BPRとは?BPMやBPOとの違い、重要フレームワークと成功事例

update更新日:2026.02.16 published公開日:2022.11.25
BPRとは?BPMやBPOとの違い、重要フレームワークと成功事例
目次

BPRとは、日本語で「業務改革」を意味します。外部環境の変化や人材不足といった問題に対応するための手法として、現在再注目されています。

本コラムでは、BPRの定義と目的、関連する用語であるBPM、ERP、BPO、RPAとの違い、BPRに役立つ手法やサービスとともに、効果的なBPRの実践ステップと成功事例を解説します。

BPRとは?定義・提唱者と再注目される理由

BPRとは、Business Process Re-engineeringの略で、業務改革を意味します。アイデア自体は1990年代初頭にさかのぼりますが、近年、企業存続・発展に課題を抱える日本で再注目されるようになりました。

まずは「BPRとは何か」を見ていきましょう。

BPRの定義と提唱者

BPR(Business Process Re-engineering)は、直訳すると「ビジネス・プロセスの再構築」という意味になります。BPRで進められるのは、業務の本質的目的を踏まえた組織体制・業務フローの抜本的見直しと業務プロセスの最適化です。

行政の様々な資料にもBPRの定義が見られます。例えば、国税庁のWebサイトには、「既存の組織やビジネスルールを抜本的に見直し、プロセスの視点で職務、業務フロー、管理機構、情報システムを再設計すること」とあります。*1

デジタル庁による自治体向けの「窓口 BPR アドバイザー派遣事業及び育成事業実施要綱」に記載された定義は、以下のようなより詳しいものでした。

【デジタル庁によるBPRの定義】*2

第2条 本要綱において「BPR」とは、業務本来の目的に向かって既存の組織や制度を抜本的に見直したうえで、現在の職務、業務フロー、管理機構、情報システム等をプロセスの視点で再設計することをいう。また、「窓口 BPR」とは、「窓口利用体験調査」により基礎自治体の窓口業務の課題を把握し、窓口のレイアウト変更や庁内体制の見直し等を行うことで、窓口業務のプロセスを抜本的に見直すことをいう。

BPRの提唱者は、マイケル・ハマー氏とジェームス・チャンピー氏。2人の共著『リエンジニアリング』(日本経済新聞社)が日本で1993年に刊行され、広く知られるようになりました。

  • 会社全体の目標設定
  • トップダウン型プロジェクトによる実行
  • ゼロベースでの課題抽出と改善
  • 効率化のためのIT活用および現場への権限委譲

といった点がBPRの特徴です。

*1 出典:「Ⅱ 納税者サービスの充実と行政効率化のための取組」(国税庁)

*2 出典:「窓口 BPR アドバイザー派遣事業及び育成事業実施要綱(令和 7 年 8 月 26 日デ社第 473 号)」(デジタル庁)

BPRの日本における影響と再注目される理由

そもそもBPRが提唱された理由は、産業や技術の発展によって専門化・分業化が高度なレベルで進んだことです。業務プロセス単位では効率化されていても、全体としては非効率な状態が続いているという状況への問題意識でした。

BPRが紹介された当時、日本はバブル崩壊直後。先行きの暗い経営環境で、多くの企業が存続に向けた一手を求めていました。BPRはそうした要求に応えるアイデアだったのです。

ところが、主に採られた手段は業務改革に伴うリストラ。BPR自体に悪印象がつき、あまり注目されなくなりました。

現在、改めてBPRが注目されている理由は、少子高齢化を背景とする慢性的な人手不足と価値観の変化です。

従来よりも少ない人数で事業を継続していくには、業務の効率化が欠かせません。加えて、働き方の多様性や変化し続ける市場ニーズに対応するには、IT活用による情報処理の省力化と意思決定の迅速化も必要。こうした課題解決のため、BPRが推進されているのです。

BPRとBPM、ERP、BPO、RPAの違い

業務効率化に関わるビジネス用語には、BPMやERP、BPO、RPAといったアルファベット3文字の言葉が多く見られます。混乱しないよう、それぞれの意味とBPRとの違いをチェックしておきましょう。

