アドラー心理学|人材育成と人間関係でビジネスに役立つ5つの理論

update更新日:2025.09.30 published公開日:2024.04.22
アドラー心理学|人材育成と人間関係でビジネスに役立つ5つの理論
目次

アドラー心理学は、心理学者アドラーによって創始された「人は目的に向かって努力し、変わることができる」という原則に基づく心理学理論です。

近年では解説書がヒットし、個人の成長や人間関係など、ビジネスでも役立つ考え方として注目されています。

本コラムでは、アドラー心理学とは何か、5つの理論やメリットなどを、アドラーによる名言やおすすめの本などを紹介しながらわかりやすく解説します。

アドラー心理学とは?その基本的な考え方と背景

アドラー心理学とは、オーストリアの精神科医・心理学者であるアルフレッド・アドラー(Alfred Adler)によって提唱された心理学の一種です。

社会とのつながりや人間関係を重視するという特徴をもつアドラー心理学は、ビジネスや教育などで実践的に役立つと注目されています。

最初に、アドラー心理学の特徴、日本で注目されるようになった背景、フロイトやユング心理学との違いについて解説します。

アドラー心理学とは

アドラー心理学とは、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーによって提唱された心理学理論です。

同年代に活躍した心理学者のフロイトやユングと並び、アドラーは「心理学の三大巨頭」の一人といわれています。

アドラー心理学最大の特徴は、人間の行動を「目的」から理解しようとする点にあります。つまり、過去の原因ではなく、未来に向かう目標に着目します。

さらに、個人を心身一体の存在とみなし、社会の中でのつながりや貢献を重視する点も特徴です。

アドラーは「人は目的を定めて行動するもの」「結果として、自分自身は変えられる」という考え方を基本としており、無意識の心理的衝動を重視したフロイトや、集合的無意識について探究したユングとは異なるアプローチを行いました。

現在では、人間関係の悩みを解決する実践的な心理学として、教育やビジネス、子育てなど幅広い分野で活用されています。

ベストセラー本「嫌われる勇気」とアドラー心理学

日本においてアドラー心理学の知名度を飛躍的に高めたのが、岸見一郎氏と古賀史健氏による本「嫌われる勇気」です。

2013年の出版以来、ベストセラーとなり、多くの読者にアドラーの思想を届けました。

この書籍は、アドラー心理学をわかりやすく解説したもので、ビジネスにおける人材育成や子育てなどに活用できる心理学として、広く認知されるきっかけになりました。

その後、数多くのアドラー心理学に関する本が出版されたり、民間団体や教育機関において、アドラー心理学の啓発やセミナーが実施されたりするなどして、人気が高まっています。

フロイトやユングとの違い

アドラー心理学は、フロイトの精神分析学やユングの分析心理学と比較すると、その特徴がわかりやすくなります。

アドラー心理学がフロイトやユングの理論とどのような点で違っているかをみていきましょう。

アドラーとフロイトとの違い

ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)は、アドラーと同じオーストリアの精神科医・心理学者です。フロイトとアドラーは同じ勉強会に所属して研究を行っていましたが、互いに違う思想を持っていたため、後に決別します。

フロイトは精神分析学の創始者であり、人間の行動を生物学的な視点で分析しました。人間を動かしているのは本能的衝動であるとし、本能と社会的ルールは基本的に折り合いがつかず、葛藤が生じると説いています。

一方、アドラーは人間の社会的所属欲求を重視し、人は社会に受け入れられ、貢献することで幸福を感じると論じました。

アドラーとユングとの違い

カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)はスイスの精神科医・心理学者で、分析心理学を創始した人物です。

ユングは、過去に受けた他者からの影響によって、現在の自分が形づくられていることを示唆しました。これはフロイトと同様、過去の体験からくる「トラウマ」の存在を認めたものです。

一方、アドラーは、個人心理学を提唱し、個人の主体性や目的意識を重視しました。「トラウマ」の存在を否定し、「自分の心は、過去に縛られたり、何者かに侵されたりすることはない、自分だけのものである」と考えました。

また、ユングは思考のスケールをさらに広げ、現在の心に影響を与えている「過去」とは、その人個人だけのものではなく、全人類の過去であると考えました。これを集合的無意識と呼びます。

この発想は、個人心理学を提唱するアドラーとは対照的です。アドラーが、個人と社会の意識的な関わりに焦点を当てているのに対し、ユングは全人類に共通する普遍的な無意識の領域を探求しています。

