労務管理とは?具体的な仕事内容や労務管理システム導入のメリット、資格などを解説
更新日:2026.02.24
公開日:2024.11.05

「労務管理」は、法令遵守および職場環境の安定を支える企業活動の中核的業務です。
本コラムでは、労務管理の基本的な意味から仕事内容、効率化に役立つシステムや資格までをわかりやすく解説します。
労務管理とは
労務管理とは英語で「labor management」または「labor control」といい、企業で働く人々の「労働」に関して、以下のような事柄を管理することを指します。
- 雇用契約
- 就業規則
- 給与
- 勤怠
- 社会保険
- 安全衛生
- 労働環境
単なる事務処理ではなく、法律遵守と職場環境の改善を通じて企業の信頼を支える重要な業務です。
労務管理を適切に行うことで、従業員のモチベーションが高まり、生産性や定着率の向上にもつながります。一方で、法令違反や管理の不備があれば企業に罰則やトラブルが発生するおそれもあるため、正しい知識と体制が欠かせません。
まずは労務管理の目的や、労務管理とセットで語られやすい「勤怠管理」や「人事管理」との違いを解説していきます。
労務管理の基本と目的
労務管理の基本は、「法令遵守」と「従業員が安心して働ける環境づくり」です。具体的には、労働条件の管理、労働時間の把握、就業規則や安全衛生の整備、社会保険の適用など、労働に関わる各種制度や手続きを適切に運用することを意味します。
労務管理の目的は、労働者の働きやすさを向上させ、企業の生産性を高めることです。労働者と企業の双方にとって良好な労働環境を構築するという重要な役割を担っています。
労務管理と勤怠管理の違い
労務管理とセットで語られやすい言葉の1つに「勤怠管理」があります。両者の違いは、管理対象と運用範囲にあります。
| 運用範囲 | 管理対象 | |
|---|---|---|
| 労務管理 | 労働についての幅広い記録・管理 | 就業規則、労働時間、休暇取得、職場の安全衛生、社会保険 |
| 勤怠管理 | 労務管理の一部で、労働者の出勤退勤の管理 | 出勤・退勤、労働時間、休憩時間、休暇、残業 |
労務管理が企業全体における従業員の労働について包括的に管理するのに対し、勤怠管理はその中でも日々の労働時間や出勤記録の適正な管理に焦点を当てていると理解するとよいでしょう。
労務管理と人事管理の違い
労務管理と人事管理はどちらも「人」に関する業務ですが、その目的と範囲は異なります。
| 業務概要 | 管理項目 | |
|---|---|---|
| 労務管理 | 労働についての幅広い記録・管理 | 就業規則、労働時間、休暇取得、職場の安全衛生、社会保険 |
| 人事管理 | 人材の採用や育成、人材の活かし方や人材戦略 | 採用・配置・評価・昇進・育成 |
例えば、労務管理が法令遵守やリスク管理を重視するのに対し、人事管理は人材育成やモチベーション向上を重視します。両者が連携することで、従業員が安心して能力を発揮できる職場環境が整い、企業の持続的かつ健全な運営につながります。
人事の仕事について詳しく知りたい方は以下のコラム記事も参考にしてください。
労務管理の仕事内容一覧
労務管理の業務範囲は、採用後の入社から退職まで、従業員の「働く一生」を支える内容におよびます。具体的には、大きく分類して以下のような仕事内容が挙げられます。
- 雇用に関する手続き:入社、退職、休職の手続き
- 法定帳簿の作成・管理
- 就業規則の作成・届出・管理
- 勤怠管理
- 給与計算
- 社会保険の手続き
- 労働環境の管理:安全衛生管理、従業員の健康管理、職場環境の整備、ハラスメント対策
企業が信頼される労務体制を維持するには、これら多岐にわたる業務を一貫して管理し、効率化することが欠かせません。ここでは、労務管理に含まれる業務について、それぞれ詳しく解説します。
雇用に関する手続き
従業員の採用から退職まで、雇用には様々な手続き業務が発生します。ここでは、「入社」「退職」「休職」に分けて、労務管理の仕事内容をご紹介します。
入社手続き
新しい従業員を採用する際は、企業と労働者の間で「雇用契約」を結びます。
- a. 書面による労働条件の明示(雇用契約書や労働条件通知書、あるいは両者を一体化した「労働条件通知書兼雇用契約書」)
- b. 雇用契約の締結
- c. 社会保険や雇用保険の手続き
雇用契約は、正社員の雇用だけではなく、契約社員やパート・アルバイトといった非正規従業員の雇用時、契約更新時にも締結が必要です。
雇用契約を結んだあとは、社会保険や雇用保険の手続きに関する仕事が発生します。正規社員でも非正規社員でも、条件を満たしていれば社会保険や雇用保険に加入させなければなりません。
