バーンアウトとは?症状、診断、うつ病との違いと職場でできる対策
更新日:2026.09.02
公開日:2024.06.18

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、仕事上のストレスが長期間解消されずに蓄積した結果、心身のエネルギーが枯渇してしまう状態です。「熱心に働いていた社員が、ある日を境に急激に意欲を失う」「業績が落ち、周囲との関係もぎこちなくなる」といった変化は、そのサインかもしれません。
本コラムでは、主な症状や診断方法、うつ病との違い、職場でできる予防・対処法を解説します。
バーンアウトとは
「バーンアウト(burnout)」とは、それまで意欲的に仕事に取り組んできた人が、燃え尽きたように突然やる気を失ってしまう状態です。疲労が蓄積した結果ではなく、心のエネルギーそのものが枯渇した状態である点が特徴です。
まずは、バーンアウトの定義や背景、うつ病との違いについて順に説明します。
バーンアウト症候群の定義
バーンアウトは英語で「burnout」、日本語では「燃え尽き症候群」とも訳されます。仕事やスポーツ、学生生活など幅広い場面で見られ、精神的な疲弊によってそれまでの意欲が急激に失われる状態を指します。
この言葉を最初に論文で取り上げたのは、アメリカの臨床心理学者ハーバート・フロイデンバーガーです。1970年代、対人サービスに従事する労働者の中に燃え尽きたように意欲を失う人々が相次いで見られたことが研究のきっかけでした。
その後、社会心理学者のクリスティーナ・マスラークを中心とする研究グループがバーンアウトの定義を確立し、重症度を評価するMBI(Maslach Burnout Inventory)を作成しました。MBIの内容については後述します。
参考:久保真人・田尾雅夫(1991)「バーンアウト―概念と症状、因果関係について」
バーンアウトが広がる背景と現代社会への影響
バーンアウトはもともと、医療職・福祉職・教師など感情労働を伴う職種に多いと考えられてきました。感情労働とは、身体や頭脳だけでなく、感情の抑制や忍耐が不可欠な労働のことです。しかし現在では、これらの職種に限らず、幅広い業種でバーンアウトが報告されており、国際調査でも4割以上の労働者が経験しているとされています。
背景には、産業社会の高度化やサービスの多様化、少子高齢化による慢性的な人手不足といった構造的な要因があります。WHOも2022年発効のICD-11でバーンアウトを「雇用または失業に関連する問題」として正式に位置づけました。*
特定の職種だけの問題ではなく、働く全ての人に起こりうるという認識が、今や国際的な共通理解となっています。
バーンアウトとうつ病の違い
バーンアウトとうつ病は症状が似ているため混同されやすいですが、分類上の位置づけが異なります。WHOはバーンアウトを「仕事上の現象」、うつ病を「精神および行動の障害」と区別しており、うつ病はDSM(米国精神医学会の診断基準)でも診断基準が定められた精神疾患です。
症状の面では、バーンアウトは主に仕事上のストレスや職場環境を原因として意欲が急激に失われ、怒りや不満が他者・職場に向かいやすい傾向があります。一方うつ病は、仕事・プライベートを問わず持続的に気分が落ち込み、罪悪感や自責の念が自分に向かいやすい点が特徴です。
ただし、バーンアウトが長期化するとうつ病を発症するケースもあり、両者は截然と分けられるものではありません。「どちらか判断がつかない」と感じたら、早めに心療内科や精神科に相談することが大切です。
バーンアウト症候群の診断方法(MBI)
バーンアウト症候群の診断には、国際的に広く使われている「MBI(Maslach Burnout Inventory)」が標準的なツールとなっています。MBIはマスラークを中心とする研究グループが開発し、マニュアルの第1版が1982年に出版されて以来、バーンアウト研究の基本的枠組みとして数多くの研究者に採用されてきました。もともとヒューマンサービス職を対象に作成されましたが、現在はあらゆる職種のバーンアウト測定に広く活用されています。
MBIでは、バーンアウトを次の3つの測定項目から評価します。
【MBIの3つの測定項目】
| 測定項目 | 測定する内容 |
|---|---|
| 情緒的消耗感 | 精神的な疲労やストレス |
