階層別研修とは?目的・種類・テーマ事例と体系図の作り方
更新日:2026.09.15
公開日:2021.01.25

階層別研修とは、職位などの階層別に実施する研修の総称です。具体的な階層には、新入社員・若手社員・中堅社員・管理職・経営幹部などがあります。階層別研修の効果を高めるには、各階層の役割と人材要件の明確化が欠かせません。
本コラムでは、階層別研修の意義と目的、実施するメリットや効果を高めるポイント、テーマ事例のほか、階層別研修体系図の作り方などを解説します。
階層別研修とは?意義と目的、選抜研修との違い
階層別研修とは、会社内において年齢や立場・勤続年数などをもとに階層を分け、その階層別に行う社員研修のことです。
階層別研修の目的は、各階層に求められる役割を社員が認識し、役割を果たすために必要な能力の習得・向上を図ること。新入社員研修や管理職研修が典型例でしょう。
特定の階層を対象とする研修には、階層別研修のほかに「選抜研修」もあります。しかし、階層別研修と選抜研修とでは、その対象者および実施時期に違いがあります。
【階層別研修と選抜研修の違い】
| 階層別研修 | 選抜研修 | |
|---|---|---|
| 対象者 | 特定階層に属する全員 | 特定階層に上がる前の優秀な人材 |
| 実施時期 | 特定階層になった後 | 特定階層に上がる前 |
選抜研修の場合、社内で選ばれた優秀な人材が1つ上の階層に上がるために必要な知識・スキルを身につけることが目的。実施時期は、その階層になる「前」です。
一方、階層別研修の場合は、その階層に属する全ての社員を対象とした知識・スキルの習得・向上が目的です。したがって、研修はその階層になった「後」に実施します。
階層別研修を廃止する企業の特徴
多くの企業で階層別研修が実施されてきた一方、近年は階層別研修を廃止しようという動きも出ています。これには、ジョブ型人事制度の導入や働き方の多様化、キャリア自律などが関係しています。ただし、階層別研修を全て廃止するというより、新入社員研修など不可欠なものを残しつつ、より柔軟に対応できる体制を導入したというのが実状のようです。
例えば、ジョブ型人事制度を導入した企業の場合、社員は自身が目指すポジションに向けて能力を高めていかなければなりません。各研修は、そうした能力向上に必要なものが選ばれます。もし完全なジョブ型人事制度であれば、目指すポジションに向けたルートは人それぞれです。階層別研修が前提とする「階層」という概念が通用しにくいのも無理はないでしょう。
しかし実際は、新入社員や新任管理職などに対する研修は残っています。一定の層に対しては、一人ひとりの自主的な学びに任せるよりも、習得すべき知識・スキルを一斉に教えるほうが効率的だからです。
他方、働き方の多様化やキャリア自律などに対応するため、「受講する研修を社員自身が選択できる選択型研修を増やす」といった方策をとる企業もあります。この場合、階層別研修を行わないことのデメリットが浮き彫りになります。
選択型研修を増やすメリットは、多様なキャリアの実現につながることや、ニーズに合う学びによって教育効果の向上が図れることです。これ自体は、大変望ましいことです。ただ、選択型研修を中心とする教育体系には、積極的に研修を受講する社員と、そうでない社員の差が開いてしまうという課題があります。
多くの社員に習得を求める知識・スキルに関しては、どうしても一定の層に属する全員を対象とする研修を実施しなければなりません。
階層別研修を行う3つのメリット
階層別研修を廃止する動きがあっても、全ての階層別研修が不要というわけではありません。新入社員研修や管理職研修などは、依然として多くの企業で実施されています。
ここで、階層別研修の3つのメリットを整理しておきましょう。
【階層別研修のメリット】
- (1)社内に蓄積された知見・技術を継承できる
- (2)同階層の社員と交流し、モチベーション・主体性を高められる
- (3)社員の能力開発を効率化できる
順番に解説します。
(1)社内に蓄積された知見・技術を継承できる
階層別研修は、階層ごとに求められる知識・スキルの習得や向上を図る研修です。したがって、ビジネスで一般に求められるマナーや対人スキル、業務知識・スキル、マネジメントスキルのみならず、社内に蓄積された知見・技術も対象となります。