また常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し健康診断を行うか、3カ月以内に健康診断を行ったことを証明する書類を提出させる必要もあります(労働安全衛生規則第43条)。
コラム「雇用とは?意味・関連する法律・雇用契約書のポイントと使える助成金一覧」はこちら
退職手続き
従業員の退職時にも、労務管理の仕事が発生します。具体的には、退職届の受理、給与の精算、社会保険・雇用保険の資格喪失、積立金などの金品の返還、貸与品などの回収、源泉徴収票・離職票などの送付といった手続きが必要です。
退職手続きが遅れると、企業側には、本来納付しなくてもよかった社会保険料の支払いが発生したり、従業員側にとっては、失業給付の受給開始が遅れたりといった不利益が生じる可能性があります。退職手続きはなるべく迅速に行いましょう。
休職手続き
休職とは、労働者が自己都合によって長期間仕事を休むことです。従業員が休職する際にも、様々な手続き業務が発生します。
例えば、従業員が私傷病で休職する際は、医師の診断書を提出してもらったり、休職のスケジュールの擦り合わせ、復帰に向けてのフォローを行ったりといった業務が必要です。
従業員が休職を希望した時の対応や復職時の支援方法については、以下のコラム記事でくわしく解説しています。
コラム「「休職したい」と言われた!休職中の給料・社会保険料と復帰への流れ」はこちら
コラム「復職に必要な対応とは?休職者の職場復帰支援の注意点」はこちら
法定4帳簿の作成・管理
労務管理では、「法定帳簿」の作成・管理も仕事内容に含まれます。
「法定帳簿」とは、企業が労働基準法にしたがって作成・管理しなければならない帳簿のことです。これらは労働基準法違反とならないよう、労働者の情報、労働条件、労働時間、賃金などを適正に記録・管理するために使われます。
こうした帳簿をきちんと整備しておくことは、労使間のトラブル防止や早期解決においても重要です。
参考:沖縄労働局|労働者を雇用したら帳簿などを整えましょう~労働関係法令上の帳簿等の種類と保存期間について(簡易版)~
労働者名簿(労働基準法第107条)
労働者名簿は、従業員の情報をまとめた名簿です。従業員一人ひとりについて、次の項目を記録します。
- 氏名
- 生年月日
- 履歴
- 性別
- 住所
- 従事する業務
- 雇入年月日
- 退職年月日およびその事由(解雇の場合はその理由)
- 死亡の年月日およびその原因
労働者名簿は労働者の死亡、退職または解雇の日から起算して3年間の保存が必要です。労働者の退職後、すぐにデータを消してしまわないように気をつけましょう。
賃金台帳(労働基準法第108条)
賃金台帳は、従業員への賃金の支払い状況をまとめた帳簿です。従業員一人ひとりについて、以下の項目を記録します。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数(深夜・休日・残業時間を含む)
- 基本給および手当額
- 賃金控除額
出勤簿(労働基準法第109条)
出勤簿は、従業員一人ひとりの出勤状況について、次の項目を記録したものです。
- 氏名
- 出勤日
- 出勤日ごとの始業・終業時間
- 休憩時間
- 残業時間
年次有給休暇管理簿(労働基準法 施行規則第24条の7)
年次有給休暇管理簿は、平成31年4月から法定帳簿に追加された新しい帳簿です。従業員一人ひとりについて、以下の項目を記録します。
- 氏名
- 有給休暇の付与日(基準日)
- 有給休暇の取得日
- 従業員が取得できる有給休暇の日数
また計画的付与や、使用者の時季指定の規定により有給休暇を与えた場合も、その旨を記録しましょう。
年次有給休暇管理簿については以下のコラムでも解説しています。
コラム「有給休暇とは?日数・金額・パートの取り扱いなどを解説」はこちら
就業規則の作成・届出・管理
就業規則の作成や届出、管理も労務管理の仕事の1つです。
就業規則とは、企業が従業員に対して労働条件や職場のルール、義務、権利など定めた規則です。常時10名以上の従業員を雇用している企業の場合、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。
就業規則を作成・変更する際には、労働者代表の意見を聴取し、届け出には聴取した意見を記した書面を添付しなければなりません(労働基準法第90条)。
就業規則を作成したあとは、見やすい場所へ掲示する、職場に備え付ける、書面で配布する、社内ネットワークで閲覧可能にするなどの方法で、労働者に対して内容を周知することも必要です(労働基準法第106条)。
