新入社員の早期退職はなぜ起きる?退職理由の傾向と定着のポイント
公開日:2026.08.28

新入社員の早期退職は、多くの企業が頭を抱える課題のひとつです。採用・育成にかけたコストが回収できないだけでなく、職場全体への影響も大きく、対策を後回しにできないテーマといえます。
本コラムでは、新入社員が退職を考える主な理由と離職が起きやすい時期の傾向を整理し、入社直後からできる定着のポイントをお伝えします。
新入社員の早期退職、データが示す現状
はじめに、新入社員の早期離職に関する厚生労働省のデータを確認してみましょう。
厚生労働省が示す離職率の現状
厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は大卒で33.8%、高卒で37.9%にのぼります。3人に1人以上が、入社から3年を待たずに職場を去っている計算です。
離職率は学歴によっても差があり、中卒では54.1%、短大・高専卒では44.5%と、最終学歴が低いほど高くなる傾向があります。また企業規模が小さいほど離職率も高く、大卒では従業員5人未満の企業で57.5%、1,000人以上の企業では27.0%と、約2倍の開きがあります。中小企業にとって、新入社員の定着は喫緊の課題といえるでしょう。
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
離職が起きやすい時期
新入社員が離職しやすいといわれるタイミングは、大きく3つあります。
まず入社直後のゴールデンウィーク明け、次は環境に慣れ始める入社3〜6カ月後、そして1年が経過した頃です。なかでもゴールデンウィーク明けは、入社後の理想と現実のギャップが表面化しやすい時期だといわれています。
新入社員が退職を考える8つの理由
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、20〜29歳の転職入職者が前職を辞めた理由は、給与・労働条件・人間関係などが上位に並びます。実際には複数の要因が絡み合っていることが多いですが、ここでは代表的な8つに整理してご紹介します。
給料・収入への不満
入社後に給与明細を見て、想定していた手取りと実態が違うと気づくケースは珍しくありません。基本給だけでなく、残業代の計算方法や各種控除の額が思いのほか大きく、「こんなに少ないとは思わなかった」という感想を口にする新入社員は意外と多くいます。
給与水準そのものへの不満より、「なぜこの額なのかわからない」という不透明感が、不信感へと変わっていくこともあるようです。
労働時間・休日などの条件への不満
「残業は月20時間程度」と聞いていたのに実態はそれを大きく超えていた、有給を申請しにくい空気がある、といったギャップは離職のきっかけになりがちです。
条件そのものへの不満だけでなく、「最初から本当のことを言ってもらえなかった」という不信感が根底にある場合も多いでしょう。
職場の人間関係
上司や先輩との関係がうまくいかないことは、退職理由として昔からよく挙げられます。ハラスメントのような明確な問題がなくても、「誰にも話しかけられない」「質問をすると嫌な顔をされている気がする」といった日常の積み重ねが、出社する気力そのものを奪ってしまうことがあります。
新入社員は職場の人間関係を自分では変えにくいため、「辞める」という選択に至りやすいことも早期退職の一因となっています。とくに、相談できる相手が1人もいない環境では、孤立から離職までが早くなりがちです。
仕事内容のミスマッチ
仕事内容のミスマッチも、退職理由としてよく聞かれます。具体的には、配属先が希望と異なっていた、求人票の業務内容と実際の仕事が全然違った、といったケースです。入社前のイメージと現実のズレは、入社直後から静かにモチベーションを削っていきます。「仕事に慣れれば変わるかもしれない」と思って続けても、半年経っても状況が変わらなければ、見切りをつけるタイミングになりやすいでしょう。
会社の将来への不安
入社後に社内の実情が見えてくると、「この会社は大丈夫なのか」という疑問を持つ若手が出てきます。財務状況や業界環境への漠然とした不安というより、「同期が次々と辞めていく」「上の世代が明らかに疲弊している」といった身近な現実から、将来への不安が生まれるケースも少なくないようです。
成長できる環境がない
仕事を覚えてきた頃に「この職場にいても、自分は何も伸びていないのではないか」と感じ始め、退職に至るパターンも良く見られます。研修が形骸化していたり、フィードバックをもらえる機会がなかったりすると、成長実感が得にくくなるためです。
特に、就職活動時に「成長できる環境」を重視して会社を選んだ層にとっては、この落差は大きなストレスになるでしょう。
結婚・出産・育児などライフイベント