| 脱人格化 | 職場の人間関係に対する無関心や否定的な態度 |
| 個人的達成感の低下 | 仕事に対する自信や満足感 |
これらの項目に基づき、質問形式で回答を得て診断を行います。MBIを用いることで、個人や組織レベルでバーンアウトのリスクを数値的に把握でき、早期介入の指針となります。
バーンアウトの主な症状
バーンアウトには「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3つの代表的な症状があり、前項のMBI測定項目もこの3つに対応しています。症状は段階的に進行する場合もあれば、相互に影響しながら悪化するケースもあります。
情緒的消耗感
「情緒的消耗感」は、仕事を通じて心のエネルギーを使い果たしてしまった状態です。単なる疲労とは異なり、顧客や同僚に誠実に向き合い、より良い成果を求めて取り組んできた結果として生じます。真面目で仕事熱心な人ほど陥りやすく、バーンアウトの起点となる症状です。
脱人格化
情緒的消耗感が続くと、心を守ろうとする反応として「脱人格化」が起こります。周囲に対して無関心・冷淡になり、思いやりのない言動が増えたり、相手の名前を呼ばなくなったりします。
もともと対人サービス職の研究で定義された概念ですが、上司・同僚との関係にも同様に現れます。
個人的達成感の低下
脱人格化により人間関係が悪化すると、仕事への集中力も落ち、業務の質が目に見えて低下することがあります。期待する成果を上げられない日が続けば、意欲ややりがいはさらに失われていきます。
バーンアウト症候群のチェックリスト
MBIが国際的な診断ツールである一方、日本の労働環境に合わせて開発されたのが久保真人教授らによるJBS(Japanese Burnout Scale)です。項目が広く公開されており、現場での活用実績も豊富なことから、職場での簡易チェックに適しています。
表中の記号は、各項目が3つの症状のどれに対応するかを示しています(E:情緒的消耗感、D:脱人格化、PA:個人的達成感)。
【日本版バーンアウト尺度(JBS)】*
| 項目 | 内容 | 分類 |
|---|---|---|
| 1 | こんな仕事、もうやめたいと思うことがある。 | E |
| 2 | われを忘れるほど仕事に熱中することがある。 | PA |
| 3 | こまごまと気配りすることが面倒に感じることがある。 | D |
| 4 | この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。 | PA |
| 5 | 同僚や顧客の顔を見るのも嫌になることがある。 | D |
| 6 | 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。 | D |
| 7 | 1日の仕事が終わると「やっと終わった」と感じることがある。 | E |
| 8 | 出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある。 | E |
| 9 | 仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。 | PA |
| 10 | 同僚や顧客と、何も話したくなくなることがある。 | D |
| 11 | 仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。 | D |
| 12 | 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。 | E |
| 13 | 今の仕事に、心から喜びを感じることがある。 | PA |
| 14 | 今の仕事は、私にとってあまり意味がないと思うことがある。 | D |
| 15 | 仕事が楽しくて、知らないうちに時間がすぎることがある。 | PA |
| 16 | 体も気持ちも疲れはてたと思うことがある。 | E |
| 17 | われながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある。 | PA |