勤怠管理
法定帳簿の作成・管理とともに重要な仕事が、勤怠管理です。
勤怠管理は、従業員の日々の勤怠情報を管理する業務。タイムカードや勤怠システムなどによって記録された情報をもとに、出勤日数や休暇日数、残業時間などのデータを取りまとめます。法定帳簿の作成に必要な情報の記録・管理を行う業務といえるでしょう。
具体的には、以下のような項目を記録・管理します。
| 項目 | 記録・管理の目的 |
|---|---|
| 出勤・退勤時間の記録 | 労働時間を把握するため |
| 休憩時間の記録 | 労働基準法に定められた休憩時間を確保するため |
| 休日・休暇の管理 | 休日や年次有給休暇、産前産後休業、育児休業、介護休業などを管理するため |
| 時間外労働・深夜労働の記録 | 所定労働時間を超える時間外労働や深夜労働を正確に記録し、適切な割増賃金を支払えるように備えるため |
| 欠勤・遅刻・早退の記録 | 欠勤・遅刻・早退の日時について正確に把握するため |
勤怠管理を行う目的は、労働基準法における労働時間や休日に関する規定を遵守できているかを確認することです。また、従業員一人ひとりの労働時間の管理は、従業員の心身の健康状態に対する定期的なチェックにもつながるでしょう。
こうした適切な勤怠管理は、労働者の働きやすい環境づくりと企業の健全な経営の両立に欠かせません。
コラム「残業時間の定義は?36協定・過労死ライン・削減アイデア」はこちら
給与計算・年末調整
給与計算も、労務管理の中で非常に重要な業務です。基本給のほか、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する賃金の割増、各種手当(住宅手当、通勤手当、家族手当など)、税金や社会保険料などの控除額などを計算し、従業員それぞれの手取り額を算出します。
また、賞与の計算や年末調整なども行います。
正確な給与計算は、従業員が安心して働くための必須条件。賃金の支払いに関するコンプライアンスのためにも、ミスのない仕事が求められます。
コラム「サービス残業は自主的行為でも違法!企業の法的責任と防止策」はこちら
社会保険の手続き
健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険などの社会保険に関する業務も労務管理の仕事の1つです。
従業員の入退社時には、雇用保険や健康保険、厚生年金の資格取得や資格喪失に関する届出を行います。雇用保険については、従業員の退職時に資格喪失届と併せて離職証明書の提出も求められます。
従業員の出産や育児に際しては、産前産後休業や育児休業に関する届出も必要です。これにより、企業側も従業員側もともに社会保険料の免除を受けられたり、雇用保険から育児休業給付金が従業員へ支給されたりします。
また、労働災害が発生したときには労災保険の給付請求を行わなければなりません。
社会保険の手続きには、様々な法律や制度が関わってきます。加入条件や保険料など、詳しくは以下のコラムもご覧ください。
コラム「雇用保険とは?加入条件と手続き、もらえる給付金・手当」はこちら
コラム「厚生年金とは?パート・会社員の加入条件や金額の目安をわかりやすく解説」はこちら
コラム「育休(育児休業)とは?条件・期間と「手取り10割」の新制度」はこちら
労働環境の管理
労働環境の管理とは、従業員が安全かつ快適に働ける職場を維持するための取り組み全般を指します。
照明・温度・騒音などの物理的環境だけでなく、ストレスや人間関係といった心理的環境も含まれます。企業には労働安全衛生法に基づき、従業員の安全を確保する責任があります。労務管理において労働環境を整えることは、事故や疾病の防止につながるだけでなく、従業員のモチベーションや定着率の向上にも直結します。
職場が安心できる環境であれば、従業員はより高いパフォーマンスを発揮し、組織全体の生産性向上につながるのです。
安全衛生管理
安全衛生管理とは、労働者の安全で健康に働ける職場環境づくりを目指す業務です。具体的には、安全衛生委員会の設置と定期的な開催、安全衛生教育(避難訓練や応急処置講習など)の実施などがあります。
労働安全衛生法には、事業の規模や業種、事業内容によって、取るべき安全衛生管理体制や、従業員へ必要な安全衛生教育が細かく定められています。これに基づき、労務管理担当者は、必要な管理者や産業医の選任、安全衛生委員会の設置・運営、安全衛生教育などを行わなければなりません。
