BPRとは?業務改善との違いや事例をご紹介

published公開日:2022.11.25
目次
ビジネスを根本的に再構築して既存のルールを見直すBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)。ビジネスを成功に導くために企業だけでなく、多くの自治体でも取り入れられています。
本コラムでは企業にBPRを導入するメリットや導入方法、導入事例について紹介しています。BPR導入を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

BPRとは

BPRはBusiness Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の略で、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンスを劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義されています。一言でいうと、ビジネスを根本から再構築して、業務や組織の見直しを行うことを指します。

各企業、目的を持ちビジネスを行っていますが、細分化された組織が全て同じ方向を向けているとは限りません。
また、時代の変化に対して自社のやり方が合っていない可能性もあるでしょう。

そこで、企業における既存のルールや業務を根本的に見直すことで、効率的なビジネスを実現させることができるとして、BPRが注目され始めました。ただ組織や業務を改善するのではなく、新しい業務形態やITツールの導入を検討することも含まれていることが特徴です。

BPRを導入するメリット

BPRを企業に導入すると、具体的にどのようなメリットがあるでしょうか。BPRを導入した際の具体的なメリットは以下の通りです。

  • ・社内の業務効率化につながる
  • ・従業員の満足度が高まり、結果的に顧客満足度の向上につながる

多くの企業では、部門や部署、プロジェクトチームなどに細分化されており、それぞれが業績向上や業務効率化に取り組んでいます。しかし、社内全体を見渡すと、効率化のプロセスに不要な部分や手が加えられていない部分も見つかるでしょう。BPRでは社内の工程を全体的に見直すため、業務効率化を阻害するボトルネックを見つけ出すことができます。

また、社内全体の業務効率化に成功すれば生産性のアップ、ひいては業績の向上につながります。業績があがった分、従業員へ利益が還元されれば働く満足度が高まります。従業員の満足度はモチベーション維持にもつながり、従業員一人ひとりのパフォーマンスが向上していくようになります。

こうした良いサイクルが生まれ継続していけば、社内全体のパフォーマンスが高まっていくことでしょう。顧客対応や商品・サービスの品質も社内全体のパフォーマンスが高まるにつれてアップしていくことが見込めるため、最終的には顧客満足度向上にもつながっていきます。BPRを企業に導入することで、社内全体の業務効率化と従業員・顧客満足度の向上が期待できるといえるでしょう。

BPRがなぜ注目されているのか

BPRの考え方は業務や組織の根本的な見直しに役立ちますが、なぜいま注目されているのでしょうか。

BPRは1990年代に、マサチューセッツ工科大学の教授であったマイケル・ハマー博士と経営コンサルタントのジェイムズ・チャンピー氏により提唱されました。両名は業務が細分化・専門化することにより、ビジネスに非効率さやコストが発生していると指摘しています。

日本においてはバブル崩壊に伴う経営危機の際に、ビジネスを根本的に見直すためにBPRが注目されました。しかし、BPRを導入した結果、大量のリストラが起こり、一度は敬遠されることになった歴史があります。

近年は、グローバル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、働き方改革などを背景に、社会をとりまく考え方や価値観が急激に変化し、企業は変化対応が求められるようになりました。特に中小企業では、少子高齢化による人手不足や後継者不在の課題もあり、体質改善が求められています。時代の流れに残されないためには、大企業だけでなく、中小企業にも新しい技術やシステムの導入が必要不可欠です。企業が生き残っていくためには、組織や業務の見直しを図って競争力を強化し、生産性を高める必要があることから、一度は敬遠されたBPRが再度注目を集めているのです。

BPRと似た言葉

BPRと業務効率化の違い

BPRと業務効率化では、「全体のプロセス自体を見直すかどうか」といった違いがあります。

BPRでは業務や組織を最適化して、生産性や顧客満足度の向上を目指します。この際に効率化に至るプロセス自体も見直すのが特徴です。細分化された全ての業務において、顧客の価値につながらない部分は取り除くなど、業務の全ての工程を見直して、ビジネスを成功へと導きます。

一方、業務効率化では全体のプロセスには手をつけず、部分的な改善に注目しています。細かい部分を改善して、本来の業務をスムーズに行えるようにするのが業務効率化の目的です。

全体に手を加えるか一部なのか、というのが大きな違いといえます。

BPRと、BPO・RPAの違い

BPRと似た言葉にBPOとRPAがあります。BPRについてより詳しく理解するために、BPOとRPAにも触れておきましょう。

BPOはBusiness Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の略で、自社の業務を外部の専門業者に委託するという意味です。BPOでは業務のプロセス自体も委託する点で、一般的な外注と異なっています。自社では対応できないソフト開発やデジタルマーケティングを、外部の専門業者に委託するのもBPOの一環です。

RPAはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、ITやAIを活用した業務の自動化を図るためのツールです。BPRを活用した業務効率化でRPAを導入する機会があるので覚えておくと役立ちます。