社内に独自のノウハウがある企業では、これらの継承は事業活動の継続に欠かせません。ところが、その継承を現場の社員に丸投げしてしまうと、人によって習熟度が大きく異なったり、そもそも指導自体が行われなかったりするケースがあります。ノウハウを持つ社員は、現場の第一線で自身の業務に忙殺されているという事情も無視できません。
ここで階層別研修を開催できれば、特定の階層に属する多くの社員に対して、一度にノウハウを共有できます。組織として一定の時間を確保しますので、「育成担当者が多忙で、指導を受けられない」といったこともありません。
(2)同階層の社員と交流し、モチベーション・主体性を高められる
階層別研修には、同じ階層に属する社員が集まるという利点があります。これだけでも、「今自分がどの階層に属しているのか」という自覚につながりますし、同じ階層の中で自身の知識・スキルのレベルを感じることもできるでしょう。
加えて、所属部署は異なっても、立場や年齢などで同じ課題・悩みを持つ社員は多いものです。階層別研修は、そうした社員同士の交流機会になります。「悩んでいるのは、自分だけではなかったのだ」と気づいたり、お互いに励まし合ったり、知識・スキルを教え合ったりすることができます。
階層別研修を通じたこれらの体験は、「次はこうしてみよう」という改善へのモチベーション・主体性の向上につながるでしょう。
(3)社員の能力開発を効率化できる
階層別研修では、階層ごとに研修の目的・内容を定めます。年次や職位によってパターン化しやすいため、開催・運営マニュアルの作成も可能です。
こうした点で、階層別研修は、育成対象者に対して個別に研修・指導を行うよりも効率的であり、人員・費用・時間の面でのコスト削減につながります。
また、階層別研修を繰り返し実施していくことで、各回の課題を分析してより適切なプログラムに改善するというPDCAサイクルも回しやすくなるでしょう。マニュアルの最適化が進めば、研修の準備にかかる労力をさらに削減できます。
階層別研修の効果を高めるポイント
階層別研修はパターン化しやすく、毎年同じようなテーマで実施できます。しかし、メリットを引き出すには形骸化の防止も重要です。効果を高めるために、以下に述べる4つのポイントを意識してみてください。
(1)自社の人材要件を定義する
1つ目のポイントは、人材要件を定義することです。
どのような人材が必要かは、企業ごとに異なります。急成長している企業であれば精力的に営業活動を進められる人材が必要ですし、20代中心の若いメンバーが活躍する企業なら、マネジメント力のあるベテラン人材が求められます。
大きな成長よりも堅実な事業活動を重視するなら、規定の手順にしたがって着実に業務を遂行できる人材が適しているかもしれません。反対に、外部環境の激しい変化への対応が求められる事業を軸とする企業なら、発想力や戦略立案に優れた人材の確保が重要です。
このように、自社の経営戦略や人員計画をもとに「どのような人材が必要か」を明確にすることが、効果的な階層別研修には欠かせません。
なお、人材要件を定義する際に考慮したい要素として、下表の5項目があります。
【人材要件の主な要素】
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 年齢・年次 |
|
| 業務経験 |
|
| 能力・資質・意欲 |
|
| 資格・免許 |
|
| 雇用形態 |
|
年齢・年次については、知識・技術の継承に当たって大きな偏りが出ないよう、必要に応じて考慮するとよいでしょう。
資格・免許では、「それがなければ、そもそも業務自体ができないような資格・免許」と「それがあることで、人事考課がプラスになる資格・免許」で考えましょう。前者の例は、配送業務における運転免許や倉庫業におけるフォークリフト免許。後者の例は、ITエンジニアの「応用情報技術者試験」「システムアーキテクト試験」などです。
雇用形態に関しては、正社員のみを対象とする階層別研修を検討しているのであれば、人材要件として特別考慮しなくても構いません。正社員以外の人材に対する研修も考えるなら、雇用形態別に人材要件を定義するとよいでしょう。
(2)現在の育成施策を洗い出し、抜け漏れ・重複をチェックする
2つ目のポイントは、現在の教育施策の洗い出しと抜け漏れ・重複のチェックです。新しく会社を設立したのでない限り、ほとんどの企業では既に何らかの育成施策が行われているものです。それらを全て洗い出し、抜け漏れや重複がないかチェックしてみてください。