制度上は育休や時短勤務が整っていても、実際に取得している社員がいなければ、それは「使えない制度」と同じです。ライフイベントが近づいたとき、制度より職場の空気を見て退職を選ぶケースは少なくありません。
心身の不調・メンタルヘルス
新しい環境への適応ストレスや業務負荷が重なり、入社から数カ月で体調を崩してしまう新入社員は一定数います。「辞めたい」という意思より先に「もう続けられない」という状態になっている場合も多く、本人すら自覚していないため周囲も気づきにくいのが難点です。
早期退職が企業に与えるダメージ
新入社員が短期間で辞めることは、採用や育成にかけたコストの問題に加え、職場全体にも広範囲なダメージをもたらします。主な影響を3つ見ていきましょう。
採用・教育にかけたコストの損失
求人広告の掲載費や採用担当者の工数、入社後の研修費用など、新入社員1人を採用・育成するまでには相応のコストがかかります。早期退職が起きると、それらが回収できないまま、再び採用活動を始めなくてはいけません。退職が続けば続くほど、採用と育成に費やすリソースが慢性的に不足していく悪循環に陥ってしまいます。
残ったメンバーへの負担増
新入社員が辞めると、その穴を埋めるために既存のメンバーへ業務が集中します。特に少人数のチームでは、1人の離職が全体の業務量に直結します。
「また辞めた」という状況が繰り返されると、残ったメンバーのモチベーションや職場の雰囲気にも悪影響を与えるでしょう。
採用ブランドへの影響
早期退職した社員がSNSや口コミサイトに職場の実態を書き込むケースは珍しくありません。ネガティブな情報が広まると、次の採用活動で応募者の減少や質の低下につながることがあります。
採用ブランドの毀損は数字に見えにくいこともあり、軽視されがちですが、長期的に見ると採用力そのものを左右する問題だといえます。
新入社員が退職を考え始めている9つのサイン
退職を決意する前には、多くの場合、行動や態度に何らかの変化が表れます。「急に辞めたいと言い出した」と感じるケースでも、振り返ると早い段階でサインが出ていることがほとんどです。日頃から小さな変化に気を配ることが、早期発見につながります。
報告・連絡・相談が減る
業務の進捗を報告しなくなったり、ちょっとした相談をしなくなったりする変化は、退職を考え始めているサインのひとつです。もともと報連相ができていた社員の場合、その頻度が急に下がったときは注意が必要です。職場との心理的な距離が広がっている兆候かもしれません。
表情が暗くなる・会話が減る
入社当初と比べて表情が乏しくなったり、雑談や昼食時の会話が極端に減ったりする場合、職場に対して気持ちが離れ始めている可能性が考えられます。無理に明るく振る舞っていたのが、維持できなくなってきているケースもあるでしょう。
これといった特定のきっかけがなくても、じわじわと心が変化していくことは少なくありません。
業務への関心が薄れる
会議中に手が止まっていたり、配布資料をほとんど見ていなかったりと、仕事への姿勢が受け身になってきた場合は注意が必要です。やりがいや関心を失い始めると、業務の質にも徐々に影響が出てきます。
遅刻・欠勤・早退が増える
体調不良を理由にした欠勤や朝の遅刻が目立つようになった場合、精神的な疲弊やモチベーションの低下が背景にある可能性があります。週に何度も遅れが続くような場合、業務上の問題ではなく、職場への気持ちが原因であることも多いようです。
有給休暇の取得が急に増える
もともと有給をほとんど取っていなかった社員が、突然まとまった休みを取るようになった場合、転職活動を始めている可能性があります。転職市場が活発になる時期や面接が集中しやすい時期と重なる場合は、その傾向が強まります。
身だしなみが変わる
入社当初に比べて身なりに気を使わなくなってきた場合、職場へのモチベーション低下が表れていると考えられます。逆に、突然きちんとした装いで出社するようになった場合は、社外での予定(転職先の面接など)が入っている可能性もあります。どちらの変化も、内側で何かが変わっているサインとして捉えておくとよいでしょう。
上司の指導に反応が薄くなる
フィードバックを受けても「はい」とだけ返して深掘りしない、指摘した点が次も改善されていない、といった状況が続く場合、指導が届いていないだけでなく、職場への信頼感が薄れている可能性があります。
反発するわけでもなく、ただ流しているような態度は、既に気持ちが職場から離れているサインであることが多いでしょう。改善を求めるより先に、一対一で話す機会を設ける必要があります。
自分の荷物や私物を少しずつ持ち帰る
デスク周りの私物が徐々に減っていたり、ロッカーがほぼ空になっていたりする場合、退職の準備が進んでいる可能性があります。こうした変化は、本人が明確に退職を決めていなくても起きることがあります。身辺整理が始まっているサインとして見落とさないようにしましょう。
