社会保険とは?種類や加入条件をわかりやすく解説
更新日:2025.11.13
公開日:2024.08.29

社会保険とは、リスクに備える公的保障制度です。パート・アルバイトを問わず、条件を満たす労働者には加入義務があります。
本コラムでは、社会保険の種類、加入と扶養の条件、社会保険料の計算方法などについてわかりやすく解説します。
社会保険とは?定義と役割をわかりやすく解説
社会保険は、日本の公的保険制度の中核を担う仕組みで、私たちが生活するうえで欠かせない保障の役割を果たしています。
最初に、社会保険の定義や国民保険との違いについて確認しておきましょう。
社会保険の定義
社会保険とは、保険料を支払うことで病気やけが、老後の年金、介護、失業、労災といったリスクに備える公的保険制度です。
広義では健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5つを含みます。一方、狭義の社会保険は主に健康保険、介護保険、厚生年金保険の3つを指すことが多いです。
| 広義の社会保険 | 健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険 |
|---|---|
| 狭義の社会保険 | 健康保険、介護保険、厚生年金保険 |
また、社会保険という言葉は、自営業者や年金生活者などが加入する国民健康保険と国民年金に対し、「サラリーマンなど企業に勤務する人が加入する保険」という意味で使われることがあります。
一口に社会保険といっても、使われるシーンによって意味合いや定義が異なるので注意が必要です。
本コラムでは、特に明示したとき以外は、狭義の社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金保険)について解説していきます。
社会保険と国民保険の違い
社会保険と国民保険は、加入対象や負担方法に大きな違いがあります。
社会保険は主に企業に勤務する人が加入し、保険料の一部を会社が負担します。一方、国民健康保険と国民年金は、個人事業主や無職の人など、企業に属さない人が自ら全額負担して加入する仕組みです。
また、社会保険は給与に応じて保険料が決まるのに対し、国民保険は所得や世帯構成によって計算されます。保険料計算方法や給付内容にも違いがありますので、それぞれの特徴や仕組みをよく理解することが大切です。
社会保険の役割
社会保険の役割は、病気やけが、老後の生活、失業、介護など、生活の様々なリスクから私たちを守ることです。
私たちは働くことで収入を得て生活していますが、何らかの理由で働けなくなると収入が途絶え、暮らしが成り立たなくなってしまいます。そのようなリスクに備え、国民の生活を保障するために設けられたものが、社会保険制度です。
社会保険は、保険料を社会全体で支え合う仕組みのため、所得に応じて負担が決まる公平性も大きな特徴です。働く人にとって、セーフティネットの役割を果たし、国民全体の生活基盤を支える重要な制度といえます。
社会保険事務所・社会保険労務士とは
社会保険に関連した言葉として、「社会保険事務所」や「社会保険労務士」があります。ここでそれぞれの言葉の定義と概要を確認しておきましょう。
社会保険事務所は、社会保険の加入や保険料の手続き、各種給付の申請をサポートする公的機関です。主に会社や事業所が必要な届け出を行う窓口となり、正確な運用を支えています。
一方、社会保険労務士は、企業や個人の社会保険・労働保険の手続きや、労務管理の相談に応じる国家資格の専門家です。複雑な法令や計算を代行し、企業の負担軽減や従業員の安心確保を助ける役割を担っています。
社会保険労務士が業務を行うために所属している組織が、社会保険労務士事務所や社会保険労務士会です。公的な社会保険事務所と名称が似ていますが、中身は全く異なりますので注意しましょう。
社会保険の種類
既に説明したように、狭義の社会保険は、以下の3つの保険のことを言います。
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
以下にそれぞれの保険の概要をわかりやすく説明します。
健康保険
健康保険は、病気やケガをしたときなどに適応される医療保険です。
病院に行くと受付で健康保険証の提示を求められるので、多くの人にとってなじみがある保険ではないでしょうか。
健康保険証を提示すると、医療費の支払いは原則3割負担となります。残りの7割は、健康保険組合などの保険者が負担する仕組みです。