例えば、人材育成部門による施策と現場での育成施策に重複があるなら、多くの部門に共通する内容は集合研修を実施する形に変更し、OJTは各部門特有の指導が必要なものを中心とするといった整理・統合ができます。
あるいは、「新入社員・若手社員を対象とする研修は充実しているが、中堅社員向けの施策が極端に少ない」といった状況なら、中堅社員にとって基本事項の確認や業務能力向上につながる研修を補いましょう。
網羅的にチェックすることで、全体にバランスのとれた一貫性のある教育体系をつくることができます。
(3)研修の開催方法を使い分ける
研修の効果を高めるには、目的や内容に応じて適切な開催方法を選ぶことも大切です。これが3つ目のポイントです。
研修の代表的な開催方法には、講演会型・参画型・フィールド型の3つがあります。
【研修の3つの開催方法】
| 開催方法 | 特徴 |
|---|---|
| 講演会型 |
|
| 参画型 |
|
| フィールド型 |
|
ただし、以下の点には注意しなければなりません。
- 講演会型は受講者が受け身になりやすいため、扱う内容を自分事として捉えられるような工夫が必要になる
- 参画型は、講演会型に比べて受講者の負担が大きい
- フィールド型は、訪問先との調整に労力がかかる
受け身の姿勢に対する解決策としては、ワークショップなどで自身の体験を振り返ったり、ほかの受講者と意見交換をしたりするなどの方法が考えられます。研修受講の負担を軽減するには、あらかじめ上司や職場の理解を得ておき、受講者の業務量軽減や納期延長などを検討しなければならないでしょう。事前調整が成否の鍵を握るフィールド型では、訪問先の都合も考慮してスケジュールを組まなければなりませんので、十分な準備期間を設けてください。
(4)研修後のフォローアップを行う
そして4つ目のポイントは、研修後の取り組みです。
研修を実施しただけでは、受講者は学んだ内容を忘れてしまいます。定着を促すため、研修後のフォローアップによって日々の実践をサポートしていきましょう。
フォローアップの具体的な手法は、主に4つあります。
【研修後フォローアップの主な手法】
| 手法 | ポイント |
|---|---|
| 研修報告書(レポート) 行動宣言の作成 |
|
| 復習テストの実施 |
|
| 上司による現場での支援 |
|
| フォローアップ研修の実施 |
|
研修報告書・行動宣言や復習テストの場合、研修内容を思い出しながら自分の言葉でアウトプットすることで、記憶の定着が促され、実践への意識づけもできます。
上司によるサポートは、日々の実践の支援とモニタリングです。定期面談などの機会を活用し、研修報告書・行動宣言も踏まえたフィードバックを行いましょう。
フォローアップ研修は、特に定着までに時間がかかると思われるテーマについて実施すると効果的です。伝える内容が多かったり難易度が高かったりするテーマでは、あえて1回で終わらせず、複数回に分けたステップアップ方式にする方法もおすすめ。前回研修の内容とそれまでの取り組みを振り返る時間を設けることで、定着を促せます。
階層別研修の種類とおすすめテーマ事例
では、階層別研修には具体的にどのようなテーマがあるのでしょうか。新入社員から経営幹部まで、典型的な研修の種類やおすすめのテーマ事例などをご紹介します。
新入社員研修
階層別研修で第一に挙げられるのは、新入社員研修です。新入社員には組織内での役割はまだありませんが、学生から社会人となる大きな変化に対応し、ビジネスパーソンとして必要な基本のビジネスマナー・知識・スキルを習得してもらわなければなりません。
【新入社員研修】
| 研修の目的 | 学生と社会人の違いを認識し、基本的なビジネスマナー・知識・スキルを習得する |
|---|---|
| 期待される役割 | — |
| テーマ例 |
|
社会人としての心構えでは、人間関係・言葉遣い・身だしなみなど、学生時代とは大きく変わる行動習慣を理解し、習得できるようトレーニングします。コンプライアンスや顧客志向の重要性、「顧客にとっては社員一人ひとりが会社の代表である」といった当事者意識の醸成も不可欠です。
ビジネスマナーやビジネススキルでは、あいさつ・席次・名刺交換・報連相といったマナー、および仕事の進め方・ビジネスコミュニケーション・ビジネス文書作成などを学びます。
会社についての理解と各職場の見学は、新入社員が自社のミッション・ビジョンや独自ルール、企業風土、実際の職場の雰囲気を知るためのテーマ。これらを通じて配属に向けた基本知識を学ぶとともに、帰属意識を養っていきます。
