若手社員の意識調査(社会人1年目)2023年度 入社前後のギャップの実態
上司とのコミュニケーションに苦戦する新人は離職意向が高まる傾向に。
上司はスキルアップサポートで安心感の醸成を!

2023年11月29日

2023年8月2日~8月7日の期間、社会人1年目の300名を対象に「若手社員の意識調査」を行いました。本調査レポートでは、「入社前後のギャップの実態」に関して、分析・考察しています。

背景

2023年度の新入社員が入社し、半年以上が過ぎました。今や現場で戦力となりつつある新入社員ですが、この半年間は生活環境の大きな変化や慣れない仕事と新たな人間関係に、入社前にイメージしていた理想と現実のギャップを感じながら業務に励んできたことでしょう。昨年当社が実施した若手社員の意識調査の結果*1では、社会人1年目の7割が入社前後で「生活リズムや社会人としての考え方」にギャップを感じると回答。そのギャップを難しいと捉えた新人は『辞めたい・不安』の感情につながりやすい結果が明らかとなりました。転職市場が活発化する中、若手社員の早期離職は採用・教育コストが水泡に帰するだけでなく、既存社員の業務負担の増加や企業のイメージダウンにもつながるため、経営課題のひとつとして問題視されています。そこで当社では、社会人1年目の直面するリアリティショックを探るべく、今年も入社前後のギャップに関する調査を行いました。本調査結果が、新入社員の育成に悩む経営層、人事担当者、さらには現場の管理職の方にとって、有益な情報になれば幸いです。

*1 2022年度 若手社員の意識調査(社会人1年目)https://www.all-different.co.jp/column_report/research/research_73_220819.html

調査結果の概要

  • ●  「生活リズム・社会人としての考え方の習得」にギャップを感じる新人が約7割で最大

  • ●  昨年と比較した入社前後のギャップ、最大差となった項目は「仕事の難易度」で、10.6ポイント増加

  • ●  ポジティブなギャップ、「上司とのコミュニケーション」が想定以上に話しやすいと回答する割合が最大

  • ●  上司との関係をポジティブに捉えた新人は、「安心」「嬉しい」「成長の機会」と感じる傾向に

  • ●  ネガティブなギャップ、「生活リズムや社会人としての考え方」が想定以上に難しいと回答する割合が最大

  • ●  上司との関係をネガティブに捉えた新人は、「会社を辞めたい」と感じる傾向に
概要

1. 「生活リズム・社会人としての考え方の習得」にギャップを感じる新人が約7割で最大

社会人1年目の新入社員(以下『新人』と記載)に対し、生活リズムや社会人としてのマナー、仕事の量や難易度、上司との関わりなど、9つの項目について、入社前後にギャップを感じたか質問しました。結果、昨年と同様に全ての項目で約6割の新人が何らかのギャップを感じていることが明らかとなりました。特に「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得」は約7割もの新人がギャップを感じており、昨年同様最大の割合となりました。
次に「仕事の難易度(65.6%)」、「上司への悩み相談(65.3%)」が続きました。(図1)

(図1)

2. 昨年と比較した入社前後のギャップ、最大差となった項目は「仕事の難易度」で、10.6ポイント増加

2022年度と2023年度の新人で、入社前後のギャップに違いがあるか比較してみました。2022年度と2023年度で、入社前後のギャップの差が最大となった項目は「仕事の難易度」で10.6ポイント増加する結果となりました。内訳は、ポジティブもネガティブ回答もどちらも約5ポイントずつ増加しました。

次に差が出た項目では「仕事の量」で、8.3ポイント増加。内訳は、ポジティブ回答は差がなく、ネガティブ回答が増える結果となりました。(図2)

(図2)

3. ポジティブなギャップ、「上司とのコミュニケーション」が想定以上に話しやすいと回答する割合が最大

多くの新人が入社前の想定に対してギャップを感じていることがわかりました。ここからは、そのギャップをポジティブに感じているのか、ネガティブに感じているのか、詳細を見ていきます。

まずは、ポジティブに感じる回答*2を抽出したところ、「上司とのコミュニケーション」が最も高く、30.3%の新人が『想定よりもとてもフランクで話しやすい・フランクで話しやすい』と回答しました。次に、26.7%が「上司からの仕事のアドバイス」を『とても細やか・やや細やか』と回答。「上司からのスキルアップのサポート」について『想定よりとてもサポートしてもらえる・サポートしてもらえる』が24.6%と続きました。上位3項目が上司との関わりによる項目となったことから、想定以上に上司とよい関係を築けていることをポジティブに捉えた新人が多いことがわかります。(図3)

(図3)

*2 各ギャップ項目に対し、想定よりも簡単、仕事量が少ない、上司と話しやすい、アドバイスが細やか、相談しやすい、サポートがあるといった回答層をポジティブと設定

4. 上司との関係をポジティブに捉えた新人は、「安心」「嬉しい」「成長の機会」と感じる傾向に

それでは、入社前後のギャップをポジティブに捉えた新人は、どのように感じたでしょうか。

ポジティブなギャップとして最大の割合となった「上司とのコミュニケーション」では、64.2%が『安心した』と回答し、次に55.2%が『嬉しいと思った』と続きました。半数以上の新人が、上司のことを想定よりも話しやすいと感じ、安堵している様子が伺えます。

