フィードバックとは?意味と効果、ビジネスでの使い方と注意点



フィードバックは、相手の行動や成果に対し、評価や改善点を伝えるコミュニケーション手法です。現在、ビジネスや教育など幅広いシーンで活用されており、特に人材育成において重要な役割を果たしています。
本コラムでは、フィードバックの意味や効果、ビジネスで活用するコツ、注意点をわかりやすく解説します。
フィードバックとは
はじめに、フィードバックの意味や基本概念について見ていきましょう。
フィードバックの意味と起源
フィードバック(feedback)は、「feed」(与える・供給する)と「back」(戻る・後ろ)の2つの単語から成る複合語で、もともとは電子工学の分野において出力信号の一部を前段の入力に戻すこと、「帰還」を指す専門用語でした。
現在では、電気工学の専門用語から転じ「評価する」「アドバイスをする」といった幅広い意味を持つ言葉となり、ビジネスや教育など様々な分野で広く活用されています。
ビジネスにおけるフィードバックの活用
フィードバックは、ビジネスでは特に人材育成の分野において上司から部下へ業務上の改善点を伝える方法として用いられることが多いです。また、以下のようなシーンでも日常的に使われています。
- チーム間の連携強化
- 組織の目標達成
- プロジェクト振り返り
- 1on1ミーティング
- 日常の業務指導
フィードバック手法を効果的に活用することで、チーム間の連携強化や情報共有の円滑化につながり、目標達成への軌道修正を効率よく行うことができます。
フィードバックの目的
フィードバックの目的は、相手の潜在能力を引き出し、成長への道筋を示すことです。ビジネスでは主に上司が部下に業務上の問題点を伝え、改善案を一緒に考えるプロセスとして活用されています。
重要なのは、フィードバックの本質が単なる問題指摘ではなく、相手の可能性を見いだして成長を促すことにある点です。そのため、行動改善は本人とともに検討し、その後も定期的にフォローアップすることが大切です。
フィードバックの言い換え表現
フィードバックは、日本語では以下のような表現に言い換えることができます。
- 「反応」「返答」「コメント」:情報の受け取りや応答に着目した表現
- 「評価」「レビュー」「振り返り」:評価や分析に着目した表現
- 「意見」「アドバイス」「助言」:助言や指導に着目した表現
- 「対話」:コミュニケーションの方法に着目した表現
これらの言い換え表現は、使用される文脈や状況によって適切に選択するとよいでしょう。
フィードバックと関連する概念(フィードフォワード・フィードアップ・コーチング)との違い
フィードバックと関連する概念として、「フィードフォワード」「フィードアップ」「コーチング」などがあります。
ここでは、それぞれの概念の特徴とフィードバックとの違いを見ていきましょう。
フィードフォワードとフィードバックの違い
フィードフォワードとは、課題の改善や目標達成に向けて、未来に着目して意見交換を行うコミュニケーション手法です。これから起こりうる状況や将来の行動に対して、事前にアドバイスや提案を行います。
フィードバックが過去の行動や成果に対する評価や改善点を伝える手法であるのに対し、フィードフォワードは未来志向のアプローチだといえるでしょう。
フィードフォワードとフィードバックの主な違いは、以下の点にあります。
【フィードフォワードとフィードバックの主な違い】
比較項目 | フィードフォワード | フィードバック |
---|---|---|
時間軸 | 「未来」の行動に焦点を当てる | 「過去」の行動に対して行われる |
関係性 | 立場に関係なく行える | 主に上司から部下に対して行われることが多い |
目的 | 成功に向けた具体的な行動指針の提供を目的とする | 主に問題点の修正や改善を目的とする |
フィードフォワードは相手のモチベーションを高め、主体的な成長を促せるというメリットがありますが、一方で過去の問題点を深く分析できないという側面もあります。そのため、フィードフォワードとフィードバックは、状況や目的、相手の成長段階に応じて使い分けることが重要です。
フィードアップとフィードバックの違い
フィードアップとは、組織やチーム内で、目標や方向性の調整を行うプロセスのことです。主に、メンバー間で目的意識を共有する際に用いられます。
フィードバックは、意見をする側と受ける側で目標や方向性が一致していることが前提となります。その認識にズレがあると、フィードバックの効果が発揮されないだけでなく、誤解が生じるなどのトラブルにつながる可能性があるからです。
フィードバックの精度を高めるためには、チームの目的・目標を設定し、定期的にメンバー間で再確認する「フィードアップ」が重要な役割を果たします。明確な目標があってこそ、具体的なフィードバックが可能になります。