新入社員研修については、以下の関連コラムでも詳しく解説しています。併せてご覧ください。
コラム「新入社員研修とは?目的、期間、実施内容とカリキュラム作成のポイント」はこちら
若手社員研修
若手社員研修は、新入社員時代を終えた年次の浅い社員を対象に、社会人としての基本行動を定着させることを目的に実施します。期待される役割は、「定型的な業務であれば、ミスなく安定して任せられる」こと。そのため、業務に必要な知識・スキルの習得も研修内容に含まれます。
【若手社員研修】
| 研修の目的 | 社会人としての基本行動・基本姿勢や業務知識・スキルを習得する |
|---|---|
| 期待される役割 | 定型業務をミスなく安定して遂行する |
| テーマ例 |
|
業務知識・スキルをテーマとする研修では、例えば、ビジネスで扱う数字の意味と見方、基礎的な労務知識、ビジネスライティングやスライド作成のやり方などが挙げられます。顧客対応が求められる部署なら、クレーム対応のスキルが求められるでしょう。企画・マーケティングでは、ロジカルシンキングや情報収集のやり方も重要です。
そうした業務知識・スキルを活用して上手に仕事を進める技術も忘れてはいけません。タスク管理やタイムマネジメントなどの研修です。円滑に仕事を回すために、同僚・先輩・上司との適切なコミュニケーション方法もおさえましょう。
そして、近年注目されているのがキャリア自律です。社員一人ひとりが「どのようなキャリアを歩みたいか」を自ら描き、その実現に向けて主体的に取り組むというものです。若手社員のうちからキャリアデザインと自ら成長するためのリフレクションの重要性を伝え、取り組みに役立つノウハウを提供しましょう。
中堅社員研修
中堅社員研修は、若手社員の段階を終えた一般社員が対象です。中堅社員に期待される役割は、業績への貢献・後輩指導・次期管理職としての成長の3つ。研修目的は、これらの役割を果たせるように能力開発を行うことです。
【中堅社員研修】
| 研修の目的 | 業績貢献・後輩指導・次期管理職としての成長につながる知識・スキルを習得する |
|---|---|
| 期待される役割 |
|
| テーマ例 |
|
職種ごとの業務知識・スキル研修では、担当業務に関する基礎知識・ルールを確認したうえで、専門知識・スキルの習得を支援します。
後輩指導に役立つ能力の開発では、OJTトレーナーとしての知識・スキルが重要でしょう。OJTの全体像を知るだけでなく、ティーチングやコーチング、指導における適切なコミュニケーションスキルなどが必要です。
次期管理職として求められる能力では、リーダーシップやフォロワーシップの実践を目指します。まずは「組織全体で持続的に成果を出す」という俯瞰(ふかん)的視点を獲得するため、上司を補佐しながら管理職の考え方や業務内容を学ぶよう意識づけを行ってください。同時に、部署のメンバー一人ひとりの能力・特徴を理解したり、組織の方向性をメンバーに浸透させたりするなど、後輩社員と上司のパイプ役を担えるように支援するとよいでしょう。
フォロワーシップの具体的な例や育て方については、以下の関連コラムでも詳しく解説しています。
コラム「フォロワーシップとは何か?意味と5つのタイプ、具体例と育成方法」はこちら
管理職研修
管理職研修は、新任管理職からベテラン管理職まで、様々な層の管理職を対象とする研修の総称です。管理職に求められる知識・スキルは、プレイヤーとは大きく異なります。学ぶ内容が多いため、テーマを細分化して実施するケースが多く見られます。
【管理職研修】
| 研修の目的 | 外部環境の変化や法改正に対応した効率的・効果的なマネジメント手法を学ぶ |
|---|---|
| 期待される役割 |
|
| テーマ例 |
|
マネジメント業務に関するテーマでは、経営戦略などの上位戦略・目標から自部署のアクションプランを策定するなどの戦略策定スキル、より効率的な業務遂行を実現するための問題解決スキルが求められます。
チームビルディング・部下育成・労務管理・人事評価などは、人材に関するテーマです。組織を構成する各メンバーの能力向上は、組織の業績を支える最も重要な要素。一人ひとりの能力・状況を把握しながら成長と目標達成をサポートするための手法を学びます。
ほかにも、予算管理など経営資源に関するテーマや、近年必須となっているコンプライアンスに関するテーマなどがあります。
管理職を対象とする一連の研修を通じて、管理職自身が次世代幹部・経営陣候補者としての自覚をもてるよう支援することも大切です。