EとDの項目は「はい」「わりとそう思う」が多いほど要注意です。PAは逆転項目のため、「いいえ」「あまりそう思わない」が多い場合にリスクが高まります。「仕事に喜びを感じる」「うまくやり終えた」といったポジティブな問いへの否定的な回答が増えるほど、達成感が低下しているとみなされます。
定期的にチェックすることで、バーンアウトの兆候を早期に把握する手がかりになります。
*参考:久保真人(2007)「バーンアウト(燃え尽き症候群)―ヒューマンサービス職のストレス」より作成、ビジネスパーソンに活用しやすいよう、「患者」を「顧客」に変更
バーンアウトの原因となりやすい人の特徴
バーンアウトの原因は「個人要因」と「環境要因」の2つに大別されます。個人要因は本人の性格や特性、環境要因は職場環境や業務上の条件に関わるものです。
【バーンアウトの個人要因と環境要因】
| 個人要因 (本人の性格や特性など) |
|
|---|---|
| 環境要因 (職場環境や労務条件など) |
|
年齢や性別でも差があり、若者や女性の方がバーンアウトしやすい傾向があります。特に年齢については、経験が少ないほど職場環境への期待が高くなりすぎたり、ストレスへの対処法がわからずため込んでしまったりすることが要因と考えられています。
バーンアウトになったときの直し方と対応の流れ
バーンアウトの直し方に決まった答えはなく、回復は一定のステップを踏みながら、時間をかけて進めるものです。その過程では生活リズムを整え直すことが土台となります。症状の程度によっては、専門家への相談や休職の判断が必要になるケースもあります。
バーンアウト回復のステップ
回復の道筋は人によって異なりますが、多くのケースで共通してみられる流れを6つのステップに整理しました。
【バーンアウト回復の6ステップ】
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ①問題を自覚する | 「疲れているだけ」と思い込まず、消耗の本質に目を向ける | 本人の自覚が難しければ、家族や上司からの働きかけも有効 |
| ②仕事から離れる | 休暇・休職制度を使い、物理的に仕事と距離を置く | 真面目なタイプほど休むことへの罪悪感を抱きやすい。まず産業医への相談から始めるのも一つの方法 |
| ③十分に休養する | 睡眠・食事・運動など生活の基盤を整えることを最優先にする | 回復にかかる期間には個人差が大きく、焦らず本人のペースを尊重することが肝心 |
| ④働き方を振り返る | 休養が落ち着いてきたら、バーンアウト前の生活を内省する | 一人で考えることが重ければ、家族や医師・カウンセラーと話しながら進める方法もある |
| ⑤社会復帰を目指す | 業務内容・業務量・役割を本人と擦り合わせながら職場復帰を検討する | 元の状況に戻るだけでは再発を招く可能性がある。部署異動や転職も選択肢の一つ |
| ⑥新しいライフスタイルを実践する | 「仕事一辺倒」から、休養とプライベートを確保するスタイルへ移行する | また働きすぎていないか、周囲から声をかけることが再発防止につながる |
症状が軽いうちは②③の段階で回復に向かうケースも多いですが、消耗が深まっているほど④以降の内省と環境の見直しが重要になります。回復にかかる期間は個人差が大きく、「もう大丈夫」と感じてからも無理に急がず、ステップを1つ1つ確認しながら進めることが再発を防ぐうえで大切です。
休職者の職場復帰支援の方法については、以下のコラムで詳しく解説しています。
コラム「復職に必要な対応とは?休職者の職場復帰支援の注意点」はこちら
受診、休職を検討するタイミング
以下のような状況が続く場合は、心療内科や精神科への相談を検討したほうがよいでしょう。
- 感情の不安定さが続き、自力での対処が難しいと感じる
- 仕事や日常生活に支障が出ている
- 不眠・頭痛・食欲不振といった身体症状が長期間続く
軽症であれば十分な休息で1〜2週間程度での改善も期待できますが、中等症以上では数カ月単位の休職や職場環境の見直しが必要になります。重症の場合は、専門家による治療やカウンセリングが欠かせません。
受診にためらいを感じる人も多いため、職場の相談窓口や産業医カウンセリングなど、利用しやすい複数の入口を会社側が整えておくことが効果的です。
バーンアウトを予防するための職場の取り組み
職場でのバーンアウト予防には、環境整備から日常の観察まで、組織全体で継続的に取り組む視点が求められます。以下の4つの観点から、職場環境を点検してみてください。