アドラー心理学の5つの理論

アドラー心理学は、以下の5つの基本理論から構成されています。

  • 目的論(Teleology)
  • 全体論(Holism)
  • 個人の主体性(Creativity)
  • 社会統合論(Social Embeddedness)
  • 仮想論(Fictionalism)

アドラー心理学の基本的な考え方を学ぶには、5つの理論をおさえておくことが重要です。

5つの理論の意味や考え方について、順に見ていきましょう。

目的論(Teleology)

目的論(Teleology)は、アドラー心理学の基本的な考え方の1つです。

アドラー心理学では「なぜそうなったか」と過去に原因を探るのではなく、「何のためにそうなるか」という未来の目的に焦点を当てます。

一方、現象を物理学的な原因で解釈する方法を「機械論」といい、フロイトは心理学に機械論を取り入れました。

アドラー心理学では、人は無意識のうちに「将来の夢」や「なりたい自分」など、何らかの目的を持っており、その目的に向かって行動する、と考えます。そのため、人を理解するには、過去の経験そのものよりも、今、その人が何を目的として、どのように行動しているかに着目することが重要なのです。

全体論(Holism)

全体論(Holism)は、アドラーが唱える個人心理学の根幹となる考え方の1つです。

アドラー心理学では、「人は分割できない存在」と捉えます。個人の心や体は「1つの全体」として機能し、心、体、理性、感情、意識、無意識など、あらゆる要素が協力して目的達成に向かいます。

心と体、理性と感情、意識と無意識などは別々に切り離されたものではなく、相互に作用する統一体と考えるのがアドラー心理学です。つまり、人間を部分に分けて理解するのではなく、分割できない全体として捉えます。

個人の主体性(Creativity)

アドラー心理学では、人は自己決定することで、自分の人生を主体的に創造すると考えます。キャンバスに絵を描くように、人は自らの選択と決定によって、自分の人生を自由に創り出せるのです。

つまり、人生は外的要因に左右されるのではなく、主体的な意思決定による行動で形成されます。

例えば、「向上心が私に勉強をさせた」のではなく、「私が向上心を使って勉強をした」と捉え、個人が自らの一部を動かしていると考えます。

アドラー心理学では主体性が重視され、自分の振る舞いの責任を他のものに転嫁しません。この考えを受け入れることで、人は自分の人生を自分のものとして生きられると考えます。

社会統合論(Social Embeddedness)

社会統合論(Social Embeddedness)では、個人は社会の中に組み込まれた存在であると捉えます。

個人の行動は、対人関係における課題解決を目的として行われるため、個人を社会と切り離して考えることはできません。そのため、この考え方は対人関係論(Interpersonal Theory)と呼ばれることもあります。

アドラーは「人生の問題の本質は、結局のところ対人関係の問題だ」と考えました。個人を理解するためには、その人が周囲の人々とどのような関係を築き、どんな態度をとっているかを観察する必要があります。対人関係のあり方を知ることで、その人の真なる目的や行動の背景が明らかになるのです。

仮想論(Fictionalism)

仮想論(Fictionalism)では、人は主観的な意味付けにより行動すると考えます。

人はそれぞれ異なる経験をし、独自の考えや価値観(私的感覚)を形成します。そのため、同じ環境にいても、個人が情報に与える意味が異なるため、行動も異なるのです。人は誰しもこの私的感覚に基づいて、目的実現に向けて行動し、このパターンがライフスタイルと呼ばれます。

私的感覚そのものには正誤や優劣の概念はなく、良い結果を生む場合もあれば、悪い結果につながる可能性もあります。仮想論は、そうした私的感覚を、よりポジティブで建設的な方向へと導くことを目指しています。

アドラー心理学のキーワードと名言

アドラー心理学には5つの理論のほかにも、いくつかの重要なキーワードがあります。アドラー心理学を深く理解するには、それらのキーワードを正しく知ることが欠かせません。

