Off-JTとは?意味やOJTとの違い、研修の種類と使える助成金

update更新日:2026.03.05 published公開日:2022.07.22
Off-JTとは?意味やOJTとの違い、研修の種類と使える助成金
目次

Off-JTとは、職場や通常業務から離れて行われるセミナーや研修のこと。日々の業務だけではインプットできない知識・スキルの習得に活用されます。

本コラムでは、Off-JTの基本の意味やOJT、SD(自己啓発)との違い、研修の主な種類、企業事例やメリット・デメリットも含めて、Off-JTのやり方をわかりやすく解説します。

Off-JTとは?意味とOJT・SD(自己啓発)との違い

まずは「Off-JTとは何か」を確認していきましょう。OJTやSD(自己啓発)との違いも重要です。

Off-JTの意味と目的

Off-JTとはOff the Job Trainingの略。読み方は「オフ・ジェー・ティー」で、職場を離れて実施される訓練を意味します。そのため、日本語では「職場外訓練」とも呼ばれます。

Off-JTの典型例は、セミナーや研修。その目的は、一言で言えば自社で活躍できる人材の育成と定着促進です。

近年の慢性的な人手不足や人材流動化により、高い知識・スキルをもつ即戦力の人材を中途採用のみで確保することに限界が出てきました。

加えて、新入社員を対象とする2025年度の調査では、入社後の仕事に対する“やる気度”が70%以上であると答えた新入社員が約9割に。「仕事を通じて成し遂げたいこと」についても、半数以上の人が「自分を成長させたい」を選んでいます。*

こうした新入社員のやる気を成功体験につなげるため、知識・スキルを下支えする施策としてOff-JTが活用されています。

Off-JTとOJTの違い

Off-JTとともに言及されることが多い「OJT」についても、ここで復習しておきましょう。

OJTとは、On the Job Trainingの略で、「オー・ジェー・ティー」と読みます。Off-JTの「職場外研修」に対して、OJTは「職場内研修」と呼ばれます。日々の業務を進めながら具体的な知識やスキルを学ぶ訓練方法です。

Off-JTとOJTの違いは、実施する場所や育成体制、訓練期間や内容などにあります。

【Off-JTとOJTの違い】

Off-JT OJT
場所 職場外
(研修センターや会議室など)
職場内
手法 業務を離れて体系的に学ぶ1対多形式の教育 実際の業務の中で具体的にやり方や考え方を学ぶ1対1を中心とした形式の教育
期間 1回当たり数時間など短期間中心 数カ月〜1年など長期間中心
内容 ビジネスや職務に必要な知識・スキル全般が対象。他部署や他社のメンバーとともに学べる内容も多い 社内の業務に必要な知識・スキルが中心

両者の使い分けとしては、

「実際に業務を進めながら学ぶほうが理解・習得の効果が高い場合はOJT」

「日常業務の中で学ぶと散漫になりやすいものはOff-JT」

といったイメージで捉えるとよいでしょう。

Off-JTとSD(自己啓発)の違い

社員の成長に欠かせない取り組みには、Off-JTやOJTのほかに「SD」もあります。SDとはSelf-Developmentの略で、日本語では「自己啓発」と言われます。

SDは社員が自主的に知識・スキルを学ぶことを意味しており、会社側では教材や学習機会の確保を支援することが多いでしょう。例えば、書籍購入手当や社員が好きなタイミングで学べるeラーニング講座の提供などがあります。

Off-JTとSDの最も大きな違いは、社員の自主性と給与の支払いの有無です。Off-JTの場合、社員に参加を強制するケースが多く、社員の自主性はあまり問われません。業務命令として参加させるため、セミナー・研修などへの参加時間は業務時間にカウントされます。そのため、Off-JTへの参加時間も給与の支払い対象です。

一方、SDでは実際に受講するかどうかが社員の自主性に任されています。業務命令ではないため、原則として給与は支払われません。

ただし、会社側から「受講しなさい」という指示がある場合や、「受講することが当たり前」という圧力があるために受講せざるを得ない場合、実質的に強制的な訓練であるとして、受講時間が業務時間にカウントされるケースがあります。