役員・経営幹部研修
最も高い層を対象とする研修は、「役員研修」や「経営幹部研修」です。部門長などを対象に実施します。役員・経営幹部研修の目的は、各幹部が自部門の成果と運営のみならず、会社全体を見る視点を養い、戦略・計画の立案および事業運営の能力を高めることです。
【役員・経営幹部研修】
| 研修の目的 | 「自分は経営者の一人である」という自覚をもち、経営に関するスキルを学ぶ |
|---|---|
| 期待される役割 |
|
| テーマ例 |
|
経営戦略をテーマとする研修では、経営戦略を立てる目的や位置づけ、経営戦略の構造および策定手順などを学びます。財務知識の研修は、経営戦略を策定・実行する際に必要となる財務三表(損益計算書・賃借対照表・キャッシュフロー計算書)を理解し、収益性や成長性を分析できるようにすることが目的です。
他方、社内外の環境分析手法をテーマとする場合は、具体的な分析手法を学び、実際に使えるようトレーニングしなければなりません。代表的な手法には、3C分析、PEST分析、SWOT分析、7S分析、バリューチェーンといったものがあります。
マーケティングは、顧客のニーズを理解し、それを満たすような価値を生み出すための施策検討に不可欠。組織人事は、事業戦略の実現に向けた人材要件の明確化および育成・採用において重要です。
研修テーマは多岐にわたり、内容自体も高度になります。複数回かつ長期にわたって実施するのが、役員・経営幹部研修の一般的な進め方です。
経営戦略の詳細は以下の関連コラムで解説していますので、研修の企画にお役立てください。
階層別研修体系図とは
以上で見てきたように、階層別研修には多くの種類とテーマがあります。場当たり的に企画・実施するやり方では、次第に混乱し、受講者の意欲が失われてしまうでしょう。
そこでおすすめしたいのが、体系図の作成です。施策を一覧できるようになり、施策同士の関係も捉えやすくなります。
次項で、階層別研修体系図の作成方法をご紹介します。
階層別研修体系図の作り方
階層別研修の体系図は、6つのステップで作成します。大切なのは、図式化する前に階層別に期待する役割・人材要件などを定義し、必要な知識・スキルを獲得できるように設計しておくことです。
(1)階層別の役割・コンピテンシー・人材要件を明確にする
階層別研修の体系図を作成するに当たって初に明確にしておきたいのが、各階層での役割と求める人材像です。具体的には、階層別の役割・コンピテンシー(活躍している人材がもつ行動特性・考え方)を分析し、人材要件を定めます。
階層別の役割の基本は、先述した通りです。もし自社で特に期待する役割があるなら、それを設定しましょう。
コンピテンシーは、役割を果たしていると考えられるモデル人物の行動・考え方の特徴を洗い出します。自社のミッション・ビジョンや行動指針なども踏まえて、望ましい姿を実現している社員をモデルとしましょう。
こうした役割・コンピテンシーが明らかになると、「どのような能力を育てる必要があるのか」が見えやすくなります。階層ごとに、求められる能力や姿勢(人材要件)を定義してください。
(2)人材要件を満たすために必要な知識・スキル・姿勢を明確にする
第2ステップでは、各階層の人材要件を満たすために、どのような知識・スキル・姿勢が必要かを具体的に検討しましょう。
例えば、新入社員に対して「学生から社会人となったこと」の自覚を促すのであれば、基本的なビジネスマナーやビジネススキルの習得、社会人としての行動習慣の形成が必要です。
管理職として組織の成果を持続的にあげられるようにするのであれば、チームビルディングや予算管理のノウハウとともに、部下の健康を守る意識と指導方法(労務管理・コンプライアンスなど)などを強化しなければならないでしょう。
(3)社員のニーズを階層ごとにヒアリング・分析する
第3ステップでは、「現場の社員は何を学びたいのか」というニーズを分析します。これまで見てきたような一般的なテーマに加えて、自社の社員が特に求めている知識・スキルに対応した施策を講じるためです。
ニーズを把握するには、社員アンケートを実施したり、定期面談などで上司から部下にヒアリングを行ったりする方法が考えられます。
併せて、ビジネススキル診断ツールの活用もおすすめです。診断結果を階層別に分析すれば、「どの階層で、どのような知識・スキルが不足しているのか」を可視化しやすくなるからです。当社ALL DIFFERENT株式会社でも、ビジネスパーソンを対象とする診断テストをご提供しています。診断結果に基づいて必要な研修テーマが提案されるため、研修の企画・運営にお役立ていただけます。