コーチングとフィードバックの違い
コーチングは、部下が目標を達成するためのサポートを指します。行う内容としては、質問と傾聴です。部下に対して様々な角度から質問をしてその回答を聞き、目標達成に向けて部下自身が考えて行動できるようにします。
フィードバックも部下の成長を促す手法ですが、コーチングとは以下の点に違いがあります。
【コーチングとフィードバックの主な違い】
比較項目 | コーチング | フィードバック |
---|---|---|
コミュニケーションの方法 | 質問や問いかけで本人に方向性を決めさせる | 上司が問題点を伝え、改善案を一緒に考える |
主導権 | 部下が主体的に考え、答えを見つけることを重視する | 上司が主導権を持つ |
実施頻度と形式 | 個人面談など時間をかけて行い、部下に自分の考えを整理させる | 「マイクロフィードバック」など、日常業務の中で小さな単位で高頻度に実施する場合も多い |
フィードバックが起こった事象に対して、アドバイスや改善点を「伝える」ことを重視するのに対し、コーチングは「聞く・聞き出す」ことで成長を促す点が異なります。
コーチングとフィードバックは、状況に応じて適切に使い分けることが重要です。特に、業務経験が浅く知識が不足している状態では、いくら考えを促しても適切なアイデアが生まれにくいため、そのような場合は「教える」ことを重視したティーチングに切り替える方がよいでしょう。
フィードバックがビジネスで必要とされる理由
現代のビジネス環境において、フィードバックは組織の競争力を高め、人材の成長を促進する重要な経営ツールとして注目されています。このような背景には、以下のようなビジネスを取り巻く環境の変化があります。
働き方や価値観の多様化
正社員として1つの企業に長く勤めることが当たり前とされた時代ではなくなり、派遣社員や非正規社員、フリーランスなど、雇用形態が多様化しているのが現代です。さらには、リモートワークやテレワークなど、「出社する」ことさえ当たり前ではなくなってきました。
また、グローバル化に伴い、仕事に対する価値観も変化しています。がむしゃらに働いてお金を稼ぐ・キャリアアップするよりも、私生活を充実させる・自分の実力を認めてもらえる会社で働くことを重視する人が増えています。
こうした「人材の流動性」の高まりにより、企業にとって「優秀な人材の確保」の重要性がこれまで以上に増しています。フィードバックを通じて、やりがいや成長、キャリアアップといった魅力を伝え、人材に長く働いてもらうことが注目されているのです。
上司と部下のコミュニケーションロス
特に人材不足の企業では、上司自身がプレイングマネージャーとして働くことが一般的です。その結果、部下のマネジメントに割ける時間が限られ、コミュニケーションロスやミスコミュニケーションが生じやすくなっています。このような状況では、上司は限られた時間で的確なアドバイスを行うフィードバックスキルが求められます。
また、フィードバックの機会そのものがコミュニケーションの機会にもなることも忘れてはいけません。フィードバックをおろそかにすると、上司と部下の関係が弱まり、組織力の低下につながる危険性があることを認識しておく必要があります。
上司の指導力不足
近年、年功序列型の組織が主流だった日本企業にも、実力主義型の組織が増えています。
実力主義の企業では、営業成績や会社への貢献度合いによって年齢に関係なく昇進するため、特に若い人は部下を持った経験が少ないまま役職が上がるケースも多く、指導力不足に陥りやすいという課題があります。年上の部下を持つケースも珍しくなく、年齢差を意識するあまり適切な指導方法がわからないこともあるでしょう。
しかし、改善が必要な部下を放置することは、会社にとって大きな損失です。このような理由からも、相手に改善点を効果的に伝えるフィードバックスキルを身につけることが、現代の管理職に求められているのです。
フィードバックがもたらす4つの効果
フィードバックの活用は、個人の成長だけでなく組織にも多くのメリットをもたらします。
ここでは、フィードバックの主な効果を4つご紹介しましょう。
(1)仕事の質と目標達成の促進
フィードバックは業務の質向上と目標達成を促進します。
個人の成長としては、部下は上司からフィードバックを受けることで、業務を正確かつ効率的にこなす能力が身につきます。プロジェクト中も改善のアドバイスをもらうことができれば、間違いがあっても早期に軌道修正できるため、成果物の質を高められるでしょう。
結果として、管理職が社員一人ひとりを的確に導くことで、個人の成長だけでなくチーム全体のパフォーマンスが向上するのです。
(2)モチベーションと内発的動機付けの向上