健康保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出され、従業員と会社で折半して支払います。保険料の計算方法については後ほど詳しく解説します。
介護保険
介護保険は、社会全体で高齢者の介護を支えるための保険で、いざというときに住み慣れた地域で介護を受けられるようにする目的があります。運営主体(保険者)は各市区町村で、40歳以上の人が加入します。
65歳以上で要介護状態と認定された場合や、40歳から64歳で特定疾病によって要介護状態と認定された場合に、介護サービスを受けられます。
厚生年金の加入者(第2号被保険者)の介護保険料は、健康保険料と一体的に徴収され、従業員と会社で半額ずつ負担します。
厚生年金保険
厚生年金保険は公的年金の1つです。公的年金には、国民年金保険(基礎年金)と厚生年金保険の2階建てになっています。国民年金は20歳以上60歳未満の国民全員が加入、厚生年金は企業で働く従業員や公務員などが加入します。
国民年金保険料は毎月一定額であるのに対し、厚生年金保険料は、収入によって異なります。標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けて算出され、企業と従業員で半額ずつ負担します。
厚生年金の加入条件や保険料計算方法については以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
コラム「厚生年金とは?パート・会社員の加入条件や金額の目安をわかりやすく解説」はこちら
広義の社会保険(雇用保険と労災保険)
広義の社会保険では、狭義の社会保険の3つに加え、雇用保険と労災保険が含まれます。
本コラムは狭義の社会保険を対象として解説していますが、ここで広義の社会保険に含まれる雇用保険と労災保険についても簡単に概要を見ておきましょう。
雇用保険
雇用保険は、失業時や休業時の補償を行う制度です。以下の条件に該当する従業員は、パートやアルバイトなど雇用形態にかかわらず、原則として加入します。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上ある
- 連続して31日以上雇用される見込みがある
- 学生または生徒ではない
保険料率は保険者である国が決定します。一般の事業の場合、従業員の負担は給与額(または賞与額)の0.6%、会社側の負担は0.95%(2024年度時点)に設定されています。
雇用保険の加入条件や保険料計算方法などについては以下の記事で詳しく解説しています。
コラム「雇用保険とは?加入条件と手続き、もらえる給付金・手当」はこちら
労災保険
労災保険は、従業員が業務中や通勤途中に発生したケガや病気、障害、または死亡に対して保険給付を行う制度です。
業種や事業規模に関係なく、従業員を雇用している全ての会社に適用されます。全ての従業員が労災保険の対象となり、パートやアルバイトなど雇用形態は問われません。
保険料は前年度の総賃金支払い額に、事業ごとに定められた料率を掛けて算出されます。従業員の負担はなく、全額会社が支払います。
社会保険の加入条件と扶養条件
社会保険には加入条件が定められており、さらに、所得税法上の扶養とは異なる、独自の扶養制度があります。
ここでは、社会保険について、企業・従業員それぞれの加入条件と扶養の条件などを確認しておきましょう。
事業所(企業)の加入条件
企業の場合、社会保険は事業所単位で適用されます。事業所には、加入義務のある強制適用事業所と、任意加入の任意適用事業所の2種類があります。
| 強制適用事業所 | 以下の条件いずれかにあてはまる事業所 |
|
|---|---|---|
| 任意適用事業所 | 以下の3つの条件全てを満たす事業所 |
|
強制適用事業所とは、農林漁業やサービス業などを除く法人の事業所、国や地方公共団体の事業所、常時5名以上の従業員がいる個人の事業所などを指します。
令和4年10月の改正により、法律事務所や会計事務所など士業に関わる業種についても、常時5人以上の従業員を雇用している事業所は強制適用となりました。
一方、任意適用事業所とは、強制適用事業所以外で、従業員の半数以上が加入に同意し、厚生労働大臣の認可を受けた事業所のことです。
従業員の加入条件
基本的に、上記の適用事業所で常時働いている人は、社会保険の加入対象となります。正社員だけでなく、常勤の役員や代表者、一定の条件を満たすパート・アルバイトも含まれます。
具体的には、適用事業所に常時雇用されている70歳未満の人が対象です。また、週の所定労働時間や賃金、雇用期間の見込みなどが基準になります。
