A. 添田:やはり女性活躍推進法※の施行はきっかけになりました。というのも、当社の社員数は現在240人ほどですが、近い将来300人を超えることが見込まれており、法律に対応する必要があるからです。ただ、“女性活躍”は、法律の施行前から会社経営のキーワードの1つに掲げていました。当社の女性比率は2割程度と低く、女性社員を増やしたい、さらには女性のリーダーを増やして、女性を管理職に登用したいという思いが以前からあったんです。
A. 添田:女性の視点で検討してもらうには、やはり女性リーダーの方が適任です。また、女性の視点で検討するとは言え、全社の取り組みにしたいという思いもありました。須藤のこれまでの仕事ぶりや須藤とのコミュニケーションの中で、女性側だけの意見に偏ることなく進めてくれる人物だと分かっていましたので、須藤が最適だと判断しました。
Q. リーダーに抜擢され、どんなお気持ちでしたか?
A. 須藤:当社社員の多くはお客様先に常駐しているため、顔を合わせる機会があまりありませんが、女性同士のランチや飲み会は定期的に開催していて、仕事や会社の話をよくしていました。また、業界的に女性が少ないので、女性のいいところをもっと活かしていけたらいいなと以前から感じていました。ですから、この機会に、女性社員の思いや考えを発信していこうと思ったのが率直な気持ちでした。
チームは「PASS推進会」と名付けました。PASSとは、「ポジティブ・アクション・オブ・SS(Positive Action of SS)」の頭文字を取ったものです。メンバーは全員女性で、中途入社、外国籍、若手、そして私の4人。様々な立場の社員から話を聞きたかったので、キャリアも年齢もバラバラな3人にお願いしました。もちろん、PASSの運営を1から全て任されたとは言え「女性を増やしたい、女性を管理職に登用したい」という目標は事前に聞いていましたので、「それに向けてどうしたらいいのか」を考えることから始めました。
Q. トップダウンではなく、ボトムアップで進められたのには理由があるのですか?
A. 田島:当社には、トップダウンで何かを進めるという慣習がなく、例えば中期経営計画を策定する際も、経営陣と社員20人ほどのチームを作り、一緒に考えながら作り込んでいくのが当たり前なんです。もちろんトップダウンで判断してもらわないといけないこともありますが、基本的にはボトムアップを大切にしていますので、今回も「会社としてこうしてほしい」ではなく、自分たちが働いている中から、何が課題なのか、何をやったらいいのかを洗い出すことから始めてもらったということです。
職場全体を巻き込み 様々な角度から意見を吸い上げる
Q. PASSではどのような活動を行ったのですか?
A. 須藤:社員が女性活躍についてどう思っているのかを知ることが先決だと考え、まずは全社アンケートを実施しました。女性活躍推進のホームページを参考にしながらアンケート項目を決め、例えば「当社では女性が活躍していると思いますか?」「女性が活躍するためには、何を見直したらいいと思いますか?」などを全社員に質問しました。厳しい意見から個人の頑張りを評価するコメントまで様々な回答がありましたが、アンケート結果を分析していくうちに、「なぜ当社には女性管理職がいないのか」「なぜ結婚後の女性が昇進しづらいのか」といった課題・問題が浮かび上がってきました。
A. 須藤:女性の声だけでなく男性の意見も取り入れることです。"女性活躍"と言いつつも、会社全体の活性化につなげたいという思いもありましたし、女性だけの意見に偏ってしまってもいけません。ですから、討論会には男女・年齢・既婚独身問わず様々な社員に参加してもらい、職場全体を巻き込むことを意識していました。
A. 須藤:主に育児休暇や復帰後の時短勤務、ノー残業デーなど、働き方の見直しに関わることですが、お客様先の働き方に合わせる、もしくは調整する必要があるというのが一番の難関でした。これは非常に難しい課題で、解決するにはまだまだ知恵を絞らないといけませんが、お客様と調整したり、短時間勤務が可能な現場を探したりすることで、見直しを進めていきたいです。
A. 添田:通常業務プラスαの部分にも抵抗なく取り組むのが当社の社風なんです。ワークショップやクラブ活動など、皆、何かしらの活動に参加していますし、新人歓迎会や社員旅行の幹事も、例えば「総務部が担当」というような固定にはしていません。そのためか、本来の業務以外のことにも力を入れてくれる社員がほとんどです。アンケートにしても討論会にしても、協力を惜しむ社員は1人もいませんでした。実は昨年(2017年)の社員旅行の委員長を決める際、PASSへの注目度が高まっていたこともあり、PASSのメンバーに委員長をお願いしたんです。
A. 須藤:せっかく女性の“活躍”を目指すのなら、女性の私たちで大きく変えてみようと思いました。当社の社員旅行は忘年会も兼ねているので、バスでどこかに出かけて、飲んで帰って来る慰安旅行が恒例でした。しかし、日ごろ顔を合わせる機会の少ない社員同士が一堂に会するせっかくの機会です。何のために社員旅行をするのか、旅行で社員に感じてほしいことは何かなど、社員旅行の目的をしっかり考え、そのうえで、カレー作りを通じたチームビルディングなど、これまでにない旅行を企画しました。社員の皆さんから不満が出るかなと少し不安だったのですが、結果的に「すごい楽しかった」という声が多くてほっとしました。
A. 添田:女性が前に出て活躍している姿に刺激を受けたのか、「リーダーに上がりたい」という女性社員の声が出てくるようになりました。当社の女性リーダーはまだまだ少ないので、手を挙げてもらうことでこれからどんどん女性リーダーが増えていくのではと期待しています。一般的に、男女関係なく「昇進したくない」という若手が多いとも聞いていますので、組織活性化の観点からも、本当に良い効果だと言えるでしょう。