また、万が一、事業場内で労働者が負傷などにより休業したり死亡したりした場合は、それが労働災害に該当するかどうかにかかわらず、「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出しなければなりません。
参考:厚生労働省 京都労働局・労働基準監督署「事業場における安全衛生管理体制のあらまし」
従業員の健康管理
従業員の健康管理は、企業が長期的に安定した経営を続けるうえで欠かせない要素です。
労働安全衛生法では、全ての企業に対して年1回以上の定期的な健康診断を義務づけています。定期健康診断の具体的な項目は年齢・性別などを基準に細かく定められており、従業員の業務内容によっては、他の健康診断の実施も求められます(特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、給食従業員の検便など)。
健康診断の実施に当たって労務管理担当者が行うのは、健康診断を受診対象となる従業員への日程の通知、結果の受け取りと保管、従業員本人への結果の通知などです。診断結果によっては、医師などから意見を聞くといった対応も必要です。常時50名以上の労働者を雇用している場合は、定期健康診断の結果を所轄の労働基準監督署へ提出しましょう。
常時50名以上の労働者を使用する事業者には、1年ごとに「ストレスチェック」を実施する義務もあります。厚生労働省が公開しているマニュアルやツールを活用しながら従業員の心の健康も守りましょう。
参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう ~労働者の健康確保のために~」
参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
職場環境の整備
安全衛生管理以外にも、職場環境の整備・改善が求められる場合があります。具体的には、適切な照明、温度、音響環境に気を配った快適なオフィス空間の提供、デスクや作業機器の配置改善、休憩スペースの充実などです。
職場における適切な照明の明るさや、温度、休養室の要件などは、厚生労働省が労働衛生基準として定めています。労務管理担当者は自社の現状と労働衛生基準を照らし合わせながら、労働者の意見なども取り入れて、職場環境を整備していかなければなりません。
参考:厚生労働省「ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました」
ハラスメント対策
ハラスメントとは、いじめや嫌がらせによって被害者の就業環境を悪化させる行為のことです。
労働施策総合推進法の改正により、職場におけるパワーハラスメント対策が大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月から義務化されました。
併せて、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法においても、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントの規定があり、2020年には防止対策の強化を求める改正が行われました。
労務管理担当者はこれらの法律にのっとり、適切なハラスメント対策を講じていく必要があります。
労務管理を効率化するシステム・ツールの導入
労務管理は、法律遵守と従業員の安心を守るために欠かせない業務ですが、書類やデータの量が多く、手作業ではミスや負担が発生しやすい領域でもあります。
近年は、勤怠・給与・社会保険などを一元的に管理できる「労務管理システム」を導入する企業が増えています。システムを活用すれば、煩雑な手続きを自動化し、情報を正確かつ迅速に処理できます。
さらに、法改正への対応やリモートワーク環境での管理も容易になるため、現代の企業運営において必須のツールといえるでしょう。
労務管理システムの主な機能と選び方
労務管理システムは、勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、年末調整などを自動処理する機能を備えています。従業員情報を一元化すれば、担当者による繰り返しの入力作業が不要となり、人的ミスを大幅に削減できます。
また、クラウド型システムなら場所を問わずアクセスでき、リモートワークにも対応可能です。選定時は「機能の幅」「法改正への更新対応」「セキュリティ」「サポート体制」などを比較することが重要です。
自社の規模や業務内容に合ったシステムを選ぶことで、導入効果を最大限に発揮できます。
勤怠・給与・社会保険を一元管理するメリット