Off-JTにおける研修の種類・内容の例

Off-JTとしてよく実施されるものが、セミナーや研修です。特に階層別研修・業務別研修・スキル別研修・キャリア形成関連研修は、目にすることが多いのではないでしょうか。

これらの研修の特徴から、Off-JTの具体的なイメージをつかんでいきましょう。

階層別研修

階層別研修とは、新入社員や中堅社員、管理職など、育成対象者を階層ごとに分けて実施する研修です。新入社員研修や管理職研修などがあります。

新入社員研修は、自社の社員として働くために必要な知識・スキルの習得が目的。自社のミッション・ビジョンや歴史を学んだり、製品・サービスの概要を覚えたりします。同時に、社会人として身につけるべき基本的なビジネスマナーの習得も目指します。

管理職研修では、管理職としての役割を認識することが第一目標です。そして、その役割を果たすために必要な知識・スキルが何かを理解し、習得を目指します。労務管理や法令で定められた休暇・休業制度、職場の安全に関する知識、情報漏えい防止といったコンプライアンスなどが典型例です。

階層別研修のような勤続年数・職位に応じたOff-JTは、「その時期に理解・習得してほしいこと」をタイミングよく学べる点が特徴です。

業務別研修

業務別研修は、特定の業務遂行に必要な知識やスキルを学ぶ研修です。例えば、経理業務研修やマーケティング研修、クリエイティブ研修などがあります。業務別研修で扱う内容はOJTと近いため、「Off-JTでまとめて知識をインプットしてからOJTで実践する」といった連動型の施策を組みやすい点が特徴です。

次の経理業務研修のプログラム例のように、業務の全体像を提示して受講者の頭の中にマップを描き、それから個別の必須知識を理解・習得を図ると、受講者がより理解しやすくなるでしょう。

【経理業務研修のプログラム例】

  • 経理業務の全体像
  • 経理業務の流れ
  • 社内の各部署との関係
  • 社外との関係
  • 決算書に関する知識
  • 経理の具体的な日常業務(仕訳ルールと用語、伝票・帳簿の記入方法など)

実際の研修プログラムは、以下の研修ページからご覧いただけます。

「経理研修~経理初心者必見の明日から使える知識とノウハウを学ぶ~」の詳細はこちら

若手・中堅社員だけでなく、リーダー格の社員や配置転換で新しい部署に配属された管理職などが、知識の再確認や部下育成のノウハウ獲得のために受講するケースもあります。

スキル別研修

スキル別研修は、安定した業務遂行や生産性向上に役立つスキルを学ぶ研修です。これには、語学研修やタイムマネジメント研修、ビジネスコミュニケーション研修、メンタルヘルス研修などがあります。

スキル別研修のプログラム例として、メンタルヘルス研修の例を見てみましょう。

【メンタルヘルス研修のプログラム例】

  • メンタルヘルスの重要性
  • 職場におけるストレッサーの例
  • セルフケアのやり方
  • ラインケアのやり方
  • 専門家と連携するタイミング
  • メンタルヘルス不全防止に必要な知識

研修プログラムの詳細や受講者の傾向は、以下のリンクからご覧いただけます。

「メンタルへルス研修~メンタルへルスの基礎知識編~」の詳細はこちら

スキル別研修は、所属部署や職位、所属企業を問わず幅広い人材が参加できる点が大きな魅力です。他部署・他社のメンバーとの意見交換で視野が広がり、実践への意欲も高まりやすくなります。

キャリア形成関連研修

キャリア形成関連研修は、社員の自律的なキャリア形成を支援するための研修です。

終身雇用制が当たり前ではなくなった現在、労働者一人ひとりが自律的にキャリアを描き、達成に向けて努力していかなければなりません。しかし、日々の業務に忙殺される社員は、なかなか自身のキャリアを真剣に考える時間を確保しにくいもの。そこで、会社による社員のキャリア形成支援が必要となります。

キャリア形成関連研修の代表例は、キャリアデザイン研修です。例えば、次のようなプログラムでの実施が可能です。

【キャリアデザイン研修のプログラム例】

  • 主体的なキャリアデザインが求められる理由
  • キャリアデザインを行うメリット
  • キャリアデザインの考え方
  • キャリアデザインの具体的な進め方

2025年11月現在、厚生労働省でも、企業によるキャリア形成支援を促すために人材開発支援助成金や教育訓練給付制度などを実施しています。

社員のキャリア形成支援について、以下の関連コラムでも詳しく解説していますので、併せてご確認ください。

コラム「キャリアとは?キャリア形成の考え方と会社側にできるキャリア支援」はこちら

参考:「キャリア形成支援」(厚生労働省)