また、アドラーは著書の中で多くの名言を残しており、それらの名言もアドラー心理学を具体的に理解することを助けてくれます。

ここでは、アドラー心理学の代表的なキーワードを取り上げ、それぞれの意味や関わりのある名言を紹介します。

課題の分離 ― 自分の課題と他人の課題を見極める

「課題の分離」とは、自分の課題と他人の課題を明確に区別するというアドラー心理学の基本的な考え方です。

例えば「他人にどう思われるか」は相手の課題であり、自分が悩んでも解決できません。だからこそ、無理に干渉せず、自分の課題に集中することが大切なのです。

「課題の分離」に関わる名言

「陰口を言われても、嫌われても、あなたが気にすることはない。「相手があなたをどう感じるか」は相手の課題なのだから。」

引用元:「アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる100の言葉」

共同体感覚 ― 自分を超えて他者とつながる感覚

アドラー心理学では「共同体感覚」の理解が欠かせません。

共同体感覚とは、自分が社会や集団の一員であるという感覚を持ち、人の役に立とうとする姿勢を意味します。アドラー心理学では、人の幸福は個人主義的な自己実現ではなく、他者や社会とつながることにある、とするのが大きな特徴です。

このような共同体感覚の考え方は、アドラーが第一次世界大戦に従軍して悲惨な戦争の状況を目の当たりにした体験が元になっているといわれています。

アドラーは共同体感覚を育てるには、「所属感」「信頼感」「貢献度」「自己受容」が大切であり、共同体感覚は幼少期から意識して育成されるべき、と唱えました。

「共同体感覚」に関わる名言

「共同体感覚は、生まれつき備わった潜在的な可能性で、意識して育成されなければならない」

引用元:鈴木義也ほか「アドラー臨床心理学入門」(出版社アルテ)

ライフスタイル ― 幼少期に形成された思考と行動のクセ

「ライフスタイル」とは、物事の捉え方や人との接し方といった、人生における思考や行動のクセのことを指します。アドラー心理学では、このライフスタイルが幼少期の経験をもとに形成されると考えます。

例えば、厳しい家庭で育った子どもは「失敗してはいけない」と思い込み、常に完璧を求める行動をとるようになります。こうしたクセは無意識に続くため、まずは自分のライフスタイルのパターンを知ることが大切です。

ライフスタイルは自分で選択できるものであり、ライフスタイルを見直すことで、自分らしい生き方への転換が可能になります。

「ライフスタイル」に関わる名言

「人が恵まれた状況にあるときは、そのライフスタイルははっきりとは見えない。しかし、状況が変わって、その人が難局に直面するや、ライフスタイルは歴然と見えてくる。」

引用元:野田俊作監修「アドラー心理学教科書」(ヒューマン・ギルド出版部)

承認欲求 ― 他人の評価に左右されない生き方

アドラー心理学では、他人から認められたいという「承認欲求」を否定的に捉えます。なぜなら、他人の評価に依存すると、自分の人生の主導権を失ってしまうからです。

例えば「褒められたいから頑張る」という姿勢は、一見前向きに見えても、評価されないと落ち込むなど不安定な状態を招きます。大切なのは、「自分がどうありたいか」という内面の価値観を軸に行動することです。

アドラー心理学では、人間の幸福は自己承認欲求を満たすことではなく、他者とつながることにあると考えます。他人の目を気にせず、自分で自分を認める生き方が、真の自由と幸福につながるのです。

「承認欲求」に関わる名言

「私は自分に価値があると思えるときだけ勇気をもてる。そう思えるのは私の行動が共同体に有益であると思えるときだけである。」

引用元:鈴木義也監修「イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める!アドラー心理学」

劣等感 ― 成長の原動力に変える考え方

アドラー心理学では、劣等感を悪いものとせず、成長の原動力と捉えます。劣等感は誰にでもあるものであり、大切なのは、劣等感を理由にあきらめたり他人を攻撃したりしないことです。

例えば「自分にはできない」と感じたとき、それをバネに努力すれば能力の向上につながります。「どうすれば理想に近づけるか」と考えることで、前向きな行動が生まれるでしょう。

つまり、劣等感とは成長のヒントであり、自分を高めるチャンスなのです。誰にでもある感情を、自己変革の力へと転換するのが、アドラー心理学の考え方です。

「劣等感」に関わる名言

「あなたが劣っているから劣等感があるのではない。どんなに優秀に見える人にも劣等感は存在する。目標がある限り、劣等感があるのは当然なのだ。」

引用元:「アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる100の言葉」

アドラー心理学をビジネスで実践する3つのメリット

ビジネスの場でアドラー心理学の理論を実践することで、個人のモチベーション向上や対人関係の改善など、様々なメリットが期待できます。

ここでは、アドラー心理学の考え方をビジネスに取り入れることで得られる、3つの主なメリットを解説します。

メリット1:目的意識を持つことで当事者意識が高まる

アドラー心理学では、人は無意識のうちに目的を持ち、その目的のために行動すると考えられています。課題に直面した際、本来の目的を意識することで、より適切な行動がとれるようになります。