BPRとBPMの違い

BPMとは、Business Process Managementの略。自社の戦略と整合的な業務プロセスを目指し、継続的な改善サイクルを回す管理手法です。

BPMの特徴は、経営戦略を現場レベルの実践と結びつけるプロセスモデルを設計し、実践する中で改善サイクルを回すことにあります。現場でのモニタリングが欠かせない、ボトムアップ型の業務プロセス最適化の手法です。

BPRとBPMの共通点は、全体最適化を図るという目的。違いは、BPRが業務プロセスだけでなく組織体制や戦略も含めたトップダウン型の改革であるのに対して、BPMは各業務プロセスにおけるボトムアップ型の改善サイクルであるという点です。「BPRで抜本的な改革を実施し、BPMで現場レベルの改善を続けていく」とイメージすると、わかりやすいでしょう。

BPRとERPの違い

ERPは、Enterprise Resources Planningの略です。基本的な経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報の適切な配分と活用を行う手法であり、「統合基幹情報システム」とも呼ばれます。

ERPの特徴は、複数の部署に分散しているシステムやデータを一見管理できるようになること。データの抜け漏れや重複を減らすことで、業務効率化とコスト削減を実現します。

BPRとERPの違いは、目的と手段の違いです。ERPは、BPRの業務改革に用いられる具体的な手段の1つ。詳しくは、「BPR推進で重要なフレームワーク・サービス6選」で改めて解説します。

BPRとBPOの違い

BPOは、Business Process Outsourcingの略であり、簡単にいえば外部委託(業務委託)のことです。

BPOには、コア業務以外の業務をほかの企業や個人にアウトソーシングすることで、自社業務を減らせるというメリットがあります。当該業務を得意とする相手に委託できれば、業務の質も高められるでしょう。周辺的な業務に費やしていた時間はコア業務に使えるようになります。

BPRとBPOの違いも、ERPとの違いのように目的と手段の違いです。BPOでは業務プロセスの一部または全部を外部に委託することで業務効率化を図ります。

BPOについても、詳細は後述します。

BPRとRPAの違い

RPAは、Robotic Process Automationの略。主にパソコンとソフトウェアを用いて、事務業務を自動化する手法です。

RPAの特徴は、遂行手順が確定している単純作業を自動化することにより、それまで人間が手で入力していた業務を大きく省力化できること。現在は、コードの記述が不要なノーコード開発も可能となっており、非IT系職種でも活用されるようになりました。

例えば、

  • 定型的な情報について、表計算ファイルのシートに転記する
  • 定型的な文章を使ったメールを送信する
  • 指定ファイルからデータを読み込み、システムに登録する

といった業務を自動化できます。

BPRとRPAの違いも、目的と手段の違いです。つまり、BPR推進の1つの道具としてRPAが活用されます。

BPRの目的と必要性から見るメリット

冒頭で解説した通り、BPRには人手不足や外部環境の変化に対応するという目的があります。効果的なBPRが実現すれば、そこから得られる恩恵は決して小さなものではありません。単純な業務効率化だけでなく、顧客や従業員の満足度向上、DX推進にもつながるのです。

具体的に3つのメリットを解説します。

業務改革で効率化・生産性向上につながる

BPRと業務改善との違いは、特定の業務プロセスだけでなく、組織や体制全体の改善も行う点にあります。部署横断的な体制・ルールの見直しと再構築は、業務改善よりも規模が大きいということです。

同時に、BPRでは、組織全体を見渡して業務プロセスを改善するとともに、属人化していた業務プロセスの標準化も進めます。標準化により、担当者が不在でもほかの社員が代わりに業務を進められるようになります。担当者による業務の質のバラツキも抑えられるでしょう。

結果として、迅速な業務遂行が可能となり、組織の生産性が向上します。

全体最適化によるコスト削減・満足度向上を図れる

BPRを実施する前の業務プロセスでは、往々にしてチェック業務の不必要な重複やヒト・モノの移動があるものです。当然ながら、そこには金銭的・時間的コストがかかっています。