Off-JTの日本における実施率(能力開発基本調査より)

人材育成において重要なOff-JTですが、実際に現場ではどのくらいの割合で実施されているのでしょうか。厚生労働省が公表した令和6年度の「能力開発基本調査」から、Off-JTを実施した事業所の割合や内容、費用の傾向をご紹介します。

Off-JTを実施した事業所は7割超

まず、Off-JTを実施した事業所の割合は、全体の73.8%でした。

雇用形態別では、最も多いのが「正社員のみ」で42.6%。正社員にも正社員以外の従業員にも実施した事業所も29.0%となっています。階層別に見ると、過半数の事業所が正社員である新入社員(59.8%)、中堅社員(57.1%)、管理職層(51.0%)を対象にOff-JTを実施していました。*1

正社員に対してOff-JTを実施した事業所の割合の推移を見ると、令和2年度から上昇傾向にあります。*2

*1 出典:「能力開発基本調査:結果の概要 令和6年度」(厚生労働省)、p.12

*2 出典:同上、p.13

Off-JTの内容は階層別研修が中心

実施したOff-JTの内容に関する回答で最多となったのは、「新規採用者など初任層を対象とする研修」(75.4%)です。いわゆる新入社員研修がこれに当たり、大変多くの企業で実施されていることがわかります。

ほかに、次のような内容も比較的多く実施されていました。

【実施したOff-JTの内容 TOP5】*1

順位 内容 割合
1 新規採用者など初任層を対象とする研修 75.4%
2 新たに中堅社員となった者を対象とする研修 47.5%
3 マネジメント(管理・監督能力を高める内容)など 46.6%
4 新たに管理職となった者を対象とする研修 44.2%
5 ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識 43.0%

この調査では、企業が労働者に求める能力・スキルについても質問しています。それによれば、正社員に関しては年齢を問わず以下のスキルが上位に入りました。

【正社員に求める能力・スキル TOP5】*2

順位 求める能力・スキル 割合(50歳未満) 割合(50歳以上)
1 チームワーク、協調性・周囲との協働力 58.6% 55.0%
2 職種に特有の実践的スキル 36.9% 43.1%
3 コミュニケーション能力・説得力 34.6% 38.9%
4 課題解決スキル(分析・思考・創造力等) 31.5% 33.7%
5 マネジメント能力・リーダーシップ 29.4% 27.9%

これに対し、正社員以外の従業員については、「定型的な事務・業務を効率的にこなすスキル」など現場での業務効率向上に役立つスキルが上位に加わっています。

【正社員以外に求める能力・スキル TOP5】*2

順位 求める能力・スキル 割合
1 チームワーク、協調性・周囲との協働力 57.5%
2 コミュニケーション能力・説得力 32.4%
3 職種に特有の実践的スキル 32.3%
4 定型的な事務・業務を効率的にこなすスキル 31.5%
5 ITを使いこなす一般的な知識・能力
(OA・事務機器操作(オフィスソフトウェア操作など))
20.5%

正社員以外の従業員については、定められた範囲の業務を効率的に進めるという役割から、業務遂行に直結するスキルがより重視されるようです。

*1 出典:「能力開発基本調査:結果の概要 令和6年度」(厚生労働省)、p.16より作成

*2 出典:同上、p.5より作成

Off-JTの費用は労働者1人当たり1.5万円、今後「増加予定」が約4割

Off-JTの実施に当たって無視できないコスト面については、労働者1人当たりの費用の平均額が1.5万円となっています。*1

過去3年間の推移では、この費用が「増加した」と答えた事業所が23.5%である一方、「減少した」と答えた事業所は6.3%に留まりました。Off-JTを実施している企業では、コストが増える傾向にあるようです。

コストが増加すると、「やはりOff-JTの負担は大きくて続けられない」という企業があっても不思議ではありません。ところが、今後のOff-JTに関する支出見込みを見てみると、「増加させる予定」と答えた事業所が37.0%となっており、「減少させる予定」(1.3%)を大きく上回りました。「コストはかかってもOff-JTに力を入れていこう」という企業が多いと推察されます。*2

