役割を果たします。

労基署は、労働基準法違反の疑いがある企業に対して調査を行い、事実が確認されれば是正指導や改善勧告を行います。

調査では、勤怠データ、パソコンのログ、シフト表などの提出が求められ、企業の労働時間管理が適切だったかが厳しく確認されます。

もし未払い残業が認められれば、企業には未払い分の支払いとともに、再発防止策の実施が求められます。

重大な法令違反が認定された場合には、書類送検や刑事罰に発展するリスクも否定できません。

企業が請求を受けた際は、感情的に対応せず、事実関係を整理したうえで誠実に説明することが重要です。

労基署からの是正指導を軽視すれば、企業の社会的信用の失墜や行政処分につながる可能性があるため、改善計画を作成し、組織として労働環境の見直しを進める姿勢が求められます。

サービス残業防止に向けた企業の対策

サービス残業をなくすには、適切な労働時間の管理が不可欠です。

厚労省のガイドラインには7項目記載されています。ほかにも、社内での成功事例の蓄積、研修や啓蒙の実施など、様々な施策が可能です。

厚労省が定める労働時間管理の7つのポイント

労働時間を正確に管理するには、厚労省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に示された施策の理解と実施が重要です。*

まずは、以下の7つのポイントを確実に実施し、適切な労働時間管理を徹底していきましょう。

*参考:厚労省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関するガイドライン」

①始業・終業時刻の確認・記録

1つ目は、労働者の始業・終業時刻を厳格に管理することです。

各従業員の毎日の始業・終業時刻を正確に記録し、確実に保管しておきましょう。

②始業・終業時刻の確認および記録の原則的な方法

従業員の労働時間の確認・記録においては、

  • 企業側(使用者)が自ら現認することにより確認し、正確に記録する
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な記録をもとに確認し、記録する

という2つの方法が基本です。

「口頭で報告するだけ」「使用者や労働者の都合に合わせてデータを改ざんする」といったことがないよう注意してください。

③自己申告制により始業・終業時刻の確認および記録を行う場合の措置

外回りの営業職や在宅勤務など、タイムカードやICカード、パソコン使用時間による記録が難しいケースで自己申告制を導入する場合、適用対象となる従業員と管理者に対して、以下の項目を十分に説明しなければなりません。

  • 労働時間とは何か
  • 自己申告制の具体的な内容
  • 正しい記録と適正な自己申告の重要性
  • 適正な自己申告を行った場合、不利益な取扱いは行われないこと

自己申告と入退場やパソコン使用時間の記録に食い違いが見られる場合は、実態調査を行う必要があります。

自己申告した労働時間を超えて事業場にいた時間については、その理由が休憩や自主的な研修などであっても、実際には使用者の指示で行っていた場合は労働時間として扱わなければなりません。

自己申告できる残業時間に上限を設けたり、上限を超える申告を認めなかったりなどの阻害要因がないかどうかも、しっかりチェックしましょう。

④賃金台帳の適正な調整

労基法第108条および同法施行規則第54条により、会社は労働者ごとに

  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 休日労働時間数
  • 時間外労働時間数
  • 深夜労働時間数

などの項目を正しく記入しなければなりません。

賃金台帳にこうした項目を適切に記録していないと、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

⑤労働時間の記録に関する書類の保存

労基法109条により、労働者名簿や賃金台帳とともに、出勤簿や労働時間の記録に関する書類(法定三帳簿)には保存義務があります。

2020年4月の法改正により、保存期間は3年から5年へ延長されました。ただし、経過措置として当分の間は3年間の保存期間が適用されます。

違反した場合、これも同法第120条により、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

⑥労働時間を管理する者の職務

人事・労務担当者や各部署の責任者は、従業員の労働時間を適正に把握し、管理しなければなりません。

労働時間の定義を理解したうえで、

  • 職場における各従業員の労働時間を正確に把握する
  • 過度な長時間労働が続いている場合は対策を講じる
  • 労働時間管理を行う中で課題が生じた場合、その解消に向けた取り組みを行う

