「休職したい」と言われた!休職中の給料・社会保険料と復帰への流れ

update更新日:2025.05.09 published公開日:2024.01.26
「休職したい」と言われた!休職中の給料・社会保険料と復帰への流れ
目次

休職とは、労働者が主に自己都合によって長期間仕事を休むこと。雇用関係を維持したまま就業が免除される制度です。休職理由は様々ですが、業務外のケガや病気で働けなくなった場合に取得する「傷病休職(私傷病休職)」がよく知られています。

本コラムでは、休職の意味、欠勤・休業制度との違い、休職制度の主な種類、休職中の給与・傷病手当金・社会保険料、休職の準備から復帰までの手続きなどについて解説します。

休職とは?意味と欠勤・休業との違い

休職とは、企業が従業員との雇用契約を維持したまま、何らかの理由で一定期間仕事を免除することです。まずは、休職の意味や概要、欠勤・休業との違いを見ていきましょう。

休職の意味

休職とは、長期間にわたって働けなくなった従業員から事前に届出を受けて、会社側と合意(あるいは会社側からの命令)によって、一定期間仕事を休む(就労義務を免除する)ことです。

休職制度が設けられている意味は、「長期間休んでも解雇せず、復職を待つ」ことにあります。休職制度があることで、従業員は安心してケガや病気の回復に努めたり、仕事以外の活動に専念できたりします。

会社側のメリットとしては、一定期間働けない従業員が出るたびに採用活動を行う必要がなく、復職後に改めて会社の一員として働いてもらえる点にあります。ボランティア活動や公職就任、他社への出向、留学などで休職していた従業員の場合、復職後は新たな経験・知見を携えて活躍してくれるでしょう。

休職に法律上の定めはありません。企業にとって休職を認めることは義務ではないということです。したがって、休職制度を設けるか否か、どのような休職制度にするかは企業ごとに異なります。

とはいえ、近年はうつ病などのメンタルヘルス問題や、スキルアップ、リフレッシュなど、様々な事由に対応するため、休職制度を導入する企業が増えています。「傷病休職(私傷病休職)」が、その代表例です。

なお、休職制度を設けた場合は、労働基準法第15条第1項の規定により、就業規則に明記しなければなりません。そのため、自社の休職制度を知りたい場合は、まずは就業規則を確認しましょう。

休職と欠勤の違い

「仕事を休む」という意味で、休職制度は欠勤と似ています。では、長期欠勤と休職の違いは、何でしょうか。

そもそも欠勤とは、出勤すべき日(所定労働日)に従業員側の都合で休むことを意味します。具体的には、従業員が無断で出勤しないことや、有給休暇を全て消化したあとに休む場合などです。

他方、休職では、事前に会社側の担当者と従業員で休職に関する合意形成が図られます。

休職と欠勤の大きな違いは、事前申請の有無です。休職は、従業員と企業の合意によって計画的に行われるのに対し、欠勤は予期せず起こることが一般的。そして、無断での長期欠勤は懲戒処分の対象になり得ますが、休職では会社側が従業員の就労義務を免除しているため、懲戒の対象とはなりません。

コラム「無断欠勤の原因とは?会社の対応と懲戒処分の注意点」はこちら

休職と休業の違い

休職・欠勤より区別しにくいのが、休職と休業の違いです。両者の共通点は、本来勤務すべき日に就労義務を免除することが一定期間継続すること。違いは、法的根拠の有無です。

休業には以下2つのパターンがあります。

  • 労働基準法26条に基づく会社都合の休業(使用者の責めに帰すべき事由による休業)
  • 特定の法律に基づく休業(産前産後休業・育児休業・介護休業)

会社都合の休業とは、具体的には次のようなものです。

【会社都合による休業の理由(例)】

  • 原材料などの供給不足による休業
  • 設備の点検や故障などによる休業
  • 経営不振などによる休業
  • 監督官庁の要請などによる休業

したがって、簡単にいえば「休業には法律上の定めがあるが、休職には法律上の定めはない」ということになります。休業の場合、取得条件を満たす労働者から申し出があったら、会社側は拒否できません。さらに、法律に定められた休業や会社都合の休業では給付金・手当が発生する点も、原則無給である休職とは大きく異なる点です。

アルバイト・パート・契約社員も休職できる?

