中堅社員育成の課題とは?役割認識と育成のポイント、研修の事例
更新日:2026.09.15
公開日:2017.05.29

組織の成果や後輩指導、上司と部下のパイプ役などを担う中堅社員は、企業の競争力を支えるキーパーソンです。ところが、中堅社員時代は「教育の空白地帯」に陥りやすく、しっかりとした育成施策を実施している企業は多くありません。
本コラムでは、中堅社員育成の重要性と課題、育成を進めるうえでのポイントと流れ、具体的な研修事例などを解説します。
中堅社員が辞めていく会社は育成施策が不足
はじめに、中堅社員とはどのような層の社員なのか、中堅社員が働き続けたいと考える企業にはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。
若手社員・中堅社員・ベテラン社員の違い
中堅社員とは、現場の第一線で活躍するプレイヤーであり、管理職ではない社員のこと。入社からの年数では「3年目以降」「5年目以降」などといわれる層を指します。
中堅社員が入社何年目からになるのかは、企業によって異なります。人材育成をご支援している当社ALL DIFFERENT株式会社では、「社会人5年目以上15年未満で、役職に就いていない社員」と定義しています。
他方、若手社員とは、中堅社員の前の段階にある社員です。当社では「社会人1年目〜4年目」と定義しています。このうち1年目の社員が「新入社員」です。
ベテラン社員については、明確な定義はありません。厚生労働省の資料を見ると、概ね入社10年目前後からリーダー職を務める社員が、これに当たるようです。ベテラン社員の特徴は、高い業務能力があり、組織・チーム全体を見る視点を持っていることでしょう。役職に就いている人も多く見られます。*
【若手社員・中堅社員・ベテラン社員の違い】
| 分類 | 年数(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| 若手社員 | 社会人1〜4年目 |
|
| 中堅社員 | 社会人5年目〜14年目 |
|
| ベテラン社員 | 社会人10年目〜 |
|
繰り返しになりますが、年数はあくまで一つの目安であり、企業によって定義は異なります。
*参考:「若手・中堅・ベテラン社員へのインタビュー集(全体版)(PDF)」(厚生労働省)
中堅社員の成長実感と勤続意向の関係、育成の重要性
中堅社員の仕事は、組織の業績に直結しています。そのため、現場で中心的な役割を果たすプレイヤーといえます。組織が安定して事業活動を継続・発展させるには、中堅社員の活躍が欠かせません。
ここで、興味深い調査をご紹介しましょう。当社が実施した中堅社員を対象とするアンケートです。これによれば、在籍する会社で「働き続けたい」と感じている中堅社員は、成長を実感する機会が増えるほど多くなるという傾向がわかりました。成長を実感する機会が「とてもよくある」と答えた人では、52.1%の人が「今の会社で働き続けたい」を選んだのです。一方で、成長実感の機会が「全くない」という人では、働き続けたいと答えた人はわずか8.3%でした。*
中堅社員が成長実感を得られない会社は、中堅社員が辞めていく会社といえます。人手不足が深刻な課題となっている昨今、中堅社員が活躍し続けられるように適切な育成施策を講じ、成長実感を得られる環境を整えなければなりません。
中堅社員の育成で意識したい「果たすべき役割」「求められること」
中堅社員育成で大前提となるのは、会社が求めている役割を中堅社員自身がしっかりと認識すること。育成施策を実施する前に、中堅社員が果たすべき3つの役割をここで整理しておきましょう。
(1)組織の成果に対する責任ある貢献
1つ目の役割は、組織の成果への貢献です。
繰り返しになりますが、中堅社員には自律的な業務の遂行が期待されています。それまでの学びと経験で培われたノウハウを駆使しながら、上司の指示がなくても自ら判断し、成果を出さなくてはなりません。
具体的には、
- 1. やるべき全てのことを洗い出す
- 2. タスクを細分化する
- 3. 細分化したタスクに優先順位をつける
- 4. タスクを遂行する時間を確保する
- 5. タスクを遂行したあとに内省を行い、改善する
といった一連のプロセスを自ら実施しなければならないのです。
新人・若手社員の「先輩社員」として、責任をもって組織の成果に貢献することが求められています。
(2)後輩指導など教育への参加
2つ目の役割は、後輩指導です。集合研修(Off-JT)を担うのが人事担当者や役職者、外部講師であるのに対し、現場のOJTを担うのは主に中堅社員だからです。
後輩指導の目的は、現場で活躍できるプレイヤーを増やし、組織の業績向上につなげること。それには、現場での具体的な動き方・業務手順といった原則とともに、ケースバイケースの対応方法も教えていかなければならないでしょう。