*1 出典:「能力開発基本調査:結果の概要 令和6年度」(厚生労働省)、p.2

*2 出典:同上、p.3

Off-JTで人材育成・キャリア形成支援に成功した企業事例3選

では、実際にどのようなOff-JTが実施されているのでしょうか。ここで、人材育成やキャリア形成支援に成功した企業事例を3つご紹介します。いずれも、自社の課題を分析し、課題解決に向けた具体的な施策を進めた事例です。

ヤマハ株式会社の“3本の柱”による人材育成改革

ヤマハ株式会社では、“人”を重視した経営に注力し、入社3年目までの「若年層」期間における育成を大切にしてきました。2018年には新人・若手社員の教育体系の改革も実施。3つの柱を据えて、育成サイクルの仕組み化を行っています。3つの柱とは、「明確な育成ゴールの設定」「インプットとアウトプットの繰り返し」「成長実感の見える化」です。

例えば、「明確な育成ゴールの設定」では、1〜3年目の各年次で「どのような状態になってほしいのか」を設定。そのゴールを達成するため「態度」「スキル」「知識」の3領域における能力要件も策定しました。

「インプットとアウトプットの繰り返し」は、新入社員にとっての学びやすさに配慮。吸収しやすい少量のインプットから始め、短期間のうちにOff-JTによるインプットとOJTによるアウトプットを何度も繰り返して定着させていく手法を採用しました。

そして、「成長実感の見える化」では、ビジネススキル診断テストの導入と「成長支援シート」の開発を行い、適切な評価とフィードバックによる意欲向上を促進。それまでは感覚的、定性的な効果測定を行っていましたが、成長支援シートによる日々の行動を評価と診断テストによる知識・スキルの評価という2軸のシステムを確立しました。

こうした施策により、同社は一貫性のあるOff-JTを実現。「全員で新人・若手を育てる」という風土も醸成されてきたとのことです。外部環境の大きな変化に対応できるよう、現在も育成体制の改善を続けています。

導入事例「『部門を巻き込み、全社を挙げて新人・若手を育てる』‐ゴールの明確化とアセスメント活用で実現した若手育成改革の軌跡‐」はこちら

株式会社イトーキにおける管理職の育成力強化施策

株式会社イトーキでは、管理職の部下育成力強化に向けてOff-JTを含む一連の施策を実施しました。会社が掲げるビジョンや戦略を現場に落とし込み、全体が同じ方向を目指すには、管理職が重要な役割を果たします。そこで、管理職育成を通じてマネジメントを機能させ、チームとして成果を出すための体制づくりが必要と考えたのです。

研修として実施したのは、1on1研修、1on1のフォローアップ研修、ビジョン設定・浸透スキルアップ研修など。管理職が自らテーマを選べる選択型研修も、2年をかけて準備しました。

同時に、ビジネススキル診断テストとして、管理職対象の診断テストを導入。管理職に必要なヒューマンスキルやマネジメントスキルなど、一人ひとりの能力を可視化する仕組みを導入したことで、当事者意識と研修受講のモチベーション向上につなげられたとのことです。

これらの施策の成果は、部下との対話頻度やビジョン提示などへの社内評価に現れました。それまで横ばいの状況が続いていたところ、施策実施後は全体で5〜6ptも上昇したのです。従業員エンゲージメント調査でも、2023年度に74.7%を達成しました。

導入事例「管理職の育成力強化に取り組み、エンゲージメントスコアが向上」はこちら

オムロン太陽株式会社における自律的キャリア形成の支援

障がいのある社員を多く採用する特例子会社でも、Off-JTの活用が進んでいます。

1972年に日本初の障がい者福祉工場として設立されたオムロン太陽株式会社では、親会社であるオムロン株式会社が掲げる自律的キャリア形成の方針を受け、社員にどのような支援を実施するかが課題となっていました。そこで導入したのが、ビジネススキル診断テストとライブ配信型の定額制オンライン研修です。