アルバイトやパートの従業員、契約社員が休職できるか否かは、会社の就業規則によります。アルバイト・パートや契約社員用の就業規則がある場合は、それを確認しましょう。

同一労働同一賃金の原則により、正社員に休職制度があり、その正社員と同等の業務を行っている場合は、アルバイト・パート・契約社員にも休職が認められなければなりません。

しかし、現実的には業務の範囲や負うべき責任の範囲などを理由として、なかなか休職は認められないようです。特にアルバイト・パートの従業員については、休職制度自体がないケースも見られ、「長期休職になる場合は一度退職する」という流れが多いようです。

休職の種類

休職制度には、休職の理由に応じて様々な種類があります。今回は、次の7種類の休職制度をご紹介しましょう。

  • 傷病休職(私傷病休職)
  • 自己都合休職
  • 事故欠勤休職
  • 起訴休職
  • 組合専従休職
  • 公職就任休職
  • 出向休職

また、本来の休職制度とは異なりますが、懲戒処分として実施される休職についても解説します。

傷病休職(私傷病休職)

傷病休職(私傷病休職)とは、業務外の理由による病気やケガの療養を目的とする休職制度です。長期にわたる入院・療養や、抑うつ状態といったメンタルヘルス不調のために長期間働けない場合などに活用されます。

傷病休職の休職期間は企業によって異なり、勤続年数によって休職可能期間を設定しているケースも見られます。労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によれば、私傷病休職制度を就業規則に定めている企業で取得できる休職期間の上限で最も多かったのは「6カ月超から1年未満まで(22.3%)」、次いで多いのが「1年超から1年6カ月まで(17.2%)」でした。*

なお、私傷病と区別すべきものに労働災害による病気やケガがあります。労働災害の場合は労災保険が適応され、保障内容も異なりますのでご注意ください。

*出典:労働政策研究・研修機構(JILPT):「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

自己都合休職

病気やケガ以外に従業員自身の都合で休職する場合、多くは「自己都合休職」になります。具体的な理由は多様で、留学やボランティア活動、学業への専念などがあります。

自己都合休職は、企業によってオリジナリティのある名称で導入されるケースもあるでしょう。例えば「キャリアデザイン休職」「サバティカル休職(休暇)」などです。

【自己都合休職の例】

名称の例 主な理由・特徴
海外留学休職 語学やビジネスを学ぶための留学を理由とする休職
キャリアデザイン休職

学校への通学やボランティア活動、留学・ワーキングホリデーなどを理由として、キャリアブレイクを図るための休職

(配偶者の転勤への同行を理由とする場合もある)

サバティカル休暇(休職) 休職理由を全く問わない休職

なお、自己都合休職の場合、休職中は原則として無給です。会社の休職制度に手当の設定がない限り、休職手当なども支払われません。

事故欠勤休職

事故欠勤休職は、病気やケガ以外の理由による自己都合の休職という点で、前項の自己都合休職と似ています。ただし、事故欠勤休職は、従業員が容疑者として逮捕された場合などに活用されるものです。

滅多に使われる機会がないことや、自己都合休職または次項の起訴休職を活用する方法もあるため、事故欠勤休職制度自体を設けていない会社も珍しくありません。

起訴休職

起訴休職は、従業員が刑事事件で起訴された場合に取得される休職です。起訴されると、警察に身柄を拘束され、会社で働くことができないケースが出てきます。こうした事態に対応するための休職制度です。

起訴休職が導入されているかどうかは、やはり企業によって異なります。適用基準も企業それぞれに異なり、起訴休職ができる会社であっても起訴された労働者が業務できる状態であれば休職を適用しない場合もあります。

組合専従休職

組合専従休職は、労働組合の組合専従者となった従業員が、会社との雇用関係を維持しながら組合の業務に専念するための休職制度です。通常、組合の業務は勤務時間外に行われますが、組合専従者の場合は勤務時間内に実施します。

組合専従休職の休職期間は、その従業員が組合専従者である期間です。

組合専従休職の場合、休職中の給与は組合費から支給されます。会社側から給与を支払うと、法律によって禁止されている「経費援助」に当たると考えられ、違法とされる可能性が高くなります。