BPRによる全体最適化を実施することで、こうした重複やロスを減らすことができます。生産性を損なう金銭的・時間的コストが減り、ヒト・モノ・カネの効果的な配分を実現できるでしょう。

その結果、情報の流れもスムーズになります。度重なるチェックで滞っていた意思決定が効率化され、必要な情報が迅速に手元に届くのです。ミスやトラブルの早期解決にも寄与しますので、顧客や対応にあたる従業員の満足度向上につながるでしょう。

DX推進と同時に進められる

ITの発展が目覚ましい昨今、「BPRといえばDX推進」と言っても過言ではありません。DXとはDigital Transformationの略であり、従来の業務にITを導入して効率化することを意味します。

定義上、BPRにDXが必須というわけではありません。ただ、現在ほどのITがある中で、DXなしでBPRを進めることはほぼ不可能といえます。これまでITをあまり活用せずに業務プロセスを組んできた企業であれば、DX推進こそがBPRの要です。

日本では、ビジネスにおける生産性向上を目指し、国がDX推進を主導しています。BPRとDX推進は両輪の関係。BPRを進めればDXも進み、国からの要請にも応えられるでしょう。

BPRの「うまくいかない」というデメリット

全体最適化を目指すBPRの発想自体は、現在のビジネスに不可欠な視点です。ただ、BPRを実行しようとしても「うまくいかない」「思ったように進まない」と嘆く声は多く聞かれます。

こうした“進めにくさ”には、2つの要因が指摘されています。

【要因1】現場のメンバーが混乱している

BPRでは、抜本的な業務改革を行います。業務の遂行方法が大きく変わり、新システムへの移行が生じることも珍しくありません。

トップダウン型で進むBPRでは、ともすれば現場の混乱が置き去りにされてしまいます。どのような業務フローになるのか、新システムをどのように使えばいいのかなど、現場への情報共有とトレーニングが不十分なまま、「新しいやり方に慣れてほしい」という要求ばかり伝えることになってしまうのです。

現場への丸投げが続けば、その不満は蓄積されていきます。最終的に「BPRなんて意味がない」という憤りやモチベーションの低下さえ招くかもしれません。

こうしたデメリットを回避するには、経営層から繰り返しBPRの重要性を伝えながら「皆で目標達成に向かっていく」という一体感を醸成することが大切。加えて、現場レベルの技術的サポートを実施計画に含めることもポイントです。一時的な生産性の低下があっても現場を責めずに、根気よく現場担当者のスキルアップを支援しましょう。

【要因2】業務改革にはコストがかかる

組織体制やシステムの再構築を伴うBPRは、費用・時間ともに多大なコストを要します。新しい業務プロセスやシステムの導入から生産性向上までの期間も決して短くありません。

すると、「これだけ投資をしたのに、効果がない」と感じられてしまいます。管理職や経営層にとっては「自分の判断は間違っていたのではないか」と不安になる状況です。

大きなコストと成果のアンバランスという試練を乗り越えるには、「目標達成に向けた施策として妥当な施策を選定したか」を繰り返し確認しましょう。自信をもってYESと答えられるのであれば、現場を支援しながら結果を待つしかありません。次から次へと施策を変えれば、根拠ある効果測定が難しくなってしまうからです。

現場の支援においては、解決すべき混乱や課題がないか、定期的にチェックしてください。その場しのぎの対応で余計なコストをかけるのではなく、常に本質的な目的・目標に立ち返ることが成功の鍵です。

BPRを実施した企業・自治体の成功事例

ここで、BPRによって業務効率化を実現した国内成功事例を3つご紹介します。BPRの実際の効果をご確認ください。

日刊スポーツ新聞社のCMS刷新

国内ではじめてスポーツ新聞を発行した株式会社日刊スポーツ新聞社。「日頃、愛読している」という方もいるでしょう。

日刊スポーツ新聞社は、時代の変化とともに、新聞の発行だけでなくWebメディアの運営などにも事業。その中で、CMS(コンテンツ管理システム)の老朽化という課題を抱えていました。システムのレスポンスが遅くなっており、課題の存在にも気づきにくい構造だったのです。