まず、診断テストとキャリアデザイン研修により、日々の業務への向き合い方と自身の成長について、社員一人ひとりが自らを振り返るきっかけをつくります。診断テストの受検に際しては、一人ひとりの障がい特性に応じて、支援メンバーがパソコン操作や読み上げといったサポートを行いました。

定額制オンライン研修の受講では、主体的に専門性を磨くベースを築き、役割や責任の認識とそれを果たすための素地づくりを促進。受講したメンバーから「資格を取ってレベルアップしたい」「他社とのディスカッションができて、好きです!」といった声も聞かれたとのことです。

Off-JTをアウトソースする利点についても、「自分たちだけで何とかしなきゃという思い込みを捨て、専門家によるサポートを検討してみる」ことの有効性を語っています。

導入事例「多様な社員の自律的なキャリア形成を支援」はこちら

Off-JTのメリット・デメリット

Off-JTを成功させるには、上記のような他社事例を参照するとともに、そのメリット・デメリットを認識しておくことが大切です。これまで見てきたOff-JTの特徴から、メリット・デメリットを改めて確認していきましょう。

Off-JTの4つのメリット

Off-JTのメリットは、大きく分けて4つあります。

①体系的な知識・スキルの習得を図れる

普段、社員は目の前の業務に追われて体系的な知識をインプットする機会をなかなか得られません。しかし、会社として受講を促すOff-JTであれば、業務時間内に受講することが可能です。一定の時間を確保して集中的に学ぶ環境を整えられるため、業務に必要な知識・スキルを基礎から順序立てて学ぶことができます。

体系的な学びは、それまで断片的にしか知らなかった事柄を改めて関連づけて把握できるようになる絶好のチャンス。基礎を固めることで、現場での実践・応用にもつなげやすくなります。

②人材教育の質を確保できる

Off-JTでは、OJTとは異なり1回の施策で多くの社員に知識・スキルを伝えられます。複数の社員に同じ質・内容の教育を短時間に行えるということです。

また、1対1が基本となるOJTでは、育成担当者のスキルの違いによって、同じような業務でも育成対象者の習熟度に大きな差が生まれてしまうことがあります。Off-JTであれば、一度に多数の対象者を教育できるため、その差を抑えることができるでしょう。

多くの社員が同じ教育を受けることで、例えば自社の事業内容や製品・サービス、ミッション・ビジョン、業務遂行に必要なノウハウなどに関する理解度の全体的な底上げが可能となります。

③現場の負担を軽減できる

Off-JTでは、多くの場合、人事担当者や部署の責任者、外部講師が登壇して知識・スキルを伝えます。必要な講師の人数は1回当たり1〜2人ですので、OJTのように「育成担当者を何人も選定しなければならない」という負担がありません。

また、指導者が多くなるほど、育成方針がブレやすくなります。同じ方向性で教育を進めるには、指導者を対象とする研修も必要になるでしょう。ただ、1対1でなくても習得できる知識・スキルについて、そのような大きな負担を現場に強いるのは効率的ではありません。

Off-JTなら、開催前の準備や打ち合わせを少人数で進められるため、方針の共有やコミュニケーションがよりスムーズになります。訓練実施による現場の生産性低下を抑えつつ、一度に多くの人材を教育できるのです。

④横のつながりを広げられる

Off-JTの多くは、様々な部署の社員を集めて開催されます。外部の研修サービスやセミナーを活用するなら、他社の社員と一緒に学ぶ機会にもなるでしょう。

ここから生まれるメリットは、“横のつながり”の拡張です。例えば、新入社員研修や管理職研修といった階層別研修なら、普段職場で会うことがない他部署・他社の同階層の人とつながることができます。

特にワークショップやディスカッションが含まれるプログラムであれば、他部署や他社のメンバーと意見交換ができる貴重な機会となるでしょう。

Off-JTの3つのデメリット

反対に、Off-JTで気をつけるべきポイントは3つあります。デメリットを最小化するためのポイントと併せて見ていきましょう。

①コストが高い

Off-JTでは、一度に多数の対象者を育成できる反面、参加者全員が入れる会場を用意しなければなりません。社外から講師を招く場合は講演料の支払いも発生します。また、参加者は業務から離れる必要があるため、その社員しかできない仕事がある場合は、業務の停滞や組織の生産性低下が発生するかもしれません。