詳しい基準については、次のパートで詳しく解説しますが、基本的にこれらの条件を満たしていれば、原則として入社時から社会保険に加入する必要があります。
なお、加入対象者の対象年齢は以下の通りです。
厚生年金保険:70歳未満
健康保険:75歳未満
介護保険:40歳以上65歳未満
パート・アルバイトの加入条件
適用事業所と雇用関係にある従業員は、パートやアルバイトであっても一定の条件を満たせば社会保険への加入が義務付けられます。
具体的な加入条件は以下の通りです。
- 事業所の従業員数が51名以上
- 学生ではない
- 雇用期間が2カ月間以内
- 週の所定労働時間20時間以上(または1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上)
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(年間収入で約105万円以上)
これらの基準を全て満たす従業員は、正社員と同様に健康保険と厚生年金に加入します。
2016年から従業員数501名以上の企業で一部実施されていましたが、2022年、2024年と段階を踏んで、企業規模や勤務期間などの要件が拡大しました。
社会保険加入の扶養に入れる条件とは
社会保険には扶養制度があります。扶養制度とは、子供や高齢者など、1人で生計を立てることが難しい家族や親族を経済的に援助する仕組みです。
扶養には所得税法上の「扶養親族」と社会保険上の「被扶養者」があり、定義や基準となる所得などが異なりますので注意しましょう。
| 所得税 | 社会保険 | |
|---|---|---|
| 扶養される人の名称 | 扶養親族 | 被扶養者 |
| 定義 | 生計を一にする親族で、所得金額が一定以下の者 | 主として被保険者により生計を維持している者 |
| 収入の基準 | 年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入がある人は年間103万円以下) | 年間収入が130万円未満(障害者などの場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満 |
扶養に入るためには、一定の収入以下であることが条件です。
社会保険の場合、年収が130万円未満で、被保険者に生活を支えられている場合、扶養に入ることができます。
しかし、年収が130万円を超えると扶養から外れ、自ら社会保険に加入し、保険料を支払う必要があります。これが「130万円の壁」と呼ばれるものです。
また、国民健康保険には扶養制度はありません。国民年金保険の場合、一定の収入基準以下の人は第三号被保険者として加入できる制度がありますが、社会保険や所得税法上の扶養とは異なりますので注意してください。
社会保険の加入条件の改正
「パート・アルバイトの加入条件」で説明した通り、パートやアルバイトなど短時間労働者の社会保険加入が必要な企業規模の要件は段階的に拡大しています。
| 2016年10月~ | 2022年10月~ | 2024年10月~ | ||
|---|---|---|---|---|
| 企業規模の要件 | 従業員数 | 501名以上 | 101名以上 | 51名以上 |
| 短時間労働者の要件 | 労働時間 | 週20時間以上 | ||
| 賃金 | 月88,000円以上 | |||
| 勤務期間 | 1年以上 | 2カ月以上 | ||
| 学生除外 | 学生は対象外 | |||
2024年10月からは、従業員数が51人以上の企業で一定の労働条件を満たす人も対象です。
さらに厚生労働省は、パートなどで働く人が加入できる企業規模の要件について、10年をかけて段階的に縮小・撤廃する方針を固めています。
働き方の多様化により、社会保険のあり方や企業や従業員の負担方法が見直されています。常に最新の制度情報を把握しておくことが重要です。
社会保険料の計算方法と内訳
社会保険料は、従業員が安心して働けるようにするための重要な負担です。
社会保険の保険料は、事業主と従業員がそれぞれ半分ずつ負担し、所得に応じた公平な負担を実現しています。具体的には、標準報酬月額という基準をもとに計算されるため、仕組みを理解することで負担額のイメージがしやすくなります。
ここでは、社会保険の保険料計算の基本や内訳について見ていきましょう。
社会保険料の計算の基本