指導スキルとして、ティーチングやコーチングのやり方を中堅社員自身が学ぶとともに、 Off-JTとOJTを連動させた指導を行うことも求められます。
「自分の成績が良ければいい」という新人・若手時代の考え方から抜け出し、チームとして成果をあげることを考えなければならないのです。
(3)チームワーク強化につながる上司の補佐・パイプ役
3つ目は、次期リーダー・管理職としての成長です。より具体的には、リーダー・管理職としての視点を学びつつフォロワーシップを高め、チームにおけるリーダーシップを発揮することです。現場では、上司の考え方を理解して補佐しながら、後輩社員・同僚と上司のパイプ役を担うことになります。
上司の補佐・パイプ役として意識したいのが、5つのフォロワーシップタイプです。
【5つのフォロワーシップタイプ】
- 模範的フォロワーシップ
- 孤立型フォロワーシップ
- 順応型フォロワーシップ
- 実務型フォロワーシップ
- 消極的フォロワーシップ
次期リーダー・管理職は、模範的フォロワーシップを実現するために、貢献力と批判力を高めなければなりません。
フォロワーシップの詳細は、以下の関連コラムで解説しています。
中堅社員を対象とする人材育成の3つの課題
ただ、実際に中堅社員の育成に力を入れようとしても「何から手をつければいいのかわからない」という企業は多いかもしれません。中堅社員の育成課題としてしばしば聞かれるのは、以下の3つです。
- (1)指示待ちになっている、主体性が低い
- (2)能力の伸び悩みがある、仕事ができない
- (3)業務の負担が大きすぎて、ストレス・不満が蓄積している
順番に解説します。
(1)指示待ちになっている、主体性が低い
中堅社員の姿勢について上司が感じる課題で、「指示待ち」「主体性の低さ」が指摘されることがあります。
本来であれば、中堅社員は若手社員時代を卒業し、自律的に業務をこなせなければなりません。それにもかかわらず、「上司からの指示がないと動かない」という姿が見られるのです。
指示待ち状態や主体性を発揮できない状態が続く理由には、以下のものが考えられます。
【指示待ち・主体性の低さの原因(例)】
- 上司から細かい指示が出ることが多く、それを待ってから仕事をする行動習慣が形成されている
- 上司からのマイクロマネジメントが多く、「どうせ自分のやり方ではダメなのだ」という受け身の姿勢になっている
- 上司側に、部下に仕事を任せるスキルが不足しており、中堅社員が仕事の確認をしようとしても上司をつかまえられない
細かい指示やマイクロマネジメントを続けていると、社員の主体性を奪ったり、本質的ではない事項への過干渉になったりすることがあります。上司が適切なマネジメントを行わず専らプレイヤーとして動き回っているケースでは、業務の遂行上必要な連絡・相談さえできません。
中堅社員が主体的に業務を進められる環境を整備するには、まず上司が部下への関わり方を見直し、育成の視点を持つことが重要です。
(2)能力の伸び悩みがある、仕事ができない
本コラムの冒頭で述べた通り、中堅社員は「教育の空白地帯」となりやすい時期です。会社側は「1人で仕事ができるはず」という前提で教育を行いませんし、中堅社員側は日々の多忙さから学びの時間をつくれません。こうした状況が続けば、業務能力が伸び悩んでしまいます。
とはいえ、中堅社員の業務能力を高める施策は簡単ではありません。業務内容や求められるレベルは人によって異なり、新入社員のような画一的な研修だけでは対応できないからです。新入社員研修や管理職研修のような「入社した」「昇格した」という節目もなく、学びのきっかけを得にくいという事情もあります。
こうした難しさから、中堅社員は放置され、様々な事情で仕事ができない状況が続いてしまうのです。
効果的な育成施策を講じるには、自社の中堅社員が抱える悩みや成長課題に対応した学びの機会を提供する必要があります。
(3)業務の負担が大きすぎて、ストレス・不満が蓄積している
中堅社員は、成果を出すべく現場の第一線で活躍する時期です。これには、自身の担当業務だけでなく、後輩指導も含まれます。問題は、OJTなどの後輩指導が業務に追加されたにもかかわらず、従来の業務量は減っていないというケースがあることです。
常に追い立てられるような働き方は、中堅社員にとって大きな負担となります。十分に休養を取れなければ心身の不調を招き、ストレスや不満が一層蓄積してしまうでしょう。それでいて、手当の金額も特別高いというわけではありません。
- 「組織に貢献すべく懸命に働いているのに、正当な評価を得られない」
- 「会社から放置されている」
と感じれば、仕事への意欲も低下してしまいます。
