リストラとは|不当解雇とならないための4つの要件

published公開日:2024.04.11
リストラとは|不当解雇とならないための4つの要件
目次

日本で「リストラ」といえば、人員削減やクビと同じ意味。普通解雇や懲戒解雇との違いは、解雇事由が従業員ではなく会社側にあることです。リストラは従業員に大きな影響を与えるため、不当解雇と判断されるケースもあります。

本コラムでは、リストラとは何かを簡単に解説するとともに、リストラが認められる4つの要件、不当解雇と判断されないための手順や注意点などをお伝えします。

リストラとは

日本では、リストラというと「解雇」や「クビ」というネガティブなイメージが強いでしょう。しかし、英語圏でのリストラは、必ずしも従業員の解雇それ自体を意味するものではありません。

まずは英語の「リストラクチャリング(restructuring)」が持つ本来の意味と、日本における用法の違い、日本でのリストラの種類を見ていきましょう。

リストラとは「再構築」の意味

「リストラ」は英語の「リストラクチャリング」の略で、本来の意味は「再構築」となります。

アメリカの企業では、リストラは必ずしも解雇を意味しません。本来の「再構築・構造改革」というニュアンスが強く、経営の立て直しに向けた事業縮小や組織再編、売却、分社化などの整理を指すことが一般的です。状況によっては、成長事業へ大きく投資を行ったり新規事業を立ち上げたりすることに伴った、他事業の縮小などもあるでしょう。

結果として、レイオフ(一時的解雇)などの人員削減が発生する場合はあります。しかし、「リストラする」という決定だけで「誰かがクビになる」ことを示すわけではありません。

日本では「解雇」の意味

一方、日本におけるリストラは、「業績悪化などを理由とした解雇(人員削減)」というように、直接「クビ」につながるネガティブな意味合いが強くなります。

もともと日本でリストラという言葉が広まったのは、1990年代のバブル崩壊以降。これまで好景気に支えられてきた終身雇用制度が崩壊し、多くの企業で中高年を中心とした人員削減が行われました。

こうした背景から、「リストラ=企業がやむを得ず行う整理解雇」というイメージが定着したのです。

赤字リストラと黒字リストラ

リストラは、その目的やタイミングによって2種類に大別されます。

1つめは「赤字リストラ」。業績の悪化に伴う人員削減であり、リストラといわれて真っ先に思い浮かべる人が多いパターンです。

赤字リストラの目的は、人件費を削減して再び黒字経営を目指すこと。そのため、不採算事業に従事する人員を対象とする場合や、人件費が高額になりやすい中高年層の従業員を対象とする場合などがあります。

2つ目は「黒字リストラ」といわれ、好調な業績の下で行われる人員整理です。黒字リストラを行う目的には、業務の自動化やDXによる効率化で出た余剰人員の削減、事業所や拠点の見直しなどによる事業の効率化などがあります。

また、外部要因などに基づいて予想される将来的な業績悪化を理由として、資金的余裕があるうちに退職金の上乗せを伴って実施されるケースもあります。

普通解雇・懲戒解雇との違いと不当解雇とリストラの関係

日本における解雇には、「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3種類があります。企業が業績などを理由に人員削減を行うリストラは、整理解雇にあたります。普通解雇や懲戒解雇との違い、不当解雇との関係について確認していきましょう。

一般的なリストラは「整理解雇」のこと

日本で言われるリストラとは、一般的には整理解雇のことを指します。

整理解雇とは、企業側の事情で労働契約を終了させる方法です。事業の再構築における人員削減として行われます。整理解雇が有効であると認められるには、後述する4つの要件を満たしていなければなりません。

解雇事由が、従業員側ではなく企業側にあるという点に最大の特徴があります。

リストラと普通解雇との違い

整理解雇とは異なり、普通解雇は、従業員側に解雇事由があり、企業が一方的に労働契約を解消するものです。

具体的な解雇事由には、

  • 従業員の労働能力の不足
  • 労働適性の欠如
  • 遅刻や欠勤の多さ

などがあります。

普通解雇における解雇事由の妥当性が認められるには、その解雇が「社会通念上相当であること」を満たさなければなりません。

また、普通解雇が有効である場合にも、企業側は解雇となる労働者に対して30日以上前に解雇の旨を伝えるか(解雇予告)、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法第20条)。