ビジネスにおいても同様に、組織の目標を自分の目的と捉えることで、仕事に対する当事者意識が高まります。単に上司の指示を受け身で待つのではなく、主体的に組織目標の実現に取り組めるようになるのです。

個人の当事者意識を引き出し、能動的な行動を促すことで、組織全体の活性化につなげることができるでしょう。

メリット2:勇気づけで自己肯定感が高まる

アドラー心理学は別名「勇気づけの心理学」と呼ばれています。「勇気づけ」とは、困難を克服するために活力を与え、成長するために自信を持たせることです。

一般的に、自信を高めるには、結果に対する他者からの評価など客観的な要素が必要とされます。しかし、アドラー心理学では、内的な自己肯定感の重要性が強調されています。

勇気づけでは、「褒める」「叱る」といった方法ではなく、相手の気持ちを受け止め、対等な立場で接することが重視されます。例えば、職場での愚痴や弱音はそのまま受け止め、認めることで、相手の承認欲求を満たし、自己肯定感を高めることにつながります。

上下関係ではない対等な関係の勇気づけは、組織のマネジメントや人材育成にも役立つでしょう。

メリット3:意見が対立する相手を尊重できる

アドラー心理学においては、全ての人がそれぞれ異なるライフスタイルを持っており、それに基づいて世界を見ていると考えます。

それぞれのライフスタイルが異なることを認識すると、意見が対立する相手と出会った際に、自分の意見を押し通したり、無理に相手に合わせたりする必要がないとわかります。相手には自分と異なる目的や解釈があるため、相手の立場を考え、尊重して意見を聞けるようになるでしょう。

この考えは、組織構築や部下育成などにも有用です。相手の意見に耳を傾け理解する「傾聴力」を身につけることは、組織内の円滑なコミュニケーションや良好な人間関係構築につながります。

アドラー心理学の2つのデメリットと対策

アドラー心理学にはメリットが多い一方で、いくつかのデメリットも存在します。

ここでは、アドラー心理学の2つのデメリットとその対策をご紹介します。ビジネスに取り入れる際は、特性を理解し、適切に応用しましょう。

デメリット1:変わることを望まない人への効果が薄い

アドラー心理学は、自分が変わることを前提とした理論です。自分を変えたい、成長したいと考えている人にとっては有益である一方、変化することを望まない人にとっては効果が薄いといえます。

そのような場合は、相手に変わることを強いるのではなく、「自分を変えてみるのもいいかもしれない」という提案から始めます。自然な流れで自発的な変化を促すことができるでしょう。

デメリット2:誤った理解は人間関係をこじらせる可能性がある

アドラー心理学は、物事の捉え方や心構えに役立ち、多くの場面で取り入れられます。

しかし、アドラー心理学に傾倒しすぎるあまり、あらゆる物事に対して無理に当てはめようとすると、人間関係をこじらせる可能性があるため注意が必要です。

他者に対して過度な変化を求めたり、主体性を強調しすぎたりすると、アドラー心理学本来の趣旨とかけ離れてしまう可能性があります。アドラー心理学は1つの理論ですから、現実の相手や状況に応じて実践的に使い分けるようにしましょう。

アドラー心理学の資格・講座・本で学ぶ方法

ビジネス・教育・キャリアなど様々な分野で注目されているアドラー心理学を自己学習したいという人も多いでしょう。

アドラー心理学を学ぶ方法としては、講座を受けて資格取得する、本を読む、大学の講座やセミナーを受講する、などの方法が考えられます。

最後に、アドラー心理学を学べる資格、入門書としておすすめの本や大学公開講座の例などを紹介しますので参考にしてください。

アドラー心理学を学べる資格はある?