公職就任休職

公職就任休職は、従業員が公職に就任した場合に取得される休職です。典型的には、国会議員や地方議員、都道府県知事、市町村長への就任があります。こうした公職の業務を行うには、その時間を確保しなければなりません。その結果、会社の業務遂行が困難になり、休職が必要となるという事情です。

「公職に就いたのであれば退職すればいい」と考える経営者もいるかもしれません。しかし、労働基準法第7条では、労働者が公の職務を執行するために必要な時間を会社に請求した場合、会社はこれを拒めないという公民権行使の保障を規定しています。第7条違反とならないよう、公職に就いた従業員には、その公務のための適切な時間確保を認めましょう。

なお、従業員が裁判員に選ばれた場合は、公職就任休職ではなく、裁判員休暇を与えます。裁判員休暇中の給与を支払うべきか否かは各企業の判断に委ねられています。2022年の時点では、約6割の企業が裁判員休暇を有給としていました。*

*出典:「裁判員等に選ばれた従業員をサポートするために裁判員休暇制度を導入しましょう」(厚生労働省)

出向休職

従業員が自社に在籍したまま他社へ出向する場合、出向休職を適用します。他社への出向中は自社での業務ができませんが、その従業員との雇用関係は残していくというものです。

出向休職の休職期間は、出向期間と同じです。

出向休職は会社都合の休職であるため、休職中の給与や勤続期間については、従業員に不利益が発生しないようにしなければなりません。特に給与の支払いに関しては、出向元と出向先でよく協議し、社会保険料の負担もあわせて決定する必要があります。

懲戒休職(出勤停止・自宅謹慎)

最後に、懲戒処分による休職について簡単にご紹介しましょう。

懲戒による休職は、他の休職制度とは異なり、会社の服務規律違反を理由とする休職です。制裁として従業員に命じる休職ですので、就業規則の懲戒処分に関する項目(出勤停止や自宅謹慎)に、どのようなルールで実施するのかを記載しておかなければなりません。

懲戒による休職期間は、会社側が決定して従業員に通知します。

休職率とメンタルヘルス不調による休職者数の推移

休職制度は複数ありますが、その中で特に活用が多いものが傷病休職でしょう。近年耳にすることが多いメンタルヘルス不調(抑うつ状態や適応障害など)を理由とする休職でも、この傷病休職制度が使われています。

労働力調査で2023年の年間平均を見ると、休業者数は全体で189万人(自営業主を含む)。2019年まで増加傾向にあり、2020年のコロナ禍で258万人にまで増加した後、やや減少しました。*1

2023年の就業者数は年間平均で6,747万人のため、「休業率=休業者数÷就業者数×100」とすると、休業率は約2.8%となります。

一方で、厚生労働省による「労働安全衛生調査(実態調査)」(対象期間:2022年11月1日〜2023年10月31日)の概況を見ると、「メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者」がいた事業所の割合は、10.4%。約1割の事業所で、メンタルヘルスを理由とする休職者が出たという結果でした。「連続1カ月以上休業した労働者」の割合は0.6%、退職した労働者の割合は0.2%となっています。*2

つまり、従業員数300人規模の企業であれば、1〜2人の従業員がメンタルヘルスの不調を理由に1カ月以上の休職をしているに等しい状況です。

*1 出典:「第1-(2)-3図 労働力に関する主な指標の推移」(厚生労働省)

*2 出典:「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)

休職の条件と手続きのポイント

では、従業員から「休職したい」と言われた場合、会社としてどのように対応すればよいのでしょうか。ポイントは、就業規則による休職の条件の確認と、休職を希望する従業員との合意です。

休職の条件

休職制度は法律で義務付けられているものではないため、会社によっては休職制度自体が存在しないこともあります。また、休職制度を導入している場合でも、休職できる条件に雇用形態・勤続年数(勤続日数)・出社率などを定めているケースも少なくありません。

もし自社に休職制度を設けるなら、その条件や期間、給与などの支払について就業規則に明記する必要があります。

そのため、休職を検討する従業員やその上司、休業の相談に応じる担当者は、こうした規定をよく確認し、手続きを進めましょう。

休職の手続き・流れ(傷病休職の場合)

