【管理職意識調査(部下へのフィードバック編)】半数超の管理職、フィードバックにためらい。新任は「部下の反応」、幹部候補は「正しさ」に不安| ニュースリリース |人材育成・社員研修

“ 【管理職意識調査(部下育成編)】部下育成の課題を感じる場面 新任「評価」、ベテラン「部下の意欲低下」、幹部候補「方針浸透」

累計13,000社420万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および人と組織の未来創りに関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所は、2024年5月20日~7月17日、当社の管理職向け研修の受講者415名を対象に「管理職意識調査」を行いました。本レポートでは、管理職の最大の課題である「部下育成」のうち、「部下へのフィードバック」に焦点を当てた結果を公表します。

〈背景〉部下は成長につながるフィードバックを求めている

概要

当社が実施した新入社員意識調査*1によると、自身が成長するために「上司や先輩からの事後のフィードバック」が必要だと回答した新入社員が半数以上いる結果となりました。

フィードバックは部下の成長のため、業務上の問題点を指摘し改善案を共に考えることです。フィードバックにより、部下に自分では気がつかない強みや改善点を認識してもらうことで、成長の促進が期待できます。また、フィードバックは受け手だけでなく送り手の成長にもつながるため、組織全体のパフォーマンス向上においても効果的な手法の一つとされています。

しかし、フィードバックを効果的に行うためには、知識・スキル・行動、その全てにおいて高い総合力が求められるため、多くの管理職が課題を抱えているのではないでしょうか。

*1 新入社員意識調査(速報値版)https://www.all-different.co.jp/download/all/news_20240422.pdf

調査結果の概要(一部)

  • フィードバックへのためらい
  • ・新任管理職の約6割がフィードバックをためらう。ステージ*初期の管理職ほど割合高まる
  • ・ためらう理由、新任・ベテランは「部下の反応」、幹部候補は「自分の正しさ」への不安が上位に
  • フィードバックの頻度
  • ・新任は「週1」「特に決めていない」、ベテランは「即時」、幹部候補は「特に決めていない」と回答
  • フィードバックの伝達方法
  • ・全体の8割以上、幹部候補の9割以上が「対面・口頭伝達」
  • フィードバック時に心がけている伝達内容
  • ・7割以上の管理職が「事実や結果に基づく具体的な内容」を心がける
  • フィードバック後の部下の行動に対する悩み
  • ・「課題を認識しているが、行動につながらない」がトップ

* ステージ:管理職を役職や経験値により「新任管理職」「ベテラン管理職」「幹部候補」の三つのステージに分類したもの

調査結果の詳細

【フィードバックへのためらい】
半数以上の管理職がフィードバックをためらう

図1

まず初めに、課長クラス以上の管理職(以下「管理職」と記載)に、部下へフィードバックする際、ためらったことがあるかを質問しました。
結果、53.2%が「はい」と回答し、半数以上の管理職が部下へフィードバックすることをためらうことが明らかとなりました。(図1)


次に、管理職のうち、1~3年目の課長クラスを「新任管理職」、4年目以上の課長クラスを「ベテラン管理職」、部長クラスを「幹部候補」と三つのステージに分類し、ステージ別に違いがあるか見ていきます。

新任管理職 1~3年目の課長クラス
ベテラン管理職 4年目以上の課長クラス
幹部候補 部長クラス

新任管理職の約6割がフィードバックをためらう。ステージ初期の管理職ほど割合高まる

部下へフィードバックする際、ためらったことがあるかステージ別に比較しました。「はい」と回答した割合は、新任管理職は63.2%、ベテラン管理職は53.2%、幹部候補は39.3%となりました。ステージが低い管理職ほど、フィードバックをためらう傾向にあることが明らかとなりました。(図2)

図2

ためらう理由、新任・ベテランは「部下の反応」、幹部候補は「自分の正しさ」への不安が上位に

次に、フィードバックをためらった理由をステージ別に比較しました。

結果、新任管理職は「部下の反応に対して不安があるから」と回答した割合が47.8%となりました。次に「自分が本当に正しいかに自信がなかったから」が40.3%、「適切な伝え方がわからなかったから」が38.8%と続きました。

ベテラン管理職は「部下の反応に対して不安があるから」が55.9%、「適切な伝え方がわからなかったから」が45.8%となり、どちらも他ステージよりも突出する結果となりました。

幹部候補は、「自分が本当に正しいかに自信がなかったから」が54.2%、「部下の反応に対して不安があるから」「もう少し様子を見てからでも良いかと思ったから」が同等の割合で41.7%となりました。(図3)

図3

【フィードバックの頻度】
新任は「週1」「特に決めていない」、ベテランは「即時」、幹部候補は「特に決めていない」と回答

次に、部下にどれくらいの頻度で、業務に関するフィードバックをしているか質問しました。

新任管理職は「週に1回フィードバックしている」「特に決めていない」がともに23.6%となりました。 ベテラン管理職は、「即時にフィードバックしている」が26.1%、次に「特に決めていない」が19.8%。 幹部候補は「特に決めていない」が26.2%、「即時にフィードバックしている」が24.6%となりました。(図4)