将来の話に関心を示さなくなる
「来年はこのプロジェクトを担当してほしい」「研修に行ってみないか」といった話題に対して、反応が薄くなったり曖昧な返事が続いたりするようになった場合は注意が必要です。未来の話に乗り気でないのは、その会社での将来を描けていないサインでもあるからです。
一方的に将来像を伝えるだけでなく、本人がどう感じているかを確認することが大切です。将来について話しやすい場を意図的につくることも、予防策のひとつになります。
新入社員の早期退職を防ぐための対策
退職を防ぐには、「辞めたい」と言われてから動くのでは手遅れになりかねません。入社前から入社後の定着まで、一貫して取り組むことが重要です。
当社が2026年4月入社の新入社員を対象に実施した意識調査では、72.6%が「チームワークを重視する職場文化」を理想に挙げ、91.0%が「対面でのコミュニケーション」を望んでいることがわかりました。また、理想の仕事スタイルとして「安定重視」を選んだ割合が最も高く、いきなり高い目標を課されるのではなく、できることを着実に積み重ねていける環境を新入社員は理想として描いています。
こうした傾向を念頭に置きながら、入社直後から実践できる対策を見ていきましょう。
参考:ALL DIFFERENT「【入社直前意識調査(理想の社会人編)】2026年度新入社員『理想の社会人像』」
入社前に仕事の実態を正直に伝える
採用段階で職場の実態を良く見せすぎると、入社後のギャップが大きくなります。残業の頻度や業務の難しさ、職場の雰囲気など、ネガティブな情報も含めて事前に伝えておくことが、「思っていたのと違う」という感覚を防ぐ第一歩です。
内定者面談や職場見学を通じてリアルな職場を体験してもらう機会を設けると、さらに効果的でしょう。選考の段階から誠実に情報を開示する姿勢が、入社後の信頼関係の土台になります。
配属後1カ月のフォロー面談を仕組み化する
入社直後は不安や疑問が最も多い時期です。上司や人事担当者が定期的に一対一で話す機会を設けることで、小さな不満や悩みを早期にキャッチできます。面談の頻度は最低でも月に一度は確保しましょう。
育成担当を明確にして上司任せにしない
「誰が教えるか」が曖昧なまま放置されると、新入社員は相談相手を見つけられず孤立しやすくなります。メンター制度やOJT担当者の設置など、育成の責任者をあらかじめ明確にしておくことが大切です。担当者には育て方の指針を共有したうえで、任せきりにならない体制を整えることが、定着率の向上につながります。
小さな成功体験を積ませる
最初は達成しやすい目標を設定し、「できた」という感覚を積み重ねることが、仕事への意欲を育てる土台になります。成果に対してきちんとフィードバックを返すことも、成長実感を持たせるうえで欠かせません。
入社直後から難しい業務をいきなり任せると、自信をなくして早期離職につながるリスクがあることを念頭に置いておきましょう。
社内の相談窓口・経路を増やす
上司に言いにくいことでも、別の先輩や人事担当者には話せる場合があります。逆に、相談できる人が1人しかいない環境は、その関係がうまくいかなくなると孤立につながります。問題が深刻になる前に気づいて介入できるよう、複数の相談経路をあらかじめ整えておくことが大切です。
また、体調不良やメンタルヘルスの問題が背景にある場合は、退職ではなく休職という選択肢を早めに案内できる体制も整えておきたいところです。休職については、以下のコラムで詳しく解説しています。
コラム「『休職したい』と言われた!休職中の給料・社会保険料と復帰への流れ」はこちら
働き方の柔軟性を高める
リモートワークや時差出勤といった働き方の選択肢を広げることは、若手社員の定着に直結します。ただし、制度だけ整えても「使いにくい雰囲気がある」と感じさせてしまっては逆効果です。制度策定と合わせて、実際に使われる職場の空気をつくることが重要です。
キャリアパスを早い段階で示す
「この会社でどう成長できるか」が見えないと、新入社員は将来への不安を抱えやすくなります。入社後できるだけ早い段階で、キャリアの見通しや成長の機会を具体的に伝えましょう。
全員に同じパスを示すのではなく、本人の希望や強みを踏まえた対話をすることで、「この会社で頑張ってみよう」という気持ちを育てやすくなります。評価制度や昇給の仕組みを丁寧に説明することも、安心感につながるはずです。
退職理由を組織課題として振り返る
新入社員が辞めた際、その理由を本人の意志の問題として片づけてしまうと、同じことが繰り返されます。「なぜ辞めたのか」を記録し、採用・育成の改善に活かす姿勢が、長期的な定着率の向上につながります。