勤怠データ・給与計算・社会保険の処理を別々に行うと、情報の重複入力や確認作業に多くの時間がかかります。一方、労務管理システムを導入してこれらを一元管理すれば、入力情報が自動連携し、処理のスピードと正確性が格段に向上します。
例えば、勤怠データをもとに自動で給与が計算され、社会保険の資格取得・喪失届もワンクリックで作成可能です。結果として、事務負担が軽減され、ヒューマンエラーの防止が図られて、担当者はより戦略的な人事業務に注力できるようになります。
システム導入による業務改善・コスト削減の効果
労務管理システムを導入すると、事務作業の効率化により大幅な時間短縮とコスト削減が期待できます。
従来は紙やExcelで行っていた処理を自動化することで、担当者1人当たりの業務時間を削減でき、残業や人件費の抑制にもつながります。
また、データがクラウド上で管理されるため、情報の紛失や更新漏れといったリスクも軽減されます。加えて、リアルタイムで正確なデータを把握できることで、経営判断や労務リスク管理にも活用可能です。
システム導入は、単なる省力化ではなく「組織の生産性を高める投資」といえるでしょう。
労務管理に関する資格
労務管理の仕事を正確かつ専門的に行うためには、法律や労働安全に関する知識が欠かせません。そこで役立つのが、社会保険労務士(社労士)や衛生管理者、安全衛生推進者などの資格です。
ここでは、国家資格である「社労士(社会保険労務士)」「衛生管理者」を中心にご紹介します。
社労士(社会保険労務士)
社会保険労務士は、労働・社会保険の専門家として国家資格に認定されています。
主な業務は、雇用契約や就業規則の作成、社会保険・労働保険の手続き、労務相談への対応など、企業の「人」に関わる法的手続きを代行・指導することです。特に、労務トラブルの予防や法改正対応など、企業のコンプライアンスを支える役割を担っています。
国家試験の合格率は約6~7%と難関ですが、労務分野での専門性を高めたい人には最も信頼性の高い資格です。*1
社労士の具体的な業務には以下に示す「1号業務」「2号業務」「3号業務」「補佐人業務」がありますが、このうち「1号業務」「2号業務」が独占業務です。*2
| 業務 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1号業務 | 社会保険関係の申請書の作成や提出代行、事務代理を行う |
|
| 2号業務 | 帳簿等書類の作成を行う |
|
| 3号業務 | 労務関係のコンサルティング業務を行う | 企業の人事や労務に関する相談にのり、企業の実情に合わせたアドバイス |
| 補佐人業務 | 補佐人として裁判に出廷する | 労使間のトラブルで訴訟になった場合、社労士が「補佐人」として、弁護士とともに出廷し陳述することが可能 |
社内に労務管理を担当する適当な人材がいない場合は、社労士に依頼して労務管理業務を行ってもらうのも効果的な方法の1つです。
*1 参考:厚生労働省|第57回社会保険労務士試験の合格者発表
*2 参考:大阪労働局「社会保険労務士の適正な業務の確保について知っていますか? 守っていますか? 社会保険労務士法」
衛生管理者
衛生管理者は、労働安全衛生法に基づき、従業員の健康と安全を守るために配置が義務付けられた国家資格です。
一定規模以上の事業場では必ず選任する必要があり、労働環境の点検や健康診断の実施、職場の衛生指導などを担当します。労務管理と密接に関わる分野であり、従業員が安心して働ける環境づくりに貢献する役割を担います。
衛生管理者資格には以下の2種類があります。
| 第一種衛生管理者 | 全ての業種で衛生管理者になることができる |
|---|---|
| 第二種衛生管理者 | 有害業務と関連の少ない情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業など一定の業種の事業場においてのみ、衛生管理者となることができる |
常時50名以上の労働者を雇用する企業は、業種に問わず労働安全衛生法に定められている基準にしたがって、一定数以上の衛生管理者を選任しなければなりません。
衛生管理者は毎週1回以上、担当する作業場をチェックします。設備、作業方法、衛生状態が従業員にとって有害であると考えられるときは、直ちに、必要な改善などを講じなければなりません。
従業員数の増加や、既に従事している衛生管理者の退職などに備えて、自社の労務管理担当者に衛生管理者資格の取得を推奨するとよいでしょう。
参考:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「受験資格(第一種衛生管理者・第二種衛生管理者)」
安全衛生推進者(衛生推進者)