図4

【フィードバックの伝達方法】
全体の8割以上、幹部候補の9割以上が「対面・口頭伝達」

フィードバックの伝達方法について質問したところ、8割以上が「対面で、口頭伝達している」と回答する結果となりました。ステージが高まるほど、対面・口頭伝達を選択しており、幹部候補は9割以上となりました。また、「チャットやメールなどで文書伝達している」と回答した割合も3割以上おり、新任管理職ほどその割合は高くなりました。(図5)

図5

【フィードバック時に心がけている伝達内容】
7割以上の管理職が「事実や結果に基づく具体的な内容」を心がける

フィードバック時にどのようなことを伝えるよう心がけているか質問したところ、各ステージとも「事実や結果に基づく具体的な内容」と回答した割合が7割以上いることがわかりました。特に幹部候補は8割以上が回答しました。

ステージ別に比較したところ、新任管理職は「事実や結果に基づく具体的な内容」(72.6%)の次に、「フィードバックの意図や理由」が56.6%、「日頃の感謝や努力への労い」が47.2%と続きました。

ベテラン管理職では、「事実や結果に基づく具体的な内容」(70.3%)の次に、「日頃の感謝や努力への労い」が53.2%、「フィードバックの意図や理由」が51.4%と続きました。

幹部候補は、「事実や結果に基づく具体的な内容」(82.0%)が他のステージよりも高い結果となりました。(図6)

図6

【フィードバック後の部下の行動に対する悩み】
「課題を認識しているが、行動につながらない」がトップ

フィードバック後の部下の行動について、悩んでいることを質問したところ、「自分の課題を認識してはいるが、すぐに行動につながらない」と回答した割合が46.8%となりました。次に、「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」と回答した割合が28.9%と続きました。(図7)

図7

幹部候補はフィードバック後の部下の行動に悩みを感じる割合が高い

上記の悩みの割合を、管理職のステージ別に比較したところ、各ステージとも「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」と回答した割合が最も多く、次に「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が続きました。

新任管理職では、「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」と回答した割合が44.3%となり、次に「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が34.0%となりました。

ベテラン管理職では、「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」が49.5%、「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が27.0%と続きました。

幹部候補では、「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」が77.0%、「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が59.0%と続きました。幹部候補は全項目において他ステージよりも悩みを感じる割合が突出していることが特徴です。(図8)

図8

まとめ

本調査結果より、半数以上の管理職が部下へのフィードバックをためらっており、その理由やフィードバックの手法が管理職のステージ別に異なることが明らかとなりました。

フィードバックを最もためらっていたのは新任管理職で、6割以上がためらった経験があると回答する結果に。その理由として「部下の反応が不安」と回答した人が多く、自身のフィードバックに対して自信がない様子が見受けられました。また、フィードバックの頻度は「週に1回」もしくは「特に決めていない」が多く、他ステージよりもフィードバック頻度が低い点も、ためらう実態と関係があるかもしれません。フィードバック時に心がけていることでは「事実や結果に基づく具体的な内容」や「フィードバックの意図や理由」を意識する割合が高くなりました。

次にためらう割合が高くなったのはベテラン管理職です。新任管理職と同様に、ためらう理由に「部下の反応が不安」と回答する割合が高くなりました。しかし、フィードバックの頻度は新任管理職と異なり、「即時フィードバック」が多くなりました。さらに、フィードバック時には「日頃の感謝や努力への労い」を伝達することを意識する傾向にあり、新任管理職より、部下の気持ちを考える余裕があることが垣間見られました。

フィードバックをためらう割合が最も低かったのは幹部候補です。6割がためらったことはないと回答し、ベテラン管理職と同様に「即時フィードバック」をする人が多い結果となりました。一方、4割のためらう人は「自分が本当に正しいか自信がない」という悩みを抱えていることがわかりました。フィードバック時に心がけていることにおいては、8割以上の幹部候補が「事実や結果に基づく具体的な内容」と回答し、さらに「今後成長するために注力すべきこと」「今後の期待」と部下の成長を中長期的に考えたフィードバックもするようにしていることがわかりました。

ステージ別の変化が少なかった項目は、フィードバックの伝達方法です。リモートワークが増えている昨今ではありますが、対面・口頭を意識的に行う管理職が8割以上いることが明らかとなりました。さらに、フィードバック後の悩みでは「課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」ことへの悩みを抱いていることがわかりました。

CLM(最高育成責任者)の考察

今回の調査結果から、管理職が部下へのフィードバックをためらう理由や、その手法がステージ別に異なることが明らかになりました。特に、新任管理職は「部下の反応が不安」という理由でフィードバックをためらう傾向が強く、ベテラン管理職や幹部候補に比べてフィードバックの頻度も低いことが分かりました。一方で、若手の意識調査からも、若手は指摘も求めていることがわかっています。