次に、「上司からの仕事のアドバイス」を想定よりももらえたと感じた新人の割合は、49.3%が『安心した』、31.3%が『嬉しいと思った』『成長の機会だと感じた』と続きました。「上司からのスキルアップのサポート」では、40.3%が『安心した』、37.3%が『成長の機会だと感じた』、32.8%が『嬉しいと思った』と続く結果となりました。
上司との関係では、安堵や嬉しさだけではなく、“成長しよう”という意思につながっていることが見てとれました。(図4)

(図4)

5. ネガティブなギャップ、「生活リズムや社会人としての考え方」が想定以上に難しいと回答する割合が最大

次に、ネガティブに感じる回答*3を抽出しました。結果、「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得」を『想定よりもとても難しい・やや難しい』と回答した割合が47.4%と最大の割合になりました。
次に「仕事の難易度」を『想定よりもとても難しい・やや難しい』と回答した割合が47.3%、「仕事の量」を『想定していたよりもとても多い・やや多い』と回答した割合が45.4%と続きました。学生と社会人の違いや社会人として初めて取り組む仕事の量や難易度について、ネガティブなギャップを感じる新人が多いことがわかります。(図5)

(図5)

*3 各ギャップ項目に対し、想定よりも難しい、仕事量が多い、上司と話しにくい、アドバイスが細やかではない、相談しにくい、サポートがないといった回答層をネガティブと設定

6.上司との関係をネガティブに捉えた新人は、「会社を辞めたい」と感じる傾向に

入社前後のギャップをネガティブに捉えた新人は、どのように感じているでしょうか。

ネガティブのギャップのうち、最も高い割合となった「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得」では、26.8%の新人が『会社を辞めたいと思った』と回答。次に22.5%の新人が『不安に感じた』と回答する結果となりました。「仕事の難易度」では、『大変だと感じた』が26.8%、次に『会社を辞めたいと思った』が24.6%と続きました。「仕事の量」では、『大変だと感じた』が29.6%、次に28.2%が『会社を辞めたいと思った』が続きました。

特徴的な結果としては、「上司から仕事についてのアドバイス」「上司とのコミュニケーション」など、上司との関係性をネガティブに捉えた新人は、2割以上が『会社を辞めたいと思った』と回答する結果となりました。
上司の関係が離職意向に影響しやすいことが推察できます。(図6)

(図6)

7.自身の知識・スキルへの不安、「計画力」に対して最も不安を感じる結果に

ここからは、ギャップの捉え方にも影響する、入社前後に感じる「不安」に焦点を当ててみました。

まずは、自分の知識・スキルに不安を感じることがあるか質問したところ、43.3%の新人が不安を感じることが「とてもある」「たまにある」と回答する結果となりました。(図7)

(図7)

不安に感じる自身の知識・スキルは何か質問したところ、最も不安に感じる項目は「計画力(26.2%)」でした。
次に、「ビジネスマナー(25.4%)」が続きました。(図8)

(図8)

8.今の会社で働き続けることに不安を感じる理由、上位は「働き方が理想ではない」「相談相手がいない」

次に、キャリアに対する「不安」について質問してみました。

今後のキャリアが描けず、この会社で働き続けることに不安に感じることがあるかを質問したところ、不安に感じることが「とてもよくある」「たまにある」と回答した割合が34.3%となりました。(図9)

(図9)

キャリアへの不安を感じる新人に、今後のキャリアが描けず、働き続けることに不安を感じる場面を質問したところ、「働き方が理想ではない」が24.3%と最大の割合となりました。次に、「キャリアについて相談する相手がいない」が22.3%、「キャリアについて考える余裕がない」が20.4%となりました。(図10)

(図10)

9.精神的に追い詰められる場面の上位は、「プレッシャーが大きいとき」「人間関係でうまくいかない時」

最後に、入社前後に感じた精神的に不安を感じる場面や要素について質問してみました。

精神的に追い詰められた経験があるかを質問したところ、「とてもよくある」「たまにある」と回答した割合が38.3%となりました。(図11)

(図11)

精神的に追い詰められたのがどんな時かを質問したところ、「プレッシャーが大きいとき」と回答した割合が33%、次に「人間関係でうまくいかない時」が28.7%となりました。(図12)

(図12)

精神的に追い詰められた状況をどのように捉えたかでは、「不安に感じた」が29.6%と最大となりました。
次に、「会社を辞めたくなった」が28.7%と続きました。(図13)

(図13)

まとめ

今回の調査結果より、2023年入社の新入社員も昨年同様6割以上が入社前後に何かしらのギャップを感じていることが明らかとなりました。特に「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得」は最大のギャップを感じる結果となり、昨年同様、多くの新人がつまずくポイントと言えるでしょう。