社会保険料の計算は、毎月の給与や賞与に基づく「標準報酬月額」「標準賞与額」を用いて行われます。各保険の保険料率をこれらに掛けて算出し、事業主と従業員で折半するのが基本です。
標準報酬月額や標準賞与額は基準や計算式が決まっており、会社から支給される金額そのままではありません。複雑に感じるかもしれませんが、基礎をおさえれば計算の流れはシンプルです。
標準報酬月額の考え方やそれらを用いた各保険の保険料計算方法について、具体的に説明していきますので参考にしてください。
標準報酬月額・標準報酬賞与額とは
標準報酬月額と標準報酬賞与額は、社会保険料を計算する際の基準となる金額で、算出方法は以下の通りです。*1
| 求め方 | |
|---|---|
| 標準報酬月額 | 毎月の給料などの報酬の月額を一定の幅により区分した金額 |
| 標準報酬賞与額 | 税引前の賞与総額から千円未満を切り捨て |
標準報酬月額は、組合ごとに定められた表に従い、月々の給与(報酬月額)があてはまる区分によって金額が決まります。
例えば、東京都の健康保険組合(令和7年3月分~)の場合、被保険者の報酬月額が20.5万円だとすると、19.5万円~21万円の区分にあてはまりますから、標準報酬月額は20万円となります。*2
一方、標準賞与総額は標準報酬月額のように区分にあてはめることはせず、税引き前の賞与総額から千円未満を切り捨てた金額です。
また、標準報酬月額については、4月から6月に支払われる給与の平均額をもとに決められ、その年の9月から翌年8月まで適用されます。
特に標準報酬月額については、一定の区分にあてはめて金額を算出すること、計算対象とする期間が4~6月と決められていることなどから、実際に毎月支払われている給与とは異なる金額になることがあるので、注意が必要です。
*1 参考:国健康保険協会| こんな時に健保 |標準報酬月額・標準賞与額とは?
*2 参考:全国健康保険協会|協会けんぽ | 被保険者の方の健康保険料額(令和6年3月~)東京
健康保険料の計算方法
月々の健康保険料は、標準報酬月額に健康保険料率を掛けることで算出されます。
<例>
標準報酬月額30万円、保険料率10%の場合
月々の保険料は 30万円×10%=3万円
賞与の場合の保険料は、標準賞与額に定められた健康保険料率を乗じて算出します。
この金額を事業主と従業員が半分ずつ負担するのです。
<例>
標準賞与額60万円、保険料率10%の場合
賞与時の保険料は 60万円×10%×1/2=3万円
保険料率は都道府県や加入する健康保険組合によって異なるため、自分の所属先の情報を確認することが大切です。計算方法を理解すれば、給与から控除される仕組みが明確になります。
介護保険料の計算方法
介護保険料は、40歳以上65歳未満の被保険者が負担する保険料で、標準報酬月額・標準賞与額に定められた介護保険料率を掛けて計算します。
<例>
標準報酬月額30万円、保険料率1.8%の場合
月々の保険料は 30万円×1.8%=5,400円
この金額も、健康保険料や事業主と従業員が半分ずつ負担します。介護保険料は高齢化社会において、将来の介護サービス費用を支える重要な財源です。自分が該当する年齢になったときに必要な負担額を把握し、準備しておくことが大切です。
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料は、老後の年金や障害年金などの給付を支える重要な負担です。計算方法は健康保険料と同じく、標準報酬月額に保険料率を掛ける仕組みです。
<例>
標準報酬月額30万円、保険料率18.3%の場合
月々の保険料は 30万円×18.3%=54,900円
この金額を事業主と従業員が半分ずつ負担します。
厚生年金保険料は老後の生活基盤を守るための大切な資金源ですので、計算方法を理解し、自分の将来設計に活かすことが重要です。
厚生年金の加入条件や保険料、受給資格などについては、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
社会保険加入の手続きと企業の義務
企業が従業員を雇用した場合には、社会保険への加入手続きが法律で義務付けられています。
加入や退職に応じて正しく手続きを行うことにより、保険料の適切な納付や給付の受け取りが可能になります。社会保険に関する届出は決められた期限内に行う必要があり、怠ると罰則の対象となることもあるので規則や手続き方法をしっかり確認しておきましょう。
ここでは、企業が行うべき基本手続きや注意点を解説します。
加入時の基本手続き
企業が新たに従業員を雇用した場合、社会保険の「被保険者資格取得届」を5日以内に年金事務所へ提出する義務があります。