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社員のニーズに対応したプログラムを実施できれば、対象者の学びと実践への意欲が高まりやすくなります。役割を果たすために必要なほかのテーマの学びも促進されるでしょう。
(4)階層別に実施する研修・セミナー・OJT・eラーニングの一覧をつくる
必要な知識・スキルとニーズを把握できたら、大まかな内容を検討しながら実施方法を決めていきましょう。選び方の目安は下表の通りですが、自社の事情に合わせて決定する形で構いません。
【実施方法の選び方の目安】
| 内容・特徴 | 実施方法の例 |
|---|---|
| 多くの受講者に伝えたい共通の内容や、対面で伝えることが重要な内容 |
|
| 業務知識に関する一般的なノウハウ |
|
| 個別具体的な経験・ノウハウ |
|
なお、対象者が研修などに割ける時間を考慮して決めるやり方もあります。
まだ現場に配属されていない新入社員であれば研修に多くの時間を使えますので、帰属意識の醸成も兼ねて集合研修を中心に進めるとよいでしょう。これに対して多忙な中堅社員や管理職の場合は、対面型の研修は最も重要なことに限定し、一般的な知識・スキルは受講するタイミングを自分で選べるeラーニングするという方法があります。
開催方法まで検討したら、階層別に施策の一覧をつくりましょう。全体を見渡して、いずれかの方法に偏っていないかもチェックしてください。偏りがある場合は、その手法によるメリット・デメリットを比較し、よりメリットが大きくなるよう調整しましょう。
(5)各研修・セミナー・OJT・eラーニングのゴールおよび内容を決定する
第4ステップまでで、階層別研修として実施する施策が一通りそろいました。第5ステップでは、各施策の具体的なゴールおよび内容を決めていきます。ポイントは、「各ゴールを順番に達成していけば、その階層で求められる役割を果たすために必要な能力を獲得できる」という観点です。
全体と各施策を往復しながらテーマの抜け漏れや重複を改めてチェックし、「どの順番で取り組めば、ステップアップしやすいか」を検討してください。大体の順番が決まったら、各施策のゴールを決定し、中心となる内容を考えます。
適切な順番と内容を決定できたら、一覧表はひとまず完成です。
(6)以上の内容を図式化する
いよいよ最後のステップである図式化です。第5ステップまでで必要な素材はそろっていますので、縦軸を階層、横軸をテーマとして分類し、図を作成しましょう。
体系図は、表形式でまとめるケースが多く見られます。とはいえ、「これでなければいけない」というものはありません。わかりやすい形でまとめることが大切です。
なお、横軸のテーマについては様々な分け方があります。ゴールに基づいて分類するなら、「業務知識・スキル」「人材育成」「マネジメント」「キャリア自律」「コンプライアンス」といった分け方が可能です。カッツモデルを参考にするなら、「テクニカル・スキル」「ヒューマン・スキル」「コンセプチュアル・スキル」とするやり方があるでしょう。自社のミッション・ビジョン・行動指針に沿った分類でも構いません。
作成には多少手間がかかりますが、施策の全体像をいつでも確認できる体系図があれば、階層別研修を受講する納得感を高められるとともに、研修内容の改善も進めやすくなります。教育効果の向上に役立ちますので、ぜひ作成してみてください。
階層別研修の内容相談・講師派遣ならALL DIFFERENTへ
階層別研修を実施するには、役割と人材要件の定義、習得・強化すべき能力の特定とニーズの把握、ゴールおよび内容の設計といったように、大変大きな労力がかかります。しかし、事業活動の継続・発展は、場当たり的な研修のみではできません。競合他社の社員が学んでいる内容を自社でも学べる機会を提供し、かつ社内に蓄積されたノウハウを確実に継承していくには、階層別研修は重要な方策です。
企業文化を踏まえた階層別研修をお手伝いしてきたALL DIFFERENT株式会社では、企業がもつ育成への想いと社員一人ひとりの成長をつなげる各種研修の企画・運営を承っています。講師派遣やオンライン研修なども実施しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