そこで、業務改革を実施。CMSを刷新し、AWS(Amazon Web Service)上で使えるようにしました。

BPRの進め方の特徴は、要件を細かなレベルまで練り込んだことと、アジャイル開発によって開発・改修・評価のサイクルを回しながらシステムを構築したこと。業務プロセス改革として設計した“理想のワークフロー”を実現できるシステムであるとともに、現場で使いやすいことも重視しました。

新システムへの移行に対する反発や混乱を軽減するため、システム稼働の約2カ月前に研修も実施しています。

その結果、原稿完成からサイト反映までにかかる時間の大幅な短縮、業務の質向上につながるワークフローの確立、各メンバーの役割の明確化を達成。更新作業完了ボタンを押すと、自動的に承認権限をもつ社員のタスクに反映されたり、業務履歴がシステム上に記録されたりするなど、フローの円滑化と確認の省力化が実現されました。

参考:「導入事例 コンテンツ管理システムを刷新」(キヤノンITソリューションズ株式会社)

日立システムズと自治体のBPR共同研究

自治体におけるBPRの成功事例は、株式会社日立システムズと茨城県の東海村による共同研究です。全庁の業務を可視化するとともに、業務量削減効果の検証と実践によって、自治体の業務に適用可能なBPR手法を考案しました。2022年度は全29課で約3,970時間を削減。2024年度は約6,300時間の削減に成功しています。

2022年度に実施した施策は、主に以下のものでした。ABC分析を用いた対象業務の絞り込みとDX推進支援を取り入れている点が特徴です。

【東海村における2022年度のBPR施策】

ステップ 主な施策
現状把握・分析
  • 全課に業務抽出アンケートの実施
  • ABC分析の実施
業務改善案の検討
  • 改善策と業務改善実行計画を作成
  • 各課の実行計画を作成
仕組みの整備・実行
  • 各課における実行計画に基づく取り組みの実施
  • DX所管課による現場支援の実施
  • BPRマネジメント手法を確立

ABC分析では、全4,339業務のうち592業務が全業務時間の80%を占めていることが判明。この592業務からさらに174業務を選定し、優先して改善に取り組みました。ノーコードツールの試験的導入と人材育成も実施しています。*1

東海村では、取り組みの成果が出たあとも、継続的にBPRを推進してきました。例えば、2024年度はDX専門員がBVAマクロやRPAを活用する業務最適化を支援し、現場職員のスキルアップ施策として勉強会やITツール体験機会を設定。BPR実行について相談できる窓口も設置しました。相談窓口には年間計203件の相談があり、高い利用実績だったとのことです。

2024年度、特に大きな業務時間の削減に成功したのは、保険課(約2,040時間)、住民課(約1,000時間)、税務課(約900時間)でした。*2

*1 参考:「東海村と日立システムズによるBPR(業務改革)共同研究の結果について」(株式会社日立システムズ)

*2 出典:「R6年度 東海村BPR実行計画に係る最終報告」(東海村)

ソフトバンクの全社的プロジェクト

ソフトバンク株式会社も大規模なBPRを実施しています。今回ご紹介するのは、2019年4月から2022年3月の3年間に全社的プロジェクトとして実施された「デジタルワーカー4000プロジェクト」。新規事業開拓や付加価値の高い業務への時間配分を目的とする業務効率化施策です。

ソフトバンクが実施した主な取り組みは次の通りです。

【ソフトバンクのBPR施策例】

  • 電子押印の導入
  • 事務作業におけるRPA活用
  • 新卒採用選考におけるAI動画面接
  • カスタマーサポートサイトの立ち上げ

BPRを進める際は、現状把握と課題の可視化、業務プロセスの再設計、全体方針の策定と成功事例の共有、人材育成、事業部門ごとの「改革リーダー」の配置なども実施。業務プロセスの再設計では、不要な業務の廃止と複雑な業務の簡素化、デジタルツールの導入を進め、人材育成においては、BPR関連研修、AI基礎研修、RPA開発者育成支援なども行ったとのことです。