入社前後のギャップへの捉え方をポジティブ・ネガティブにわけて調査分析を行ったところ、今年の新人が最もポジティブに捉えた項目は「上司とのコミュニケーション」で、想定以上に話しやすく『嬉しい』『安心』と感じる新人が多いことが明らかとなりました。また、上司からアドバイスやスキルアップのサポートをしてもらうと『成長意欲が高まる』こともわかりました。

一方、ネガティブに捉えた項目では、想定よりも苦戦した項目は「生活リズムや社会人としての考え方(顧客志向・当事者意識など)の習得」で、そのギャップに直面すると『会社を辞めたい』と感じる新人が多いことがわかりました。また、全体としては、ポジティブに捉える割合の多かった上司との関係において、ネガティブに捉えた新人は『会社を辞めたい』と感じる割合が高い結果となりました。入社前後のギャップをネガティブに捉えると、不安もさることながら、離職意向が強まる傾向にあることがわかりました。

社会人1年目は、想像以上に会社に馴染むのに時間やストレスがかかります。また、自身の知識やスキル、キャリアについて不安を感じる傾向がでており、理想と現実の狭間で悪戦苦闘しています。入社前後のギャップを乗り越え、成長意欲をもち続けて働くことができるかは、上司とのコミュニケーションが鍵といえるでしょう。そのためには、新人が上司へ質問しやすい環境を整備したり、上司側の育成スキルを高めることで、業務に関する適切な指導を行えるようにすることが重要です。新人のスキルアップをサポートできる体制を会社全体で整備し、安心感の醸成と成長意欲の促進をしていけるとよいでしょう。4か月後には、2024年度の新入社員が入社してきます。できることから、新人の受け入れ準備を始めてみてはいかがでしょうか。本調査レポートが、組織づくりや新入社員育成に悩む経営層、人事担当者、さらには現役の管理職の方や次期管理職の方にとって、有益な情報になれば幸いです。

考察(組織開発・人材開発の専門家より)

(根本さん)

株式会社ALL DIFFERENT株式会社
組織開発コンサルティング本部 開発室 室長
根本 博之(ねもと ひろゆき)

大阪支社の立上に参画し、営業リーダーとして支社年間目標達成に導いた後、本社にてコンテンツ開発業務に従事。中堅・大企業向けコンサルティング事業部門の責任者を歴任。コンサルタントとして営業活動と講師業務にて、年間100~150社ほど担当する傍ら、社内能力開発・組織開発部門の責任者として活動。

新入社員が経験する入社前後のギャップは、成長のための重要な契機となり得ます。本調査では、特に「生活リズムや社会人としての考え方の習得」が最大のギャップを感じる項目となりましたが、このギャップを単なる障壁ではなく、成長への階段と捉えるべきです。社会人としての新たな生活リズムや考え方に適応するプロセスは、新入社員にとって2年目以降のキャリア発展に不可欠な糧となります。上司や先輩社員は、新入社員が自らの力で問題を解決するマインド・知識・スキルを育むために、時に「手取り足取り」レベルの細やかな指導をしながらも、適切な自立支援を行なう必要があります。このバランスを保ちながら新入社員をサポートすることで、新入社員はリアリティショックを乗り越え、2年目以降の活躍の基盤となる自律性、適応力、レジリエンスを磨くことができるでしょう。

調査概要

調査対象者 22~34歳の社会人1年目である就労者
調査時期 2023年8月2日~2023年8月7日
調査方法 調査会社によるインターネット調査
サンプル数 300人
属性 (1)業種
医療,福祉 45人(15.0%)
製造業 39人(13.0%)
情報通信業 26人(8.7%)
サービス業(他に分類されないもの)24人(8.0%)
建設業 19人(6.3%)
卸売業,小売業 19人(6.3%)
運輸業,郵便業 12人(4.0%)
教育,学習支援業 11人(3.7%)
農業,林業 9人(3.0%)
宿泊業,飲食サービス業 9人(3.0%)
公務 9人(3.0%)
複合サービス事業 7人(2.3%)
金融業,保険業 6人(2.0%)
学術研究,専門・技術サービス業 6人(2.0%)
電気・ガス・熱供給・水道業 4人(1.3%)
生活関連サービス業 娯楽業 4人(1.3%)
鉱業 採石業 砂利採取業 3人(1.0%)
漁業 2人(0.7%)
不動産業,物品賃貸業 2人(0.7%)
その他 16人(5.3%)
わからない 28人(9.3%)

(2)企業規模
1~50人 74人(24.7%)
51~100人 34人(11.3%)
101~300人 44人(14.7%)
301~1,000人 38人(12.7%)
1,001~5,000人 31人(10.3%)
5,001人名以上 42人(14.0%)
わからない 37人(12.3%)


*本調査を引用される際は【ラーニングイノベーション総合研究所「若手社員の意識調査(社会人1年目)2023年度 入社前後のギャップの実態」】と明記ください

*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています

*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます

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