こうした過剰な負担を軽減するには、上司や人事担当者が中堅社員の業務状況を把握しながら、働き方の調整や後輩指導に必要なスキルアップを支援する体制の構築が必要です。
中堅社員育成の流れとポイント
では、いよいよ中堅社員育成の具体的なポイントに入っていきましょう。
中堅社員の育成を進める際は、組織として中堅社員に求める人材像を説明し、中堅社員自身が「あるべき姿」を描けるようにします。目標が定まることで、具体的な取り組みを考えやすくなるからです。加えて、取り組み後のフィードバックを行い、改善・向上に向けたサポートも行ってください。
以上の流れを4つのステップに分けて解説します。
(1)中堅社員に求める人材像を明確にする
中堅社員の育成を始める前に、まずは組織が求める人材像を明らかにしなければなりません。組織として求める人材像がなければ育成で何に注力すべきかがわからず、育成計画自体を立てられないからです。
求める人材像が不明瞭な場合は、現在活躍している中堅社員のコンピテンシー(行動特性や考え方)を分析するとよいでしょう。コンピテンシーと会社のミッション・ビジョン、経営戦略を踏まえて、一貫性のある望ましい社員の在り方を探ることで、組織が求める人材像を明確化できます。
コンピテンシーについては、以下の関連コラムもご覧ください。
コラム「コンピテンシーとは?意味・具体例と採用・評価・育成での使い方、活用シーン」はこちら
(2)中堅社員の育成計画を立て、あるべき姿・強み・弱みの把握を支援する
組織として求める人材像を明確にできたら、それを実現するための育成計画を立てます。具体的には、中堅社員の能力開発・スキルアップに役立つ研修・セミナーや実践的なトレーニングの設計、フィードバックのタイミングとやり方などを決めましょう。
育成計画には、大きく分けて2つの方向性があります。1つはスペシャリストとしてのキャリアを目指すもの、もう1つは管理職としてのキャリアを目指すものです。
スペシャリスト志向の中堅社員には、職種別の専門スキルの強化とチームリーダーとしての能力が求められます。他方、管理職志向の中堅社員には、フォロワーシップ・リーダーシップを磨き、管理職と一般社員の視点の違いとマネジメントスキルを習得することが求められます。
いずれのキャリア志向においても、最初の研修で組織として求める人材像をわかりやすく説明し、中堅社員自身が「あるべき姿」を描けるよう支援しましょう。あるべき姿が定まれば、自身がもっている強み・弱みと成長に向けた課題をより把握しやすくなります。
(3)中堅社員自身が課題解決に向けた目標設定、アクションプラン作成を進める
中堅社員一人ひとりが自身のあるべき姿を描き、現在抱えている課題を認識できたら、あるべき姿の達成に向けた具体的な個人目標の設定とアクションプランの作成を進めてください。
個人目標の設定には、ビジネススキル診断テストの活用も有効です。ビジネスパーソンとして一般的に重要とされる各種スキルの習得度合いを診断するだけでも、「ここを強化すればいいのか」という気づきを得られます。ビジネススキル診断テストには、例えば当社がご提供している「Biz Scoreシリーズ」があります。
全てのビジネスパーソンが対象のビジネススキル診断テスト「Biz Score Basic」の詳細はこちら
あるべき姿と中堅社員自身が把握する強み・弱み、および診断結果を比較することで、より納得感のある具体的な目標設定とアクションプランの作成ができるでしょう。
(4)定期的に上司・人事担当者からフィードバック面談を行う
目標とアクションプランを作成したあとは、各人が目標達成に向けて取り組みを進める段階です。
ここで大切なのは、中堅社員を放置しないこと。成長には、正しい自己認識と改善の姿勢が不可欠であり、これを促すために上司や人事担当者からのフィードバックが必要だからです。
中堅社員に対するフィードバックでは、以下の点を意識しましょう。
【フィードバックで意識したいポイント】
- 本人が描くあるべき姿と個人目標の達成度、成功要因、失敗要因をヒアリングする
- 良い取り組み・成果に対してはポジティブフィードバックを行う
- 成功要因をもとに、継続する取り組みについて対話する
- 失敗要因をもとに、改善に向けた取り組みについて対話する
中堅社員の主体性を活かすためにも、上司や人事担当者から一方的に決めつけたり、取り組み内容を強制したりしないようにしましょう。
効果的なフィードバックのやり方に関しては、以下の関連コラムもお役立てください。
中堅社員研修・セミナーの4種類の事例
中堅社員を対象とする研修・セミナーは、中堅社員が果たすべき役割に応じて3つのタイプに分類できます。併せて、グループワークを中心とする“体感しながら学ぶ研修”も実践スキルの習得に便利です。
それぞれの研修プログラム例や特徴を解説します。
