「人と組織の未来創り_Ⓡ」の「ヒント」を発見するオンラインイベント「HR Discover SUMMIT 2024」開催！｜イベントレポート｜組織開発・人材育成

第1部にご登壇いただいたのは、日本全国147万社という膨大なデータを有する株式会社帝国データバンクの情報統括部部長、藤井俊氏です。創業125年目となる同社が誇る「現地現認」による調査レポートや月次のTDB景気動向調査は、金融機関や国の施策検討にも活用されてきました。

今回ご紹介いただいたのは、帝国データバンクが毎月実施している景気動向調査に基づく分析です。

藤井氏によれば、2024年7月現在の景気DI（景気に関する評点）は43.8であり、「景気そのものは極端に悪いわけではない」とのことです。ただ、コロナ禍におけるゼロゼロ融資の効果が切れたことや、継続する円安の影響、そして人材不足により2023年から倒産数が大幅に増加。これらの要因から、今後も倒産予備軍企業は増化が続く見込み、と分析しました。

2024年度は、増収・増益を見込む企業と、減収・減益を見込む企業との二極化が進む見通し。企業規模が小さいほど苦しい状況が続きそうです。

現状を打破するには、収益力のある人材の確保、あるいは価格決定権の獲得が必要ですが、「いずれにせよ人材育成がポイントになる」と藤井氏は語りました。

同じく第1部では、同志社大学政策学部教授（同大学院総合 政策科学研究科教授）経済学博士の太田肇氏にもご登壇いただきました。太田氏は、『「自営型」で働く時代 —ジョブ型雇用はもう古い！—』（プレジデント社）の著者でもあり、今回の講演では日本企業低迷の原因、ジョブ型の課題、「自営型」のメリット、人材育成のポイントなどを共有いただきました。

日本は労働生産性・国際競争力の低落傾向が続き、ワーク・エンゲージメントも世界最低レベルとなっている一方、多くの企業が「ジョブ型」の人事制度に期待をもって見つめてきました。しかし、解雇規制・年功制・人材不足・新卒採用システムとの相性、VUCAの時代に必要な柔軟性において、実は「ジョブ型」がマッチしていない企業も多いのでは、と太田氏は解説。これを解決する選択肢が、「自営型」であるとしています。

「自営型」のメリットは、一人ひとりの能力を最大限に活かすことで、ワーク・エンゲージメントや労働生産性の向上につなげ、個人の守備範囲拡大によって人材不足解消にもつなげられる点です。人材育成では、起業家精神・独立意識や本人の意思の尊重、ITの最大限の活用、そしてフラットな組織作りと自営型への移行期間（3年程度）を設けた育成がポイントになるとアドバイスをいただきました。

企業は一社一社異なる背景を持ち、それぞれ異なる課題解決に取り組んでいる以上、最適な人事制度も一社一社異なるはず。いま、自社にとって最適な人事・雇用制度は何なのか、を定期的に見つめ直すことが肝要といえるでしょう。

第1部講演に続く第2部では、当社CLM（最高育成責任者）であり現在もコンサルタント兼講師として多くの企業の組織開発・人材育成支援を手掛けている根本博之より、今回のような講演で得た知見を自社の取り組みに活かす際のポイントをご紹介しました。

そして第3部は、管理職への計画的な研修実施で大きな成果を上げられた株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ執行役員の大﨑亜紀氏のご登壇です。今回、当社と共創で取り組んだ管理職育成研修の実施事例と成功のポイントを共有いただきました。

同社は再生可能エネルギー拡充のためのGX事業を展開し、従業員数は約120名。ベンチャーシップのマインドを大切にする企業風土で、失敗・挑戦を恐れない「自律したプロフェッショナル集団」です。外部環境の激しい変化と不確実な未来、労働力人口の減少、キャリア採用メンバーの増加といった複数の要因が重なり、管理職の役割認識強化とマネジメント基礎力強化が課題に。この対応策として、「ミドルマネージャー研修」を実施しました。

研修は対面方式で月1回、6カ月間をかけて開催。事前に当社のアセスメントサービス（Discover HRシリーズ*）を用いて受講者が自身の現在地を知り、「ピアラーニング」によって仲間から気づきを得ることで、自身の再発見につなげました。研修では毎回宿題が課されますが、はじめは自発的に取り組まない受講者もいたとのこと。しかし、「宿題に取り組まないことが仲間の学びの妨げになる」という理解が徐々に浸透し、自律的な学習が実現しました。

大﨑氏のご講演後は、視聴者から多くの質問が集まり活発な質疑応答に。視聴者の関心が高かった取り組み成功の秘訣については、受講者目線でのプログラム作りや、ピアラーニング、グループディスカッションだと語ります。ご自身が全プログラムに参加できたことも、大きな気づきを生み、成功要因の1つにつながったそうです。その他、受講者の負担増への対処方法など、人事担当者が直面しやすい課題にも明確なご回答をいただきました。

最後に大﨑氏から、「どの企業でも、組織を形成しているのは従業員一人ひとり。小さくてもいいので、何か1つ好事例をつくることが大切です。一人ひとりの成長につながる研修がとても大事であるという想いを信じ続けて、共に頑張っていければと思っています」とメッセージが送られました。