こうした業務改革により、ソフトバンクは約241億円のコスト削減に成功しました。

参考:「AIやRPAの活用などにより約4,500人月相当の業務時間を創出、創出した時間で新規事業をさらに加速」(ソフトバンク株式会社)

BPR推進ステップ:目的の明確化から効果測定までの進め方

では、BPRの具体的な進め方を見ていきましょう。

ポイントは、「検討・分析・設計・実施・評価」という5つのステップに分けて実行すること。思いつきで一気に全体のやり方を変えると現場が混乱し、激しい抵抗を引き起こしてしまいます。現場の負担を少しでも軽減できるよう、目的設定や対象業務範囲の明確化、計画的な実施と効果測定を行ってから、全社的な展開へと進みましょう。

【検討】BPRの実施目的・対象業務範囲の明確化

まずは、「なぜBPRを実施する必要があるのか」という目的を中長期経営計画や各戦略に基づき明確にしましょう。全ての社員が“自分事”として捉えられるものにすることが重要です。

BPRは元来トップダウン型であり、「経営層が一方的に押し付けてきた」という印象を与えやすいもの。「押し付けられた」という感覚が強いほど、全社的な業務改革は困難になります。だからこそ、経営層や管理職だけでなく、一般社員にまで響く目的設定が欠かせません。

同時に、BPRの対象となる業務範囲も定めましょう。まずは限られた範囲の事業や業務プロセスを中心に既存の業務フローをたどり、「どの部署が関係しているのか」「部署間での情報・意思決定の流れはどこからどこにつながっているのか」を確認してみてください。業務フローを図などで可視化することも有効です。

【分析】現状把握・課題抽出・課題分析

各業務フローの重要度から改革対象となる業務プロセスや範囲を選定したら、次は当該業務範囲における現状把握と課題の抽出・分析を行います。

現状把握では、財務諸表のチェックおよび市場分析はもちろん、現場や顧客へのヒアリングも行いましょう。効果的な情報収集のためにヒアリングシートを作成するのも良い手です。

情報が集まったら、どのような分野に非効率的なプロセスが見られるか、顧客や現場が困っているかなどを分析。部署横断的に業務プロセスを見ながら、重複する業務や不要な業務がないかも確認してください。

【設計】BPR実践に向けた計画立案と業務プロセスの設計

設計のステップでは、課題解決に向けた具体的な計画を策定します。

繰り返しになりますが、最初から全社的な実施を前提とするのではなく、特定の事業やプロジェクトでの試験的導入から始めましょう。そのほうが、計画に不備があってもダメージを抑えられますし、迅速な改善もできるからです。

計画立案で意識するのは、

  • 業務フローの改善と標準化
  • 業務システムの再構築
  • 業務効率化のためのツール・サービスの導入
  • 業務の外部委託の可能性

といったポイントです。

加えて、属人化された業務がないかどうかも必ずチェックしてください。属人化している部分のノウハウを社内で共有する仕組みを整え、「どのように進めれば成果につながりやすいか」も含めて縦横に展開できるよう、標準化を進めましょう。

顧客との関係性やサプライチェーン全体の改革も進めるなら、BPRの目的および新プロセスでの変更点を取引先に共有することも大切です。

【実施】新業務プロセスの試験的導入と効果測定

計画の策定後は、組織体制・システムの再構築と新しい業務プロセスの試験的導入です。試験的導入の前に、対象業務に関わる社員には経営トップから十分な説明を行ってください。

  • BPRによって何を達成したいのか
  • BPRによって社員にどのようなメリットが生まれるのか
  • BPR実施後はどのような働き方になるのか
  • BPRはどのように進めるのか

といったことを示すと、社員の納得感を高められるでしょう。そして経営層が「本気で業務改革を進める」という姿勢を示すことで、現場のやる気を高めます。

社内ポータルサイトなどには、ぜひ進捗状況や成功体験、現場メンバーからのコメントを掲載してください。社内の状況が見える化され、その後の全社展開のイメージをつかみやすくなります。特に成功体験の共有は、BPRへのポジティブなイメージの拡大につながり、具体的な進め方を知る機会となるでしょう。