BPRの導入方法

社内の改革をスムーズに行うためにも、BPRの導入方法を確認しておきましょう。

改善点のヒアリングと業務範囲の設定

まずは、BPRを導入する際には、各部門の従業員から改善すべき点をヒアリングします。ITやAIシステムの導入を行う際には、各部門を横断して業務を見直さなければなりません。社内のトップ層からは、企業戦略に則した改善点を聞き出しましょう。

その後、効率化の対象となる業務範囲の設定を行います。範囲を設定する際には以下の2つに注目してください。

  • ・BPRを行う目的・目標を明確にする
  • ・関連する部署と重要な関係者をリストアップする

上記の2つを徹底しておかないと、いわゆる「手段の目的化」が起こり、 BPRを導入しても本来の目的である業務効率化が達成できない可能性が高まります。注意しておきましょう。

対象業務の分析

各部門の従業員からヒアリングした改善点や対象となる業務範囲の設定を整理できたら、分析ツールも活用して自社の現状をできるだけ詳細に把握します。業務ごとに問題点の多い少ないがあるので、問題点の多い業務から優先的に分析しましょう。また、対象業務の分析を行う際には細分化された業務ごとではなく、社内全体を俯瞰して解決手段に落とし込むのが大切です。

BPRの目的は、業務を細分化したことにより生じたボトルネックを解消することにあります。組織内を横断的に分析して、社内全体のどこに問題があるのかを明確にしましょう。

計画や方針の策定

その後、計画や方針の策定を行います。複数の戦略案を出して全従業員が納得して取り組めるようにしてください。同意を得ずに実行に移すと、仕事の進め方が急に変わった・仕事が無くなったという不満が出てくるリスクがあるためです。また、必要に応じて業務の削減や、外部の専門家へのアウトソーシング(BPO)も検討しましょう。

複数の問題や課題を一度に解決することは困難です。リストアップした改善点に優先順位をつけて、改善による効果の高いものから取り組みます。また、本質的な問題を把握していない状態で、計画を実行するとムダなコストが発生するので注意しましょう。

計画の実行

計画を実行する前には、当初の目的や目標から方針がズレていないか、全従業員が納得した計画であるかを確認してください。BPRを活用した業務の改善では、社内全体が目的を共有していることが結果を左右します。

また、BPRを導入して社内改革を行うには、膨大な時間がかかります。すぐに結果は出ないと理解したうえで、最終的な目標だけでなく短期的な目標も立てておくことが大切です。

計画のモニタリング・評価

BPRを活用して業務改善に取り組んだら、定期的な計画のモニタリング・評価を行いましょう。モニタリングの際には、以下のような点に注意してみてください。

  • ・プロセスを含めてビジネスの進捗に問題は無いか
  • ・計画を実施したことで新たな問題は生じていないか
  • ・短期的な目標をクリアできているかどうか

計画をモニタリング・評価して問題点があれば、すぐに計画を修正しなければなりません。また、実施したモニタリング・評価の結果は全ての部署で共有しておきましょう。

BPRの事例

ここでは、BPRを活用した業務改善に取り組んで成功した事例を紹介します。

国内初のスポーツ新聞として知られる「日刊スポーツ」では、Webメディアで使用していたCMSの老朽化が問題となっていました。しかし、CMSはメディア事業の中核となるシステムであり、簡単に入れ替えることはできません。そこで、日刊スポーツはパートナー企業とともに、システムの刷新に取り組みます。その結果、情報発信のスピードアップと、業務統制が可能になりました。

日立製作所では中期経営計画を実現するために、ITを活用した新システムを構築して、高効率経営システムの実現を目指しています。計画設計からの1年間で約100億円の投資を行い、財務部門・人事総務部門・資材部門で新システムを導入。これにより、業務量の削減や資材手配の効率化を実現しています。

また、アメリカの大手自動車メーカーであるフォードでは、間接費と管理コスト削減のために、支払い部門の人員削減を検討していました。そこで、注文受取りから支払いに至るまでの複雑なプロセスの見直しを実施し、支払いではなく調達プロセスのリエンジニアリングを決定。商品到着時にオンラインデータベースを確認し、注文に紐づけて小切手が自動で発行される仕組みを導入しました。その結果としてフォードでは、支払い部門の人員を500人から125人へ削減することに成功しています。

ムダな業務を見直して生産性を上げよう

BPRは自社のビジネスにおけるプロセスを根本的に見直して、業務のムダを改善する手法です。政府が推進するDXや働き方改革に対応するために新しいツールの導入が必要なら、BPRの考え方が役立つでしょう。

社内のムダな業務を見直して、生産性を上げたい場合はBPRの導入を検討してみましょう。

ALL DIFFERENT株式会社の「覚悟のタイムマネジメント」では業務の取捨選択を行い、ムダを省くノウハウが身につけられます。BPRの導入による生産性向上を検討している方は、覚悟のタイムマネジメントをぜひご活用ください。

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