フィードバックの中でも、特にポジティブな表現を用いたアドバイスは、部下のモチベーション向上に効果的だといわれています。具体的な成果や行動を認めることで、部下に「自分の頑張りが認められている」という実感を与え、成長への意欲を引き出すからです。
さらに、フィードバックは「内発的な動機付け」にも影響を与えます。内発的動機付けとは、仕事の意味を自分で見いだし、自発的にやる気を持つ状態のことです。フィードバックで適度なレベルのチャレンジを促すことで、部下の内発的動機付けが高まり、自律的な業務姿勢が育まれます。
(3)信頼関係の構築
さらに、フィードバックの効果として、組織やチームメンバー間の信頼関係構築が挙げられます。
コミュニケーションの機会が増えれば、それだけ信頼できる要素も増えます。お互いが信頼できれば、上司であれば部下にもっと成長してほしいと考え、部下はこの人からの助言なら素直に聞ける、といった好循環が生まれるでしょう。
実際に、多くの企業で人事評価面談や1on1ミーティングだけでなく、日々の仕事の振り返りなど様々な場面でフィードバックが用いられています。
(4)人材育成と定着率の向上
フィードバックを効果的に活用している組織では、部下は上司との対話を通して、自分が至らなかった点や足りない点について気づきを得て、自ら考える力を養えます。さらにフィードバック後も上司が定期的に部下の様子をモニタリングし、アフターフォローをしっかりと行うことによって、継続的に支援してもらうことができます。
このような成長の機会が継続的に提供される環境では、社員の満足度や会社への帰属意識が高まるため、人材の定着率向上につながるのです。
加えて、優秀な人材ほど成長機会を求める傾向にあります。フィードバック文化は、こうした人材確保の観点からも重要な取り組みだといえるでしょう。
フィードバックの代表的な5つの手法
フィードバックの実践方法は、目的や状況によって様々な種類があります。
ここでは、多くの企業で用いられている代表的なフィードバック手法を5つご紹介しましょう。
(1)ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは、相手の望ましい行動や言動に焦点を当て、前向きな表現を使って意見を伝える手法です。
具体的な進め方は以下の通りです。
-
①労をねぎらう
まず相手の努力や貢献を認め、感謝の言葉を伝える
-
②良い点を伝えてから問題点を指摘する
具体的に良かった点を伝えた後、改善が必要な点を指摘する
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③成長を感じた点を伝える
最後に、相手の成長した部分や可能性について、前向きなメッセージを伝える
ポジティブフィードバックでは、まず良い点を伝えてから問題点を指摘するので、相手が評価を受け入れやすい、防衛的になりにくいといったメリットがあります。
(2)サンドイッチ型フィードバック
サンドイッチ型フィードバックは、ポジティブな内容でネガティブな内容を挟むようにして伝える手法になります。主な手順は以下の通りです。
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①ポジティブな内容(褒める)
まず良かった点や評価できる点を伝える
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②ネガティブな内容(指摘)
次に改善すべき点や課題を伝える
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③再びポジティブな内容(励ます)
最後に再度ポジティブな内容で締めくくる
この手法では、ネガティブな内容をポジティブな内容で挟むことで、相手のモチベーションを下げずに改善点を伝えることができます。はじめてフィードバックを行う場合や、相手との信頼関係がまだ十分に構築されていない場合に効果的です。
(3)SBI型フィードバック
SBI型フィードバックは、「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の頭文字を取った手法で、以下のように論理的な構成でフィードバックを行います。
-
①Situation(状況)
まず、フィードバックの対象となる具体的な状況や場面を説明する
-
②Behavior(行動)
次に、その状況における相手の具体的な行動を客観的に伝える
-
③Impact(影響)
最後に、その行動がもたらした影響や結果を伝える
この手法は、事実に基づき客観的に意見を伝えられるので、相手に状況を正確に理解してもらいたい場合に効果的です。
(4)FEED型フィードバック
FEED型フィードバックは、「Fact(事実)」「Example(例)」「Effect(効果)」「Different/Do(次にすべきこと)」の頭文字を取った手法です。物事の原因から結果までの流れを順序だてて説明します。
