「人事の課題」実態調査(社員の育成編)
人事の感じる階層別の育成課題が明らかに!管理職は「部下育成」、新人・若手は「主体性・積極性」が育成のポイントに
2023年1月27日
調査結果の概要
- ● 人事部が注力して取り組みたい育成対象者「管理職・リーダー」が約6割。新任よりも既任の管理職の育成が課題
- ● 人事が感じる新入社員の課題、トップは「主体性・積極性」。301名以上の企業では300名以下に比べ「メンタルタフネス」が20ポイント高く2位に
- ● 入社2~4年目の若手社員の課題、こちらも「主体性・積極性」が最多となり301名以上では7割超。タスク管理や進捗管理も課題
- ● 管理職の課題、8割以上の人事が「部下育成力」と回答。「ビジョン・方針・戦略の立案・浸透」、「チームビルディング」は5割超
1. 人事部が注力して取り組みたい育成対象者「管理職・リーダー」が約6割。新任よりも既任の管理職の育成が課題
本調査では、企業の人事責任者・人事担当者277名に、人事部として注力して取り組みたい育成対象や、階層別に抱えている課題について実態調査を行いました。その結果を、従業員数が300名以下の企業(以下、『300名以下』と記載)と、301名以上の企業(以下、『301名以上』と記載)に分けて分析した結果をご紹介します。
まずは、人事部として、今後特に注力して取り組みたい育成対象について質問しました。結果、300名以下では「既任管理職」「リーダー」「中堅社員全般」がほぼ互角で59%前後、次に「新任管理職」57.1%でした。特に、「中堅社員全般」は、301名以上と比べ11.4ポイントも高い結果となりました。
301名以上では「既任管理職」が64.2%と最も高く、300名以下よりも約5ポイント高い結果に。次に「新任管理職」が61.1%となり、こちらも300名以下よりも4ポイント高くなりました。
従業員規模に関わらず、「既任管理職」の育成に最も力を入れたいという実態が明らかとなりました。(図1)
2. 人事が感じる新入社員の課題、トップは「主体性・積極性」。301名以上の企業では300名以下に比べ「メンタルタフネス」が20ポイント高く2位
ここからは、人事部が社員の育成に関してどのような課題を感じているか、階層別に見ていきましょう。
まずは、2022年度に入社した新入社員の知識・スキルや業務への姿勢について、どのようなことに課題を感じているか質問をしました。
結果、最も高い課題は「主体性・積極性」であることがわかりました。300名以下・301名以上、どちらも最高値であったものの、301名以上では53.7%と300名以下よりも16.3ポイントも高くなりました。
300名以下では、「報連相」が28.0%、「目的・目標の理解」が27.5%と続きました。
一方、301名以上では「メンタルタフネス」が43.2%、「目的・目標の理解」が31.6%と続きました。特に「メンタルタフネス」は300名以下より20.1ポイントも高い結果となりました。(図2)
3. 入社2~4年目の若手社員の課題、こちらも「主体性・積極性」が最多となり301名以上では7割超。タスク管理・進捗管理も課題
次に、入社2~4年目の若手社員の知識・スキルや業務への姿勢について、どのようなことに課題を感じているか、質問をしました。
結果、最も課題がある項目は、従業員規模に関わらず「主体性・積極性」であり、300名以下では57.7%と半数以上に、301名以上では更に高く、7割を超える結果となりました。新入社員と同じ項目ではあるものの、数値が大きく、より求められていることが伺えます。
300名以下では「目的・目標の理解」が36.3%、「改善策の立案・実行」が33.5%と続きました。
301名以上では「メンタルタフネス」が43.2%、「タスク管理・進捗管理」が37.9%と続き、300名以下よりもどちらも10ポイント程高い結果となりました。また、「思考力」においても同じく301名以上が10ポイント程高くなり、従業員規模で差が出た項目でした。(図3)
4. 管理職の課題、8割以上の人事が「部下育成力」と回答。「ビジョン・方針・戦略の立案・浸透」、「チームビルディング」は5割超
最後に、管理職についての課題を見ていきます。
結果、従業員規模に関わらず8割以上の人事が「部下育成力」を課題として捉えていることがわかりました。その他、「ビジョン・方針・戦略の立案・浸透」「チームビルディング」も半数以上の人事が回答しました。