リストラと懲戒解雇との違い

懲戒解雇は、従業員に法律や就業規則への違反、公序良俗に反する行為などが認められた場合に、制裁罰として行われる解雇です。一般的な懲戒処分には、軽いものから順に戒告、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇があります。この中で最も重い処分が懲戒解雇となります。

整理解雇との違いは、懲戒処分における解雇事由は従業員側にあり、解雇の目的が制裁と企業秩序の回復などにある点です。整理解雇は労働者の再就職時に大きなデメリットにはなりませんが、懲戒解雇は非常にネガティブな影響を与えます。

なお、懲戒処分が労働者に与える影響の大きさから、ルール違反をした従業員をいきなり懲戒解雇すると裁判で無効と判断されるケースがあります。懲戒解雇では、注意・指導や段階的な懲戒処分が行われる必要があり、懲戒解雇を決定したあとも、対象者に弁明の機会を与えなければなりません。

不当解雇とリストラの関係

普通解雇や懲戒解雇とリストラの違いは、解雇の種類に基づく違いでした。これに対して、不当解雇との関係は、法令に照らして不当であるか否かというものです。よって、普通解雇や懲戒解雇に対しても、労働者は不当解雇であることを訴えられます。

リストラで不当解雇であるとされる例には、

  • 労働者の国籍や性別、社会的身分、信条などを基準とする人員選定
  • 労働組合加入を理由とする人員選定
  • 法令に反する命令への違反や不当労働行為の申告を行ったことを基準とする人員選定
  • 役員の高額な報酬を引き下げるなど解雇以外の他の手段を全く講じない状態での整理解雇
  • 解雇予告や解雇予告手当の支払いがない即日解雇
  • 労災療養期間・産前産後休暇中の期間およびその後30日間の解雇

などがあります。

リストラが認められる4つの要件

リストラが有効と認められるには、客観的で合理性的な理由があり、社会通念上相当と認められるものでなければなりません。その妥当性について、裁判所は次の4つの要件を重視し、総合的に判断しています。

人員削減の合理的な必要性がある

1つめの要件は、企業の経営上、やむを得ず人員削減をしなければならないという合理的な必要性があることです。

合理的な必要性についての明確な基準はありませんが、企業が経営の危機にあり、リストラによる人員削減以外に打開策がない場合は、合理性を認められやすくなるでしょう。吸収合併における組織再編で余剰となる人員のコストが経営を圧迫している場合も、リストラによって解決することが考えられます。

しかし、経営が危機的状況ではない黒字リストラにおいては、人員削減の必要性を認められない可能性が高くなります。事業成長途中における組織再編や将来を見越した人員整理では、解雇よりも前に、まずは他部署への配置転換や新規採用の停止などを行い、現在の雇用を維持する努力が求められます。

経営の状況を客観的な基準をもって示すには、業績や資産状況などを数値で明示できる決算書などを活用するとよいでしょう。

既にリストラ回避の努力を行った

2つめの要件は、解雇回避努力を行ったかどうかです。解雇は従業員に大きなダメージを与えます。そのため、法令では解雇を避けるための十分な努力が行われたかどうかを非常に重視しています。

解雇回避努力の具体例としては、

  • コスト削減
  • 役員報酬の減額
  • 賃金カットや賞与の不支給
  • 採用活動の停止
  • 残業の抑制
  • 配置転換や出向
  • 希望退職者の募集

などがあります。

特に希望退職者の募集は重要で、これを行ったかどうかが努力義務を果たしたか否かの判断に使われることもあります。いずれの対策をとっても人員整理に踏み切らざるを得ない場合に、リストラが現実味を帯びてくると考えましょう。

なお、これらの施策を行った経緯や結果を文書で残しておくと、あとで労働者から訴えられた際に客観的な証拠として提出することができます。

対象者の選定方法が合理的である

3つめの要件は、整理解雇の対象者が、客観的かつ合理的な基準によって選ばれていることです。

これも客観的かつ合理的な基準の具体的な内容は明確ではありませんが、認められやすい例としては、

  • これまでの勤務態度(遅刻や欠勤)
  • 勤続年数
  • 人事考課における成績

などがあるでしょう。いずれも数値で基準を示せる点にメリットがあります。

繰り返しになりますが、以下の基準による選定は、差別や違法として解雇権の濫用による不当解雇と判断される可能性が高くなります。

  • 労働者の国籍、性別、社会的身分、信条など
  • 労働組合加入の有無
  • 法令に反する命令への違反や不当労働行為の申告を行ったこと
  • 労災療養期間・産前産後休暇、およびその後30日間の期間にある従業員