-
①Fact(事実)
まず、フィードバックする事実や行動を客観的に述べる
-
②Example(例)
その事実を裏付ける理由や具体的な例を提示する
-
③Effect(効果)
その行動がもたらした効果や影響を伝える
-
④Different/Do(次にすべきこと)
最後に、今後どうすべきかの改善策を提案する
この手法は、相手の行動から改善案までを体系的に伝えることができるため、特に相手の行動変容を促したい場合に効果的です。
(5)ペンドルトン型フィードバック
ペンドルトン型フィードバックは、相手に自己評価を促し、さらに自ら改善点を見つけてもらう手法です。
-
①相手の自己評価を促す
まず、良かった点について自己評価してもらう
-
②フィードバックする側が良かった点を伝える
次に、フィードバックする側が良かった点を伝える
-
③改善点について自己評価を促す
相手に改善すべき点について自己評価してもらう
-
④フィードバックする側が改善点を伝える
最後に、フィードバックする側が改善点を伝える
この手法は相手の自己認識を高め、主体的な改善意欲を引き出す効果があるので、経験者に対して実施されることも多いでしょう。
フィードバックを行う際の6つのポイント
フィードバックを行う際は、より効果を高めるために、以下の6つのポイントを意識するとよいでしょう。
(1)フィードバックの目的を明確に伝える
部下に対してフィードバックする目的を伝えているかいないかは大きな違いがあります。目的もわからず改善点だけを伝えられた場合、部下が上司の意図を正しく汲み取ることは難しいためです。
スキルアップしてほしい・リーダーシップを発揮してほしいなど、フィードバックする理由と目的を伝えましょう。フィードバックの目的は「部下の問題点を指摘し、自身の至らない点を自覚してもらう」ことではなく、「今後の成長を期待して行う」ものだという点を明確にすることが大切です。
(2)効果的なタイミングで伝える
基本的には、改善点が見つかったらすぐにフィードバックしましょう。定期的な1on1ミーティングや考課面談など、一定期間の事柄についてフィードバックするケースもありますが、可能な限りその場その場でアドバイスすることで、その後のミスも防げます。時間がたってからフィードバックすると、内容によっては「なぜもっと早く伝えてくれなかったのか」という不満につながりかねません。
効果的なタイミングを把握できるように、日ごろから部下を気にかけてあげるのが大切です。日常業務の中にフィードバックを自然に埋め込むとよいでしょう。
(3)伝える場所と環境に配慮する
他の従業員の目がある中で、フィードバックをするのは避けましょう。フィードバックは一対一で行うのが基本です。ネガティブな内容を含んでいる場合は、特に場所の配慮が必要です。
伝える場所が悪いだけで、正当な内容だったとしてもハラスメントと受け取られてしまうリスクもあります。リラックスできる環境を整え、相手が意見を言いやすい雰囲気づくりを心がけましょう。
もし、部下の行動が他の従業員にとって学びのケーススタディとなるときは、部下の許可を取ったうえで全体へ伝えるようにしましょう。
(4)相手のタイプに合わせたアプローチをする
人間にはいろいろなタイプがいます。褒められて伸びる人もいれば、怒られて伸びる人も。また、厳しい言葉の方が成長につながりやすい人もいれば、やさしい言葉の方がよい人もいます。
マネジメント力の高い上司は、部下のタイプに合わせてフィードバックの内容や方法を柔軟に変化させながら対応しています。その人にとって、いちばん伝わる方法が何かを考えているのです。フィードバックそのものだけでなく、そうした姿勢は部下から信頼を得やすいため、よりアドバイスを真摯に受け止めてくれるでしょう。
また、部下の経験レベルによっても適切な手法は異なります。業務経験の浅い部下には具体的な指示を含むフィードバックが効果的な場合もありますが、経験を積んだ部下には自律的な思考を促すコーチング的なアプローチが適していることもあります。
(5)ポジティブな面を伝えることを忘れない
フィードバックの際に、良かった点があれば先に伝えるようにしましょう。褒める際におさえておきたいのは、部下の行動に焦点を当てるということです。
仕事は行動しなければ、結果は出ません。その行動を褒めることで、部下は次も頑張ろうという気持ちになり、良い方向に向かってくれます。また、先に褒めておくと、ネガティブな内容を相手が受け止めやすくなるのもメリットです。
褒めるのが苦手という場合は、「部下の行動を認知している」といった内容を伝えるよう意識してみてください。「○○をしてくれているね」と言うだけでも、部下は知ってもらっているという安心感を得られます。