Off-JTにかかるこうしたコストについては、Off-JT実施後の業務で参加者が発揮するであろうパフォーマンスとのバランスを見る必要があります。その際は、Off-JTの実施から1カ月後・3カ月後・半年後・1年後といった中長期的な目線も重要です。

人材育成は、企業の将来的な競争力を高めるための投資です。一時的なコストや生産性低下だけを見るのではなく、期待される効果も視野に入れ、計画的に進めていきましょう。

②実践につなげにくい場合がある

Off-JTは、業務に直接関係があるとは言い難いテーマで行われることもあります。参加者にとって意義を見いだしにくく、理解や定着が進まないケースもあるでしょう。あるいは、参加者が理解・習得しても、その重要性が上司に理解されにくいこともあります。

例えば、ロジカルシンキング研修では、演繹法や帰納法といった思考法の特徴を学びますが、すぐに使いこなせるようになるわけではありません。業務において具体的にどのように推論を進めることがロジカルシンキングなのか、イメージしにくい場合もあります。周囲のメンバーや上司もこれを理解していなければ、本人が論理的に話そうとしても「屁理屈を言わずにやりなさい」と叱られてしまうかもしれません。

実践に向けた課題を乗り越えるには、Off-JTの各回冒頭でテーマの重要性を伝えることが大切。業務での具体的な活用場面や効果を感じられる例やグループワークなどをプログラムに組み込むとよいでしょう。

加えて、管理職など現場の責任者にも、そのテーマの重要性と概要を共有しておくことがポイントです。

③参加者の意欲が低い場合がある

OJTのように目の前の業務について1対1で学ぶ状況と比較すると、多人数で一斉に学ぶOff-JTでは、参加者の当事者意識やモチベーションが高まりにくい側面があります。その結果、「聞き流すだけ」「その場にいるだけ」になり、学びの効果が感じられないまま実施コストだけがかかり続けてしまうかもしれません。

先ほど紹介したOff-JTの企業事例でも、参加者の学びの意欲を高めるために様々な取り組みを行っています。例えば、

  • 一連の改革や研修を実施する目的や意義を対象者に丁寧に説明する
  • ビジネススキル診断テストで自身の能力を見える化し、問題意識を高める
  • 業務で課題を感じているであろうタイミングを狙って、Off-JTの案内をする

といった施策です。

Off-JTのプログラムでは、ケーススタディを用いて学ぶ意義をわかりやすく提示したり、ワークシートで自分の考えを表現する時間を設けたりするのも効果的。他の参加者との意見交換があれば、他者に触発されて「自分はこう思う」という意見を出しやすくなります。

Off-JTのやり方:計画から効果測定までの6ステップ

Off-JTを実施する際は、ぜひ以下の6つのステップを意識してみてください。しっかりとした準備とフォローアップが、Off-JTの効果を一気に高めます。

  1. (1)社内で強化すべき知識やスキルを特定する
  2. (2)研修の目的・対象者・ゴールなどを設定する
  3. (3)開催方法(会場かオンラインか)を決める
  4. (4)講師とプログラムを決める
  5. (5)Off-JT各回の資料を用意し、開催する
  6. (6)研修後フォローや効果測定を行う

順番に解説します。

(1)社内で強化すべき知識やスキルを特定する

Off-JTのデメリットを軽減するには、現場の業務に役立つ知識・スキルをテーマとするプログラムを意識してみてください。まずは、自社で活躍するために求められる知識・スキルを特定しましょう。

知識・スキルの特定でぜひ活用したい視点は、自社におけるコンピテンシー(活躍する人材の行動特性)および業務の必須知識です。それらについて、どの段階で、どの程度まで身につけておくことが望ましいのかを定めましょう。