具体的な休職のための手続き・流れは、休職の種類によって異なります。そこで、今回は自己都合の休職で多く活用されている傷病休職のケースを見ていきましょう。

傷病休職の大まかな流れは、以下のようになります。

【傷病休職の開始から復職までの流れ】

  1. ①従業員が医師の診断書を取得する
  2. ②従業員が診断書を添えて休職の希望を担当者に伝える
  3. ③会社と従業員で話し合う
  4. ④休職届の提出・受理を行う
  5. ⑤会社側と従業員で協力して業務の引き継ぎなどを行う
  6. ⑥休職開始(休職中は定期的にコミュニケーションをとる)
  7. ⑦休職期間の後期に、復職に向けた準備を行う
  8. ⑧復職する

休職診断書の取得

傷病休職に当たって最初に行うのは、休職を希望する従業員が医師から診断書(休職診断書)の取得です。これは、従業員が実際に治療などで通う病院の医師に作成を依頼します。

休職診断書の取得・提出については、法律上の定めはなく、必ず取得しなければならないものではありません。ただ、休職診断書があれば、会社側はその従業員に休職が必要であるか否かを判断しやすくなります。そのため、診断書の取得・提出を就業規則で義務付けている企業が多いようです。

休職診断書を取得できたら、従業員は診断書を添えて担当者に休職したいことを伝えます。担当者は、具体的には上司の場合もありますし、就業規則などで定められた窓口の場合もあります。

休職のための相談・休職届の受理

従業員から休職の希望が出たら、会社側の担当者とその従業員で就業規則の読み合わせや社会保険料・住民税の支払い方法、休職期間中の連絡などの確認を行ってください。

就業規則の読み合わせでは、取得できる休職期間や休職中の待遇(賃金・賞与・手当の支払など)を確認します。社会保険料や住民税の支払い方法に関しては、多くの場合、従業員自身に支払い手続きを行ってもらうことになります。

休職期間中の連絡に関しては、連絡窓口と連絡方法、連絡の頻度を従業員側の希望を尊重しながら決定することが重要です。メンタルヘルス不調による休職の場合、会社との連絡自体が大きな負担となり、回復を妨げる恐れがあります。まずはしっかり休養・回復できる環境を優先しましょう。

なお、休職中の健康状態の変化を確認するため、定期的に産業医面談を実施する企業もあります。特に休職が長期に及ぶ場合、医師の目で確認することは、復職準備の適切なタイミングを見極めるために欠かせません。従業員側の大きな負担とならないスケジュールで面談の予定を立てておき、休職中の状況に応じて再調整するとよいでしょう。

ここまでの準備ができたら、従業員に休職届を提出してもらい、会社がこれを受理します。この手続きによって、休職の取得が確定します。

休職の確定後、もし可能であれば、従業員と会社側(配属部署など)で話し合いながら、業務の引き継ぎを行いましょう。従業員側に余裕がない状態であれば、配属部署の管理職が主導して調整します。人手が不足する場合は、業務の外注も視野に入れましょう。

休職中のコミュニケーションと復帰準備

休職開始後は、休職中の従業員の負担にならない範囲で定期的なコミュニケーションをとります。どのようなコミュニケーションがよいかは人それぞれですが、職場で進んでいるプロジェクトの状況や同僚たちの様子など、“職場の今”がわかる内容を含めると、休職者の孤独感を和らげられるでしょう。

健康状態の回復が進んで職場復帰が視野に入ってきたら、会社側と休職中の従業員とで復職に向けた相談を始めます。従業員本人の同意があれば、主治医に状況をヒアリングすることも可能です。

主治医や産業医から復職許可が出た場合は、無理のない範囲から職場復帰を進めてください。

復職の成功には、「リハビリ出勤制度(試し出勤制度)」なども有効です。リハビリ出勤制度とは、スムーズな職場復帰のために、本確定菜復帰の前に段階的な出社・勤務を行うこと。はじめは自宅から会社までの往復だけ、次は出社して職場で1〜2時間作業をするだけといったようなやり方です。*

*参考:「第6回 復職前の試し出勤時の労災補償や傷病手当金等の注意点は?」(こころの耳)