アドラー心理学を学べる資格はいくつかありますが、最も有名なのは日本アドラー心理学振興会の認定資格と、日本統合医学協会のアドラー心理学検定でしょう。

資格取得を目的とすることでモチベーションが高まりますし、アドラー心理学を体系的に学習できます。

2つの資格について、以下に解説します。

日本アドラー心理学振興会認定資格

日本アドラー心理学振興会では、アドラー心理学の普及と実践者育成を目的に以下の4つの認定資格を発行しています。

  • 認定コミュニケーション・コンサルタント
  • 認定スピリチュアル・アナリスト
  • 認定心理カウンセラー
  • 認定心理療法士

このうち、認定コミュニケーション・コンサルタントは、アドラー心理学の基礎を学び、家族や友人などの人間関係において、自分も相手も幸せを感じられるようなコミュニケーションの提案や援助ができることを目的とした資格です。日本アドラー心理学振興会の「アドラー式幸せ家族プログラム TIES」を受講することで資格取得できます。

詳しくは、日本アドラー心理学振興会のホームページをご確認ください。

参考:日本アドラー心理学振興会

日本統合医学協会アドラー心理学検定

日本統合医学協会が主催する「アドラー心理学検定」は、一般の人向けに、予防医学の観点から、自分の健康は自分で守るという「セルフメディケーション」に役立つ講座として開発された資格です。

受講期間 3カ月
受講方式 オンライン
受講料 一般受講料:39,600円(税込43,560円)認定校にて申込時
モニター受講料:19,800円(税込21,780円)
試験方式 オンライン
取得できる資格 アドラー心理学検定1級

アドラー心理学の基礎を学び、日常生活やビジネスにアドラー心理学を取り入れたい人におすすめです。

参考:日本統合医学協会

本で学ぶアドラー心理学の基礎

アドラー心理学を手軽に学ぶなら、まずは本を読むことから始めるのがおすすめです。書籍は自分のペースで読み進められるだけでなく、理論の背景や実践例も豊富に紹介されています。

ここではアドラー心理学を基礎から学べる本3冊をご紹介します。

「アドラー心理学入門」

タイトル アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために
著者 岸見 一郎
出版社 ベストセラーズ
発売 1999/09

哲学者の岸見一郎氏がアドラー心理学について体系的に解説した入門書です。理論書でありながら平易な表現で書かれているため、心理学にはじめて触れる人でも理解しやすい構成となっています。

基礎理論にくわえて、アドラーとはどのような人だったのか、アドラー心理学を人生や生活に活かすためにどうしたらよいのか、などについてもわかりやすく解説しています。

「嫌われる勇気」

タイトル 嫌われる勇気
自己啓発の源流「アドラー」の教え
著者 岸見 一郎/古賀 史健
出版社 ダイヤモンド社
発売 2013/12

「アドラー心理学とは?その基本的な考え方と背景」で解説した通り、日本にアドラー心理学を広めた本です。日本のアドラー心理学における第一人者である岸見一郎氏が、ビジネス書ライターの古賀史氏とタッグを組んだ本書では、哲学者と青年の対話形式でアドラー心理学の基礎をわかりやすく解説してくれています。

特に「課題の分離」や「承認欲求の否定」など、現代人が抱える問題に対する具体的な考え方が紹介されており、読者の心に深く刺さる内容となっています。

発売から10年以上経つ現在でも、ビジネス書や自己啓発書のランキング上位に入っている大ベストセラー本です。

「人生を変える思考スイッチの切り替え方」

タイトル アドラー心理学 ―人生を変える思考スイッチの切り替え方
監修 八巻 秀
出版社 ナツメ社
発売 2015/06

駒澤大学大学院にて臨床心理士の育成に携わる八巻秀氏監修の、アドラー心理学の基礎的な理論を初心者でもわかりやすく解説した入門書です。

思考のクセを変えることで行動や感情がどう変わるかを丁寧に解説しています。特に「勇気づけ」や「劣等感の活用」など、自己成長に役立つ内容が豊富です。

「アドラー式心理カウンセリング」コーナーや、思わず共感できるマンガを交えて解説するなど、読みやすさにも配慮された構成になっています。

アドラー心理学を大学の講座やセミナーで学ぶ

アドラー心理学を本格的に学びたい方には、大学の講座やセミナーで学ぶ方法もあります。

アドラー心理学は、フロイトやユングに比べると、大学で専門とする教員は少ないものの、日本でも人気が広がると同時に、社会人向けの講座やエクステンションカレッジなどで導入する大学が増えています。

アドラー心理学に関する大学の公開講座の例(2025年6月時点)

大学 講座
早稲田大学 社会人向けの「エクステンションセンター」で「アドラー心理学入門」を開講
立教大学 50歳以上の人を対象とした「立教セカンドステージ大学」で「アドラー心理学を実践に活かす」を開講
神戸学院大学 「土曜公開講座」で「アドラー心理学とストレングス視点をくらしに活かす」を開講

また、放送大学など通信制の大学などでも、心理学の基礎とあわせてアドラー心理学を学べる講座があります。