安全衛生推進者(衛生推進者)は、従業員50人未満の小規模事業場で選任が求められる資格です。主な役割は、労働災害の防止や健康管理の推進、安全教育の実施など、現場レベルでの安全衛生活動を支援することです。
安全衛生推進者(衛生推進者)自体は資格の名称ではありませんが、選任されるには一定の実務経験・学歴・資格を持った者か、所定の安全衛生推進者養成講習を受けた者である必要があります。
衛生管理者が不要な事業場でも、この資格を持つことで基本的な安全衛生活動を実施できます。取得には講習の受講が必要で、労働安全衛生法に基づいた知識を短期間で学ぶことが可能です。労務管理の現場では、実務担当者が安全衛生推進者として活動することで、法令遵守と従業員の安心を両立できます。
労務管理士とは
労務管理士とは、労働法や社会保険、安全衛生などの実務知識を体系的に習得し、労務管理の専門性を高めるための資格です。
国家資格ではなく民間資格ですが、企業の労務担当者や総務職のスキルアップ資格として注目を集めています。
近年この資格が注目されている背景には、労働基準法の改正やテレワーク・副業解禁など、働き方の多様化によって労務リスクが増加していることがあります。加えて、労働時間管理やハラスメント対策といったコンプライアンス体制の強化が求められるようになったことも、大きな要因です。
以下では、労務管理士の資格について国家資格との違いや難易度などについて詳しく解説します。
労務管理士は民間資格
労務管理士は、社会保険労務士のような国家資格ではなく、一般社団法人や民間団体が認定する民間資格です。
そのため、法律上の独占業務はありませんが、労務関連の知識を証明する「実務力の証」として多くの企業で評価されています。
取得を通じて、労働基準法・労働契約法・安全衛生法などの基礎を理解でき、日常業務での法令遵守やリスク対応力を高められます。また、管理職や人事総務担当者が取得することで、従業員とのトラブルを未然に防ぐ実務スキルの裏付けにもなります。
企業内教育の一環として導入されることも多く、実務者にとって実践的な民間資格といえるでしょう。
労務管理士の難易度や資格概要
労務管理士資格は、難易度は比較的低めで、労務管理の基本を体系的に習得できる点が特徴です。
試験内容は、労働基準法・社会保険制度・労務リスク対策・安全衛生管理など、多岐にわたるテーマで構成されています。20歳以上の者であれば性別・学歴・職業・経験は不問で、社会人・学生誰でも受験可能です。労務管理士の合格率などは公表されていませんが、資格認定試験は、基本的に認定講座で習得した知識内容に基づいているため、比較的取得に取り組みやすい資格といえます。
Q:今までに全く労務管理の勉強をした事が無いのですが、認定試験は難しいのでしょうか?
A:働いていく上で必要な労働条件の最低基準である労働基準法を中心とした労務管理の講座を受講していただき、労務管理の基礎・基本から最新の法律知識までを当協会の専任講師から初心者の方にも良く分かるように直接、懇切丁寧な指導を行っていただきます。その後に行われる資格認定試験に関しましては、習得していただいた知識の内容に基づく試験となりますので真摯に取り組んでいただければ合格することは決して難しくありません。
引用元:日本人材育成協会|労務管理士|人事法務士|資格受験Q&A
学習過程で身につく知識は、労務担当者としての基礎力強化に直結するため、キャリアの初期段階で取得しておくと大きな武器になります。
労務管理士資格認定講座とセミナー
労務管理士資格を取得するには、日本人材育成協会が実施する公開認定講座や通信講座を受講して認定試験に合格するか、実務経験の証明と課題論文を提出して書類審査をクリアする必要があります。
| 資格取得のタイプ | 資格取得する方法 |
|---|---|
| 公開認定講座 | 全国主要都市で開催されている公開認定講座に参加し試験に合格する |
| 通信講座 | 所定の通信研修を履修し通信による到達度試験に合格する |
| 書類審査 | 労務管理に関する3年以上実務経験の証明と労務管理士資格取得者からの推薦に基づき、経歴と課題論文による書類審査に合格する |
| Web資格認定講座 | 所定の研修をeラーニングで履修しWeb資格認定試験に合格する |
認定講座のカリキュラムでは、労働法や社会保険の基礎、就業規則の作成方法、トラブル防止の実例など、実務に直結する内容を学びます。オンライン講座も多く、働きながら学びやすいのが特徴です。
実務担当者のスキルアップはもちろん、管理職が労務知識を身につける機会としても活用されており、企業の人事教育にも役立つ資格制度です。