コンピテンシーの考え方や人材育成・評価への活かし方は、以下の関連コラムで詳しく解説しています。ぜひお役立てください。

コラム「コンピテンシーとは?意味と評価・面接に使える項目一覧」はこちら

コラム「コンピテンシー評価とは|評価項目や導入法の具体例、評価シートのサンプルや書き方について解説」はこちら

(2)研修の目的・対象者・ゴールなどを設定する

社員にどのような知識・スキルを習得してもらいたいかを特定できたら、それをOff-JTの方向性に落とし込んでいきます。ポイントは、次の4つです。

【Off-JTの方向性のポイント】

  • 誰を対象とするか
  • いつ実施するか
  • 1回当たり何時間で実施するか
  • 各回のゴールは何か

例えば、ビジネスパーソンとしての基本マナーを身につけるOff-JTの方向性を考えてみましょう。

【ビジネスマナー研修の方向性の例】

ポイント
対象者 新入社員
実施時期 入社直後の4月〜6月の間
所要時間 1回当たり2時間
各回のゴール 1回目:適切な身だしなみ・あいさつができる
2回目:上座下座がわかる・名刺交換ができる
3回目:適切な電話の受け方・かけ方ができる
4回目:来客時の対応・お茶出しができる

方向性が定まらない場合は、改めて自社の人材に求める行動特性や知識・スキルを検討し、各年次のゴールを設定してみてください。少しずつ人材像を具体化していくことで、一貫性のあるOff-JTのカリキュラムを作成できるでしょう。

(3)開催方法(会場かオンラインか)を決める

Off-JTの具体的なプログラムを作成する段階では、開催方法と講師の選定、具体的なプログラム内容を決めていきます。

開催方法は、大きく分けて会場で実施する方法と、オンラインで実施する方法の2種類があります。プログラムの内容や参加者との相性を考慮して決定しましょう。

例えば、身だしなみやあいさつ、名刺交換など、その場で実践できる内容のOff-JTでは、実際に体を動かして体験できる会場での開催が適しています。オンライン開催でも学べますが、実際に集まって他の参加者と一緒に行動することで、より習得しやすくなるでしょう。

電話のかけ方・受け方を学ぶOff-JTなら、会場でもオンラインでも練習が可能です。むしろオンラインのほうが、「電話をしている」という感覚に近い体験ができるかもしれません。

コンプライアンス研修のように講義形式が中心となる内容であれば、会場での集合研修でもオンライン開催でも構いません。

なお、2回以上に分けて実施するOFF-JTの場合、1回目はオンライン研修で知識の基礎を固めておき、2回目は会場での集合研修で演習を行うといった開催方法も効果的です。

(4)講師とプログラムを決める

Off-JT各回の講師については、テーマに適した講師を選定するために、社内・社外から数人の候補者を出して検討しましょう。全ての講師を社内の人材とする方法もあれば、一般的な知識・スキルや高度な内容のOff-JTを社外の専門家に委託する方法もあります。

講師が決定したら、具体的なプログラムを話し合いながら決めていきます。その際、より効果的な内容とするため、現場の管理職や参加者に事前ヒアリングを実施してもよいでしょう。

ここでおさえておきたいポイントが、1回当たりの学びの量です。詰め込みすぎれば参加者が十分に理解できないまま終わってしまいますし、内容が少なすぎれば参加者が手持ち無沙汰になり、集中力が落ちてしまうかもしれません。

一般に、集中力の持続時間には15分単位の波があると言われます。講義とワークを集中力の波を意識しながら切り替えることで、参加者にとっても適度な気分転換が可能となり、集中力を維持しやすくなります。

(5)Off-JT各回の資料を用意し、開催する

プログラムが決定したら、当日に使用する資料を準備しましょう。これには、以下のようなものが考えられます。

【Off-JT当日までに準備する資料の例】

  • 会場や画面共有で表示するスライド資料
  • 参加者に配付する解説資料・ワークシート
  • 参加の注意事項(持参するもの・服装など)
  • 人材育成担当者と講師で共有するメモ(注意点や注力ポイントなど)

配付する資料は、参加者へ事前に共有しておくと各自でOff-JTの予習ができます。

開催当日はプログラムを前提としつつも、参加者の様子を見ながら説明の仕方や各項目の所要時間を微調整してください。「わかりやすい部分は簡潔に、わかりにくいところはじっくりと」を意識することで、参加者の理解をより促すことができます。

(6)研修後フォローや効果測定を行う

Off-JT実施後は、参加者の実践を後押しするための「研修後フォロー」やレポート作成を通じた振り返り、アンケートを活用した効果測定などを行います。

研修後フォローの取り組みとしては、

  • 研修1カ月後に実施する講師や人材育成担当者との面談(日々の実践の報告とフィードバック)
  • 研修で学んだ内容に関連する実務での困り事の相談対応

などが考えられます。Off-JTでの学びを実践に結びつける大切な成長支援です。

効果測定では、実施したOff-JTが組織に与えた影響を調査し、Off-JTの目的・ゴールを達成できているか、可能な限り数値で測定・評価しましょう。調査方法や指標には、下表のものがあります。