(6)定期的にモニタリングしてフォローする
フィードバックは一度行って終わりではありません。行動改善の内容が決定した後も、上司は定期的に部下の様子をモニタリングし、行動改善が進んでいるか確認することが重要です。
改善されていない場合は、追加でアドバイスやサポートをし、必要に応じて軌道修正を行いましょう。
フィードバックを行う際の注意点
フィードバックは部下の成長を促す重要な手段ですが、適切に行わなければ効果が得られないばかりか、部下のモチベーション低下を招くこともあります。「アドバイスしても部下に響かない」という上司の悩みや、「いつもダメ出しばかりで何をしたらいいのかわからない」という部下の不満は、フィードバックが機能していない典型的な例です。
アドバイスや改善点は、思ったままに伝えればよいわけではありません。フィードバックする側が次のようなNG行動をしていないか、定期的にチェックするようにしましょう。
(1)小さな変化に気づいていない
成長は急激に起こるものではなく、小さな変化の積み重ねです。大きな変化ばかりに着目していると、部下のモチベーション低下を招きます。
効果的な観察のためには、「成果」「行動」「姿勢・態度」「言動」の4つの視点から部下を見ることが大切です。
- 成果:売上や成果物の数など、数値で測れる項目
- 行動:時間の使い方、ミスの有無など
- 姿勢・態度:仕事への取り組み方、積極性など
- 言動:言葉遣いやポジティブ・ネガティブな表現の傾向
観察した内容は必ず記録しましょう。記録があると、フィードバックの説得力が増し、部下も受け入れやすくなります。また、定期的なフィードバックの機会を設けることで、効果を高めることができます。
(2)気づいたことを全て伝えてしまう
本来あるべき上司の理想的な行動:部下の変化を整理・特定し、伝えるべき要素を絞る
部下が成長するにつれて、伝えたい内容はどんどん増えていくものです。しかし、あれもこれも伝えられても部下は消化しきれません。気づいたことを全て伝えるのではなく、「今伝えるべきこと」と「今は伝えなくてよいこと」を整理し、内容を取捨選択することが重要です。
伝えるかどうかの判断基準としては、以下の点が挙げられます。
- 部下が既に課題として認識しているか
- 伝えることで部下の成長にどれだけ寄与するか
- 伝えなかった場合の影響範囲はどうか
一度のフィードバックで伝える内容は、3つ程度に絞るとよいでしょう。
(3)成長段階に合わせた伝達ができていない
フィードバックの目的の1つは、部下に理解・納得してもらい、次の行動につなげることです。しかし、経験の浅い部下に対して自ら答えを導き出させようとしても、選択肢を持っていない部下は混乱するだけでしょう。
成熟度の低い部下には、答えを「教える」ティーチング主体のフィードバックが効果的です。一方、裁量のある仕事をしている経験豊富な部下には、「導き出させる」コーチング主体のアプローチで自律性を養うやり方が適しています。
どのようなアプローチを取るにしても、フィードバックする側に必要なのは「相手が理解できる言葉にする力」と「相手の理解度を把握し、理解してもらう力」です。部下が「何をどう改善したらいいのか」を明確に理解できるよう伝えることが、フィードバックの効果を高めるポイントです。
フィードバックスキルを伸ばして部下の成長を促進しよう
今回のコラムでは、上司側の行動に注目してフィードバックのポイントや手法などご紹介しました。もちろん、上司個人のフィードバック力だけに頼るのではなく、「フィードバック面談の基本ストーリーをつくっておく」「他部門のフィードバックのやり方を見る機会をつくる」など、会社としての仕組みを整えることでも、適切なフィードバックに一歩近づけるでしょう。
会社全体で適切なフィードバックを行えれば、部下一人ひとりの成長はもちろん、部門間や個人の"成長のばらつき"の解消も実現できます。本コラムを参考に自分自身・自社の現状を振り返り、今後の取り組みにつなげていただければ幸いです。
当社では、言語化力や対話力を高めるために必要な「論理的思考力」「要素分解力」「コミュニケーション力」などの研修も多数実施していますので、外部の研修なども活用しながら、効果的なフィードバックを行えるスキルを磨いていきましょう。
また、部下と接する機会の多い管理職向けのフィードバック面談の研修も用意しています。ぜひ、ご活用ください。
「人事評価研修~人事評価の基本<心構えと評価編>~」の詳細はこちら
「フィードバック研修~人事評価の基本<フィードバック面談編>~」の詳細はこちら
そのほか、管理職向け研修やコーチングの基礎力をつける研修もございます。自社の課題に合わせてぜひご利用ください。
「管理職研修~管理職のための部下育成シリーズ<聴く力&話す力>~」の詳細はこちら