休職期間中の給与・賞与は?傷病手当金(休職手当)や休職保険とは

休職に際して会社側も労働者側も気になるのが、給与・賞与の支払いです。

休職する従業員にとっては家計に直結する問題ですので、休職中の収入の見通しを立てておきたいところ。その不安に対して適切な対応ができるよう、会社側の担当者も事前によく確認しておきましょう。

休職期間中は原則として給与なし

仕事を長期間休む場合、休職中の従業員は「お金がない」という状況に陥る恐れがあります。もし休職期間中に給与が出れば、安心して過ごせるでしょう。

しかし、業務外での病気・ケガや労働者側の自己都合で休職する場合、休職中の給与を支払う義務は会社側にはありません。これは民法第624条の「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」という規定、つまり、働いたら支払う、働かなかったら支払わないという「ノーワーク・ノーペイの原則」によるものです。

したがって、休職中は原則無給となります。実際、労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査結果では、病気休職期間中の月例賃金について「支給されない」と回答した企業が74.8%と多数派でした。*

ただし、同調査結果を企業規模別に見ると、「支給する」と答えた企業の割合は従業員数300人未満の企業では2割未満だったのに対し、従業員数1,000人以上の大企業では38.3%となっています。休職中の給与支払の有無は、会社の方針で大きく変わるといえるでしょう。

*出典:労働政策研究・研修機構(JILPT):「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」

休職中のボーナス(賞与)支払いも義務ではない

休職期間中のボーナス(賞与)については、2つの点を確認する必要があります。

1つ目は、そもそもボーナスが出る会社か否かということ。ボーナスの支給に法的義務はないからです。ボーナスが出る場合は、就業規則にその旨の定めがありますので、確認してください。ボーナスを出していない会社の場合は、当然ながら休職期間中もボーナスはありません。

2つ目は、通常はボーナスが出る会社の場合で、休職期間をボーナスの算定対象期間に含めるか否かということです。基本的には、ノーワーク・ノーペイの原則により、休職期間を算定対象期間にはしないと考えられます。よって、ボーナスの算定対象期間の全てを休職している場合はボーナスゼロ、一部期間のみを休職していた場合は、その日数に応じた金額に減額されると考えましょう。

傷病手当金の給付を受けられる可能性あり

上述の通り、休職期間中は原則無給・ボーナスゼロとなる可能性が非常に高くなります。しかし、それでは休職中の従業員は安心して休めません。ここで、「傷病手当金」の受給が可能か否かを検討する必要があります。

傷病手当金とは、健康保険に加入している従業員の生活を保障するための制度です。業務外での病気・ケガで4日以上休んだ場合、その休んだ日数に応じて一定の金額が支給されます。「休職手当」と呼ばれることもあります。

傷病手当金として支払われる金額は、直近1年間の標準報酬月額の平均額から算出した1日あたりの金額の6割。その計算式は、以下のようになります。

【傷病手当金で受け取れる金額(日額)】*

直近1年間の標準報酬月額の平均額÷30×(3分の2)

上記で算出された日額は10円未満が四捨五入されます。そのため、標準報酬月額が17万円の場合は、1日あたり3,780円が支払われる計算です。

ただし、傷病手当金の受給には条件があります。それは、会社から全く給与が支払われていないか、少ない金額しか支払われていないことです。休職期間中、全く給与が支払われていない場合は、上記の計算式に基づく金額が支払われます。少ない金額しか支払われていない場合は、上記の計算式による日額との差額が支払われます。

傷病手当金の支給期間の上限は、通算で1年6カ月です。

もし、上記計算式による日額より多い金額を会社から支給されている場合は、傷病手当金の支給は受けられません。

*出典:全国健康保険協会「傷病手当金について」

就業不能保険(休職保険)とは

傷病休職中の主な収入源には傷病手当金が考えられますが、支給される期間は通算で最大1年6カ月。それ以上の期間に及ぶ場合は、やはりお金の心配が出てきます。そこで、労働者が自身の判断で事前に加入できる民間の保険として、就業不能保険(休職保険)などが選択肢に入るでしょう。