【Off-JTの効果測定の方法・指標の例】

Off-JTの例 測定方法・指標の例
ビジネスマナー研修
  • 参加者の上司へのアンケート
  • 研修のゴールである行動の定着度
  • 研修参加前後の対象者の変化
顧客対応研修
  • クレーム発生率の変化
  • リピート率の変化
  • 顧客への満足度アンケート
生産性向上研修
  • 労働時間の変化
  • 製造数や提案数、売上の変化
  • コミュニケーションの円滑さに関するアンケート

測定の結果、もし効果が見られない場合は、その原因を分析してOff-JTの内容や実施方法を改善していきましょう。

Off-JTに使える「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」とは

最後に、本コラムの前半でも言及した厚生労働省の人材開発支援助成金についてご紹介します。Off-JTに関わるのは、当該助成金の中の「人材育成支援コース」。従業員を対象として、職務に関連する専門知識・スキルの習得を目的として訓練を実施した場合に、その費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」の支給対象は、雇用保険適用事業所の事業主、雇用保険の被保険者である労働者です。対象労働者が支給対象となる訓練を実施した場合に、事業主に対して助成金が支払われます。

支給対象となる訓練は、以下の3種類です。

【支給対象となる訓練の要件】

訓練の名称 要件
人材育成訓練
  • 10時間以上のOff-JTを実施する
認定実習併用職業訓練
  • 新卒者などが対象である
  • OJTとOff-JTを組み合わせた訓練である
  • 厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練である
有期実習型訓練
  • 有期契約労働者などの正社員転換などを目的とする訓練である
  • OJTとOff-JTを組み合わせた訓練である
  • 実際に有期契約労働者を正社員化した

例えば、中小企業で人材育成訓練を実施した場合、対象労働者が正社員であれば費用の45%、非正規の労働者であれば費用の70%が支給されます。訓練に要した時間についても「賃金助成」として対象労働者1人1時間当たり800円が支給されます(eラーニングや通信制による訓練の場合は経費助成のみ)。

なお、助成金申請に当たっては、訓練開始日の6カ月〜1カ月前の間に「職業訓練実施計画書」や「対象労働者一覧」などを提出しなければなりません。その後、計画に基づく訓練を実施してから、再び「支給申請書」や「OFF-JT実施状況報告書」などを提出する必要があります。

「OFF-JT実施状況報告書」は、対象労働者ごとに作成する書類です。訓練の実施時間の合計や受講時間の合計などを記入する欄があり、助成要件を満たしているか否かを確認されます。会社側で記入する欄だけでなく、講師などの訓練実施者や対象労働者が直筆しなければならない欄もありますので、しっかり準備しておきましょう。記入例は、厚生労働省によるパンフレット(詳細版)に掲載されています。

書類の提出先は管轄労働局です。紙の書類による申請だけでなく、電子申請も可能です。

最新情報や申請の詳細は、厚生労働省公式サイトやパンフレットをご確認ください。

参考:「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」(厚生労働省)

Off-JTとOJTの連動で一貫性のある人材育成へ

Off-JTのメリットを活かして上手に進めるには、

  • 中長期的な視点での人材育成計画策定
  • OJTとの連動したインプット+アウトプットの仕組みづくり
  • 実施後のフォローアップと効果測定
  • 環境や時代の変化に合わせたアップデート

といったポイントを意識すると効果的です。

Off-JTの実施には大きなコストがかかりますが、国の助成金制度を活用すれば、その負担を軽減できるでしょう。

多くの企業でOff-JTやOJTの実施をご支援してきたALL DIFFERENTでは、Off-JT参加のモチベーションアップや成長の可視化に役立つビジネススキル診断テスト「Biz SCOREシリーズ」、定額制集合研修、定額制オンライン研修といった様々なサービスをご提供しています。各研修のテーマも、現場での実践を意識した実用的なプログラムです。成果が見えるOff-JTの実施に、ぜひご活用ください。