といった取り組みを行い、従業員が残業申請をしやすい環境を整備しましょう。

⑦労働時間等設定改善委員会等の活用

労働時間の現状や管理上の課題を把握し、改善するためには、労働時間等設定改善委員会など労使協議組織の活用も有効な手段です。

労使協議組織を通じて、労働時間管理に関する問題点や改善策を検討できます。

おすすめの施策と研修内容・啓発方法

サービス残業の背景には、長時間労働の常態化がしばしば見受けられます。残業前提の働き方自体を見直す必要があるでしょう。

企業文化の更新や環境整備に向けて、例えば

  • 成功事例作りと啓発
  • タイムマネジメント研修

に取り組むことをおすすめします。

成功事例作りと啓発

長時間労働が常態化している職場では、小規模なプロジェクトから改革を始めることが効果的です。

全社的な改革よりも、まずは「お手本」となる成功事例を作ることで、従業員の意識改革を促せます。

長時間労働の是正においては、以下の手順で進めるとよいでしょう。

【プロジェクトの進め方】

ステップ 実施内容
分析 少人数のプロジェクトチームで働き方を分析
実行 長時間労働是正に向けた具体的な施策の展開
改善 残された課題への取り組み
共有 数カ月〜1年の成果を社内で共有

このプロセスを成功させるには、人事・労務管理部門による継続的なサポートが不可欠です。

成功事例を社内報やポータルサイトで公開し、働き方改革の研修でも活用することで、より効果的な啓発活動が実現できます。

他の従業員が具体的な改善方法を学び、実践することで、最終的には全社的な意識改革へとつながるでしょう。

タイムマネジメント研修の実施

長時間労働を減らすには、業務の効率化も必要です。その効果的な手段として、タイムマネジメント研修の実施をおすすめします。

タイムマネジメント研修は、次の3つのステップで進めましょう。

  1. ①タイムマネジメントの高低による違いを具体的に理解する

    ②タイムマネジメントの7つの要素を習得する

    • 時間の使い方に対する意識改革
    • 手帳や時間管理ツールの効果的な活用
    • 整理・整頓の実践方法
    • 上司・関係者とのコミュニケーションとメモ術
    • タスク管理と所要時間の把握
    • 業務の振り返りと翌日の準備
    • 定期的な業務改善の実施

    ③実務への応用と時間配分の見直しを行う

人材育成担当者や管理職は、従業員一人ひとりが効率的に業務を遂行できるよう、継続的にサポートすることが重要です。

サービス残業解消に向けた企業の取り組み事例

最後に、サービス残業をなくすための企業の取り組み事例を2つご紹介します。

違法性の認識の定着と、適正な労働時間の管理体制の整備がポイントです。

事例1:勤怠管理システムの導入による改善

A社では、従業員による始業・終業時刻の自己申告制を採用していましたが、パソコンの使用記録との大きな乖離が判明し、労働基準監督署から指導を受けました。

A社が実施した改善策は、次の3つです。

  1. ①自己申告制を廃止し、勤怠管理システムを導入することで、始業時刻・終業時刻を適正に記録できるようにした
  2. ②従業員に対して、時間外労働を実施した場合は全て申請するよう説明し、環境整備を行った
  3. ③企業風土や人事制度の改革に向けてプロジェクトチームを立ち上げ、時間外労働の削減を含む対策を講じた

事例2:残業時間の定期チェック体制の確立

B社では、勤怠管理システムを導入していたものの、残業時間は自己申告制となっていました。

その結果、「一定時刻以降の残業に対して残業代が支払われない」事態が発生し、労働基準監督署の指導対象となりました。

B社が実施した改善策は、次の3つです。

  1. ①自己申告制を廃止し、勤怠管理システムを導入することで、始業時刻・終業時刻を適正に記録できるようにした
  2. ②労働時間を適正に記録するよう社内教育を徹底し、必要な残業が発生した場合は必ず申告するよう説明した
  3. ③人事担当部署が出退勤時刻と残業申請に食い違いがないか毎日確認し、食い違いがあった場合は従業員本人にヒアリングを行う体制を整備した

「残業時間は残業申請で把握する」という体制は、B社に限らず、サービス残業で労働基準監督署から指導を受ける多くの企業に共通する問題です。

サービス残業の放置は送検につながる可能性もあります。人事・労務担当者は、確認漏れを防ぐために、毎日のチェックを徹底しましょう。

事例3:サービス残業を当たり前にしない組織風土の改革

サービス残業の根本的な解消には、制度の整備だけでなく、組織風土の改革が必要です。

C社では以下のような改善策を実施しました。

  • トップが「サービス残業を一切認めない」という姿勢を明確に示し、全社員に向けて繰り返しメッセージを発信
  • 管理職に対しては労働時間管理の研修を実施
  • 管理職から部下の業務量の把握と声かけの徹底
  • 成果を出すために長時間働くのではなく、「効率的に働くこと」を評価する制度に見直した

こうした取り組みにより、社員同士が「早く帰っていい」「申請して問題ない」という認識を共有するようになり、サービス残業が常態化しない健全な組織文化が形成されました。