試験的導入の効果測定では、例えば以下のようなポイントを追いかけていくとよいでしょう。

【効果測定で意識するポイント】

  • 現場の生産性の変化
  • 担当者の混乱の有無と程度
  • 従来の業務プロセスに見られた課題の改善状況
  • 新たな課題の有無

もし新たな課題が生じたら、体制や業務フロー、システムを改善します。

【評価】全社展開、モニタリングと改善

問題を解決できたら、いよいよ全社規模でのBPRです。経営層から改めてBPRの目的・目標を伝え、何がどのように変更されるのかを明確にしましょう。

新体制での業務遂行方法や新システムの使い方などは、研修・セミナーを通じて伝え、トレーニングの機会を与えましょう。

導入初期は、どうしても慣れるまでの時間が必要です。一時的に生産性が低下するかもしれません。一喜一憂せず、技術面・精神面で現場をしっかりサポートしてください。

もし新たな問題が発生した場合は、改めて問題をヒアリング・分析し、対策を講じなければなりません。継続的なモニタリングと改善を繰り返すことで、より自社に合ったシステム・業務プロセスを構築していきましょう。

BPR推進で重要なフレームワーク・サービス6選

社内でのBPR推進には、様々な手法を活用できます。今回は、特にBPRで言及されることの多いフレームワークやサービスを6つご紹介します。

ABC(Activity Based Costing)分析

1つ目は、ABC(Activity Based Costing、活動基準原価計算)と呼ばれる手法を用いた分析です。日立システムズと東海村の事例にも登場しました。業務プロセスを活動単位に分け、それぞれのコストを具体的な数値で算出して分析します。光熱費や消耗品など、「どこで何のために使われているか」がわかりにくい間接費の分析に使われます。

例えば、ある業務プロセスAで使用される設備のコストの場合、「設備の時間単価×稼働時間×単位期間中の発生回数」で計算できます。人件費であれば、「従業員の時間単価×労働時間×単位期間中の発生回数」です。

ABC分析のポイントは、事業活動や業務プロセスといった「活動」が「資源」を消費するものであるという視点です。業務プロセスなどの収益性と資源の消費(コスト)のバランスを確認することで、BPRの対象業務範囲を選定したり、具体的にどこを削減・置換するかを検討したりできます。

BSC(Balanced Scorecard)

2つ目は、BSC(Balanced Scorecard、バランススコアカード)です。自社の業績を財務面からだけでなく、顧客・内部プロセス・学習と成長といった視点からも分析する手法です。経営目標や戦略の策定、経営マネジメントのために使われています。

BSCの基本的な考え方は、下表のようになります。

【BSCの考え方】

視点 考え方
財務 財務的な利益をステークホルダーにもたらすために、どのように行動すべきか
顧客 戦略を成功させるために、どのようにして顧客に価値を提供し、信頼を獲得すべきか
内部プロセス 財務や顧客の視点における目標を達成するために、どのような業務プロセスの構築・改善をすべきか
学習と成長 ほかの3つの視点における目標を達成するために、従業員の能力開発・人材育成においてどのような施策を実施するべきか

具体的なKPIとしては、財務の視点では売上高や利益率、ROE(自己資本利益率)などがあるでしょう。顧客の視点では、顧客満足度やリピート率、クレーム発生率などが代表的指標です。

そして、それらの目標を達成するための内部プロセスの視点では、不良品発生率、レスポンスタイムをKPIに設定し、業務プロセスの最適化を図ることができます。学習と成長の視点では、資格取得数や特許取得数、従業員満足度などを設定し、一人ひとりの成長を可視化するとともに、待遇面での評価も連動させましょう。

こうした多角的なKPIの設定と一貫性のある施策が、BPRの成功率を高めます。

シックスシグマ(Six Sigma)

3つ目は、シックスシグマ(Six Sigma)です。統計学的視点による経営・品質管理のフレームワークであり、主に製造業で活用されるトップダウン型の手法です。現在は、「Lean(無駄を省く)」という観点を加えて「リーンシックスシグマ」も使われます。

シックスシグマの活用目的は、業務プロセスの改善によって、品質のばらつきを抑えること。製造部門に加え、営業部門、企画部門などの業務プロセスの分析も可能ですので、サービスの品質改善や顧客満足度向上にも役立つでしょう。