働きすぎを防ぐ
「真面目で仕事熱心」「完璧主義」といった特性を持つ従業員は、気づかないうちに働きすぎる傾向があります。長時間労働になっていないか、休暇が取れているかを複数の目で確認できる仕組みを整えることが重要です。裁量労働制の管理職や従業員についても、上長や人事部が定期的に状況を把握しておくようにしましょう。
役割・目標を明確にする
各メンバーの役割や目標は、本人の知識・スキルに合ったものを設定し、言語化して明示しましょう。担当範囲が明確であれば、必要以上に仕事を抱え込むリスクが減り、心理的な負担も軽減されます。目標達成が思わしくない場合は、1on1面談などを通じて過重な負担が生じていないかを確認しましょう。
人間関係の構築と権限付与をサポートする
相談相手がわからない、話しかけにくい環境は、意欲のある従業員ほど精神的な消耗を招きます。必要なシステムへのアクセスや決裁権限が整っていないことも、慢性的なストレスの原因になります。定期的な面談やアンケートを通じて、職場内のコミュニケーションと権限の状況を継続的に確認することが大切です。
バーンアウトの兆候を早期に察知する
バーンアウト予防のもう一つの柱は、職場全体で兆候を早めに気づき、対応することです。「業務時間が常に長い」「仕事の質が大きく低下した」「人間関係が悪化している」といった変化が見られたら、既に消耗が進んでいるサインである可能性があります。産業医や保健スタッフなど複数の目で定期的に状況を確認し、過重な負担が確認された場合は早めに環境を調整します。精神的なケアを含む健康支援プログラムやカウンセリングの機会を整えておくことも、リスクを下げるうえで有効です。
新入社員のバーンアウト予防とサポート
新入社員、特に新卒社員は社会人経験が少ない分、職場や自分自身への期待が大きくなりやすく、理想と現実のギャップ(リアリティ・ショック)を受けやすい時期です。よりきめ細かなサポートが求められます。
最後に、新人への対応で気をつけたい4つのポイントを見ていきましょう。
新入社員への接し方や対応方法については、以下のコラムでも詳しく解説しています。
コラム「新入社員が伸びる職場をつくる4つのポイント ~カギは『リアリティショック』からの脱却にあり~」はこちら
役割・目標とサポート体制を丁寧に説明する
期待する役割や仕事の重要性を丁寧に伝えるとともに、組織の中でその仕事がどう位置づけられているかも合わせて説明すると、入社後のモチベーション維持につながります。職場で受けられるサポートや利用できる制度も正確に伝えておきましょう。会社への過度な期待を抱いたまま入社すると、ギャップが大きくなりバーンアウトのリスクが高まるためです。
業務範囲とレベルの適切さを確認する
新入社員が業務で混乱しているようなら、手順やツールの扱い方を説明しつつ、担当範囲やレベルが本人に合っているかを確認します。困ったときの相談先を明示しておくと安心感につながるでしょう。
ただし、相談を受ける側の従業員に過度な負担がかからないよう配慮も必要です。ノルマ達成に必要な知識・スキルが不足している場合は、まずその習得を目標に設定する方が無理なく進められます。
新入社員のOJT教育については以下のコラムも参考になります。
コラム「新入社員の現場教育|OJT制度を"短期的に"機能させるポイントとは?」はこちら
休憩・休暇をきちんと取るよう声をかける
休憩時間にも働いている様子が見られたら、積極的に声をかけるようにしましょう。「上手に休むことも仕事のうち」という姿勢を職場全体で示すことが大切です。
新入社員は体調不良や家族の事情でも休みを申し出にくいことがあるため、先輩や上司から先に声をかける文化をつくると効果的です。
苦情や批判は人格への攻撃ではないと繰り返し伝える
意欲が高く、顧客や周囲の従業員と必死に関係づくりをしている場合も要注意です。相手の立場に寄り添いすぎると、仕事で生じた苦情や批判を自分自身の人格への攻撃と勘違いしてしまう可能性があるためです。
良好な関係を築くことは望ましいものですが、そこにはやはり一定の冷静さが必要です。「苦情や批判を受けても、それは人格への攻撃ではない。システムや、やり方への指摘である」という考え方を、日頃から折に触れて伝えるようにしましょう。