扶養家族がいる場合には「被扶養者(異動)届」も必要です。
手続きにはマイナンバーや雇用契約書などの情報をもとに記入する必要があり、正確な処理が求められます。
これにより、従業員は健康保険や年金の給付を適切に受けられるようになります。加入手続きを確実に行うことは、企業の信頼性を高めるうえでも重要です。
参考:日本年金機構|就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き
退職時の手続き
従業員が退職した場合、企業は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を5日以内に提出する義務があります。
この手続きを怠ると、保険料が余分に徴収される、または給付の停止が遅れるなどのトラブルが発生するおそれがありますので速やかに手続きを行いましょう。
また、健康保険制度には、従業員が退職した際、希望すれば健康保険を「任意継続」として引き続き最長2年間利用可能となる任意継続の制度があります。これは次の就職先が決まっていない場合などに安心できる制度です。
退職者が任意継続制度を希望する場合には、本人による申請が必要となるため、企業は制度の概要や手続き方法を適切に案内することも大切です。
参考:日本年金機構|従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き
社会保険未加入時の罰則
社会保険の加入義務があるにもかかわらず、手続きを行わなかった場合、企業には過去にさかのぼって保険料を徴収されるほか、加算金や延滞金が発生する可能性があります。
また、悪質な未加入が判明した場合には、行政指導や立入検査、さらには罰則が科されるケースもあります。企業にとっては大きなリスクとなるため、法律に基づいた正確な対応が求められます。従業員の権利を守るためにも、社会保険の適切な運用を怠ってはいけません。
社会保険に加入するメリット
社会保険には加入する義務があると同時に、メリットもあります。
ここでは社会保険に加入するメリットを、企業と従業員、それぞれの視点で見ていきましょう。
企業にとってのメリット
社会保険に加入することは、法令を遵守していることを示し、企業は社会的な信頼を得られます。求人時においても、「社会保険完備」と謳うことで「信頼できる企業」と認識されるでしょう。
社会保険は従業員の健康や安全を守り、安心して働くための制度です。加入することで、新しい人材の確保だけでなく、離職防止にもつながるといえます。
従業員にとってのメリット
社会保険の従業員にとっての大きなメリットは、少ない負担で手厚い保障を受けられることです。保険料は企業と折半するため、従業員の負担は実際の保険料より少なく済みます。通院や入院による医療費負担はもとより、傷病や出産などで仕事に就けない場合には、手当金が受け取れます。
また、国民年金と厚生年金の両方を受け取れるため、将来受け取れる年金の総額が、国民年金に比べて多くなります。国民年金は一律支給なのに対し、厚生年金は給与額に基づいて計算されるため、収入が多い人ほど多くなることが特徴です。
社会保険に加入するデメリットと対策
最後に、社会保険に加入するデメリットを見ていきます。
企業と従業員、それぞれ対策についても触れているのでお役立てください。
企業にとってのデメリット
社会保険加入による企業のデメリットは、保険料の負担が増えることです。健康保険・厚生年金・介護保険は半額、雇用保険は9割以上、労災保険は全額企業が負担することとなります。
前述した、短時間労働者の社会保険加入の適用範囲の拡大により、負担が増える企業もあるでしょう。しかし、キャリアアップ助成金を活用することで、負担を軽減できます。パート・アルバイトなど、短時間労働者の賃金を引上げる場合や、労働時間を延長する場合などは、キャリアアップ助成金を活用する方法もあります。
従業員にとってのデメリット
社会保険に加入すると、毎月の給与から社会保険料が天引きされるため、手取り額が少なくなります。
社会保険加入の基準となる月収8.8万円は年収換算するとおよそ106万円です。ここから健康保険と厚生年金の保険料約16万円を引くと、手取りは約90万円になります。
社会保険に加入せず月8万円の給与を受け取ると手取りは96万円となり、年収106万円より多くなります。これが世に言われる「106万円の壁」です。
社会保険に加入したくない場合は、月収8.8万円を超えないよう調整する必要があります。