部下へのフィードバックをより効果的に行なうためには、まずは管理職がフィードバックの基礎知識を習得することが重要です。少なくとも「フィードバックの目的や効果」「客観的事実の提示方法」「要求・要望の伝達方法」「改善・解決策の検討方法」「フィードバック後の支援方法」などは押さえておくとよいでしょう。そのためには、適切な伝え方についての研修を通じて学ぶことが有効です。また、フィードバックを行う際には、対話(ダイアローグ)を重視し、部下との信頼関係を築くことが求められます。対話を通じて、部下の意見や感情を尊重し、共に成長を目指す姿勢が大切です。

ステージ別では、新任管理職はフィードバックに対する不安が強いため、まずはフィードバックの基礎知識を習得し、対話を通じて部下との信頼関係を築くことが重要です。また、フィードバックの頻度を増やし、定期的に行うことで、フィードバックに対する抵抗感を減らすことができます。ベテラン管理職はフィードバックの頻度や方法に関しては一定の経験がありますが、部下の反応に対する不安が残っています。対話を通じて部下の意見を尊重し、共に解決策を考える姿勢が求められます。幹部候補は「部下も管理職であり一定の経験を積んでいる」ことも多いためか、部下自身の「課題認識」「即時行動変容」の2点に特に大きな課題を感じています。結果として、自身の正しさに対する不安を抱きやすいのかもしれません。この課題を解決するために、幹部候補は「フィードバックの基礎知識」はもちろん、「部下の課題に踏み込む勇気」「中長期的な育成視点」を持つことが肝要です。

管理職にとって、フィードバックの知識やスキルは、その役割を果たすための根幹を成すものであり、習得できるか否かでその後の人と組織の変化や成長に大きな影響をもたらします。上述したとおり、若手も指摘を求めている傾向があるため、管理職のフィードバックスキル向上を支援する取り組みを進めていくことが、組織全体のパフォーマンス向上につながると考えられます。

ALL DIFFERENT株式会社
事業開発推進本部 シニアマネジャー・開発室 室⾧
CLM(最高育成責任者)
根本 博之(ねもと・ひろゆき)

事業会社を経て、2010年にALL DIFFERENT株式会社(旧トーマツイノベーション株式会社/株式会社ラーニングエージェンシー)に入社。コンサルタント業務・講師業務を通じ、年間100~150社ほどの組織開発・人材育成を支援する傍ら、社内の育成責任者としても活動。大阪支社の立ち上げに参画し、営業リーダーとして年間目標達成に導いた後、本社にてコンテンツ開発業務に従事。中堅・大企業向けコンサルティング事業部門の責任者を歴任。日本経済新聞、NHKなどメディア出演多数。

調査概要

調査対象者 当社が提供する管理職向け研修の受講者
調査時期 2024年5月20日~7月17日
調査方法 Web・マークシート記入式でのアンケート調査
サンプル数 415名
属性 (1)業種
建設業 32人(7.7%)、製造業 64人(15.4%)、電気・ガス・熱供給・水道業 5人(1.2%)、情報通信業 100人(24.1%)、運輸業,郵便業 16人(3.9%)、卸売業,小売業 74人(17.8%)、金融業,保険業 17人(4.1%)、不動産業,物品賃貸業
12人(2.9%)、学術研究,専門・技術サービス業 17人(4.1%)、宿泊業,飲食サービス業 2人(0.5%)、生活関連サービス業,娯楽業 1人(0.2%)、教育,学習支援業 1人(0.2%)、医療,福祉 3人(0.7%)、複合サービス事業 11人(2.7%)、サービス業(他に分類されないもの) 37人(8.9%)、公務 4人(1.0%)、その他 18人(4.3%)、わからない 1人(0.2%)

(2)企業規模
~50名 44人(10.6%)
51名~100名 53人(12.8%)
101名~300名 202人(48.7%)
301名~1,000名 90人(21.7%)
1,001名~5,000名 18人(4.3%)
5,001名以上 6人(1.4%)
わからない 2人(0.5%)

*本調査を引用される際は【ラーニングイノベーション総合研究所「管理職意識調査(部下へのフィードバック編)」】と明記ください

*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています

*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます

ラーニングイノベーション総合研究所について

当社の研究機関、ラーニングイノベーション総合研究所(以下、LI総研)は、「人と組織の未来創り🄬」に関する様々な調査・研究活動を行っております。
LI総研はデータに基づいた最適な解決策もご提供し、お客様の組織開発をサポートしております。

ALL DIFFERENT株式会社について

当社は、組織開発・人材育成支援を手掛けるコンサルティング企業です。「真の未来創りの伴走者」として、人材育成から、人事制度の構築、経営計画の策定、人材採用に至るまでの組織開発・人材育成の全領域を一貫してご支援しております。

代表取締役社長 眞﨑 大輔
本社所在地 〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町 ITOCiA(イトシア)オフィスタワー 15F(受付)・17F・18F
支社 中部支社、関西支社
人員数 316名(2024年4月1日時点)
事業 組織開発支援・人材育成支援、各種コンテンツ開発・提供、ラーニングイノベーション総合研究所による各種調査研究の実施
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