新入社員、若手社員の課題においては、301名以上の結果の数値が300名以下を上回ることが多く、より課題感がある結果となりましたが、管理職に関しては逆の結果となり、300名以下が上回る項目が多くなりました。特に、「交渉力・説得力」は300名以下が14.9ポイント高く、「主体性・積極性」は14ポイント高い結果でした。(図4)
まとめ
今回の調査では、人的資本経営が注目される中、人事部が最も注力して取り組みたいと考えている育成対象はどこか、また階層別にどのような課題を感じているか、実態調査しました。
結果、人事部として最も取り組みたい対象は、従業員規模に関わらず「既任管理職」という結果に。「リーダー」「新任管理職」も上位となり、全体的に管理職層の育成に対し課題意識を抱く人事が多いことが明らかとなりました。外部環境の急速な変化により、従来のやり方では通用しないことが多い昨今、管理職が率先して変革していくことが求められており、管理職自身のさらなる変化や成長を多くの企業が求めていることが推察できます。
また、各階層の課題については、新入社員や若手社員は「主体性・積極性」が最も課題となっていました。特に301名以上の企業においては、「主体性・積極性」「メンタルタフネス」に関して、より強い課題感があることが伺えます。背景にテレワークなど働き方が変わり、且つ、プロジェクト型の非定型業務が増える中、手取り足取り横で教えてもらうことなく、一人ひとりが現場で適切な判断をして自発的に動けるセルフマネジメント力が、大手企業中心により求められていることが推察できます。
管理職に対しては、8割以上の人事が「部下育成」に課題を感じている結果に。その他、「ビジョン・方針・戦略の立案・浸透」「チームビルディング」など、部下との関わりにおける課題が上位にあがりました。日本の生産年齢人口減少と若手社員の早期離職が問題視される中、部下のエンゲージメントを高め、生産性の高いチームを作ることができるかどうか、現場の管理職の部下育成力が試されているといっても過言ではありません。
当社では2020年、2022年に管理職意識調査結果*1,2を公表しており、どちらの結果においても5割以上の管理職が「部下育成」が悩みと回答しています。管理職の悩みのトップではありますが、今回の調査では、人事側はさらに課題感、危機感を持っていると言えるでしょう。人的資本経営時代といわれる昨今、組織の中核を担う管理職を、時代に合わせて育成する力が企業により一層求められています。
本調査レポートが、組織づくりや新入社員育成に悩む経営層、人事担当者、さらには現役の管理職の方や一般社員の方にとって、自社の立ち位置を把握する上で有益な情報になれば幸いです。
*1「管理職意識調査(2020年公開)」https://www.all-different.co.jp/topics/20200727_03
*2「管理職意識調査(2022年公開)」https://www.all-different.co.jp/topics/20220331.html
調査概要
調査対象者 | 当社サービスを活用している企業の人事責任者・人事担当者 | |
---|---|---|
調査時期 | 2022年10月26日~2022年11月30日 | |
調査方法 | Webでのアンケート調査 | |
サンプル数 | 277人 | |
属性 |
(1)業種 情報通信業 76人(27.4%) 製造業 58人(20.9%) 卸売業、小売業 39人(14.1%) サービス業 37人(13.4%) 建設業 11人(4.0%) 運輸業、郵便業 7人(2.5%) 金融業、保険業 7人(2.5%) 不動産業、物品賃貸業 7人(2.5%) 学術研究、専門・技術サービス業5人(1.8%) 複合サービス事業5人(1.8%) その他 25人(9.0%) (2)企業規模 1~300名 207人(74.7%) 301名以上 70人(25.3%) |
*本調査を引用される際は【ALL DIFFERENT株式会社「人事の課題」実態調査(社員の育成編)】と明記ください
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
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