就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなった場合に備える保険。働けない期間がどのくらい続けば給付金が支払われるかは、保険によって異なります。期間に関する条件がなく、休職開始後すぐに支払われるプランもあれば、30日以内の休職や60日以内の休職では支払われないプランもあるため、加入の際はよく確認しなければなりません。

加入を検討する労働者は、家計の状況などを考慮して決定することになります。

休職中の社会保険料・雇用保険料・住民税の支払い

休職期間中のお金の問題として、社会保険料や雇用保険料、住民税の支払いも会社側と休職する従業員とで確認する必要があります。

まずチェックすべき点は、休職中でも社会保険料は免除されないことです。通常通り会社負担分と労働者負担分の両方が発生します。

休職期間における社会保険料の支払い方法は、給与からの天引きができませんので、別途支払い手続きが必要です。具体的に考えられる主な方法は3つあります。

【休職期間中の社会保険料の支払い方法】

  • 傷病手当金を受給している場合、傷病手当金を会社で受け取り、そこから天引きする(事前に本人の同意と一定の手続きが必要)
  • 休職している労働者に毎月請求書を発行し、会社に保険料を振り込んでもらう
  • 休職期間中の労働者負担分の保険料を会社が立て替え、復職後に休職者に請求する(復職せず退職になった場合、回収が難しいことに注意が必要)

住民税については、税額が前年の所得に基づいて算出されるため、休職期間中であっても減免はありません。いつも通りの支払いが必要ですので、長期休職になるケースでは、普通徴収に切り替える企業が多く見られます。社会保険料と同様に会社が立て替え、復職後に請求する方法も考えられます。

【休職期間中の住民税の支払い方法】

  • 普通徴収に切り替え、休職者自身に自治体から送付される納付書を使って支払ってもらう
  • 休職期間中の労働者負担分の保険料を会社が立て替え、復職後に休職者に請求する(復職せず退職になった場合、回収が難しいことに注意が必要)

労働保険の1つである雇用保険に関しては、雇用関係が継続している限り、その従業員は雇用保険の被保険者となります。そのため、通常であれば休職しているか否かを問わず保険料が発生します。

ただし、休職期間中に給与が支払われていない場合は、その期間の雇用保険料を支払う必要はありません。保険料の計算式が「給与額×保険料率」であるため、給与額がゼロである場合は保険料もゼロになるからです。

休職から復帰後のフォローには管理職による理解が重要

休職していた従業員が職場復帰をする段階では、会社側のフォローが大変重要です。特にメンタルヘルス不調による休職の場合、「自分の都合で周囲に迷惑をかけた」と感じ、「復帰するのが怖い」「戻りづらい」などの気まずい思いを抱えていることが少なくありません。こうした気持ちのままでは、職場復帰をしても再び精神的なストレスを抱え、休職を繰り返す可能性があります。

休職していた従業員が復帰しやすい環境を整えるには、次の3点を意識するとよいでしょう。

  • 復帰する職場内での復職時の対応・配慮事項や復職後の業務について情報共有を行う
  • 復職する本人に対して、現在の職場でどのようなプロジェクトや業務が進んでいるのかを共有する
  • 復職後にどのような業務を任せたいのかを伝える

復職後の担当業務については、本人との話し合いも大切です。特にメンタルヘルス不調やハラスメントが休職理由である場合、もとの職場に戻りづらい状況が残っている可能性があります。再発防止に向けた職場改善を行うとともに、本人にとって負担が少ない業務・職場について話し合い、必要に応じて配置転換を実施してください。

また、完全に仕事を休んでいた状態からいきなり本格復帰をすると、生活の急激な変化で心身に大きな負担がかかります。そのため、先述したリハビリ出勤制度の活用も視野に入れましょう。本人の希望を考慮しつつ、短時間勤務などから段階的に復帰へつなげれば、職場のメンバーも本人も、少しずつ慣れていくことができます。

こうした休職からの復帰をフォローするには、現場で対応する管理職からの理解が欠かせません。管理職が部下のメンタルヘルス不調対策を行うことが、休職の再発防止につながるからです。

多くの企業で人材育成をご支援してきたALL DIFFERENTでは、管理職の方々を対象とするメンタルヘルス研修をご提供しています。部下が安心して働ける職場づくりに、ぜひお役立てください。

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