シックスシグマは、PDCAのような改善サイクルの継続的実施が基本です。具体的には、既存の業務プロセス改善サイクルとしてのDMAIC(ディーマイク)です。ほかに、新規プロセス構築のための活動サイクルであるDMADV(ドマドブ)もあります。それぞれの構成要素は、下表の通りです。

【DMAICの構成要素】

要素 概要・進め方
Define(定義) 顧客の声(VOC、Voice of the Customer)から不満点を探り、経営課題として解決すべき重要なニーズ(CTQ、Critical To Quality)を定める。CTQに基づいて改善に向けた数値目標を定める
Measure(測定) 現在の状況について正確なデータを収集する。プロセスマップを作成し、問題が発生している箇所を明確にする
Analyze(分析) 多様な問題分析の手法を活用しながら、改善すべき課題の発生原因を分析する
Improve(改善) 複数の解決案について過去のデータを活用しつつ費用対効果を計算する。費用対効果が最も優れている案をベースに業務プロセスの改善計画を策定し、試験的導入と検証を行う
Control(管理) 試験的導入で良い成果が得られた業務プロセスを現場に適用・拡大する。プロセス導入後は、Defineで設定した問題が解決されているかをモニタリングし、現場レベルで継続的な改善サイクルを回す

【DMADVの構成要素】

要素 概要・進め方
Define(定義) 事業の目標と顧客像を定義し、プロジェクト計画を策定する
Measure(測定) 顧客ニーズ(CTQ)を調査・特定する。品質に影響すると思われるリスクを特定する
Analyze(分析) 業務プロセス案を複数作成し、それぞれの強み・弱みを分析する
Design(設計) 最適と思われる案をベースに、具体的な業務プロセスを設計する
Verify(検証) 試験的に導入し、業務プロセスを検証する。本格的な導入後は、DMAICの改善プロセスに移行する

BPRで業務改革を実施する際はDefine・Measure・Analyzeを軸として、1周目のImprove・Controlを実施するか、DMADVのDesign・Verifyを実施するイメージです。BPRが成功したあとは、2周目以降のDMAICに移行します。

シェアードサービス

4つ目は、シェアードサービスです。簡単にいえば、グループ企業において経理や財務、人事、物流といった間接部門を1つの部署に集約させ、業務の標準化・効率化を図る手法となります。先3つの分析・改善手法とは異なり、業務の管理手法です。

シェアードサービスの対象となり得る具体的な業務は、総務、人事、経理、法務など。これらを担う部署を独立した子会社として設置するか、本社の一部署として設置し、集約化を図ります。

シェアードサービスの最大のメリットは、グループ内の複数の企業で重複していたシステムを一元的に管理・運用できること。各社でのサービス契約や担当者の配置が不要になるため、運用コストを削減できます。また、データや業務プロセスが1箇所にまとまることで業務効率が上がり、手法の統一によって業務の品質も改善されます。

BPO(外部委託・業務委託)

5つ目は、冒頭で紹介したBPOです。自社の業務プロセスの一部または全部を社外の企業や個人に委託することで、自社の業務効率化を実現できます。

委託する業務の代表例は、データ入力や表計算ソフトを活用した帳簿・資料の作成など。“優先度が高くないものの決してなくすことができない業務”がBPOに適した業務です。

ただし、“丸投げ”のまま自社で何も把握せずにいると、思わぬトラブルが発生する恐れもあります。定期的なコミュニケーションとチェックにより、適切な業務遂行がなされているか、成果はきちんと出ているかなどを確認しなければなりません。

業務委託の詳細や、業務委託先の選択肢である個人事業主との関係で注意したいことなどは、以下の関連コラムで解説しています。

コラム「業務委託とは|簡単にわかる契約の種類と違い、メリット、注意点」はこちら

コラム「フリーランスとは?個人事業主との違いやメリット・デメリット、企業の注意点」はこちら

ERP(統合基幹情報システム)