解雇権の濫用と判断されないよう、法令に触れない客観性かつ合理的な基準を設定した選定を行い、その基準や選定の経緯を文書で残しましょう。

リストラの手続きに妥当性がある

そして4つめの要件は、手続きの妥当性です。具体的には、従業員や労働組合への十分な説明と協議を行うことを指します。

特に、労働協約に人員削減に関する条項がある場合は、その規定を遵守しなければなりません。条項がない場合でも、従業員や労働組合に対して、会社の経営状況とこれまでの施策の経緯、リストラが必要であること、人選の基準などをていねいに説明し、協議を行いましょう。

リストラの実施が決定したあとは、対象の従業員に対して30日以上前の解雇予告か、30日以上分の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要です。こうした手続きについても、きちんと説明を行います。

不当なリストラをしないためのポイント

企業はリストラを検討・実施するにあたり、先に述べた4つの要件を十分考慮する必要があります。

最後に、不当なリストラを避けて適切に手続きを進めるためのポイントをもう一度確認しておきましょう。

派遣社員や契約社員の更新停止・新規採用停止を行う

リストラが不当解雇として無効にならないようにするには、まず解雇以外の方法で人件費の見直しを行い、できるだけ解雇を避ける努力を行うことが大切です。

第一には、残業の抑制、会社資産の売却、役員報酬のカット、賞与のカットがあるでしょう。従業員の合意を得たうえでの出向なども、人件費削減につながります。

さらに、今いる正社員の雇用を守り、かつ将来発生する人件費を削減する代表的な方法に

  • 派遣社員や契約社員の契約を更新せずに人員を減らすこと
  • 新規採用や中途採用を停止して人員を減らすこと

があります。

これらの施策を行っても経営上の危機が続くようであれば、次の項目にある希望退職者の募集や退職勧奨を行いましょう。

なお、解雇を進めていながら新規採用も行っていると、従業員の理解を得にくくなります。リストラ自体が不当と判断される可能性が高まりますので、ご注意ください。

希望退職募集や退職勧奨を行う

報酬や給与の削減、人件費削減につながる配置転換や出向を講じても、まだ経営上の危機にある場合、正社員の希望退職者募集や退職勧奨を行いましょう。

個別の従業員への呼びかけは、1対1の面談がおすすめです。希望退職する場合のメリット(年次有給休暇の買取や退職金の割増、離職理由が会社都合になることなど)をていねいに伝えられるとともに、従業員側の本音も引き出しやすくなります。他のグループ会社や、上司や役員などのコネクションで就職できそうな会社がある場合は、就職のあっせんが可能であることも伝えられるでしょう。

ただし、退職させることを目的としたパワハラやいじめなどが発生すると、解雇の妥当性よりも前に他の労働法に抵触することになります。あくまで従業員への情報提供と協議、合意形成を前提に進めることが大切です。

対象の従業員や労働組合と協議する

こうした人件費の削減に向けた施策や、それでも踏み切らざるを得ないリストラについて、実施前に従業員側に状況や経緯を説明することも不可欠です。

特にリストラが避けられない場合、これまで行ってきた解決策とその効果を示し、それでも整理解雇を行わなければならないことを説明したうえで、今後の方針や進め方を協議しましょう。

忘れてはいけないのが、整理解雇の対象となった従業員は収入が途絶え、生活の基盤が失われるなど、多大な影響を被ることです。対象の従業員への説明責任を果たすとともに、退職金や、会社都合による離職の場合の失業手当など、経済的安定に関わる情報も提供しましょう。

解雇予告または解雇予告手当の支払いを行う

リストラの対象者が決定したら、解雇日の30日前までに解雇予告を行います。30日前までの解雇予告ができない場合や、解雇まであまり時間をかけられない場合は、30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払いを行いましょう。