中堅社員の役割認識・あるべき姿の設定に役立つ研修
1つ目は、組織が中堅社員に期待する役割と求める人材像を理解してもらい、中堅社員自身にあるべき姿を描いてもらうための研修です。スペシャリスト志向・管理職志向のどちらにとっても共通する重要な研修です。
役割認識・あるべき姿の設定に役立つ研修の代表例には、中堅社員の役割認識やあるべき姿を説明する「中堅社員の役割認識研修」、自らの業務管理と成長を支える「セルフリーダーシップ研修」、キャリア志向の把握と具体的なキャリアプランに役立つ「キャリア研修」があります。
下表が、各研修の具体的なプログラム例です。
【役割認識・あるべき姿の設定に役立つ研修】
| テーマ | プログラム例 |
|---|---|
| 中堅社員の役割認識研修 |
|
| セルフリーダーシップ研修 |
|
| キャリア研修 |
|
これらの研修を学びの入口に据えることで、取り組みの動機づけと個人目標の設定を進められます。
業務遂行・後輩指導に役立つスキルアップ研修・OJT研修
2つ目は、中堅社員自身の業務や後輩指導に役立つスキルの向上を図る研修です。
職種別スキルや後輩社員とのコミュニケーション・助言に役立つスキルは、実に多彩です。今回は、イメージとして営業職のスキルアップ研修やOJT研修の例をご紹介します。
【営業職のスキルアップ研修】
| テーマ | プログラム例 |
|---|---|
| 営業職の基礎研修 |
|
| 営業職のスキルアップ研修 |
|
【OJTトレーナー研修】
| テーマ | プログラム例 |
|---|---|
| OJTトレーナー研修 |
|
後輩指導を行うには、指導者となる中堅社員自身が業務について正しい知識を持っていなければなりません。まずは、そうした基本的な業務知識を確認できる研修を行い、そのあとでスキルアップに向けた研修を実施するとよいでしょう。
OJTトレーナー研修などの具体的な指導スキルを学ぶ研修は、新人・若手社員が参加するOff-JTの内容と育成対象者自身の目標を踏まえ、それらと連動した指導ができるような内容がおすすめです。
次期リーダー・管理職としての心構えとスキルを学ぶ研修
3つ目は、次期リーダー・管理職としての成長を促す研修です。
スペシャリスト志向の中堅社員には、チームやプロジェクトのリーダーとしてのスキルを学べる内容がよいでしょう。管理職志向の中堅社員には、主任・係長研修や次期管理職研修として、プレイヤーからマネジャーへの視点の転換を促します。
【次期リーダー・管理職研修】
| テーマ | プログラム例 |
|---|---|
| リーダーシップ研修 |
|
| フォロワーシップ研修 |
|
| 次期管理職研修 |
|
先輩プレイヤーとしての視点だけでは、「組織として成果を出す」には不十分です。プレイヤーの視点からマネジメントの視点への“パラダイムシフト”を理解し、実践できるよう、中堅社員のうちから成長をサポートすることが大切です。
ワークショップやグループワークで体感しながら学ぶ研修
そして4つ目は、ほかの受講者と一緒に考えたり訓練したりするような、ワークショップやグループワークを活用する研修です。特にコミュニケーションやチームの運営に関するテーマで威力を発揮します。
ワークショップやグループワークを用いる研修には、以下のようなものがあります。
【ワークショップやグループワークを用いる研修】
| テーマ | プログラム例 |
|---|---|
| コミュニケーション強化研修 |
|
| チームビルディング研修 |
|
ワークショップやグループワークには、同じ階層の社員と交流し、お互いに気づきを得られるというメリットもあります。似たような経験から共感と意見交換が生まれたり、競争心から切磋琢磨できる関係性の構築につながったりもするでしょう。
実践的なスキルの強化を目的とする研修や、これまでの経験を振り返ることで学びを深める研修でも活用できますので、ぜひ積極的に取り入れてみてください。
中堅社員育成が組織成長の鍵になる
中堅社員は「教育の空白地帯」に陥りやすい時期。しかし、実際に求められる役割は非常に大きく、この時期を無為に過ごすことは、中堅社員自身にとっても組織にとっても、大変もったいないことです。
中堅社員時代を充実させ、次期リーダー・管理職への成長を促すには、会社が中堅社員に求める役割やキャリアパスを明示し、主体的な学びができる体制を整備しなければなりません。
多くの企業で人材育成に伴走してきたALL DIFFERENT株式会社では、中堅社員の役割認識から具体的な業務スキルの向上、後輩指導力強化、そして次期管理職としての心構えまで、中堅社員の成長に役立つ多数の研修・セミナーをご提供しています。定額制で学び放題のオンライン研修や無料セミナーなども開催しておりますので、ぜひご活用ください。