そして、6つ目がERPです。BPRには、基本的な経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報の適切な分配と活用が必須。組織体制や事業が複雑化している現在において、「BPRといえばERP」とさえ言えるでしょう。

企業規模が小さいためにERP導入の必要性が高くない企業であっても、ERP活用にはメリットがあります。ERPのシステムには他社のBPRで成功した情報管理やリソース配分などが反映されており、自社の状況分析や配分の最適化の参考になるからです。

BPRに関するノウハウが少ないうちは、ERPを活用することで、業務改革のスピードアップを図れるでしょう。

BPRに必要なスキルと役立つ資格

BPRにおける課題分析や問題解決を進めるには、思考力やIT関連の知識が欠かせません。例えば、以下のようなスキル・資格が役立ちます。

  • ゼロベース思考
  • ロジカルシンキング(論理的思考)
  • クリティカルシンキング(批判的思考)
  • ITスキルとITパスポート資格

順番に見ていきましょう。

ゼロベース思考

BPRでは、従来のやり方に縛られず、「最初から作り直す」レベルで見直しを進めなければなりません。つまり、ゼロベース思考です。

「この業務は○○のやり方でやってきた。変えれば現場が混乱する」という懸念はBPRを進める過程でよく見られますが、業務改革の対象外とする領域が増えるほど、改革が頓挫しやすくなってしまいます。

従来のやり方の変更や業務の廃止も含めて見直し、これまでの“当たり前”にまで踏み込む業務改革案を出すには、前提から考え直すゼロベース思考が重要です。

ロジカルシンキング(論理的思考)・クリティカルシンキング(批判的思考)

改善策の検討に欠かせない思考スキルが、ロジカルシンキング(論理的思考)とクリティカルシンキング(批判的思考)です。

ロジカルシンキングの特徴は、結論に向けて根拠を積み上げながら考えること。一般的な法則から結論を導く方法を「演繹法」、具体的な事例から一般的な法則を導く方法を「帰納法」と呼びます。この演繹法と帰納法を組み合わせながら、結論に向けて思考を進めます。

一方、問題の分析や複数ある施策案からより良い案を選ぶ際に必要なのが、クリティカルシンキングです。論理的正しさだけでなく、推論の前提や基準の適切さも吟味します。問題の本質の分析、リスク予測など、活用場面は多いでしょう。

ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの詳細については、ぜひ以下の関連コラムをご確認ください。

コラム「論理的思考(ロジカルシンキング)とは?意味や鍛える方法を解説」はこちら

コラム「合理的思考とは?論理的思考との違いと鍛えるポイント」はこちら

コラム「クリティカルシンキングとは?意味・例題と実践トレーニング3つのコツ」はこちら

ITスキル・ITパスポート資格

現在のBPRは、IT活用なしでは進められません。クラウド型のサービスやシステムの導入、Web通話、ERPのようなシステムへの入力・更新などはほぼ必ず発生します。

現場のITスキル向上の第一歩として活用されるのが、「ITパスポート」。ITの基礎知識があることを証明する国家資格です。今やITパスポート受検の累計応募者数は230万人を突破し、その約8割が社会人。試験範囲には、AIなどの新しい技術やアジャイルなどの手法、経営全般の知識、セキュリティやプロジェクトマネジメントの知識などが含まれます。

非IT系管理職であっても、ITパスポートの取得を目指して学ぶことで、IT活用の全体像と基礎知識をおさえられるでしょう。

参考:「ITパスポート試験 応募者データ」(ITパスポート試験)

BPRに必要な業務フロー分析・標準化の基礎は研修・セミナーで

時代の変化に対応しながら企業の存続や安定的成長を図るには、現在の体制と業務プロセスを見直すBPRの観点が必要です。

BPRを成功させるには、先進事例からノウハウを学び、効率化に役立つ手法・システムを上手に活用することが鍵。加えて、現場のスキルアップも欠かせません。

多くの企業で人材の能力開発とスキル向上をご支援してきたALL DIFFERENTでは、BPR成功に役立つ業務の標準化や思考力強化に役立つ研修・セミナーを数多くご提供しています。BPRでの現場支援に、ぜひご活用ください。